原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
夕方、パイモンが鶏肉のスイートフラワー漬け焼きが食べたいというので、スイートフラワーを採りに町の外に出た。
正直鶏肉のほうが入手に手間取りそうだったが、幸いにも途中で見つけた宝箱から3個ばかり出てきた。
むしろ問題はスイートフラワーのほうで、探そうとすると意外となかったばかりか、見つけたと思ったらトリックフラワーだった……なんてことまで起きた。
何となく、ベネットの気持ちがわかった気がした。
そんなこんなで何とか本物のスイートフラワーを見つけ、採取することができた。
前の世界で、スイートフラワーを採るのにこんなに苦労したことはなかった……ミントなら、今回もゴロゴロあったが。
「ふう……ちょっと時間かかったけど、これで今日の夕飯は大丈夫だな!」
「そうだね。もう夕方だし、町に戻ろう」
もっとも、町に戻るというのはあくまで店のかまどを借りるためであって、それが終わったら外に戻ってくるつもりでいる。
私にとっては、野宿や屋外での飲食は日常茶飯時、というか当たり前にやっていることなので、別に抵抗はない。
前の世界では、塵歌壺というアイテムを手にしてからはそれを拠点としていたが……あれも結局屋外に置くことが多かった。
とはいえ、便利な道具だったことは間違いない。
今度の世界でも、また入手できたら助かるのだが。
特に、パイモンは相変わらず野宿はあまり好きではないようだし。
橋を渡って町に入ろうとしたら、右手に誰かがいるのが目に入った。
よくいる町の住人とは服装も雰囲気も違う、黒髪の若い女性が、しゃがみこんで何かしていた。
「ん?あいつ……何してるんだろうな?」
パイモンも気になったようなので、声をかけた。
その顔を見て、何となく「前の世界にはいなかった人だ」と感じた。
「何をしてたの?」
「ドドリアンを取ってたの」
「えっ?こんなところにドドリアンなんてあったっけ?」
「私が植えて育ててるのよ。店で使うからね」
この人はナイアという名で、ディオナの店で働くバーテンダーの1人だという。
……ディオナばかりが目立つが、あの店には他にも店員がいるし、別に不思議なことではない。
ただ、こちらはディオナと違ってお酒は割と好きであるらしく、ファルカやガイアに出すお酒を作ったこともあるそうだ。
もっとも、そういうことなら私も負けてはいないが。
「あれ?てかあんたたち、もしかして……噂の栄誉騎士様?」
「そうだよ」
この世界では、まだその称号を受け取っていなかったが、反射的にそう答えてしまった。
ジンに知られたら、怒られるだろうか。
「栄誉騎士……ってなんだ?オイラたち、そんなのじゃないだろ?」
「それはまあ……ちょっとした事情ってやつだよ」
「いや、どんな事情だよ!」
そう言われても、説明が難しい。
ただナイアによると、ジンから「金髪の異邦人の活躍により、風魔龍は静まった。その功績を称え、我々は彼女に栄誉騎士の称号を与えることとした」という発表があったそうで、いつの間にかこちらでもそう呼ばれるようになっていたようだ。
「あれ、そうだったのか?なんだよ……そういうことなら、おかしくはないな!」
パイモンが納得してくれたようでよかった。
「ところで、あなたは神の目を持ってないって聞いたんだけど……そうなの?」
「うん。説明すると長いんだけど……とりあえず私は、神の目がなくても元素力を扱える」
「そうなんだ……不思議だね。参考にはならないだろうけど、私は風の神の目を持ってるよ」
ナイアは花の髪飾りをつけていたのだが、その中心に緑の……風元素の神の目がつけられていた。
何となく、私がつけている花とちょっと似ている。
「ってことは、魔物とかと戦えるの?」
「もちろん。武器は大剣を使ってる。あなたは?」
「私は片手剣。この通り」
無峰の剣……この世界に来てから、長い間愛用することになった剣。
性能はいいとは言えないが、それでもシンプルな見た目は何にも代えがたいし、この世界ではむしろ一般的な部類の武器だ。
「へえ……ずいぶんと簡素なものね。私はこれ」
ナイアが出したのは、何となく雨裁に似ているが青色で、細かいデザインが異なる武器。
鍛冶屋にオーダーメイドで作ってもらったもので、名前は「小さな酒場のボルカ」というらしい。
「スライムとかそうなんだけど、お酒の材料集めで魔物を狩ることもあるから、その時に使ってる」
ナイアの実力は知らないが、少なくとも神の目持ちなら人並み以上の戦いはできるだろう。
大剣なら、岩スライムの装甲を剥がすことだって容易いだろうし。
「しかし申し訳ないけど、あなたの格好からすると……その剣、なんか微妙に合わないね。どちらかというと、黒とか金色のほうが合うような気がする。……まあ、私の感想だから、気にしなくていいけどね!」
あながち間違いではない。
前の世界では、途中から剣を斬岩・試作という武器に乗り換えたのだが、こちらは黒と金色を混ぜたような色合いだった。
そちらもしばらく使っていて、行く先々で会う人からも似合ってるとよく言われたので、私と黒や金色の武器は割と調和性があるようだ。
最終的には、また別の剣に変えたわけだが。
「そうかな……?オイラは、今の武器も十分こいつに似合ってると思うぜ!」
パイモンの答えはありきたりだし、前の世界でも武器を変えるたびにそんなことを言われていたから新鮮味はない。でも、なんか安心する。
私は、子供をあやすようにパイモンの頭を撫でた。
「オイラを子供扱いするな!」と怒っていたが。
『ナイア』
モンドの平凡なバーテンダー。
ディオナとは違い、夜しか店に現れない。
武器は両手剣、神の目は風。
旅人の記憶にはない人物だが……?
『小さな酒場のポルカ』星4両手剣
攻撃力500 熟知222
自身が元素粒子を生成した時、熟知100アップ(5秒持続、CT7秒)。また、味方全員が裏から与えるダメージが25%アップ。