深紅の帝王、ヒーローになる   作:やっぱし侍

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・裏設定 

 主人公の父親の職業は画家で、母親の職業は彫刻家と日本語学校の非常勤講師です。
 そのため、紅城の実家にはアトリエが併設しており、家事は家族みんなで折半しながら消化しています。父が料理するときには日本食が、母が料理をするときにはイタリア料理が食卓に並ぶ。
 収入と労働時間は父の方が若干多いのだが、母の仕事の方が多岐に渡るため、父が家事をする機会が若干多い。たまに両親揃って、合作として1つの作品を完成させることもある。





第8話  個性把握テスト

 

 

「よっ!ヘンタイ・ナンパ・全ての女の敵野郎の()()()()!」

 

 

 待ちに待ったヒーロー科への初登校日。春の暖かな陽射しと道路脇に植えられた桜の木々が咲き乱れるなか――通学路を歩いていた紅城は、後ろから聞き馴染みのある声に話しかける。

 

「一佳……」

 

 実技試験で知り合うことになった少女――拳藤一佳がイタズラ気な笑みを浮かべて立っていた。ただ、とっくに誤解を解いたのにも関わらず、その表情に未だに紅城を非難するような視線が含まれているように感じるのは……恐らく単なる思い過ごしだろう。

 ()()()()()()()()彼女が、当然のように肩の触れそうな距離で紅城の隣に並ぶが――それに関して驚きは無い。試験が終わって以来、拳藤・峰田とは小まめに連絡を取り合っていたため、2人が合格していたのは既に織り込み済みだった。

 

 

「あはは!冗談だよ!久しぶりだね、王司!」

 

「はぁ……冗談でも止めて欲しいんだけど。でもまさか、あの時の3人が全員合格してたとはね」

 

「ね!倍率300倍の試験だったってのに……すごい偶然だよ。ま、クラスは私だけ別なんだけどさ」

 

 

 少し唇を尖らせた拳藤は拗ねたように言う。

 紅城としても、せっかく実技試験を通じて仲良くなった3人が、バラバラになってしまったのは残念だったが――――それ以上に。あの倍率を乗り越えて、3人でまた再会できるということが純粋に嬉しかったし、その事実に運命(引力)じみた()()()を感じていた。

 だからこそ紅城は、嘘偽らざる自分の本心を口にする。

 

 

「まぁ、でも……僕はまた2人に会えて嬉しいよ。クラスは別々だけど、休み時間や合同授業だってあるんだ……ずっと隣(のクラス)に居るんだし、これからも一佳とは仲良しでいたいかな」

 

 

 紅城がそう言い終えるや否や、不意に拳藤が歩くスピードを上げる。

 慌てて紅城も歩くペースを拳藤に合わせ――何かあったのかと心配になって、拳藤の顔を覗き込んだのだが…………すぐに身体ごと背けてしまい、頑なにこっちに顔を見せようとしない。

 

「ほんと……無自覚で言ってんのがタチ悪いよね……」

 

 ほとんど聞こえない程度の声で呟いた拳藤に対して、何て言ったか聞き返してもいいかと紅城が迷っていると――――唐突に振り向いた彼女に、ビシリと指を突きつけられる。

 

 

「いいよ!これからもずっと、仲良くやっていこう!……でもさ、2人ともせっかくヒーローを目指すんだ。ただの仲良しこよし……ってのもつまらないだろ?どっちが先に『()()()()()()()()()()()()()』…………これからは勝負だからね!!!」

 

「へぇ……面白いな……」

 

 

 今まで見たことのなかった拳藤の一面に、紅城の血が沸る。

 彼女の挑戦に受けて立つことを宣言し、また2人並んで学校への道を歩き始める。

 

(……それにしても。いくらライバル宣言をしたからって“()()()()()()()()()”にするなんてな…………一佳って、意外とアガリ症な部分もあるんだな)

 

 

 ほぼ毎日、実家で両親のイチャイチャを見続けたうえ、幼い頃にヒーローに脳を焼かれてしまった生まれついての鈍感青年(ナチュラルボーン・スケコマシ)は素朴な疑問を抱く。

 結局のところ、その答えに紅城が辿り着くことは出来なかったが――――その後、合流した峰田の持つ『動物的直感力』によってナニかを悟られた紅城は、血涙を流しながら殴りかかって来る峰田に苦戦させられることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広大な敷地を抜け、『1-A組』とだけ書かれた大きな引き戸に手をかける。

 

「なぁ、()。お前のせいで遅刻ギリギリなんだけど」

 

「口の利き方に気を付けろよ……()()!てめぇみたいなイケメン野郎、この場で始末してやっても良いんだぜ?」

 

「お前もうヴィランだろ。卒業したら僕に退治されないよう気を付けるんだな」

 

 軽口を叩き合いながら扉を開く。既に始業間際ということもあって、クラスにはほとんどの生徒が集まっていた。

 さすがは雄英のヒーロー科と言うべきか、文字通り“個性豊かな”見た目の生徒たちがワイワイと集まって雑談している。

 

 

(何人か見たことある奴がいるな……ヘドロヴィランの人質に、メガネの真面目くん……んん!?あれは……!)

 

 紅城の目の前に、商店街でヘドロヴィランに立ち向かい――ヒーローとしての片鱗を見せつけた緑髪の少年が、ショートボブの可愛らしい女の子と会話をしながら真っ赤になっているのが見えた。

 まさかここまで一緒になるとは思っていなかったため――――運命を感じた(テンションの上がった)紅城は、少年の後ろから肩を組むようにして話しかける。

 

 

「やっ!また会ったね!」

 

「えっ……えっ?ちょっ、ちょっと誰ですか?話しかける相手、僕で合ってます?!」

 

「僕の名前は紅城王司(あかぎおうじ)。これはもう『引力』だからさ、これからもよろしくね」

 

「い、引力?僕は緑谷だけど……え、えっと僕はどうしたら……だ、誰か……」

 

 

 一度話してみたかった相手にようやく話しかけられてご満悦の紅城に、しどろもどろになりながら本気で困惑する緑谷。その他の面々も、突然現れたやけに距離感の近い(緑谷に対してだけ)謎の外国人の登場に、面食らいながら狼狽えていた。

 この中で唯一、紅城を知っているはずの峰田は顔を真っ青にさせながら「王司。お前……()()()の気もあったのかよ……!見境ねぇな」と本気で戦慄している始末。

 

 誰がどう見ても収拾不可能でカオスな――あの爆豪ですら、渦中に巻き込まれないよう大人しく様子を窺っていた――状況に、待ちに待った救いの第一声が響く。

 

 

 

「ハイ、静かになるまでに12秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に……おい、なんだこの空気は?」

 

 

 

 

 

 

 

 その後、担任の相澤から体操服を着てグラウンドに出るように指示され――――我々、1年A組の面々は期待と緊張が一緒くたになったような表情を浮かべながら、思い思いにグラウンドで時間を潰していた。

 心なしか自分の周りに人が居ないような(峰田を除いて)気がするが、紅城はそれ以上に現在の状況を冷静に分析していた。

 

 

(体操服を着ろって指示からして怪しいと思ってたけど……グラウンドに他の新入生たちの気配は無いね。普通科ならまだしも、同じヒーロー科の一佳たちB組まで居ないってなると…………相澤先生の独断でガイダンスは中止って感じかな?)

 

 

 

 

「個性把握‥‥テストォ!?」

 

 おおよその当たりをつけていた紅城を除いて、あまりに突然の相澤の宣言にA組の面々は驚愕の声を上げる。さて、どうやって自分の“個性”を活かそうかと考えていると――相澤によって名指しで指名される。

 

「爆豪、紅城。お前ら2人とも今年の()()()()()だろ。円を出なけりゃ、好きに個性を使っていい。このボールを思いっきり投げてみろ」

 

「あ゛ぁ?!」

 

 

 瞬間、爆豪と呼ばれた少年――ヘドロヴィランに人質にされていた彼から、ほぼ殺意と言っていい程の強い敵意を浴びせられる。

 

(おいおいおいおい……一体なんなんだ?ヒーロー科だってのに……峰田といい爆豪といい、人に不躾な敵意をぶつけてくるヤツばっかじゃあないか……)

 

 恨まれるような覚えもないのに、一方的に敵意を向けられたことに辟易していると――いつの間にか前に出ていた爆豪が、相澤からボールを受け取って我先にと円の中に入っていく。

 

 

「死ねぇぇ!!!」

 

 

 鮮烈な爆炎の華が咲き、ソフトボールが青天の遥か彼方に消えていく。

 

 

『705.2m』

 

「次、紅城。お前も投げてみろ」

 

 

 相澤から新しいボールを手渡され、相変わらずこちらに敵意を向けてくる爆豪と、すれ違うようにして円の中に入る。

 

「まぁ……やるしかないか。“キングクリムゾン”……!」

 

 紅城の声に呼応して、太陽の光を弾きながら深紅の肉体を輝かせた人型のヴィジョンが現れる。

 画面越しに見たことのある相澤と実物に投げられたことのある峰田を除いて、初めて見る『スタンド』の姿にA組の面々が驚きの声を上げる。

 

 

「これが……かっちゃんと同じ主席合格者の個性……!」

「えー!ピカピカしてて綺麗〜!」

「このような個性……初めて目にしますわ」

「これは……!!俺の個性と…………なるほど。貴様も深淵の理解者か……!」

 

 

 クラスメイトたちから向けられる期待を背に――ソフトボールを手に握ったキングクリムゾンが、メジャーリーグのピッチャーのようなフォームでボールを投げる。

 

 

『419.7m』

 

「チッ!」「ハッ!」

 

 記録が表示されると同時に、自分の舌打ちと爆豪の嘲笑が被る。

 

(ムカつく態度の爆豪に記録で負けるのは癪だけど……“今のキングクリムゾン”じゃ仕方ないな……くそッ、他の種目で吠え面かかせてやる……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通り全ての種目を終えた紅城は、グラウンドの端で()()()()()()()()()()寝そべるようにして寛いでいた。

 あの後、相澤による突然の方針転換で「トータル成績が最下位の者は除籍処分」という厳しい判断が下ったのには流石に驚いたが…………走り幅跳びでスタンドにおんぶしてもらう方法で記録『∞』を獲得し、その他の競技においてもほとんど上位5位以内に入れていたため、“除籍処分”に対する緊張感は薄れていった。

 

 他のクラスメイトたちも、徐々に全ての競技を終えた者たちが増えてきたのか――――先ほどまで誰1人として近寄ろうとしなかった紅城の周囲に、少なくない人だかりが出来ている。

 

 

「へー!()()()()()()意外とひんやりしてるんだねー!赤いから火傷するくらい、熱いのかと思ってた!」

「ブツブツブツブツ……人型のヴィジョンを操る個性か……そこまで遠くに出せないみたいだけど、人並み以上にパワーを持ってるみたいだ。本人も戦えるんなら、近距離じゃ実質2体1になるし厄介だけど……もしかして、他にも能力がある?」

「紅城、見ていたぞ。俺は常闇、コイツは黒影(ダークシャドウ)だ。似たような個性を扱う者同士、これからよろしく頼む」

「ヨロシクナ!」

「この個性……“キングクリムゾン”と仰いましたよね。エサなどは必要ですの?」

「ねぇ……キングクリムゾンって名前さ。紅城って、ロックとか好きだったりする?」

 

 

 緑谷に対する強引な絡み方のせいで、教室では距離を取られていたものの――――紅城がまさかの主席合格者で珍しい個性を持っており、さらに()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()だと分かってからは、一転して多くのクラスメイトに話しかけられていた。

 紅城としても「A組のみんなと仲良くなりたい!」という気持ちが強かったので、向けられた質問には快く、一つ一つ丁寧に答えていく。

 

 もちろん、女子の質問に答える時に限って毎回、隣で舌打ちをしてくる峰田へのお仕置きを心の中で考えながら。

 

 

 

 

「次、緑谷。こっちに来てボール投げてみろ」

 

 相澤から声を掛けられた瞬間、真剣な顔付きで個性の考察をしていた緑谷の表情が青褪める。まぁ、無理もない。

 誰も直接口に出すようなことはしないが、彼の成績は平均的な無個性そのもの――――このまま行けば、緑谷の除籍は確定だろう。そんな緑谷の不安を感じ取った紅城は、そっと彼の背中を押す。

 

HAIL 2 U(君に幸あれ)。大丈夫、心配する必要はないさ。君なら出来る」

 

「紅城くん……うん!ありがとう!」

 

 

 少しだけ笑顔を取り戻した緑谷が、相澤の元へと駆け寄っていく。その後ろ姿を眺めていると、今度は隣から爆豪の声が聞こえてくる。

 

 

「チッ……!あのザコが雄英でやってけるワケねぇだろ!落第だ落第!!」

 

 

 先ほどから露骨に敵意を向けてくる爆豪に対して、あまり良い印象を抱いていなかった紅城は――――緑谷への暴言がキッカケで、完全にプッツンしてしまい――――眉間に皺を寄せたまま、爆豪の正面に堂々と立つ。

 

 

「あ?」

 

「よう、爆豪!君って()()()()()()()()()()()程度の三下の癖に、よくもまぁ吠えるじゃあないか?……おっと、別に馬鹿にしてるんじゃないよ。ただ、なんて言うか、こう……可愛らしいと思ってさ。必死に噛みついてくる小動物みたいで」

 

「…………おい、てめぇ。殺されてぇのか?」

 

 

 紅城の煽りによって、完全に()()()()()()に達した爆豪は声を落としながら――血走らせた目をこちらに向けてくる。次の一言しだいで、爆豪は躊躇なく紅城に殴りかかってくるだろう。

 紅城としてはそれでも良かった(むしろ望んですらいた)のだが――――異変に気付き、こちらを心配そうに眺める数人のクラスメイトたちと、真剣な面持ちでこちらに目を光らせる相澤先生の存在がある以上、短絡的な行動を取るわけにはいかない。

 

 

「だからさ、爆豪。ここは1つ、僕と()()()()()()

 

「……は?何言ってんだ、お前?」

 

「君は緑谷のことが嫌いで、彼が『除籍される』と思ってるんだろう?……僕は逆でね、緑谷は『除籍されない』と思ってる。だからさ、()()()()()()()()()()()賭けて白黒付けようって話だよ」

 

「……ハッ!上等だ。あのクソデクに賭けようなんざ、全くもって理解できねえが…………ハーフ野郎、てめぇも目障りだったんだ。今、この場でぶっ潰してやる」

 

「グッド!いいね……じゃあ、『負けた方は相手の言うことを1つ聞く』っていうので。異論は?」

 

「ハッ……全くねぇよ!!」

 

 

 会話が聞こえていた訳ではないだろうが、どうやら僕たちが殴り合いの喧嘩をする様子がないと分かった相澤先生は、こちらに興味を失ったように視線を外す。

 

 かくして、当人(緑谷)のあずかり知らぬところで、僕と爆豪による意地の張り合い(ギャンブル)勝負が幕を上げた。

 

 

 

 





峰田とは実技試験後、普通に仲良くなったのでお互いに名前呼びになりました。


スタンドの(ヒロアカ世界における)ルール
その2
普通の人間でもスタンドに触れることができる。


スタンドのパワー「B-」については、『ゴールド・エクスペリエンス』や『ソフト&ウェット』(両方ともC)以上だと思って、まぁざっくり捉えててください。

あと、この世界には主人公以外のスタンド使いが居ない設定ですが、スタンドっぽい能力は出すかもです。




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