アニメドラゴンボールZ85話のカニが最強だったとする。 作:鵺崎ミル
来年は蟹年ではありませんが、良い年となりますように。
前回までのあらすじ
どうする?お前の相手は世界一強いカニさんだぞ
「キャシャアアアアアアアア!!!!」
鼓膜を突き破るような咆哮をあげながら、魔人ブウがカニと激突した。
南の界王神と大界王神を吸収してようやく得た心をかなぐり捨てた、最初の一番厄介なブウ。純粋ブウにはまともな理性と知性がない*1。カニにもまともな理性と知性がない*2。互いの本能が荒れ狂い、神話の争いを彷彿とさせる激闘が発生していた。
魔人が一たび走れば大地が抉れ、嵐が起きる。甲殻類が跳ねれば大地は爆発し、雷鳴が嘶いた。1人と1匹がぶつかり合えば、星どころか時空ごと揺れる有様だ。
時空が揺れ、頭を抱える時の界王神がいる一方で、それでも起きない破壊神がいるが気にしてはいけない。付き人の天使は中立とか言ってないで、起こしてあげた方が良い。
また、こいつらのせいで時の狭間の封印が緩んで喜ぶ自称魔神もいるが、そちらはタイムパトロールの仕事である。カニには縁のない話だ。
「やべぇぞ地球が持たねぇ!!」
「おいまた来たぞ弾きやがれーーーー!!」
「くそったれーーーー!!」
時空の向こうの連中と違って現地は地獄の労働を強いられていた。
時空が歪みかねない戦いが起きているのに地球が無事なのは、ひとえに観客席にいたZ戦士達や復活した大界王神の奮闘によるものだ。彼等はブウとカニがやらかした星を砕く流れ弾を全力で相殺し続けている。
ちなみに戦闘力の都合、最も働いているのがベジータであり、最も危険な位置にいるのは戦場の至近距離から離れていない大界王神だ。大界王神復活に色々限界迎えていた界王神も、今は正気に返って頑張ってはいる。
(く、すまねぇ皆……!)
しかし弾く面子に悟空の姿はない。界王神やクリリンも頑張っているのにという状況だが、彼は今も集中と脱力の状態を維持し続けていた。
悟空とて、地球の崩壊を防ぐべく参戦したいが、それはピッコロに止められていた。この状況だからこそ、悟空が先に出した案こそ正解であり、今悟空がそれを放棄してしまえば、地球の運命は決まってしまうと。
問題は2つ。
タイミングが訪れなければ意味がない事と、今の魔人ブウを倒せるかの確証が全く持てない事だ。倒せる確信があったなら、蒸気の塊だったタイミングでぶっ放している。
幸いにして、集中と脱力が思考の焦りに引っ張られることはなく、今も維持できている。超サイヤ人3の消耗問題を解決するべく重ねていた修行も一因だろう。悟空は、スタミナ向上と平行し、莫大な気を無駄に失わない事を目標にしていた。
悟空の気は過去にない程静かに、濃密に、それでいていつ激ってもおかしくない程熱を帯びている。悟空の肉体が持たない可能性すらある程に。
(先にオラの方がダメんなるかもな……)
集中する意識とは別に切り分けた思考で悲観的な予測を立ててしまうが、ここで諦めたら全てが終わる。揺れる感情を抑えながら、只管気を静かに高めていく。
◇
「がるぐおおおおおおおおおおおお!!!」
悟空達の事情など知らぬ1人と1匹の激戦は続く。ブウによる全力の拳が地面にいるカニへ振り下ろされる。星の核ごと砕き抜きそうな一撃だが、カニは両の鋏を突き出すようにして受けきった。相殺しきれなかった衝撃が大地を岩盤ごと破砕する。
「ぎいいいいいいいいい!!!」
屈辱と言わんばかりに魔人ブウの顔が歯ぎしりしながら歪む。
それはカニにとって、明確な隙であった。止まった拳を抉り斬りながら突撃。ブウの両目を頭部ごと両断する。カニは学習能力が足りていなかった。ブウにはあまり意味がない攻撃だ。変化してもそれはまったく変わっていない。案の定、頭の上半分がないまま笑ったブウが、宙にいるカニへ後ろ廻し蹴りを叩き込んだ。
「!!」
ブウのイメージに反してカニは吹き飛ばない。
カニは踏ん張っていた。学習能力は足りていないだけで皆無ではないのだ。衝撃を受けると同時に反対へ気を噴き出すことで、ブウの一撃を相殺しきっている。さらに接したブウの足裏を摘み掴む。意味不明なレベルで頑強故にできる無茶な行動だ。乏しい知性を補うだけの力がカニにはある。
「ギ!?」
足ごと引き剥がそうとした魔人ブウの目が驚愕で見開いた。
カニが何をするか気が付いたからだ。
「あ、まずい」
大界王神が焦る。
カニが全身を輝かせ、気をとんでもなく昂らせている。
気の挙動から確信する。間違いなく、先の脱皮でやらかした技をまたやる気だ*3。より気が増した今それをやろうものなら地球が持つはずもない。せめて宇宙へ向けての気功波ならよかったのに。
(あのブウも地球が消える威力の技を何度も放っている……宿る神の気がブウを消すに足る相応の反撃を選択したか!)
倒すという意味で正しくとも、宇宙全体において正しくとも、地球という星においては正しくない。破壊神なら許容できる判断であろうが、大界王神は許容できない。助けられる星と命は助けるべきだ。1000万年前もそうして宇宙の危機を救ったのだから。
しかし現実問題としてこの技の影響を防げるかで言えばNOだ。今咄嗟に張れる結界やバリヤー程度では意味はないだろう。大界王神は賭けに出る。この技の選択が、神の気そのものであるということに。
「その技は君自身も、君の棲み処も滅ぼすぞ!!」
言葉による静止。カニに言語を解す能力などない。しかし、込められた意図ぐらいならば理解できる。サタンの言葉を敵意の無い歓迎と朧気に理解できたように、悟空の威嚇を威嚇と理解できたように。
そして元来、大界王神の言葉はこの宇宙に生きるもの総てに通ずる。戦闘直前の話をカニは全く聞いていなかったが、
「!!?」
届いた言葉で、放たれる寸前の技が止まる。
引き換えにブウの肉体を空へ放り、続けて極大の気功波をぶちかました。直前の動きで既に脅威を感じていたブウが回避行動に走り、成果は半身の消滅だけで終わる。
カニの輝きが変わった。
カニの本能が、神の気の身勝手すぎる判断に初めて異を唱える。神の気はあっさり受け入れた。唯の力なのだから当然だ。そして『最強』に反するものでもない。故に本能の判断に併せ、寄り添うように最適化が始まった。
紅と銀色の気がそれぞれ主張強く織り交ぜられていたものが、溶け合うように混ざる。神聖さを帯びた朱色。黄みがより強く現れつつも鮮やかさが際立つそれは銀朱色と呼ばれる色だ。
「身勝手の極意……いや、違う……」
透き通った神の気が全てを判断して身体を勝手に動かしていく極意ではない。破壊神が好む、闘争本能が只管荒ぶり高まる上限知らずの力とも違う。殺意の高さから闘争本能のようだが、カニの本能はどこまでも縄張りと餌の執着*4にある。すなわち野生の本能。
神の気が動き、本能がカニとして成すべき事を誤らせず、戦いにおける最適解を修正していく。
野生と神の気の真なる合一。そのまま目的を完遂するまで行動する戦闘形態。
「知性ある自我を有さないまま、神の気が浸透しきったままに、本能だけで制御するとは……さしずめ、気随気儘の極意……いや、
カニの野神なのだから
「チィィィッッ!!」
一方で再生した純粋ブウは不快感を隠さない。敵対している存在がまたよく分からないパワーアップをしているのだから。
もし、自身に対して有効打を獲得していたら。そんな危険を本能が悟り、警鐘を鳴らす。
「!!!」
飛びかかるカニの斬撃をいなし、頭の触手で打ち据える。だが、触手は綺麗に切断され完全に消滅していた。更に、減少そのものを拒絶するはずの己のエネルギーが僅かながら減ったのだ。
初めて自覚できるダメージを受けた事実に、ブウは驚愕する。本能は正しかった。もはや手段など選ぶ余裕はない。
「ギ!!」
自らの腕を千切り、放り投げる。捻じれ纏まり凝縮した腕の塊が気を纏う。カッチン鋼すら砕く脅威のボールの誕生だ。寸分違わずカニへ急接近したそれは、容易く両断されるが仕事は果たした。フェイントだった。
投げると同時に荒れ果てひび割れた地面へ潜っていた純粋ブウ。
相応の力なくして、あれの対処は不可能。加えて、接近すればするほどカニの視界を覆うことになる。カニの本能は自然と意識が向く。分かりやすいフェイントでも、カニは案外釣れてしまうのだ。複眼による広い視野と高い動体視力が生む、副次的欠点だろう。
そして一瞬でも自分自身を見失ったならば、あとは仕留めるだけだ。
アメーバ状となった肉体がカニを包むべく一気に噴き出す。
「な!?」
吸収を狙っていると気づいた大界王神が表情を変える。
あのカニを吸収したからといって、どういう姿になるかはまるで見当がつかなかったが、最悪の結末になることは間違いない。
「!!?」
だが大界王神の心配は杞憂に終わる。
本能が引っ掛かろうとも、神の気は違う。相対する敵の気の動きから最適解を導き出す
カニの身体が急回転し、気の乱流を生じさせた。クッキーの時にやった手口だ。アメーバ状のブウはたちまち切り刻まれつつ吹き飛ばされる。自身中心範囲の攻撃でも、これならば地球へのダメージは抑えられる判断だった。
「ぐわあああああああ!!」
「ピッコロさーーーーん!!!」
余波で1人のナメック星人が切り裂かれたが彼は頭さえ無事なら再生できるので些細な問題である。仙豆もあるし。野神と化してもカニに観客への配慮などあるはずもなかった。
「ぐがああああああああああああ!!!!!」
吸収作戦が失敗したことでキレたブウ。
元に戻り、空へ飛ぶ。そして腕を無数に生やしたかと思うと、その全ての腕から闇雲に気弾を撃ち込み始めた。全弾、星を破壊する威力であり、それを察したカニは縄張りの危機だと認識する。八脚を絶え間なく動かし、鋏に高圧縮された気を宿し、カニはその全てを相殺していく。
「うわあああああああ!!」
「界王神様ーーーー!!!」
続けざまに生じた余波で1人の界王神が土に塗れたが、彼は生きてさえいれば付き人キビトの復活パワーで回復するので些細な問題である。野神と化してもカニに神の名を冠した認識などあるはずもなかった。
余談だがベジータはピッコロを気遣う視線こそ送ったが、界王神は一瞥して無視を選択した。カニとブウの戦闘で、一番至近距離にいる大界王神とかいうのが*5しっかり自衛しているのを見ているので、界王神に対する評価は既に地の底である。
ちなみにクリリンは悟空の集中を守るべく、時には我が身を盾にして彼への流れ弾を防ぎきっている為、そもそも他を気遣う余裕などない。
「がががががががががががが!!!!!」
絶え間ない連続気弾。滅多な事で気を消耗しないブウが選んだ最適解。
これそのものでカニは倒せないとブウもわかっている。だから狙いはあくまで星だ。カニは今のところ全てを防ぎきっているが、1発でも星へ通せば地球はたちまち爆散し塵と化すだろう。
カニとて星の下で生きる存在。宇宙空間へ放り出されたら死ぬことに例外はない。神の域に達したサイヤ人ですらそうなのだから。ひょっとしたら生きている可能性もあるかもしれないが、その時は戦場が宇宙そのものに変わるだけ。ブウからすれば損はない。
「困った、私じゃちょっと勝てない」
カニが対処している気弾。大きく外れた1つをなんとか弾いた大界王神が苦笑しつつ呟いた。
この規模が延々と続くのであれば、自分はフォローしきれないと悟らざるを得なかった。自分だけでなく、地球の戦士達もいるし、彼等の力量には感服するが、限界は遠くないだろう。
「なにか、なにかできることはないだろうか……!」
だからといって諦める理由にはならない。
カニの邪魔にならないようアシストの位置についている大界王神だが、本音は自分で純粋ブウを倒したかったぐらいだ。自分が吸収されたことで、魔人ブウが封印されるきっかけが生じたとしても、宇宙の管理者としての責任は強く感じている。
「私の神力をあのカニに……いや、野神形態のバランスが崩れる恐れがある……星の保護だけを条件にすれば天使に頼れるかもしれないが今の私に連絡手段がない……破壊神は……動いてくれるならとっくに動いているはずだろう、寝てるなこれは」
1000万年前の危機も助けてくれなかった破壊神への希望は捨てつつ、必死に思考を回す大界王神。
「ぐがががががががががががああああああ!!!」
「更に攻撃頻度があがるのか!? いや、カニの脅威度が増しているからか……!」
カニも大概だがブウも大概だった。カニの気が更に高まっており、それを察したのだろう。必死なのはブウも同じだ。耐え忍べば、カニがブウを倒す可能性は強まっている。だが、やはりその前に地球が消し飛ぶだろうという確信があった。
勝てるのに勝てないこの状況は、カニが小さすぎるのも一因だろう。もし、カニが人間だったなら、高い知性があったならば。そんな仮定が心に浮かんでしまう。それはそれでこの世の終わりでしかない気もするが。カニに善性を求めるのは間違っているからだ。
「!」
猶予も打つ手もなし、そんな思いまで浮かびあがりそうになった時、大界王神の目に希望が入った。
孫悟空だ。
この絶望的状況かつ、荒れ狂う騒がしさで、まるで静寂の世界に佇むように集中している。カニとブウに集中していたとはいえ、大界王神である自分が今の今まで気づけなかったほど、宿す気はクリアになっており、高みへ至っていた。
あと一押し、そんな状態に彼はいる。
「……よし!」
最後の賭けに出る時だ。
大界王神は必死になっている戦士達へ念話を飛ばす。希望たる悟空は外している。集中を乱す可能性を考慮したからだ。
『みんな、聞こえるかな。シン君……東の界王神から聞いているとは思うが、私は大界王神だ。時間がないので端的に伝えるが、このままだとブウの攻撃で地球が消えてしまう。そこで、逆転のチャンスを僅かでも作りたい。
念話を飛ばす中で、カニが僅かな隙を突いて反撃の気弾を放つ。
避けきれずに半身が消滅したブウだったが、攻撃が途切れる事はなかった。無数の手が気が付けば自立砲の如く連射している。これには流石のカニも地球を守る事に再集中せざるをえない。
『大界王神様、彼とは孫悟空のことですか』
『悟空くんと言うんだね? ありがとうシン君。彼が今高めている力……あと一押しあればブウを完全消滅させて星を守ることができると私は見ている。その一押しを私がする』
(大界王神様、オラは大丈夫だ)
『!?』
念話による説明を続けようとした時、希望本人たる悟空から念話のようなものが走った。界王のものと似ているようでまた違うが、重要なのはそこではない。オープンな念話とはいえ、あえて外したはずのそれを彼が受信し、返答したことが信じられない。
『君が悟空くんか……この念話を聞いていたのかい!?』
(自分でも驚いてんだ……これ程集中している自分と、落ち着いてそれを見ている自分がいて、今、全てを見透したような状態なんだ)
感情と思考をそのままに、極限の集中と脱力を成した悟空。仲間たちからすれば、今の悟空ならやってもおかしくないと冷静だが、大界王神からすれば驚きの連続でしかない。
大界王神は知らない事だが、悟空には時折こういった力が発揮されることがある。界王を介さずとも念話のように仲間へ思いを伝えることもあれば、心臓病に苦しみ眠っていた時も「夢で見ていた」と全てを把握していたこともある。その不可思議な力が今、開眼している。
一瞬理解が遠のきかけた大界王神だが、許されざる空白だと己を戒め気を取り直す。一刻の猶予もない事を忘れてはならない。
『うん、わかった。いいかい、今から私の持つ神力を、君に与える。きっと、最後のきっかけとなるはずだ。与えると同時に残る皆でブウに攻撃をしてほしい。集中を極わずかでも途切れさせるんだ。悟空くん、君ならそのチャンスを無駄にしないだろう』
(わかった大界王神様。期待に必ず応えてみせる)
『じゃあはじめるよ!!』
◇
「ぐがあああああああああああ!!!」
自立稼働していたブウの腕、強靭な細胞で構成された腕が1本、焼き切れた。
重火器がオーバーヒートを起こしたように、限界を迎えたのだろう。だが気にすることなく、ブウは連撃を絶やさない。
続けなければ負ける。続ければ勝てる。この確信があったからだ。
「があああああああああああああ!!!!」
カニは疲弊の様子を見せない(というか外見ではわからない)。それどころか姿自体が砂塵に覆い隠され見えない時すらある。だがブウの狙いは地球なのだから姿自体は見えずとも問題はない。
時折かなり離れた位置へ気弾を飛ばしてもみるのだが、それは周囲の誰かが弾いているようだった。だが問題はない。目の前の存在程不条理ではないのは間違いないのだから。
途中なんか人数が増えて「気功砲!!」とか聞こえた気もするがすぐに静かになったのでブウは気にしていない。
だがブウのミスはそれだった。カニにのみ集中しすぎていた。
前触れなくいつの間にか出てきた天津飯1人分の加勢で生じた、1発分の余裕。
ベジータたちがブウへ攻撃を仕掛けるには十分なものだった。
「くたばりやがれーーーーーー!!!!」
「波ァーーーーーーーー!!」
「ちぇりゃああああああああ!!」
「俺だってーーーーーー!!」
「……!! (キッ!!」
(他と比べると界王神様の技、絵的には映えないな……私は何もできないが)
一瞬のうちに出せるだけの最大パワーをもって放たれた技が、一斉にブウ目掛けて突っ走る。
「はっ」
それを目視したブウは鼻で笑うと、気にせず身体で受ける。
ブウの肉体はあっさり崩れても、ダメージには至らず、地球への攻撃も緩みがない。
これで、カニ以外から何が来ても気にするものではないと確信してしまった。
「?」
致命的慢心だとブウが気付いたのは、目の前に前触れなく現れた、蒼や白銀に輝くオーラを有した銀髪の戦士。
現れた時点で、既に技の構えも気の放出準備も完了しており、あとは放たれる刹那の時を待つのみだ。
「ぎっ!!!!?」
「波ァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
カニと同質の力を有していると悟ったところまでで時間切れだった。
ブウの構成するあらゆる要素を抹消する絶対的な力が成層圏を突き抜け、決着の証となって宇宙に輝く。
勝利できるだけの力を有していた魔人に明確な敗因があるとすれば、たった1人で戦うものの限界がそこにあったことだろう。
そしてカニからすれば困惑でしかないのだった。
敵対してたやつが知らんやつ(ベジータ守った時の悟空と見た目が違う)に消し飛ばされた。拍子抜けすぎる結末があった。
「えっと……なんかすまねぇな」
悟空は悟空で、獲物を横取りされたことにキレたカニに襲われる覚悟もあったのだが、カニはぶくぶくと泡を立てて複眼をぐるぐる動かしている。
カニからすれば、ブウは餌ではなく敵なのであって、勝手に消えたならそれでいいスタンスだ。縄張り争いしていた相手のカニが大型魚類に食われたからといって怒る道理は自然界にはない。
敵はもういないのだと確信した銀朱色のボディが静かに赤い甲殻へと戻っていく。
「あっ」
そして瞬く間に姿を消した。いい加減空腹が限界だった。
寄生されかけたあげく、念願の餌は食べられず、お腹すいている中で襲撃を受けたというカニにとって散々な1日はこうして終わりを迎えた。
「ブウも、カニもすげぇ奴だった……お前ぇにまだ勝てる気がしねぇのは、正直複雑なんだけどよ……オラももっともっと強くなっから……お前ももっと……いや、追いつけなくなっから今の無しで……とにかく、またな」
砂煙だけでなんとなくわかったカニの行く先に向け、悟空は静かに決意を改める。
カニのせいで妙に絞まらない上に、カニ自体が最大の脅威という気しかしないが、その次の脅威は確かに消えた。
元の姿に戻り疲労困憊な様子を隠さない悟空は、それでも笑顔で駆け寄る仲間たちへ向けて親指を立て笑うのだった。
カニは、今日も地球と共にある。
なお、大界王神が復活したことと、正式復帰の結果、事の顛末の一切が改めて正しい形式で『報告』されたことにより、ある破壊神に雷が落ちたり、八つ当たりのように地球へ襲撃をかける未来が遠くない内に起きるのだが、それは別の話である。
ついでにZソードは抜かれていない。
更新遅れた言い訳。いつぞやの「インターネットが壊れた」事件の影響で執筆分が消し飛んでおり、多忙タイミングと重なって筆が止まっておりました。プロットあっても辛いものは辛いという学びになりましたはいすいません。
ともあれカニさんZは完結です。ワンパターン(カニさん無双)をいかに上手く描写していくかの技量を鍛える意味ではいくらでも書いて良いんですが、破壊神までいくと短編じゃ効かなくなるのと、ゴクウブラックが永遠にカニの餌になる人類言語では表現しきれない残虐展開しか思いつかない不具合ありましてはい、ごめんなさい。
・カニさん
最強を極め続ける第七宇宙最強。最強に合わせて強さが更新され続ける仕様なので、まさに『怪物』だが、今回ついに宇宙だと死んでしまう可能性が出てしまった。星ごと破壊されると敗北するわけだが、純粋ブウとの戦闘を経た結果、対応策は神の気が学習済みである。
戦い終わった後、消息不明となっていたがある日サタン邸のプールにてサタンからハムを貰ってもしゃもしゃしているところを発見される。ビーデルとお家デートにきていた悟飯くんのSAN値が酷い事になったが気にしてはいけない。
・野神(やじん)
野神(のがみ)ではない。野生の本能と神の気が真なる合一を果たし、かつそれを戦闘に用いた姿。余計な事を考えず、暴虐の力を振るう点は破壊神のそれだが、彼らと決定的に違うのは『闘争本能』ではなく『野生の本能』である事。あと高い知性の有無。知的生命体が敢えて本能に身を委ねるのと、元からそんな知性なくて本能荒ぶらせてる系の動物じゃ前提が異なる。
実は名称が二転三転した。神の気を用いた極意は、身勝手だの我儘だの、我の強い人に対する悪口が採用されやすいので、勝手気儘とか得手勝手とかの単語に合わせてこじつけ図るも、カニが極意を振るうという点がしっくり来なかったので、明確な形態名になりました。サイヤジンならぬネコマジンならぬカニヤジンという響きが気に入っただけなのは内緒。
データ吹っ飛ぶ前は思いついてなかった形態なので結果的には良かったかもしれない。新形態になった割にトドメ役にはなれなかったのはごめん。
・純粋ブウ
今回の犠牲者。ごめん。
めっちゃ頑張ったし、腕無数に作って自律砲台にするチート攻撃披露してカニさん封殺までいったからやはりZ最強か……。界王神界が舞台だった場合、地球破壊勝利ルートが消し飛ぶ為、カニさんに「またな!」される運命となる。
・悟空
ずっと観客だったけど最後に美味しい所もっていった。さすが主人公。カニのインフレに置いていかれはしないぞとショートカットを極めている。ベジータは拗ねる。
大界王神に弟子入りして神の気を鍛える気満々だったところに破壊神も来て、強くなれるチャンスが次々できて歓喜する。
悟空ならきっとこのふざけた補正もったカニさんだろうと手が届きうることでしょう。お前がナンバーワンだ……!
なお、ドラゴンボール超の力の大会ではカニさん出場できるかマジで怪しいので、悟空たちが強くならないと大変な事になります。負けようものなら全王の消滅に適応し耐え抜くカニさんという恐怖のギャグオチが待っている。
・大界王神
無事に復帰。ご帰還おめでとうございます。
本作ぐらいじゃないか、この人がブウ編時点で復活どころか復帰エンドしたの。代償として善ブウもウーブもいないけど(悟空が純粋ブウの転生を願っていない)。
色々反省して界王神を真面目に教育することにした。カニを第七宇宙の切札とみており、破壊神が余計な真似しないよう地球を保護惑星にするつもり。劇中では破壊神について地の文共々結構ボロクソ書いてるが、破壊神ビルスを嫌っているわけではない。単に宇宙運営方針や勤務態度などで職場同僚としての相性が悪いだけである。
・破壊神
出番ないのに扱いが悪い、ごめん。大神官からお小言受けた腹いせに地球へ八つ当たりする。ついでに地球の美味を味わったり超サイヤ人ゴッドと戦ったり満喫する。
その際カニさんの縄張りへ踏み込んだせいでブチ切れたカニさんと大喧嘩する。無限に強くなる破壊神VS最強を体現しつづけるカニさん 勝敗不明。
・ミスターサタン
あのカニさんを飼い慣らした男としてZ戦士達から世界の救世主として敬意を抱かれる。やはり世界チャンピオンは格が違った。