遥か彼方の銀河系にて、いくつもの星系を巻き込んだ大戦争が起こっていた。
それは、銀河共和国と独立星系連合の戦い。共和国がクローン兵士の軍団を投入したことから、その戦争はクローン大戦と呼ばれた。
片や光の剣と理の力を振るう騎士達と純白の装甲を纏う複製兵団、片や死を恐れぬ機械の兵隊達。銀河系の各地で彼らは激突した。
大地を力強く踏みしめて進む歩行兵器に、浮遊して移動するホバータンク。宇宙に上がってみれば、巨大な主力艦同士が砲撃の応酬を交わし、互いから発進した戦闘機がぶつかり合っている。
SF満載なこの戦場で目立っていたのは、ジェダイナイトといってもいいだろう。銀河の秩序と平和を守る守護者であり、フォースのパワーと光の剣であるライトセーバーを駆使する戦士達だ。
ジェダイオーダーには様々な種族の出身者がいたのだが、一人だけ既知の種族に該当しないものがいたという。
頭に光の輪を浮かべ、大抵の攻撃で死ぬことがない頑丈さを持っていた彼女は、自分がキヴォトスなる世界から迷い込んだのだと語っていた。
彼女には、あまねく全てに満ちているエネルギーであるフォースに対する高い感応能力があった。とあるジェダイマスターにその才能を見いだされた彼女は、ジェダイとなった。
しかし、当初はジェダイオーダーの上層部も難色を示した。頭にヘイローを浮かべている得体の知れない種族であることもそうだが、一番の問題は年齢だ。普通、ジェダイは五歳以下の年齢で修行を開始するものであり、彼女は十五歳だったのだから。
マスターによる説得で彼女はジェダイとなり、そのまま彼に師事した。そして、クローン軍の指揮官の一人としてクローン大戦にも従軍し、かなりの戦果を上げていた。
しかし、彼女の消息はクローン大戦が終結する前後で不明となる。終盤、オーダー66というジェダイ抹殺指令が発動し、兵士の裏切りで彼女のマスターは死亡するのだが、彼女の遺体は確認されていなかったのだ。
後の歴史書では、彼女はオーダー66を生き残り、潜伏した末に元の世界に帰ったのではないかと言われている。実際、その通りだった。
学園都市キヴォトス。それは、数千の学園自治区と連邦生徒会によって統治される異世界である。
何処までも広がる透き通るような青空には巨大な光輪が浮かび、生徒達の頭部にも個性溢れる光輪が存在している。
生徒達には神秘と呼ばれるものが宿っており、基本的に高い身体能力と耐久力がある。故に死亡することはほぼ無く、銃撃戦や爆破は日常茶飯事となっていた。
誰もがアクセサリーのように銃火器を所持する世界にある自治区の一つに、和風な建築物が立ち並ぶ学園がある。そこに、銃火器を滅多に使わない風変わりな生徒が住んでいた。
それは私だ。
「六時か……いつも通りの時間だ」
とある住宅にて、私は目を覚ます。布団という要塞から脱出した私は、いつも通りのルーティンをこなしていく。
結果的に、私は学園都市キヴォトスに帰ることができた。逃亡する生活を続けた末、ハイパードライブの事故によって偶然にもたどり着いたのだ。
なお、向こうの世界では数年経っていたはずが、こちらでは一年しか経っていない状態であり、十六歳の一年生として学校生活を送ることになった。
私の所属は百鬼夜行連合学院。様々な部活や委員会が連合を組むことで成立した学園であり、観光業が盛んになっている。ジェダイの装束はここのものによく似たデザインをしていた。
「いただきます」
自分で作った朝ごはんを食べる。白米、味噌汁、焼魚、漬物の組み合わせであり、百鬼夜行の食文化におけるスタンダードなものだ。私は朝ごはんと共にキヴォトスに帰還できたという事実を噛みしめていた。
「ごちそうさまでした」
続いて、私はクローゼットの前に立つ。その中に入っていたのは、ジェダイの装束と二本のライトセーバーだ。相変わらず、私はあの世界のものに身を包んでいた。
クローゼットから取り出さず、そのまま収納しておく道もあっただろう。だが、ローブとライトセーバーを身につけることで、死んだマスターと共にいられる。そんな気がしたのだ。
「行きましょう、マスター。
私の名は彼方ギンガ。キヴォトスのジェダイであり、この世界で唯一のライトセーバーとフォースの使い手である。私は戦う。百鬼夜行の……そして、キヴォトスの平和を守るために。
「ふぁ~。おはよう、ギンガ。今日も早いね~」
「おはよう、ツバキ」
最初に会ったのは、二年生の春日ツバキだ。修行部という部活の部長をしており、いつでもどこでも眠れる特技がある。学年は上だが、同い年で幼馴染なので、普通に名前で呼び捨てしている。
いつも眠そうにしているが、実際は百鬼夜行でも有数の実力者であり、ライオットシールドとサブマシンガンの扱いに長ける他、眠ったままでも攻撃を避けたりする。
無意識でも戦えるという彼女の技を取り入れられないかと思い、彼女の修行に同行することもある。まあ、その大半は眠るだけなのだが。
「ねえ、ギンガ。一緒に模擬戦しない?」
「いいな。今日こそは寝ているツバキに一撃を浴びせたいところだね」
私はライトセーバーの代わりに木の棒を使い、立ったまま寝ているツバキに一撃を浴びせるという鍛練をしているのだが、ここまで成功したことはない。
何故なら、フォースによる先読みは無意識の相手には通じにくいからだ。オーダー66で多くのジェダイが討たれたのも、クローントルーパーに抹殺指令が無意識のうちに刷り込まれており、感情を持たずに淡々とジェダイの処理を行ったからだとされている。
無意識の相手こそ恐ろしいものはない。オーダー66の記憶は骨の髄まで染み込んでおり、ある種の恐怖を感じている。それを克服するため、私は修行するのだ。
そして、いつもの修行場所に向かおうとした時だった。
「ツバキ、今回の修行は中止になりそうだ。
「ギンガがそう言うってことは、何か起こるってことだよね~」
ズドォォォン!!
案の定、街の何処かで爆発が起こる。それと同時に何百発もの銃声が木霊しており、銃撃戦が起こっていることは間違いない。
「ツバキ、おそらく連中だ」
「よし、じゃあ行こっか」
二人で駆けつけると、そこではお面を着けた不良集団が暴れており、それを食い止めようと何人かの生徒が戦っていた。
不良集団の名は魑魅一座。百鬼夜行に昔から存在し、様々な悪事を働いてきた集団である。最近、連中が暴れる頻度が高くなっている。
「
私は隠れることすらせず、普通に彼女らの前に躍り出ると、まるで親しい人達に会ったかのように声をかける。何度も戦ってるので親しい隣人みたいなものだろう。
「お、お前は!?」
「また来たのか!?次こそは倒してやる!者共、であえであえー!」
天狗の面を着けたリーダー格が号令すると、何処からともなく大量の魑魅一座が現れる。四方八方は敵だらけだ。しかし、クローン大戦と比べたら遊びのようなものだった。
私は剣の柄と拳銃が一体になったかのような装備を腰から取る。これは、私が作ったライトセーバーである。
ブラスターというあの世界特有の飛び道具とライトセーバーを組み合わせたもので、キヴォトス人ということで飛び道具を忘れられなかった私が生み出したものだ。
ジェダイからしてみればブラスターは野蛮な武器であり、一部のジェダイの顰蹙を買ったが、私のマスターや変化に寛容な若いジェダイからは評価されていた。
私はライトセーバーのスイッチを入れる。この世界では聞きなれない音と共に青い光刃が顕現し、蜂が空を飛ぶような細かい音が周囲を支配する。
「ツバキ、背中は預ける」
「うん、任せて~!」
ツバキと背中合わせとなる。セーバーを持つ右手を弓を引き絞るように後ろへ大きく引き、チョキにした左手を真っ直ぐに伸ばす。
これはフォームⅢ:ソレスの構えだ。ブラスターに対抗するために生み出された防御特化の型であり、今回は味方と背中合わせなのでソレスを選択した。
「
幸運を祈るジェダイの合言葉が戦いの合図だった。多数の実体弾が襲いかかるが、その全ての軌道を先読みし、ライトセーバーで防御していく。
ライトセーバーに当たった弾は一瞬で蒸発する。プラズマの刃はあらゆる物体を切り裂く性能があり、分厚い金属製の扉すらも溶断してしまうのだ。
銃弾を防御しつつ、私はフォースで周囲の壺や木箱といった物体を動かし、魑魅一座を攻撃する。ロケット弾が飛来することもあったが、翳した手を捻ることで軌道を変え、別の集団へと突っ込ませた。
さらに、フォースで魑魅一座をこちらに引き寄せ、ライトセーバーを叩きつける。だが、胴体が切断されるようなことはない。
あらゆる物体を切り裂くライトセーバーであるが、銃弾や爆発に耐えられるキヴォトス人の肉体を切り裂くことは不可能だ。
実戦用の威力であれば大怪我くらいなら負わせられるが、私のセーバーは威力を調整する機能を持つ。訓練用の威力であれば、ほぼ無傷でキヴォトス人を無力化できることは分かっていた。
まあ、これは私が実際に体感したから分かることだ。ジェダイオーダーと敵対する勢力のライトセーバー使いと交戦した時、未熟だった私は斬り付けられて大怪我を負ったのだ。
「これで終わりにしよう」
魑魅一座の多くを片付けた頃合いで、私は最後に残った集団へとフォースプッシュを放ち、テレキネシスで押し飛ばす。強い衝撃を受けた彼女らは気絶し、完全に制圧された。
「お疲れ、ギンガ~」
「ツバキも、いい戦いだった。君のおかげで安心して戦えた」
周囲には魑魅一座が大量に倒れている。後は彼女らをヴァルキューレ警察学校にでも引き渡せば、ちょっとしたお小遣いになるだろう。
「これから、忙しくなりそうだ」
私はフォースによって感じていた。今後、百鬼夜行やキヴォトスを巻き込んだ大きな災厄が起こるのだと。私は修行を積み、それに備えるだけだ。私は歩む、フォースや仲間達と共に。
続くかどうかは不明
百花繚乱編を読み終わったら書くかもしれない