キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ハジメのダークランダーが猛威を振るい、圧倒されてしまうアイドルプリキュア。どうにか4人が合流して立て直す事には成功するものの、不利な状況である事は変わらない。
そんな中、ハートガーデンの外側にあるサウンドプロダクションの事務所では避難誘導を終えたレイが1人心配そうな顔を浮かべている。
「(父さん、大丈夫かな……)」
「レイさん」
するとそこに同じく避難誘導を終えた姫野が彼に近づいてくると話しかけた。
「姫野さん、どうしました?」
「………社長の事、気になりますか?」
「ッ……ええ。でも、皆ならきっとどうにかしてくれます。影人やこころはいませんけど、それでもどうにか」
しかし、レイの中には懸念があった。何しろダークランダーの素体になったのは他ならない自分の父親。ダークランダーの傾向として素体の身体能力が高い者や素体の持つ闇が強い者が変化するダークランダーはかなりの戦闘力を誇る事が多い。
ただ、レイの時と同様でハジメはその両方を持っているタイプであるためダークランダーの力は底が知れない。それ以上に今回はチームの切り札である影人が動けないため、ダークランダー相手に苦戦するのは当然の流れと言える。
「……レイさん。行ってあげてください」
「えっ」
「確かに、レイさんには戦う力はありません。行ったところで足手纏いになる危険もあります。……ですが、それ以上に私は社長を……あなたのお父さんであるハジメさんを助けられるのはあなたの言葉だけだと思ってるんです」
姫野の目は真っ直ぐにレイを見ており、その視線を受けたレイは少しだけ迷ったがその迷いを振り切ると頷いた。
「……わかりました。届くかわかりませんけど、俺の声で父さんが救えるのなら」
レイは姫野に後押しされる形で危険だとわかってはいたものの、戦いの場所に向かう事を決意。ただ、レイは一度サウンドプロダクションの外に向かいかけてから止まって姫野の方を向く。
「っと、姫野さん」
「はい?」
「……ここを、社員の皆さんをお願いします」
「勿論です!」
彼は自分がハートガーデンの中に入ってしまうがために姫野に後の事を託し、その場を駆け出す。
「レイさん……頑張ってください」
姫野はそんな彼の後ろ姿を見ながらそう呟くと自分のやるべき事をやるために戻る事になる。
同時刻、レイの向かうハートガーデンの中。アイドルとキッスが合流して4人になったアイドルプリキュアはハジメの変身したダークランダー相手に苦戦してしまっていた。
「アイドルグータッチ!」
「ダークゥウウ……ラン!」
アイドルのグータッチとダークランダーの拳がぶつかり合うと衝撃波が発生して駆け抜ける。ただ、その直後にアイドルは押し負けて後ろに吹っ飛ばされてしまう。
「うわぁああ!?」
「嘘、パワーアップしたアイドルでもダメなの!?」
一応アイドルは先程からアイドルハートリボンスタイルを継続して本気でぶつかってはいる。だが、それ以上に今回のダークランダーがかなりの強敵であったのだ。
「くっ……」
「それなら同時攻撃で!」
「はい、お姉様!」
アイドルは吹っ飛ばされはしたものの、流石にこれだけでやられるなんて事は無く。どうにか態勢を立て直す形で着地。同時にズキューンとキッスはコンパクトを取り出すとアイカラーとリップを塗る。
「チュッ!」
「ズキューンバズーカー!」
「キッスショック!」
ズキューンとキッスはダークランダーを挟む形で陣取るとエネルギー砲とハート型のエネルギー弾で挟み込もうとした。
「ダークランダー、真っ向から受け止めてあげなさい」
「ダークランダー!」
その瞬間、ダークランダーはスラッシューの指示で2つの攻撃に対して腕一本を突き出すとそれを片手ずつであっさりと受け止めてしまう。
「ッ!?そんな……」
「さっきは効いていたのにどうして……」
「そんなの、さっきのは不意打ちしてたから入っただけよ。正面から迎え撃てば通用なんてしないわ」
スラッシューの言葉の直後、ダークランダーはあっさりと2人の攻撃を粉砕。消し去ってしまう。
「そろそろ反撃良いかしら?」
「ダークランダー!」
ダークランダーは反撃とばかりに駆け出すと正面のアイドルを狙う。それに対してアイドルは構えるとダークランダーと殴り合った。
「はぁああああっ!!」
「ダーク!ランランラン!」
アイドルとダークランダーの打ち合いは多少アイドルが押され気味だったものの、それでも即座に押し負けるなんて事は無く。
「ッ、強いけど私なら何とか追える!」
「やぁああっ!」
そして、互角にやり合える者が1人いるのなら彼女を中心に連携を組む事ができる。そのため、ウインクはアイドルが引き付けている間に背後を取って跳び上がると踵落としをダークランダーの右肩に命中させた。
「クラァ!?」
「やった!」
「ふふっ、甘いわね」
しかし、ダークランダーは今の一撃に対してあまり効いてる様子を見せておらず。すかさずアイドルへと蹴りを繰り出して彼女を自身の攻撃の射程範囲外に押し出した。
「ッ!?」
「アイドルとの距離を離した!?」
この蹴りにより、アイドルはダークランダーとの距離を離されたせいで彼女からの有効打は無くなってしまう。そして、その上で狙うのは一番近くの浮いた相手……つまりはキュアウインクとなる。
「と言う事は狙いは……」
「ふふっ、気づくのが遅いわね」
アイドルもそれをようやく理解するが、距離を離された以上はカバーに向かうのが遅れる。ウインクも咄嗟に防御姿勢を取るが、その上からダークランダーからの拳が炸裂した。
「ダークラン!」
「くっ!?きゃああ!?」
ウインクは防御ごと崩される形で吹き飛ばされると地面に激突。そこにカバーしに来たアイドルが一歩遅く到着するとウインクを返り討ちにしたダークランダーがアイドルへと蹴りを放ってくる。
「ラン!」
「はあっ!」
アイドルも同じく蹴りで対抗するが、やはりある程度互角とは言っても総合的にはダークランダーが上。アイドルは不十分な状態で迎え撃たないといけなかった事もあって押し返されてしまう。
「くうっ!?」
「ダークランダー!」
そこに流れるような体捌きでアイドルに近づいたダークランダーからの膝蹴りがアイドルを捉える。
「しまっ!?きゃあああ!?」
アイドルはとうとうダークランダーの攻撃をまともに受けてしまうと勢い良く飛ばされて地面に叩きつけられてしまう。
「アイドル!?」
「次はあなたよ?キュアズキューン」
ズキューンがアイドルを心配して声をかけるが、スラッシューはそのズキューンをターゲットに定める。
「ダークランダー!」
「くっ……ッ」
何故この状況でズキューンを狙うのか。それは当然先程の戦いでズキューンは深刻なダメージを受けているからだ。その点においてキッスよりも各個撃破をやりやすいというわけである。
そして勿論それを見たキッスも慌てて対応しに動く。彼女としてもズキューンがやられるのをただ黙って見ているわけには行かないからだ。
「お姉様を狙うなんてさせない!」
「そうよね?ズキューンを狙えば当然あなたも出てくる。だけどね……そんなの関係無いのよ!」
ダークランダーはズキューンの裏を取ると彼女は慌てて防御しようとし、そこにキッスが駆けつけるために動き出す。スラッシューの狙いはその瞬間だった。
「ダーク」
「えっ!?」
突如としてダークランダーはズキューンへの攻撃を方向転換。自分の元に突っ込んでくるキッスへと逆に突進すると右腕を横に伸ばしてラリアットを叩き込む。
「ランダー!」
「ああああっ!?」
当然ながら、自分からダークランダーに向かっている所だったキッスはダークランダーのラリアットの餌食になると返り討ちにされて悲鳴を上げる。
「そんな、キッスまで……」
「いいえ、あなたもよ?キュアズキューン」
キッスがラリアットのダメージで一瞬怯んでいる間にダークランダーはすぐにズキューンの元へ。
「ッ……はあっ!」
「ダーク・ラン!」
「きゃあああ!?」
ズキューンはダークランダーに対抗しようとするが、彼女の拳が振り抜かれるよりも早く、ダークランダーの逆にカウンターでの拳が命中。
元々ダメージが酷かったのもあって一撃で彼女は飛ばされて叩きつけられると激痛に悶えていた。
「お姉様……。ッ、お姉様や皆をよくも……」
「ふーん。まだ立てるのね。じゃあ容赦も遠慮も要らないわ」
「ダークランダー!」
キッスは痛みに耐えて立ち上がるとまだ少し先程の不意打ちラリアットで意識が朦朧としていたがどうにか踏み留まると迫り来るダークランダーに対して構える。だが、その状態で勝てる程ダークランダーは甘い相手じゃない。
彼女はダークランダーに接近されると容赦無く拳を使っての連続パンチを繰り出す。
「くっ!?ううっ……ッ……」
キッスはその攻撃に必死に耐えようと両腕を交差させて防御しようとするが、その力の前に呆気なく崩されてから最後は蹴り上げられてしまう。
「ああああ!?」
キッスが撃墜されてアイドルプリキュアの4人が全員地面でダウンしてしまう。特に先にダメージを受けていたウインクとズキューンの傷は深く。アイドルやキッスはどうにか立ちあがろうとしていたのに対して2人は未だに動く事さえできていなかった。
「随分と呆気ないわね。まぁ、このダークランダーを相手に切り札のソウルビート無しじゃこんなものかしら」
スラッシューは今回のダークランダーが当たりである事に笑みを浮かべると倒れているアイドルプリキュアを空中から見下ろす。そして、彼女は立ちあがろうとしている4人を見て更なる追撃をかけるために手を上げた。
するとダークランダーは自らの体に闇のオーラを纏うとそれが両脚に移動。跳び上がると同時にその脚のエネルギーを斬撃波を飛ばすかのように倒れているプリキュア達に向けて飛ばす。
「ダークラン……ダー!ダー!」
「ッ……ウインクバリア!」
ウインクはそれを見て辛うじてバリアを展開するものの、斬撃波はあっという間にバリアを打ち砕いてプリキュア達へと命中。4人はそれに呑み込まれてしまう。
4人はバリアのおかげでこの攻撃による致命的なダメージは避けられたものの、それでも度重なる猛攻の影響でまともに動けなくなっていた。
「強い……強すぎる」
「私達4人が束になっても勝てないなんて」
「ふふっ。どうやらあなた達の命運は尽きたようね」
そんな4人を見てスラッシューは降りてくるとアイドルの元に行って彼女へと話しかける。そのアイドルはアイドルハートリボンスタイルこそ維持できていたが、体は傷ついて息も荒く。今スラッシューに攻撃されればひとたまりもない状態だった。
「Kotoneさん……あなたがやりたいのは、こうやって他人のキラキラを奪って傷つける事なんですか……」
「チッ……そうやってまた私をおかしくしようとしてるんでしょう?何度も何度もそう言ってばかり。ハッキリ言ってくどいのよ」
アイドルは自分の元に来たスラッシューの中にあるKotoneの心を呼び覚ませないかと彼女に話しかける。ただ、スラッシューとしてはこれまでもずっと同じやり取りをしてきたために余計に面倒に思えてしまったのか。アイドルからの言葉をバッサリと切って捨ててしまう。
「Kotoneさんはそんな事しないってUtakoさんならきっと……」
「チッ……だから、何度も言わせないでよ!私にはもうダークイーネ様の願いを叶える以外の選択肢なんて無いの!ダークイーネ様が世界を真っ暗闇の中に堕とせば、キラキラを失った世界の中で私は受け入れられる。それに、私はもう後戻りなんてできないのよ!」
「そうやって決めつけないでください!!」
スラッシューは自らの気持ちをアイドルにぶつけ続ける中で彼女は前々からスラッシューの言葉に感じていた事を同じようにぶつける。
「決めつけ……ですって?」
「そうですよ。スラッシューさんは私やソウルビートに説得される度に決めつけてばかりで。後戻りできないとか、ダークイーネのために働くしか無いとか。何もかも決めつけて。それじゃあいつまで経っても変わりませんよ!」
スラッシューはアイドルからの強い言葉を聞いて怒りが湧き上がってくるとアイドルの胸ぐらを掴んで引き寄せてしまう。
「煩い!あなたなんかに、ずっとキラキラした世界で輝いてばかりのあなたなんかに何がわかるって言うのよ!」
「わかんないですよ!」
「くっ……」
スラッシューがいつものように感情的になってしまう中で、アイドルもまたスラッシュー相手に一歩も引く事なく毅然とした対応でスラッシューを説得しようとする。
「私にはわかりません。Utakoさんを死なせてしまった事だってあなたの事を許すかどうかを決めるのはUtakoさん自身なのに……なんでそんな風に許されないって決めつけちゃうんですか!」
「何で、何でなのよ。私だって、私だってこんな……」
スラッシューはアイドルから言われた事を考えると胸の辺りが痛くなり、自分のやっている事が悪い事であると認識しつつあった。しかし、そのタイミングでダークランダーが声を上げる。
「ダークランダー!」
「えっ!?」
「ッ、そうよ……こんな奴等の言葉に耳を傾けるなんて。あっちゃいけないわ!」
「Kotoneさん!?」
ダークランダーの声にスラッシューは我に返ると胸ぐらを掴んでいたアイドルから手を離しつつ彼女はアイドルから距離を取り、これ以上彼女からの言葉を聞いても無意味だと自分に言い聞かせて振り切ってしまう。
「ダークランダー、トドメを刺しなさい!」
「ダークランダー!」
するとスラッシューはこれ以上の話し合いをしないためにもダークランダーにトドメを刺させるべきだと判断。ダークランダーはプリキュア達に向けてもう一度先程の足による斬撃波を放とうとする。
「止めてくれ!父さん!」
「クラ!?」
だが、そんな時だった。突如としてスラッシューにとってあまり馴染みの無い声が聞こえるとダークランダーも含めて声のした方を向く。
「お待たせしてすみません!皆さん!」
「キュンキュン!?それに……レイ君も。何で……」
そこにいたのはサウンドプロダクションの建物の中にいたレイとこの場にいないはずのプリキュア。……キュンキュンが駆けつけていたのだった。
また次回もお楽しみに。