主人公のクラスメイトである葉芽真来にはあらぬ噂が立っている。そんな葉芽は、ある日突然主人公に話しかけてきた。
*キツめの下ネタがあるので、閲覧にはご注意ください。

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本編

 葉芽(はのめ)真来(まきた)はアイスキャンディーを咥えた数よりチ◯ポを咥えた数の方が多いと言われている。

 

 だからこそ付けられたあだ名が、ハメまくり。付けたやつは、血液の代わりに精液が脳みそを循環しているんじゃないだろうか。

 

 まあ、葉芽をハメと読むのも、真をまと読むのも分かる。だが、来という字をくりと読むのはかなり無理があるだろう。結論だけ先走って整合性を後付けするかのような発想だ。

 

 そんな葉芽は、今日も元気よく登校してきた。いつも通りに棒付き飴を口の中に入れながら。おそらくは、棒付き飴だと毎日だから、もう少し少なそうなアイスキャンディーにしたのだろう。

 

 元が荒唐無稽だと言うのに、どうして妙なところでリアリティを求めてしまうのか。まるで一騎当千の武将が居るのに、剣の耐久度だけ気にする小説かのようだ。要するに、バランスを取るという考えすらない雑さが隠せていない。男子高校生らしいと言えばらしいか。

 

 葉芽は金髪ギャルといった見た目だから、勘ぐりたい感情もあるのだろうな。まったく、くだらない偏見にまみれた頭精液男どもは。

 

 そんなこんなで放課後まで過ごす。すると、急に立ち上がった葉芽がこちらに勢いよく駆け寄ってくる。そして、僕の目の前で立ち止まった。僕と目をあわせ、大きく口を開いて言葉を発した。

 

「ねえ、パパになってよー!」

 

 耳を疑った。大声でこんなことを言うとか、頭おかしいのだろうか。もしや噂は本当だったのだろうか。財布カツカツパパ活祭りなのだろうか。

 

 正直に言って、関わりたくない。返事すらしたくない。視界からすぐさま出ていきたい。ただ、目を合わせてゆっくりと去っていくだけでは逃げられないだろうな。厄介な獣に目をつけられた獲物の心境だよ、まったく。

 

 ただ、しばらく黙っていると葉芽は涙をこぼしだした。そのまま両袖でゴシゴシと目元を擦っている。周囲の視線が痛い。なぜ葉芽を泣かせているのかという空気を感じる。

 

 どうしてだよ。急にパパになってくれと言われて困惑することすら許されないのかよ。みんなはおかしいと思わないのかよ。平穏を願う小市民の生活は、こうやって上から叩き潰される運命なんだな。やっぱり世の中クソだ。ふざけやがって。

 

 仕方ない。ため息を一度付いて、葉芽の言葉に返していく。今すぐ立ち去りたい気持ちを隠しながら。

 

「葉芽は、どうしてパパになってほしいんだ?」

「いっぱい甘やかして、抱きしめて、ナデナデしてほしいんだー! 君なら優しそうだから、良いかなって!」

 

 何を見て判断したのだろうか。どういう目をしているんだよ。節穴どころか、もうワームホールじゃないんだろうか。時間移動とかしてくれないだろうか。幼児期に戻れば、遠慮なく好きな人に甘えられるだろうに。

 

 だが、断れば僕は針のむしろになるのだろう。目に見えているから、受けるしかない。これが、どちらも地獄と分かりきっている二択を選ぶ気分か。勉強になったな。役に立つような状況があったら、僕は世界を憎むだろうけれど。いっそ滅べと。

 

「分かった。だけど、僕にも羞恥心というものがあるんだ。人前で抱っこもナデナデもできない」

「なら、君の家に連れて行ってよー!」

 

 僕は選択肢を間違えたようだ。逃げ場のない道に自ら入り込む愚かな行動をしてしまった。こういう時に限って、親は出かけているから言い訳に使えない。ちくしょうめ。親だというのなら、僕を守ってくれよ。いや、僕が親になったとしても、訳の分からないものから子供をかばえるかは怪しい。

 

 結局、僕は自分の血を自覚するだけだった。薄情者の血族だと理解して終わった。僕は絞首台に向かって歩いていく囚人の気分で、ただ葉芽に頷いた。

 

 それから放課後。僕は葉芽と一緒に家へと向かっていく。葉芽は僕と腕を組んでおり、まるで恋人かのようだ。ときおり嫉妬の目で見つめられるが、僕は言いたい。こいつは同級生にパパになってと言う異常者だぞと。お前たちが手綱を握れる程度じゃない暴れ馬だぞと。

 

 家にたどり着くと、葉芽は遠慮なく僕の部屋までついてくる。二人きりになった途端、葉芽は顔をフニャリと崩して言葉を発した。

 

「ねえパパ、乳首チューチューしたいの!」

 

 頭おかしいんじゃないだろうか。どこから突っ込めば良いのだろうか。僕はパパになることを認めた記憶はないし、乳首チューチューされるのは普通母親だろうし、何もかもが理解できない。

 

 とはいえ、目がキマっている。ここでただ断れば、僕は大変な目に合うに違いない。そう考えて、少しでもごまかせないかと返事をする。

 

「とりあえず、今はダメだ。男にだって、乳首をさらすのが恥ずかしいという感情はあるんだ」

「じゃあご褒美にして! 頑張ってチューチューするの!」

「だったら、この問題集を全問正解すれば良い。もちろんカンニングは禁止だ。悪い子は、空のストローでもチューチューしていればいいさ」

「分かったの。チューチューは誰にも渡さないの!」

 

 そのまま葉芽は机にかじりついていく。気迫が漂っており、まるで受験の本番かのようだ。行ったことはないが、キャバクラで同伴を求めるおじさんというのは今みたいな感じなのだろうか。だとすると、世の中のキャバ嬢には最大級の尊敬を禁じ得ない。

 

 無言で葉芽はペンを走らせ続け、しばらく。すると、突然葉芽は立ち上がり、元気よく叫びだした。

 

「できたよ! パパの乳首! 乳首!」

 

 もうできたのか? 勢いよく差し出された問題集を受け取り、採点していく。すると、本当に全問正解していた。生まれたての赤ん坊より知性を感じない言動からは想像できないくらいの成果だ。

 

 もしかして、勉強のしすぎで狂ってしまったのだろうか。だとしたら、教育に問題があるのかもしれない。だが、教育だけでこんな乳首チューチューモンスターが生まれるものなのだろうか。

 

 どんな転がり落ち方をしたら、ここまでの怪物になるというのか。三年峠を大量の薪を抱えながら転げ落ちたって、葉芽みたいになんてならないだろうに。

 

 葉芽は僕の服を無理やり脱がせて、そのまま僕は蹂躙されていった。ただ念仏だけを心のなかで唱える時間が過ぎていった。

 

 しばらくして、満足げな様子で葉芽は僕から離れていった。

 

「パパに愛情いっぱいの手料理を作るの! ご褒美に、またチューチューさせてもらうの!」

 

 冷蔵庫に向かう葉芽を、僕はただ見ていた。正直に言って、僕は葉芽を恐れている。拒絶してしまえば、もっとひどい目に合うのではないかと。今なら、ただくすぐったいだけで済む。だから、葉芽を受け入れることにしていた。

 

 結局は、単なる現実逃避なのだろう。だが僕は、他の道など思いつかなかった。

 

 真来は複数の料理を手際よく作っていき、あっという間に数品の料理を仕上げた。

 

「パパ、食べて! きっと美味しいと思うの!」

 

 その言葉通り、実際に美味しくはあった。そこらの料理屋よりは満足感があったと思う。だが、食べ終わった瞬間に僕は再び蹂躙されて、感謝の気持ちなんて消え去ったが。

 

「パパの乳首大好きなの! パパしゃぶしゃぶなの!」

 

 などという異常な言葉を葉芽は残した。ただ貪られる運命であるところは、僕としゃぶしゃぶの共通点かもしれないな。そんなどうでもいいことが、頭をよぎっていた。

 

 この怪物は、なぜ僕の乳首にこの世で一番の宝かのような執着をするのだろうか。まるで意味が分からない。未解決事件を解き明かす方が簡単に思えるくらいだ。

 

 なぜ僕は、クラスメイトに対して、突然現れた未確認生命体を見たみたいな反応をしないといけないのだろう。本当に、この部屋の空気を全部ため息にしたい。いっそ、地球から酸素がなくなってしまえば良いのに。

 

 意外と料理もしっかりできるんだよな……。このスペックの高さからどう転がり落ちれば、真来みたいな怪物が生まれてしまうのだろう。逆に興味が出てきたぞ。

 

 ただ、ようやく葉芽は満足した様子で僕から離れていった。そして、穏やかな笑顔で僕に告げる。

 

「ねえパパ! 私の家まで送ってよ!」

 

 もう全てを諦めていた僕は、ただ葉芽の言葉に従った。家にたどり着くと、お母さんらしき人が出迎えてくれた。陰のある美人といった雰囲気の人だった。

 

「ありがとうございます、真来を送ってくださって。ずっと女手一つで育ててきたから、友達を連れてくるのも遠慮していたみたいで……」

 

 真来のお母さんは涙ぐんでいる。本当においたわしい。女手一つで苦労しただろうに、娘はハメまくりというあだ名を付けられ、アイスキャンディーよりチ◯ポを咥えていると言われ、あまつさえ乳首チューチューモンスターになってしまったのだから。

 

 葉芽のお母さんは僕に深く頭を下げて、更に話を続ける。

 

「真来が友達を連れてきたのも、これが初めてなんです。どうか、これからもよろしくお願いします」

 

 そんな言葉を受けて、僕はどうしても葉芽を拒絶することができなかった。結局は次の日も、家に迎え入れることになった。そして葉芽の執着を受け入れていると、憑き物の落ちたような顔で葉芽は呟いた。

 

「私、ようやく誰かに甘えられるのかも……」

 

 なるほどな。母子家庭ということで、寂しさを抱えていたのだろう。だから、父親のぬくもりを求めていた。きっと、お母さんに更に負担をかけないように、我慢し続けてきたのだろうな。

 

 僕も結局、偏見にまみれた頭精液男の一員だったということなのだろう。葉芽の本質を理解しないまま、ただ化け物扱いしていたのだから。

 

 これからは、少しは真摯に葉芽と向き合って良いのかもしれないな。

 

 そんな反省をしたのもつかの間、葉芽は再び僕を蹂躙し、寂しそうに叫びだした。

 

「パパの乳首、ミルク出ない……。チ◯ポなら、ミルク出る? ミルク飲みたいの!」

 

 葉芽の噂に信憑性が出てきた。アイスキャンディーを咥えていれば良いものを。やっぱりこいつ、頭おかしいわ。


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