帰り際に現れた青年、名を円城寺 仁。ダンダダンの世界でオカルン達の4人目の仲間枠だ。
事情を聞けば原作通りの展開で、詳しい話は聞けずじまいだったが、あまり俺が介入する要素もなかったので、そのまま帰宅することになった。
「にしても、綾瀬さんの幼馴染か~。オカルンとかめっちゃ複雑そうな顔してたし、修羅場になりそうじゃない?」
「ケヒッ!小僧の見ている景色は甘ったるくてかなわんな~」
新条の呟きに、俺は宿儺ムーブで返す。
その返しにムッとする新条だったが、俺は頬の部分に口を作りあげ、囁くように告げる。
「あの先程出会った小僧、ジジとか言ったか?あいつの心は相当ぐちゃぐちゃだったぞ。外見は無理して元気そうに見せてたが、中身は迷子の子供みたいに不安で押し潰されそうになってたな。あのままだと、そう遠くないうちに擦り切れてしまうだろう」
愉快そうに笑いながら、原作知識とジジの不安定に揺れる呪力をもとに考察を語ると、新条の顔が曇る。
「それ、どういう意味だよ?」
「どういう意味も何も、親戚の家ではなく霊媒師の綾瀬星子の家に泊まり込んでるのだろう?十中八九、心霊現象による被害者ってことだろうな」
「じゃあ、あのジジってのが綾瀬ん家に来たのって、俺みたいに何かに呪われてるのか?」
「さてな?俺にとって興味はないのでな。そんなことは知らん」
興味はないと言いつつも、本心は違う。呪術廻戦の要素がどこで絡んでくるかわからない以上、できるだけ主人公たちから離れたくない。
出来る事なら上手いことオカルン達と呪いの家に行きたい。故に、わざと帰り道で新条の戯言のような独り言に乗っかった。
そして、虎杖並みの善性を持つ新条をたぶらかし、新条が自ら首をツッコむように誘導する。
まさに、計画通り。
結果として、翌日に転校してきたジジに新条が突撃して綾瀬の家にやって来た理由を問いただした。
その際に人体模型が学校から逃走して追い掛けるという、そんなエピソードもあったな的な事件を解決し、オカルン、綾瀬、ジジに加えて、俺たちも週末にジジの家に行くことが決定した。
新条たちが帰宅してしばらくすると、ジジとモモが仲良く皿洗いをしている間に、星子は家の電話でどこかに連絡を入れていた。
「ああ、とりあえずはこっちで様子を見ておく。もしもの時はお前を頼るから予定を空けておけよ。あぁ゛ん?スケジュールが全部埋まってるだと?ワシの命令が聞けないのか、このガキンチョ!!」
半ば脅迫めいた電話になっていたが、相手の事情も知っているからいつもの馴れ合いによるシャレなのだろうが、相手の方からは「勘弁してくださいよ」とヘラヘラとした言い方ながらも疲れを感じさせるような声で答えていた。
それから一言二言交わすと、星子は受話器を置き、深いため息をついて天井を見上げた。
「なんでい、上の方にでも両面宿儺の件をゲロっちまったのか?」
「バ~カ、違えよ。後輩の奴に連絡したんだよ。いざって時はお前がどうにかしろってな」
「どうにかぁ~?なんでい、てめえ、自分の後輩を生贄にでもしようってのかい?は~、やだやだ。これだから人間って奴は──ぶぎゅっ!」
「誰が生贄にするっつったよ!このバカチンクソネコがよぉ!!」
言葉の途中で星子はターボババアの頭上に足を振り下ろし、勢いよく踏みつけた。
「言っとくが、この時代にも強い霊媒師は1人や2人はいるもんだ。んでもって、さっき電話した後輩なんだが、性格こそ最悪だが、現代で両面宿儺を倒せるのなんざアイツくらいしかワシは思いつかん」
「ほう、随分その後輩を評価してるみてえだな。でもよ、少しばかり甘く見てんじゃねえのか?相手はあの両面宿儺だぜ、指一本であのレベルの呪いの濃さ。完全復活した暁には誰もアレを止められやしねえ。そこんとこは理解してんだろうな?」
「おう!その上で、ウチの後輩ならワンチャンレベルで倒してくれるんじゃねえかって期待している」
そう断言する星子に、ターボババアはは頭を踏みつけられた状態から抜け出し、面白い事を聞いたとばかしに目を細める。
「そうかい。なら期待しとくぜ!せいぜい両面宿儺の天下にならねえことを祈っとくよ」
そう捨て台詞を吐いて、ターボババアは自分の布団の方へと去っていった。
「……まあ、いざって時はワシが生贄になるさ」
今日は晴天で絶好の旅行日和。ガタゴトと揺れる電車の窓から、次々とうつり変わる景色に心が躍る。
なんてことはなく……。
「──と見せかけてこっちだぁあ!!」
これから決戦の場となる心霊スポットであるジジの家に向かっているのに、そんな雰囲気は微塵も感じられない。むしろ、綾瀬たち4人は遊びを優先してババ抜きに熱中している始末だ。
現場に到着する前から緊張でガチガチになるよりはマシかもしれないが、あまりの緊張感の無さに、この先に待ち受ける危険を知っている俺はそのギャップに自然と呆れが出てしまう。
「小僧、俺はもう引っ込む。そこのジジとかいう小僧の家に着いたなら起こせ」
「え~、宿儺もババ抜きしようぜ!あっ、でも宿儺は体ねえし無理だよな?宿儺でも出来そうなのっていえば……。ウノとか?」
「………………くだらん」
そう言って俺は精神世界に引っ込んだ。
そうして頬に生えた口がなくなり、見た目普通の人間に戻った新条に、綾瀬が声をかける。
「にしても、アンタよくそんな奴と仲良くできるよね。そいつ呪いよ、それも婆ちゃんがまったく手に負えないって言ってるレベルの呪い!」
「そうですよ!自分もターボババアに呪われて体の中に入られたことがありませけど、早く出ていって欲しいって思わなかったんですか?」
「ん~、そりゃプライベートな時間が無くなるし、出ていって欲しいと思うときはあるけど。でも、俺にとって宿儺は命の恩人って面もあるから、嫌いじゃねえんだよな」
屈託のない笑顔でそう言う新条に、綾瀬とオカルンは「ま、眩しいぃぃ!!!」と悲鳴を上げていた。
「ってか、あの両面宿儺だっけ?あいつが命の恩人ってどういうことよ。会った時から今まで嫌な奴って印象しかないんだけど」
「ジブンも怖い人だってくらいしか印象が……」
「あっはっはっは……。まあ、宿儺が怖い奴ってのは同意だけどさ、あれで結構いいところもあるんだぜ」
それから目的の駅まで新条から見た宿儺のいいところをひとしきり語ったり、事情を詳しく知らないジジに説明したりと、割と喧しいながらに楽しい時間を過ごしていた。