メノリ成り代わりの話の前に書いていた短編です。
書いてる途中で上手く文章に出来なくなり、置いておいたのですが、ようやく完結まで書けたので投稿しました。
前世の記憶持ちですが、BLEACHをよく知らない女主人公の話を書いてみました。
私はこの【世界】の今後を中途半端に知る転生者である。
前世の名前は忘れたが、好きだった事、得意だった事は覚えている。
生まれた家庭環境はありふれたもので共働きの両親に一人っ子の私…必然的に家事全般と一人遊びが得意になり、幸いにもアレルギーとかは無かったから大好きな動物と関われる保護団体のボランティアに良く参加していた。
ボランティア活動が楽しくて部活には入っていなかったけど、活動の一環でお世話をしていた保護犬達をモデルに描いた絵や撮った写真を美術部の顧問の薦めでとあるコンクールに何回か出したら何らかの賞を貰った。
この時は普段忙しい両親が時間を作ってお祝いをしてくれた。
結構充実した毎日だったと思う。
だから死んだ時は流石にショックを受けた。
死因は横道から飛び出して来た白い猫と黒い犬を避けようとして自転車の操作を誤り、倒れ込んだ先にあった石階段のてっぺんから落ちての即死だった。
次に目を覚ました部屋にはあの避けた猫と犬が居た。
2匹の正体は私が生きていた世界の神様と眷属である事が判明した。
逃亡癖のある眷属を追いかけていたところに運悪く私が出会して…と神様から深い謝罪と共に説明を受けた。
故意では無かったとは言え、自身が管理する世界の生物の生死に大きく関わってしまった以上、主神様への報告に行かなければならないらしい。
死んだ私への慰謝料として、今持っている趣味や特技、能力………家事全般、アレルギーの無い健康体、どんな動物とも仲良くなれる、絵描き、撮影技能………を来世に持ち越し出来るよう取り計らってくれた。
そして今度こそ長生きする為の<御守り>と何かあった時の為にと<非常用袋>(形状はリュックサック/私以外は認識出来ない、使えない)を貰って私は転生した。
転生先も両親は共働きで多忙、私は一人っ子…と、前世とほぼ変わらない家庭環境で育った。
ただし、生まれた時代が違った。
洋服を着ている人なんて誰一人としていないし、髪型も成人男性の多くがチョンマゲ、時折耳にする幕府がどうのこうの…私の認識が間違ってなければ此処は多分、江戸時代の後期だ。
いくら家事が得意と言っても、電気、ガス、水道完備の家にシステムキッチン、二十四時間いつでも入れるお風呂、最新式のトイレにエアコンその他色々があって当たり前だった私にはかなり酷な状況と言えた。
持ち越した能力を時代に合わせて自動調整してくれる機能が無かったら完全に終わってただろう。
「サチ!出前行って来て!」
「は~い、加山のお婆ちゃんとこに何時ものね?」
「そう、お願いね!」
「行って来まーす!」
家業は食事処で出前もしている。
稼ぎ時は人手が足りないからと、手伝いとして近所への出前を7歳からずっと続けている。
「お婆ちゃん来たよ~」
「あらあら、サチちゃんいつもありがとうね」
「はい、何時ものお蕎麦…ゲンさんの分も」
「本当にありがとうね…あの子もこの蕎麦大好きだったから…」
「………」
ここ最近、破落戸の不審死や無差別な辻斬りらしき事件が増えて来ている。
噂ではかなり大柄のブサイクな男が夜な夜な徘徊しているとか、事件の調査に関わっているらしい人伝手の情報では下手人は人間では無い可能性があるとか色々な推測が行き交っている。
このお婆ちゃんの末息子、ゲンさんも先日犠牲者になった。
お婆ちゃんが落ち着いて蕎麦を完食するのを待って、お代と食器を手に帰路についた。
今日は、一段と忙しいらしい。
帰って早々、次の出前を頼まれた。
…まぁ、行き慣れた常連さんの家ばかりだからそんなに苦でも無いけど
…手伝いのお駄賃や出前先で貰うお菓子目当てというのもあるし
それでも、何時もより出前の件数が多かったからか、空腹の合図が早々に鳴り始めた。
「…お腹減ったなぁ…よし」
夕飯までまだ大分時間がある。
周囲を確認して横道に入り、懐に入れている紙と筆を取り出し、ササッとあるお菓子を描いた。
江戸後期とは言え、まだ黒船は来ていない為、食事はご飯に味噌汁、焼き魚に煮物…完全に和食オンリーで、いくら食事処を営んでいても、私達が食べる食事の種類が豊富と言う訳では無い。
食べ慣れた洋食、中華やおやつの定番、スナックやチョコとかが無いのはやっぱり辛いものがある。
そこで私は持ち越した能力、〈絵描き〉で食べたい物、欲しい物を描いて(書いて)息を吹き掛ける或いは指で弾いたり、手で払ったりすると、絵が現物となって出て来るのを<非常用袋>の中にあった説明書で知った。
(因みに精度は下がるが、紙に描かなくても地面とか空中に描いても出す事が出来る)
今回出したのは、前世で良く食べたし作りもしたパウンドケーキ(クルミ入り)。
「モグモグ…うまぁ…」
こうやって、人目に付かないようにコッソリと食べるのが数少ない密かな楽しみである。
…オイシソゥ…イイナァ…
「え?」
…周りに誰も居ないのを何度も確認したのに!?
…バレると拙い事になるのが解りきっているから本当に警戒しながら使っていたのに!!
慌てて振り返った先には、人では無い『何か』が居た。
「…悪霊退散!」
咄嗟に懐の紙をその『何か』に投げ付けた。
紙に書いてあったのは今叫んだ通り《悪霊退散》。
最近の不審死や辻斬り対策のひとつとして、両親に頼んで地元神を祀っている神社へ連れて行って貰い、身を守る為の御札を数枚買って常に持っていたのだ。
御札の効果は覿面の様だ。
投げ付けられた『何か』が滅茶苦茶痛がっている。
…キャアアアア!!イタイ!!イタイイイイイイ!!…アァァアアァァ!!
「………」
…今の内に帰ろう
これ以上帰りが遅くなると面倒な事になる。
何かと過保護な父の干渉は御免被りたい。
未だに呻いている『何か』を放置するのは少し気が引けるが、これ以上何も出来ないからとそのまま帰路に着いた。
その後は無事営業終了となり、変わり映えの無い夕飯を食べて明日の用意を済ませ、蝋燭が燃え尽きる前に布団に入った。
…イタ…ユルサナイ…ユルサナイ…オマエ…ゼッタイユルサナイ…!!
「………?」
…ウルサイなぁ…誰よ、睡眠の邪魔するの
「…何よ…こんな時刻に非常識ねぇ…」
…オマエ…!!
「ウルサイわよ。訳解んない『何か』の癖に」
…ダマレェェェ!!
明日は定休日で週に一度の買出しの日。
…寝坊とか冗談じゃないわ。
「黙るのはアンタよ」
枕元に置いておいた紙を逆上して襲い掛ってきた『何か』に触れさせた。
次の瞬間…
…ナ…ナンダ…ナンダコレハ!?…カ…カラダカ゚…
「…あ~…意外と簡単に出来るっぽい?それとも…アンタが弱いだけ?」
『何か』が触れている部位からどんどん紙の中に吸い込まれて行く。
「ソレに入れば解るわよ…アンタの末路が」
…イヤァァァァアアア!!
ウルサイ絶叫を残して『何か』は消えた。
紙に描いていたのは猛獣用の檻をイメージした絵。
檻の中にはあの『何か』がしっかりと囚われている。
〈非常用の袋〉の説明書にはそれぞれの能力の基本と応用について色々と事細かに書かれていた。
ヤバイモノに絡まれた時を想定して何度も練習して描いていた中で1番の力作を使ってみたけど、上手くいったみたい。
「あー、うるさかった…寝よ」
今度こそ明日に備えて布団に入った。
翌日、無事に家族で買出しに行って欲しかった物を買って貰った。
だけど、この夜を境に私の生活は変わった。
あの『何か』に似た変なモノに干渉されるようになった。
ただ声をかけて来るだけで何もして来ないのは極力スルー、襲い掛かって来るのはどんどん紙の檻に閉じ込めて木箱に仕舞って押入れの奥に隠すのが日常になった。
あの『何か』が見えない人の方が圧倒的に多く、見ざる言わざる聞かざるを徹底的に意識して生活せざるを得ない。
客商売をしている以上、私が見える側だと知られればあっという間に廃業、生活に困窮して一家離散の危機に陥るに決まっている。
「…大分溜まってきたなぁ…綴じて本にでもしようかな」
年中無休で現れる『何か』はお盆になると多くなる傾向にある気がする。
現にこの3日で5体囚えた。
連中にもコミュニティがあるのか、抵抗が激しくて捕縛に手間取ったり、連携プレイをして来る奴等まで出て来た。
囚えた順番に数字を書いて端に穴を開けて紐で縛って…少し歪だがただの紙の束から本に昇華させた。
「…何で私にばかり集って来るのかなぁ…」
本当にストレスが溜まるから勘弁して欲しい。
その後も『何か』との嫌な関係は続いた。
婚期に入って両親の選んだ人と結婚した日も、妊娠が解って家族だけでなくお客さん達と喜んだ日も、お産でメチャクチャしんどかった日も、家業と育児でヘトヘトの日も…こっちの都合なんてお構い無しに『何か』は干渉し、襲い掛かって来る。
私達に世代交代して隠居はしてもまだまだ元気な両親と夫が支えてくれなければ、『何か』に負けて死んでいても可怪しく無かったと思う。
そんな中、両親が相次いで流行り病に罹り、治療の甲斐なく亡くなった。
両親の死を看取った時も空気を読まずに『何か』は襲って来た。
死んだばかりの両親の魂を狙っての蛮行を、許す訳が無い私による情け容赦の無い鎖でガッチガチに雁字搦めにした状態で、より厳重な檻に放り込んだ。
怒り狂う私に直にお別れが来ると悟った両親は、私のこの能力に気付いていた事を語った。
みんなの幸せを思って必死に隠しているのに、水を差す訳にはいかないだろうと黙っていたと話してくれた。
両親の様子から、何だかんだ感の鋭い夫も気付いている可能性が高いだろう。
…だからって今までの生活を変える気は微塵も無いけど
あの『何か』とは違い、空気を読んで静かにしていた日本刀を持った黒装束の男達がタイミングを計って声をかけて来た。
「…そろそろ時間だ。名残り惜しいだろうがこのままではまた『奴等』が来る」
…多分、死神かな?
…大鎌に黒マントのスケルトンじゃないんだ
「君達は彼等を連れて先に行ってくれないか?私は彼女に話がある」
「はっ、お任せを」
「はいは〜い、ほな、行きましょか」
「は、はい」
「よ、宜しくお願いします」
…浅黒い肌で多分、盲目の人に関西弁の少年?
…死神にも個性ってのがあるの?
自分の中の死神のイメージと違い過ぎて軽く困惑したが、この人達が両親に無体をする事は無いと何故か確信して、深く頭を下げた。
「…両親の事、宜しくお願いします」
「あぁ」
「任しとき、ほなな」
両親を見送り、残った男に身体を向けた。
「…で、私に話とは何でしょうか?」
あれから20年が経ち、子ども達も独り立ち、或いはお嫁に行った。
家業は長男夫婦に譲り、夫の死も看取った。
…いよいよ私の番か
…この時代の平均寿命まで生きれたし、まぁまぁ良い人生だったかな
…ひとつ、懸念があるとすれば…
…キヒ…キヒヒ…ヤット…ヤットダ…ヤットソトニデラレル…ソトニデタラマズハオマエヲクッテヤル…コノトキヲマッテイタ…キヒ…キヒヒ…キヒヒヒヒ!!
あの本が蠱毒になっている事である。
私のこの能力は、子ども達にも孫達にも受け継がれていない。
多分、私が死ねは高い確率で『何か』の集合体は解放されるだろう。
そうなれば此処ら一帯が、あっという間に地獄絵図になるのは間違い無い。
…でも、残念だね
…アンタ等の思惑も、願望も叶わないよ
…だって
「…間に合ったようだね」
「…えぇ、約束、守ってくれてありがとう」
「約束だからね」
…ナ…ナゼココニシニガミカ゚…!?
両親を見送ったあの後、残った男が隠している本について話があると言って来た。
…誰にも認識されない筈の存在を何で!?
困惑する私に男は
「先程の浅黒い肌の男はとても耳が良くてね。特に『奴等』の声に敏感なんだ。そのお陰で君が隠している存在にも気付けたんだ」
と、アッサリ答えた。
死神の役目とか、私の能力の正体についてとか、かなり簡易ではあるものの色々と教えてくれた。
少なくとも敵では無い男に隠している本を見せたら、すまし顔が少し歪んだ。
男曰く、蠱毒になっていると。
「このままずっと封じ続けられるとは思えないな。頑丈な檻でも所詮は紙。燃えたり、破れたりすれば『奴等』の集合体は世に放たれるだろう」
「う…」
「それに君も不死という訳では無い。君の死後、解放される可能性も捨てきれない」
「…そうなんですよね」
私だってその可能性は考えてた。
でも、こればかりはどうしようも無い。
黙り込んだ私に男は提案して来た。
私が動けなくなり、死ぬまでにこの本を処分して貰う。
私は死んだ後、男の願いを叶える為の協力者になる。
この約束を果たす事でみんなを守れるならばと、上質紙に約束事…いや、契約書として互いにサインをした。
この時から私は男の仲間になったのだ。
「何故此処に?君は知らなくて良い事だよ…さようなら」
…イ…イャ…イヤ…イヤダアアァァァァアアア!!
逃げようとした歪な仮面をした黒くて巨大な『何か』は、背を向けた瞬間、男…藍染惣右介に斬られた。
「…さて、そろそろ時間のようだ…君のご家族は…忙しそうだね」
「今が1番客が多い時間帯だから…仕方ないですよ。あの子達に伝えたい事はもう書いて…描いてあるから大丈夫。行きましょう」
「そうかい?君がそう言うなら…行こうか」
「えぇ」
…あの時とは違う…痛くない
…ただ…何だか凄く眠たいなぁ
こうして、《サチ》としての生を私は無事に終えた。
無事に完結出来て良かった…
さて、この調子で成り代わりの続きを頑張りたいです。