【死神の子】    作:ランハナカマキリ

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アレから、バレエ『死神の死』の日から数日後。

 

インターネット上に、今ガチメンバーによって作成・編集された動画がアップされた。

動画のコンセプトは、メンバーから見た本当の今ガチ。

 

「ふ〜ん、面白いじゃん」

「何でお前が家に来てるんだ、ツクヨミ•••!」

「あ〜すまん。未来が『新しいお友達!!』って連れてきてさ•••妙に大人びたガキンチョだったし、まぁ危険性はないかなと•••」

 

烏有の自宅に我が物顔で入り込み、ソファーでごろごろしているツクヨミに対して、青筋を立てる烏有。なぜ彼女がいるのかを釈明し、謝罪する大樹。彼女は自身のスマホを流し見しながら、すごろくゲームに興じている。ちなみに1位は未来、2位はツクヨミ、3位はルールがわかんない朧である。

 

「にしてもさぁ•••確かに面白い子が誰かっていうの教えなかったのは私の落ち度だよ?まさかのメンバーの中に殺し屋が混じってるなんて思わないじゃん」

「分かれよ、自称神様のくせに」

「あー、言っちゃったね。今のは不敬だよ」

「そもそも、俺は神を信じない。信じている神がいたとしても、それはこの世界の秩序ある調和の中に自身をあらわされる神であって、人間の運命や行動にかかわるお節介な神じゃない」

「スピノザか、博識だね」

「酢のピザ?」「俺はシーフードが好きだけど」

 

バールーフ・デ・スピノザ

オランダの哲学者であり、後にアインシュタインも賛同した「スピノザの神」の提唱者である。

自然界の普遍的な法則や秩序そのものを神とし、人間の行動に報酬や罰を与えない、人格を超越した理性的存在としての神ーー神即自然の考え方。

 

烏有は無神論者だが、彼の考え方は好きだった。

 

「けどね、神様って実際にいるよ」

「お前が言うならーーー信用できないな」

「え、それでも否定するの?」

「客観的に再現性があるかどうか、そうでもねーと信用できないだろ。"謎のエネルギーを放っている"とか、"人の未来を見ることができる”とか”天国地獄転生を決められる"とか。たった一人、目の前に神様を名乗るメスガキがいて、他に存在を観測できなければ無理だろ。結論として、お前は神様を名乗り、人の個人情報にやけに詳しい、ただのませた女の子だ」

「ぐぬぬ•••否定できない」

「第一次口喧嘩は俺の勝ちだーーーあ、夕飯食ってくか?」

「は?いやいや、敗者に情けなんて必要無ーー「ボルシチ」

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい!お代わり!!」

「デザートあるぞ」

 

餌付け成功!!

 

 

「•••好きなタイプ?」

「ほら、次の収録からあかねが復帰するでしょ?何かキャラ作りしたらいいんじゃないかなぁって話し合ってたの!!」

「そぉそぉ!!理想の女性像を教えてよ〜」

「•••俺に興味ない人」

 

「「ん?」」

 

「俺が何しようと、とやかく言わないーーー俺がいなくなったら、俺のことをすぐに忘れて他の男と付き合ってくれるくらい薄情な人」

「ーーーなんか重いね」

「地球の10倍の重力感じちゃった」

「お前ら腕の骨折るぞ」

 

今ガチ収録後の楽屋、黒川の炎上以降は特に何事もーーいや、鞠菜が長い髪をバッサリ切ったことに皆驚いていたことがあった。まぁ、切ったのは俺なんだが。その後はアイツも無闇に近寄ってくることはなく、ただコチラをチラチラと見て、目が合うと頬を赤く染めてニコッと獲物を見つめる捕食者のような目で見つめ返すようになった。

 

I have a bad feeling about this (嫌な予感がする)

 

そんなことを考え、空を見上げる。

すると、横に誰かが座った。

 

「あ•••雪代さん」

「ん?」

 

真横には、黒川あかねがいた。

 

「黒川さん・・・この間の、骨を折ってしまった件は本当に申し訳ありません」

「あ、謝らないでください•••!」

 

今まで機会がなかったため、直接言えなかった謝罪の言葉を伝える烏有。

 

「俺は貴方のこと、尊敬してる。もし炎上したのが自分だったらこんな恋愛リアリティーショーに出続けられませんし」

 

本当に自分だったら、アンチコメントしたやつを全員半殺しにしただろう。

 

「あはは•••でも、みんなが励ましてくれなかったら、自分も逃げ出していたかもしれません。けど、逃げ出したら、何かを掴み損ねるかもしれないから•••」

 

「"勝利は、もっとも忍耐強い人にもたらされる"•••ナポレオンの名言だ。黒川さん、頑張りな」

「はい!」

 

だが、この数日後。

 

彼の心境は変わってしまう。

 

「ふぁっ…眠いんだよね、収録早すぎてさ〜あっ、もうカメラ回ってる?」

 

誰だコイツ。

黒川あかねであり、黒川あかねではない紛い物ーーいや、完璧に近いーー99.999%の複製。

魂の炎もまるで違う。

 

完全に、別人。

 

「てへっ☆」

 

その星を宿した瞳と笑顔を向けられた先にいたのは、漆黒の魂の炎の中に、眩い星を輝かせる星野アクアだった。

 

(•••••気持ち悪)

 

烏有は、二人の魂に釘付けとなりーーー嫌悪してしまった。

 

 

「星野アクア?」

「そーだよ、ちゃんと報連相徹底すればよかったなぁ」

 

烏有の自宅、ちゃっかりついて来たツクヨミが、リビングのテーブルの上に置かれていた煎餅をバリッと齧る。その横で朧は煎餅を湯呑みで粉砕し、それを見ていたリサが目からレーザーを出して十二等分にした。

 

「星野アクアって、あのチャラい感じの人?」

「そうです。『星野アクア、本名.星野愛久愛海。身長172センチメートル。年齢16歳、3歳で映画に子役として出演、その後目立った活動をしていなかったが実写映画『今日は甘口で』レビュー星1にストーカー役として出演、その後恋愛リアリティーショー『今からガチ恋始めます』に出演しました。高校入学時は学力偏差値70と高め、また幼少期から、いわゆる大人びた言動をーー』

「リサ、ちょっとストップ」

「彼女すごいね•••それで、君から見た彼はどうかな?」

 

データバンクからかき集めた、星野アクアの個人情報を饒舌に読み上げるリサを静止する大樹。リサの情報収集能力に感銘したツクヨミは、台所に立つ烏有に意見を求める。

 

「別に、ただ•••なんかコイツ危ないなってだけだ」

「危ない?」

 

烏有が台所から鍋を持ってくる。

今日の晩飯は白菜やネギをふんだんに入れ、ていうか肉類が安い肉少しだけの家庭的かつ健康的な鍋であった。それもそのはず、リサの電気代とこの間の烏有の治療費に金が消し飛んだのだ。

 

「あれは目的のためなら周りの影響お構いなしに行動する目をしてるーーそう思ってたんだけどなぁ」

「?」

「いや、俺の目は魂を見るってお前言ってただろ?なんというか、魂は成熟してるしてるのに不安定?なんだよ」

「•••スピリチュアルな話か?ていうか魂に成熟とかあるのか?」

「子供の頃は魂って安定してないんだ。母さんに連れられて大都会に行った時に分かったんだけど…老人は火が細くなって今にも消えそうに、若い人は燃え盛ってるが、子供は風に揺られるみたいに火が揺れてた」

「えっと、つまり子供の魂ーーつまり火は揺れまくってるってことか?」

「そう言うこと。あいつの場合、普通の大人並みに燃え盛ってるのに、炎が揺れまくってて危なっかしい•••確かに興味深くはあったんだが、鞠菜の方がヤバかった」

「へ〜そっか……確かに危ないよね」

「ん?」

「こっちの話•••それで、赤尾リオンの居場所についてだけどーー」

 

何か含みを持って、小さく呟いたツクヨミは、烏有に取引の対価を伝える。

 

「ーーーーーーにいるよ?」

「・・・取引成立だな?」

 

握手する2人、すると玄関から物音がする。

空気が一瞬でピリつく。

 

「・・・・誰か呼んだか?」

「ん?特に誰もーーー「よ、烏有」ーーーなんだ、勢羽か」

 

そこにはお高めの肉を手土産に、肉の入ったレジ袋を顔の高さまで掲げた勢羽がいた。

 

「高級黒毛和牛・・・いるか?」

「「「いります」」」

 

神の如き天からの恵に、秒で返事する烏有と大樹と朧。

受け取った瞬間、勢羽は薄ら笑いを浮かべた。

 

「受け取ったな・・・・?これで恨みっこなしだ」

「ふふふっ、烏有くんこんばんわ〜」

 

勢羽の後ろには、恋する乙女のように頬を赤く染めた鞠菜がいた。

 

「あ、これ引っ越しの挨拶よ。私、貴方の隣に引っ越したの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ」

 

烏有は顔を思いっきし歪めて、嫌悪感丸出しの舌打ちをした。

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