【完結】わたしのかんがえたかっこいいるいずさま 作:Leni
世界の危機は去った。未来に待ち受けていた、人類滅亡の可能性も消え去った。
だが、ハルケギニアの社会は、その代償を支払わなかったわけではない。
平民が魔法を使えるという事実。それが知れ渡ったせいで、貴族の特権が揺らぎ始めてしまったのだ。
しかし、今さらになって平民への魔法教育を取りやめることはできない。
メイジの多さは、そのまま国力に繋がる。そして、軍事力にも繋がるのだ。よって、将来的に貴族の立場が脅かされると分かってはいても、他国の脅威が存在する以上は、平民への魔法教育は続ける必要があった。
そして、その代わりとばかりに、各国は追い求めた。
トリステインに名高い、『賢者』ルイズのような知恵者を。
今、ハルケギニアの魔法技術競争は、かの『賢者』の存在によって、トリステインの独走状態にあった。
それを解消するため、各国はこぞって在野の天才を求め、平民に対する教育を推し進めていった。
こうして、ハルケギニアは貴族の特権でフタがされていた技術の抑制が取り払われ……さらに、エルフと始まった技術交流の後押しもあって、急速に科学が発展していくこととなる。
その世界情勢をルイズは高笑いしながら見守った。
「別に、わたし一人でなんでもかんでも研究する必要はないのよね」
そう言って、ルイズはコルベール研究室で満面の笑みを浮かべていた。
彼女は知識欲と好奇心さえ満たせれば、他人が研究した結果を受け取るだけでも満足できるのだ。そういう性質があったからこそ、彼女は才人の両親から送られてくる技術を一方的に受け取っても平然としていられたわけである。
研究者としてのプライドは持ち合わせておらず、
そんな『賢者』の事情はさておき、『大隆起』の解決にあたって、ハルケギニアの社会が支払った代償は他にもう一つ存在する。
『大いなる意思』が消え去り、『風石』の暴走の心配はなくなった。だが、不活性化した『風石』は未だ地中深く眠る。
ペースは下がったが、そこに『風石』があると分かっているため、採掘作業は細々と続けられており、掘り出した『風石』は溜まる一方だ。
その『風石』の多くは、新たに作られた動力機関の燃料として活用されている。
『ヨルムンガント』の開発のおり、ガリアがエルフから技術として受け取り、それを解析したコルベール研究室によって改良を受けた動力機関である。
その動力機関を用いた様々な機械が、トリステインを中心に開発されている最中である。
だがしかし、『大隆起』が防がれる前までに掘り出された『風石』を消費するだけでも、百年単位の時が必要だと目されていた。そう、ハルケギニアの社会は、『在庫』という代償を支払うことになったのだ。
それを解消するため、ガリアの前王ジョゼフが築いた航路を使って、東方ロバ・アル・カリイエへの『風石』の輸出も盛んに行なわれている。
だが、それでも一度に送れる『風石』の量には限界がある。
何十年と残り続ける在庫という物は、不健全でならなかった。
そうなると、東方に輸出する以外の消費先も考える必要がある。
そこでルイズは考えた。『風石』の消費先を増やす方法をだ。彼女は、ハルケギニアの外への進出を王政府に提案した。
新しい国を見つけて交易するなり、人のいない土地を見つけての入植なり、何らかの外洋進出政策を検討しろという、まさかの計画書が出されたのだった。
そして、それは受理された。ルイズがトリステイン魔法学院を卒業した、
◆◇◆◇◆
草原をルイズと才人は駆ける。
才人は寝癖の付いた頭を手ぐしで整えながら、ルイズに叱責されて必死に走った。
「もう、結婚式で飲み過ぎて、新郎が酔い潰れるとか、めちゃくちゃよ!」
「いやー、盛り上がってしまって、つい」
「まったく、いつまで飛行隊は馬鹿やってるのよ!」
「そう言うなって。みんな二人を祝いたかったんだ」
そう告げる二人の行き先。そこには、一隻の軍艦が駐まっていた。
その軍艦に乗り込みながら、才人が言う。
「しかし、ギーシュが来られないのは残念だったな」
「仕方ないでしょ。新婚夫婦を連れ出すわけにはいかないんだから」
そう。昨日、ルイズと才人は、
彼の結婚相手は、もちろんモンモランシーだ。現在は、
その結婚式に呼ばれ、二人を祝福したルイズと才人。
そこで才人は見事にギーシュと一緒に酔い潰れた。よりによって、こんな大事な日の前日に、とルイズは
軍艦の艦橋まで進み、さっそくルイズは乗組員と話を始める。
「準備は整っております! いつでも出発できます!」
「チェックは何重にもね。なにせ、何ヶ月もトリステインには帰ってこられないんだから」
ルイズと才人は、この軍艦でトリステインを発とうとしていた。
向かう先は、海の向こう。
しかも、すでに何があるか判明している東方ではない。その反対側、大海原が広がる西方へと向かう予定であった。
この軍艦は、新しく建造されたばかりの調査艦である。今まで未知の領域とされていた西方に、いったい何があるのか。それを調べるために用意された新造艦であった。
艦の形状は、空中空母と戦艦の間を取った新しい形である。名付けるならば、空中航空戦艦とでも言うべき存在だ。
「ルイズ、飛行隊の担当メンバーも全員いるぞ」
人員の確認を行なっていた才人が、本艦の艦長であるルイズに報告した。
この艦は空母の機能を備えているため、当然、『フェニックス』号も積まれている。
不死鳥飛行隊の全隊員とはいかないが、幾人かが選抜されて、この新造艦『ブルースフィア』号に乗りこんでいた。
「よし、チェック全て終わり!」
艦橋までやってきたルイズは、部下から手渡されたチェック表をしっかりと確認して、そう言い放った。
そして、艦橋から電気を用いた音声通話で、艦内に向けて艦長であるルイズは告げる。
「出発準備完了。これより、本艦は離陸する!」
そうして、ルイズの号令で『ブルースフィア』号は空に飛び立つ。
トリステインの上空を西へと進み、海へと飛び出す。
目の前に広がるのは、広大な大海原。真っ直ぐな水平線が、『ブルースフィア』号の行く先に待っていた。
その水平線をルイズは、才人を隣に
「さてさて、海の向こうに、新大陸はあるのかしら!」
「どうかな。なくても、世界一周して戻ってこようぜ」
「それだけの『風石』は積んであるけど、できれば新大陸を見つけたいわね」
そう二人は会話を交わして、互いに笑い合った。
トリステイン発、新大陸行き。この軍艦は、未知を探求し、新しい土地を見つけるために作られたトリステインの新しい希望であった。
この先に、いったい何が待ち受けているのだろう。
ルイズと才人は、己のうちに秘めた好奇心を膨らませながら、遥か遠くを共に眺めた。
そして、ルイズは口もとを吊り上げて笑いを浮かべた。
「さあ、未知の世界が、わたしを待っているわ!」
この世界は、まだまだ未知と不思議にあふれている。それをルイズは己の好奇心に導かれるまま、探求し続けるのだ。
□わたしのかんがえたかっこいいるいずさま 完□
『わたしのかんがえたかっこいいるいずさま』は以上で完結です。
あとがきは2025年6月9日の活動報告に掲載しています。
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