前回、リッカが6歳になりました。
儀式とお誕生日会、どちらも大成功に終わりました。
今回、東仙のお孫さん達からとある相談と依頼を受けました。
リッカのお誕生日会から数日が経った頃、東仙のお孫さんであるカオリさんが誠君と今回が初対面の恭君とアカネちゃんを連れてやって来た。
「突然の訪問を受けていただいてありがとうございます」
「「「ありがとうございます!」」」
「いいえ。それで、相談とは何でしょうか?」
「その、本当に急で凄く申し訳無いんですが、5日後に直径30㎝のケーキを作っていただけませんか?」
「ケーキ…ですか?直径30㎝の…?」
「「「「はい!」」」」
理由を聞くと、お祝いの時にいつもケーキを頼んでいるお菓子屋の職人さんが、ご近所トラブルに巻き込まれて全治半月はかかる怪我をしたらしい。
他のお菓子屋では直径30㎝のケーキは取り扱っていないと断られてしまったとか。
…何という不運ととばっちり
…確かに、急と言えば急だけど
…まぁ、どんなケーキを用意すれば良いのか、詳細を説明して貰えれば大丈夫だと思うけど
「どのようなケーキをご所望なのか、詳細を説明していただければ恐らくご用意出来ると思いますけど…」
「ありがとうございます!」
「では早速、どのようなケーキを作りましょうか?」
「えっと…絵が下手なので、ここ数年のアルバムを持って来たのですが…」
「大丈夫ですよ。では拝見しますね…ん?」
写真には明らかにおめかしした東仙とシホリさんがど真ん中に座っていて、ケーキには
〈おじいちゃん&おばあちゃん
・299回目・
けっこんおめでとう!〉
の文字が書かれたクッキープレートが。
…主役は東仙とシホリさんなのね
…そう言えば東仙は毎年、この時期は必ず連休取ってたっけ
…でもって、今年も取ったって言ってたわね
祝う相手を知り、気合いを入れ直してアルバムのケーキをそれぞれ見比べた上でどんなデコレーションにするかを話し合った。
「…では、3段重ねで中はチョコレートクリームにイチゴとバナナを挟んで、外側はホイップクリームでコーティング…で宜しいでしょうか?」
「「「「はい(うん!)」」」」
「では、この1番上はどうしましょうか?」
写真のケーキはどれも星型の口金で絞ったホイップクリームとイチゴ、メッセージ入りのクッキーやチョコプレートを飾ったシンプルなモノが多い。
…まぁ300回目ともなれば、もうちょっと華やかでも良いと思うけど
「それなんですが…その…」
カオリさんの歯切れの悪い反応と、何かを期待した目を向けている誠君達に、何となく何をお願いされるか予想出来た。
「あのねぇ、メノリおねえちゃん」
「はい、何でしょうか?誠君」
「ケーキのデコレーション、ぼくもやりたい!」
…やっぱりね
「ちょ、誠君!」
「ぼくも!ぼくもやりたい!」
「アタシも!」
「恭君、アカネちゃんてば…!」
「だって!ははのひとちちのひにやったのたのしかったもん!またやりたい!!」
「ぼくとアカネちゃんはできなかった!だからやってみたい!」
「おねがいメノリお姉ちゃん!」
「此処に来る前に言ったでしょ。ダメだって。メノリさんを困らせちゃうからって。ね?」
「「「やだぁ~!!」」」
「あらら…」
…どうしようかな
…取り敢えず東仙がそこで凄く心配そうにソワソワしてるから、情報共有はしておこう
「すみません、ちょっと席を外しますね」
「あ、はい」
出入り口で様子を窺っている東仙にカオリさん達が揉めている理由を説明した。
「…そうか…」
カオリさんは結婚記念日を成功させる為に、私に全てを委ねたい。
誠君達は自分達でデコレーションしてお祝いしたい。
話は平行線のままであると。
…カオリさんは兎も角、誠君達の親御さん達はどう考えているんだろう?
「…あの、親御さん達のご意向を知りたいのですが…」
「…それなんだがな」
「…はい?」
私の作ったお菓子のおかげで、誠君の先天性弱視が健常者のそれと変わらぬ状態にまで改善した事から、誠君のご両親は勿論、恭君、アカネちゃん、カオリさんのご両親も私への信頼は天井知らずなのだとか。
「つ、つまり…?」
「君になら安心して預けられる…と」
他にも、
「父さんやカオリからは勿論、藍染さんや檜佐木さんからもメノリさんの事は良く聞いていますから。彼女の人となりは知っているつもりですよ」
「彼女はあのアンオウエンさんの巫女なのでしょう?なら何の問題も起きませんよ」
「というか、父と姪がお世話になっていますし、ちゃんとご挨拶をしたいです」
と兎に角凄く好意的らしい。
…好意的なのはありがたいけど
…結局、私の采配次第で成功にも失敗にも転ぶって事よね?
…どの道、責任重大には変わりないって事じゃない
「…親御さんのご意向は解りました。誠君達のお願いは一旦横に置かせていただいて…どんなデコレーションにするのかを話し合わないとどうしようもないので、先ずは言い合いを止めないとですね」
「すまない…」
祝われる立場の東仙は今回、手出しも口出しも出来ないから凄くもどかしいだろう。
…さて、話を聞いて貰いましょうか
厨房に行って、ある事を頼んだ上でハニーミルクと焼ドーナツを持って、部屋に戻った。
「はい、そこまでですよ~」
「あ、メノリさん」
「「「わぁ~、どーなつだぁ~!」」」
「はい、食べながらで良いので私の話を聞いていただけますか?」
「「「なぁに~?」」」
「あのですね…」
肝心のデコレーションをどうするのかがちゃんと決まっていない以上、ただスポンジ生地をフルーツとクリームで重ねただけのとてもシンプルなケーキをプレゼントする事になるけど、それでも構わないかと尋ねた。
「「「だめ!」」」
「ですよね?でしたら、先ずはどんなデコレーションにしたいのか、具体的に話し合いしましょうか」
「「「うん!」」」
「…ありがとうございます」
改めて、デコレーションをどうするのか話し合った。
「因みに、参考までにと用意したのですが…此方は私が以前作った藍染様と奥方様の結婚記念日のケーキになります」
「「「「うわぁ…!」」」」
「すごぉ~い!」
「「キラキラしてる~!」」
「良いなぁ~!」
基本のアラザンやチョコスプレーは勿論、立体クッキーや立体チョコ、飴細工でバラの花を飾ったり、マジパンで藍染夫妻に姫様がプレゼントを贈るシチュエーションを演出したり…今見ると、年に一度だからと随分と気合いの入ったデコレーションを施したのが解る。
…うん、誠君達の目の輝きが増したね
…さて、どんなデコレーションになるかなぁ
話し合った結果、真ん中に立体クッキーとマジパンで作った東仙夫妻を置いて、その周りをご家族がハート形になるように囲んで、ケーキの周りにお祝いのメッセージを書いたクッキーを並べる事になった。
記念日当日は、私が東仙の自宅にお邪魔させて貰い、一緒にデコレーションをする事で落ち着いた。
「当日の朝、其方にお邪魔させていただいて、皆さんでマジパンでご家族を作って、クッキーにメッセージを書いて飾り付ける…で宜しいでしょうか?」
「「「「うん(はい)!」」」」
「よろしくお願いします」
「おじいちゃんとおばあちゃん、きっとよろこんでくれるよね?」
「あたりまえでしょぉ~!」
…何とかなりそうで良かったぁ~
…後は
コンコン…
…間に合ったみたいね
「はい、どうぞ」
ガチャッ…
「失礼します」
「ママ、もってきたよ~」
「あ、ビアおねえちゃんとリッカちゃんだ」
「あ、誠君とカオリさんと…何方様でしょうか?」
「きょうくんとアカネちゃんだよ」
「「は、はじめまして」」
「初めまして、メノ姉様の妹のルビア=アルコ=イーリスと言います。ビアとお呼び下さい」
「はじめまして、ママのちょうじょのリッカです。よろしくね!」
「「うん、よろしくね!」」
…2人とも余り人見知りしない子で良かった
「ビア、リッカ、ありがとう」
「お安い御用です」
「えへへ~、どういたしまして」
持って来て貰ったクッキー(プレーンとココア)とチョコレートソース(やや硬め)、そして特注のシリコン素材の小筆に様々な色のマジパンをテーブルに広げた。
「これは…?」
「無事にデコレーションが決まったので、マジパンとクッキーに絵や文字を書く練習をしてみませんか?」
「「「「え?」」」」
「流石に当日、いきなり本番は不安なので…」
「ボク達もデコレーションはたくさん練習をしていますからね」
「わたしも!クッキングペーパーのうえでクリームのれんしゅういっぱいしたよ!」
「…確かに、私もまじぱんは触った事すらありませんから…ご教授、お願いします」
「では早速…先ずはクッキーに文字を書く方からやってみましょうか」
「「「「うん!(はい)」」」」
「と言っても、クッキーにこうやって墨の代わりに筆の先にチョコを付けて…チョコが垂れないように気を付けながら絵や文字を書くのですけど…」
「「「「わぁ~!」」」」
お手本として、クッキーにハートを書いて見せた。
「書き終わったら、チョコが乾くまでこのパレットに重ならないように入れて下さいね」
「「「「は(~)い!」」」」
「では実際にやってみましょう」
チョコレートソースの入った容器と小筆をそれぞれに渡した。
「「「…っと、で(~)きた!」」」
「皆さん、とても上手ですよ」
「「「えへへ…」」」
「わたしもできたよ!ママのなまえかいたの。ほら」
リッカの前にはメ、ノ、リと書いた3枚のクッキーが並んでいる。
「あら、上手に出来たわね」
「うふふ~」
…やっぱり、チョコペンは止めといて正解ね
チョコペンは中のチョコを押し出す力の加減が難しくて、リッカも慣れるまでだいぶ時間がかかった経緯がある。
だから、今回は彼等が使い慣れている小筆を採用する事にした。
小筆には直ぐに慣れたので、今度はマジパンの練習をして貰った。
「「「うわぁ~…」」」
「これがまじぱんですか…」
「いろつきのねんどみたい!」
「おもしろ~い!」
粘土遊びはみんな経験しているらしく、嬉々として作りたい形を作り始めた。
「見て見てカノンちゃん!」
「ナァ~オ!」
「ロウコちゃんつくってみたよ」
「クォッ!」
「チャッピーできた!」
「メノリさん、バラってどうやって作るんですか?上手くいかなくて…」
「先ずはマジパンを円錐状にしてこうクルッと…これが芯になります。で、別に作った花片を1枚ずつ…下のここの辺りでくっ付けて巻いて…はい、出来ました」
「…成程、先ずは芯を作ってから外側を巻いていくんですね…よし、今度こそ」
「余り薄くし過ぎるとボロボロになるので、このくらいの厚さを意識すると上手く出来ると思いますよ」
「成程…芯を作って…と…」
マジパンにも直ぐに慣れたものの、今度は誰が東仙とシホリさんを作るかで揉めた。
「ぼくがやるの!」
「だめ!」
「アタシがやる~!」
「じゃんけんで決めよう?ね?」
「「「やだ~!!」」」
「…メノリさぁん…」
…うん、こうなると思った
困り果てたカオリさんは私に助けを求めた。
「…では、こうしませんか?」
「「「え(う)?」」」
「東仙統括官とシホリさんを作る役とケーキにお2人を乗せる役なんですけど」
「「「?」」」
「えっと…?」
「先ず、お2人を作りますね」
「「「「うん(はい)」」」」
「で、ケーキをお披露目する時に、最後の仕上げとしてお2人をケーキに乗せるんです。皆様の前でケーキを完成させる大事な役目ですよ。どうですか?」
「「「!!」」」
「のせたい!」
「おばあちゃんつくる!」
「アタシはおじいちゃんがいい!」
「アカネちゃんが東仙統括官、恭君がシホリさんを作って、ケーキを運ぶのはカオリさんが、そして誠君がお2人をケーキに乗せる。で決まりですね」
「「「うん!」」」
「…ほっ」
お祝いのケーキのデコレーションと、誰が何をするのかをどうにか決める事が出来た。
そして東仙とシホリさんの結婚記念日当日の早朝。
「初めまして、メノリ=マリアと申します」
「はじめまして、ちょうじょのリッカです」
「お初にお目にかかります。ロカ=パラミアです」
「初めまして、ルビア=アルコ=イーリスです。ビアとお呼び下さい」
「初めまして、テスラ=リンドクルツです」
複数人での訪問はどうかと思ったのだが、家族達が会いたがっているし、是非紹介をしたいと東仙から言われ、此処まで言われて断るのもどうかとなり、お言葉に甘える事にした。
私達と会えると聞いた東仙の家族は、昨日から既に全員が泊まりに来ているらしい。
その証拠に、総出で物凄い歓迎を受けた。
「メノリおねえちゃん、こっちこっち!」
「ぼくね、あれからねん土でいっぱいれんしゅうしたんだ~!」
「アタシも~!」
「あら、じゃあ早速、手を洗って始めましょうか」
「「「「うん(はい)!」」」」
先ずは乾かす時間がかかるマジパンから始めた。
「…できた!おじいちゃん!」
「とても上手に出来ましたね」
「えへへ~」
「おばあちゃんできたよ!どう?どう?」
「かわいい~!」
「そっくりですね」
「ふふ~ん!」
「…お花はこれだけあれば足りますか?」
「…そうですね…もう少し作りましょうか」
「はい」
誠君達が東仙とシホリさん、そしてご家族の皆様を作るのに集中している間に、他の飾りを作った。
「マジパンが乾くまでの間に、クッキーに文字を書きましょうか」
「「「は~い!」」」
「字をかくれんしゅうもいっぱいしたんだよ!」
「ぼくも!」
「アタシも!」
「…この子ったら、こんなに熱心に文字の練習をした事なんて今まで殆ど無かったんですよ、本当に」
「「うちも(ですよ)」」
「あら」
親御さん方の言う通り、凄く練習したらしい。
5日前よりもずっと綺麗な文字を書いている。
「「「できた!」」」
「どう?ねぇ、どう?」
「うまいでしょ~?」
「はい、とても綺麗に書けていますよ」
「「「えへへ~(うふふ~)」」」
「…では、飾りが全て出来たので、仕上げをしましょうか」
「「「「うん!(はい)」」」」
既にスポンジ生地にチョコクリームとフルーツを乗せて重ね、ホイップクリームでコーティングしたケーキをプレートにソッと移した。
「主役の東仙統括官とシホリさんは此方に避難させて…では、皆様を乗せていきましょうか」
「「「「は(~)い!」」」」
主役の2人を乗せる場所に解りやすい目印を先に苺クリームで付けてから、皆様を外側に背を向ける形で乗せていった。
「…あの、何故顔を内側に向けて乗せているのですか?」
子ども達の様子を見に来た恭君のお母さんが、疑問を口にした。
「ケーキの上の主役に背を向けるのは違うと皆さんの意見が一致したんです」
「…あ、あぁ、成程」
みんなを乗せ終えて、花をあしらって華やかさをプラスし、ケーキの周りに文字を書いたクッキーを時計回りで文章になるように添えてデコレーションの完成。
「「うわぁ~…」」
「かわいい~!」
「これを…本当に私達が…」
「はい。では記念に写真を撮りましょうか」
「「「「は~い!」」」」
「はい、チーズ!」
カシャッ!
「写真は後日、東仙統括官にお渡ししますね」
「ありがとうございます」
「ケーキは冷蔵庫で冷やしておきたいのですが…」
「あ、こっちです」
カオリさんの案内で大家族に良くある大きめの冷蔵庫の一角に入れて貰った。
準備が終わるまで手持ち無沙汰になるのを見越して、私達のお祝いの品を持って来て欲しいからと、ロカとテスラを一旦虚夜宮に戻らせた。
…全員が戻るのもちょっとね
…リッカとビアが遊びに誘われる可能性も視野に入れておいて正解だったかも
「つぎママだよ」
「あ、は~い…って、だから誰ですか?ハートの5とクラブの10を持っているのは?」
「さぁ?何方でしょうか?」
「「ぼくじゃないよ」」
「アタシもしらな~い」
「も~…パス2!」
トランプで遊び始めたのは良かったのだが、いつの間にかビアは手加減を覚え、私は今日に限って連勝してしまい、その仕返しだろう、七並べで集中狙いを受けた。
※因みにカオリさんは準備のお手伝いで不参加。
準備が全て終わり、ロカとテスラが頼んだ物を持って再訪し、東仙とシホリさんの結婚記念日を祝う用意が整った。
「では、父さんと母さんの300回目の結婚記念日を祝して…乾杯!!」
「「「「「かんぱ~い!!」」」」」
カチッ!カチカチンッ!!
「「「「「いただきま(~)す!」」」」」
「「「おいし~!」」」
「ママ、このおすしうち(虚夜宮)でたべてるのとにてるね!」
「それはそうよ。だって、虚夜宮で作っている料理やお菓子は私のレシピだけじゃなくて、シホリさんのレシピも使わせていただいているからね」
「そうなの?」
「そうよ。でも…やっぱり同じ味の再現は難しいわね」
「「「それはそうでしょう(だろう)」」」
「まぁ、今日は心行くまで東仙統括官のご家庭の味を味わいましょう」
「「「「うん!(はい/あぁ)」」」」
何処か懐かしさを感じる一般家庭の味を思う存分、堪能させて貰った。
「此方、私達からのお祝いの品です」
「「「「わぁ~!…」」」」
「「「「「お、おぉ…」」」」」
「「「「「す、凄い…」」」」」
食事の後、各々が用意したプレゼントを2人に渡しているのに便乗させて貰い、直径30㎝のムースタルトを贈った。
「此方はマスミの【故郷】で結婚記念日に贈り合う〈グクリ〉というイチゴに似た果物を300回目の記念日に因んで300粒(約5㎏)使用して作ったムースタルトとソースです。ソースは〈グクリ〉の食感が楽しめるジャムタイプと、滑らかなピューレタイプの2種類がありますので、お好きな方をどうぞ」
「「じゃむがいい!」」
「アタシはぴゅーれ?にする~!」
もぐもぐ…
「「「「「おいし~!!」」」」」
「本当、凄く美味しいわ」
「あぁ、〈グクリ〉の果肉が程良い大きさで食べ応えもあって…相変わらずの腕前だな」
「お口に合って何よりです」
…上手くいって良かったぁ
…〈グクリ〉を使ったお菓子は凄い久し振りだもの
今回のお祝いの品をどうしようかみんなと話し合っていたら、マスミが物凄い自己主張をして来て、
「結婚記念日と言えば〈コレ〉しかないでしょ!?」
と譲らなかった為、此方が折れてケーキと被らないようムースタルトにしたのだ。
「「「「「ご馳走様でした」」」」」
「あ~…食べた食べた…っと」
「ちょっとあなた!こういう時くらい後片付け手伝ってよ!」
「え~…」
「ほら!」
「解ったよ…」
「じぃじ、ばぁば、モルックやろ!」
「「はいはい」」
「カオリ、こっちは良いから偶には貴女も遊んでらっしゃい」
「え?…じゃ、じゃあ混ぜて貰おうか…な?」
「カオリねぇもやるって!」
「リッカちゃんたちもやろ!」
「うん!」
「えっと…組み分けはどうしますか?」
「もちろん、グーとパーで分けるよ!」
「人数が奇数だから、審判役は俺が引き受けるよ」
「「「え~?」」」
「計算をする係の人が居た方がスムーズ…円滑に出来るから。ね?」
「「「…うん」」」
厳正な〈グッパで合った人〉の結果、物の見事に大人VS子ども達で分かれた。
※大人組…東仙、シホリさん、カオリさん、ロカそして私。
子ども組…誠君、恭君、アカネちゃん、リッカそしてビア。
審判役はテスラ。
「まけないよ、ママ!」
「ママも負けないよ、リッカ」
3回勝負で先に2勝した方の勝ちのルールで始まったモルックは、子ども達に勝ちを譲りたい此方が手加減したものの、3回戦目で子ども達が中々目標の50点に到達出来ず、お祝いのケーキを食べる時間までに決着は付かなかった。
「…1対1の引き分けになっちゃいましたね」
「「「「む~…」」」」
「ケーキの後に続きをしましょうか?」
「「「うん!」」」
「じゃあ、ケーキを持って来ますね。誠君」
「うん!」
予定通り、カオリさんがケーキを運んで来て、目印の所にマジパンの東仙とシホリさんをそっと乗せた。
そして、
「せ~の」
「「「「おじいちゃん(じぃじ)、おばあちゃん(ばぁば)、300回目の結婚記念日おめでとう!!」」」」
「これからもずっとなかよしでいてね!」
「けがとかびょう気とかしないでね?」
「長生きしてね!」
「そうだよ。私達、まだまだお祖父ちゃんとお祖母ちゃんとやりたい事がたくさんあるんだから、仲良く元気で長生きして貰わなきゃ。ね?」
「「「うん!」」」
「「…っありがとう」」
「「「じぃじ?ばぁば?」」」
「どしたの?」
「どっかいたいの?」
「何でないてるの?」
孫達のお祝いの言葉に感極まって嬉し泣きをしてしまった2人に驚いてアタフタする誠君達が可愛くて、私達はつい笑ってしまった。
2人が落ち着いたところで、ケーキを切り分けてさぁ食べようとしたら、東仙とシホリさんに自分の作ったマジパンを食べて貰う為の3人のケンカが勃発した。
「これ、これぼくがつくったの!たべて!」
「だめ!おばあちゃんはぼくのをたべるの!」
「おじいちゃんはアタシのたべてくれるよね!?」
「ちょっと貴方達、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんを困らせないの!」
「「「だって!」」」
結果、2人はケーキ本体は味見程度に済ませ、全てのマジパンを食べる事で落ち着いた。
…この子達の自分の意見を押し通そうとする姿を見る度に、東仙の孫だと実感するわ
…東仙って、割と我が強いところがあるから
…ってか、従姉妹同士でこんなにケンカとかってするものだっけ?
…従姉妹同士というよりも兄弟の方がしっくり来るような
…まぁ、ケンカする程仲が良いっていうし
マジパンを完食した2人に嬉しそうに話しかける誠君達を見てそう思った。
その後、モルックが途中だったのをしっかり覚えていたアカネちゃんが帰る用意を始めた私達を引き留めた為、帰宅時間が予定よりも1時間程遅くなった。
…今回の依頼、どうなる事かと思っていたけど
…上手くいって本当に良かった
…やっぱり、家族しかも可愛い孫達からの贈り物は格別よね
やっと書けました…。
結婚記念日…縁が無い我が身には少々難題でした。
他作品の執筆に集中し過ぎていたのもありますが…。
大好きな祖父母の為にと奮闘するカオリさん達が少しでも表現出来ていれば良いなと思います。
次回、杏奈ちゃんとナナゴウちゃんそれぞれのお誕生日会に出席します。
〈マスミの【世界】での結婚記念日について〉
身分に関係無く、結婚記念日に国有地で1年中育てられている果物〈グクリ〉を使ったお菓子を親しい者達と贈り合う慣わしがあった。
〈グクリ〉は国が管理している国果(国を代表する果物)で、国民の証を提示すれば誰でも出入りが可能。
当時、女王だった彼女も例外無く、結婚記念日の度に国民達に〈グクリ〉の焼き菓子を配っていた。
〈グクリ〉はあまおうに似た果物。
あまおうに練乳をたっぷり混ぜて作ったジュースのような味がする。
〈オリキャラ〉
恭(きょう)君
東仙の長女の息子。
8歳。
ひとりっ子故に、同居している旦那方の祖父母にだいぶ甘やかされて育てられているらしい。
その為、ワガママに振る舞う事が多い。
アカネちゃん
東仙の次女の娘。
恭君と同い年の8歳。
恭君とは逆に、何処に嫁いでも問題が無いようにと相応の教育を受けているとの事。
しかし、まだ幼いのでどうしても我慢しきれない部分が出てしまう。
特に、今回は大好きな祖父母のお祝いだから(誠君も含めて)感情を上手く制御出来なかった。