崩れかけた建物の中に閉じ込められたプレイヤーとウェディング。慎重に行動しようとするウェディングと、直感的に脱出を急ぐプレイヤーは、判断基準の違いから衝突する。
「リスクを完全に排除するべき」というウェディングに対し、プレイヤーは「生き残るためには、時に必要なリスクを取るべきだ」と主張。合理性を重視する彼女に、人間の不完全さゆえの決断を問いかける。
そんな中、突如として天井が崩落。プレイヤーは反射的に飛びのくが、ウェディングは冷静に「分析中です」と動かない。焦るプレイヤーをよそに、彼女は即座に最適なルートを判断し、次の瞬間、迷いなくプレイヤーの手を引いた。
「必要なリスク、というのも、一理あるかもしれません。」
ウェディングに導かれながら、プレイヤーは瓦礫を避け、辛うじて安全な場所へとたどり着く。崩落が収まった後、ウェディングは静かに告げた。
「……まあ、今回はあなたの勝ちですね。」
プレイヤーは呆れたように笑いながらも、彼女の中で何かが変わったことを感じ取る。しかし、ウェディングはそれをあっさりと打ち消すように言った。
「次に同じことが起こった時は、あなたの判断が正しいとは限りませんよ。」
「わかってるさ。」
そう返すプレイヤーに、「次は期待しないでください」と釘を刺しながら、ウェディングは再び歩き出す。
――合理と直感の狭間で交わる二人の判断。暗闇の中、足音だけが静かに響いていた。
――薄暗い部屋に、低く響く足音が二つ。
ウェディングとプレイヤーは、崩れかけた建物の中を慎重に進んでいた。壁にはひびが入り、床はいつ崩落してもおかしくない。
脱出を目指していたはずが、この場所に閉じ込められてしまった。
「……この状況、合理的に考えれば、まず安全な経路を確保するべきですが。」
ウェディングが周囲を見渡しながら言う。彼女の声はいつも通り冷静で、感情をほとんど感じさせない。
「だけど、それをやってる余裕があるか? そもそも、こうしてじっくり安全を確保する間に崩れたら、それこそ元も子もないだろ。」
プレイヤーはため息混じりに応じた。慎重に行動するべきなのは理解している。だが、直感が告げていた。時間がない。
ウェディングは少しの間、無言でこちらを見た後、ゆっくりと首を振る。
「……無計画な行動は、状況をより悪化させるだけです。」
「けど、このまま時間をかけても状況が好転するわけじゃないだろ?」
「それでも、最低限の安全を確保せずに進むのは、賢明とは言えません。」
「でも、リスクがゼロになるのを待ってたら、逆に手遅れになることもあるだろ?」
プレイヤーの言葉に、ウェディングは一瞬目を細めた。
「……無駄にリスクを取る行動は、単なる愚行です。」
「じゃあ聞くけど、お前はリスクを完全に排除してからしか行動しないのか?」
「当然です。」
プレイヤーは小さく舌打ちした。
「それなら、お前が“人間”だったらどうする?」
ウェディングの足が、一瞬止まる。
「……何を言いたいのですか?」
「お前はいつも“人間は脆弱だ”って言うけどさ、だったら、俺たちはリスクをゼロにしてからしか動けないってことになるよな?」
ウェディングは、わずかに目を伏せた。
「……あなたの言いたいことは分かります。しかし、だからと言って、無謀な行動を正当化することにはなりません。」
「無謀じゃなくて、必要なリスクを取るって話だ。」
「……必要かどうかの判断基準は?」
「状況に応じて考えるしかないだろ。」
ウェディングは一拍間を置いた後、静かに息をつく。
「……非合理的ですね。」
「合理的かどうかより、大事なことがあるだろ。」
「例えば?」
「……生き残ることだよ。」
プレイヤーの言葉に、ウェディングはわずかに視線を揺らした。それがほんの僅かな間だったとしても、プレイヤーには確かにそれが見えた。
「……わかりました。」
ウェディングは少しだけ歩を進め、崩れた床の上に視線を落とす。そして、プレイヤーに向き直った。
「……では、あなたの考える“必要なリスク”とは何ですか?」
「……俺の考え? そうだな……」
プレイヤーが言葉を探す間に、遠くで小さな音がした。
――ギシッ。
床が、沈んだ。
二人はほぼ同時に天井を見上げた。次の瞬間、崩落の音が響いた。
「くっ……!」
瓦礫が落ちてくる。プレイヤーは直感的に飛びのいた。だが、すぐに気づいた。
ウェディングは――動いていない。
「おい、何やってる――!」
「分析中です。」
「考えてる暇ねぇだろ!」
「……なるほど、こういうことですか。」
ウェディングはそう呟くと、静かに足を踏み出した。そして、最も崩落の影響が少ないルートを、即座に判断していた。
「あなたの言う通りですね。時には、考えるより先に動くことも……」
プレイヤーが息をのむ間に、ウェディングはプレイヤーの手を引いた。
「――必要なリスク、というのも、一理あるかもしれません。」
二人は崩れる瓦礫をギリギリで避け、崩落が収まると同時に、安定した床へと着地した。
ウェディングは、一つ息を吐いた後、プレイヤーを見つめる。
「……まあ、今回はあなたの勝ちですね。」
プレイヤーは呆れたように笑った。
「やっと俺の考えを認める気になったか?」
「……まだ、判断は保留しておきます。」
ウェディングは淡々とそう言うと、再び前を向いた。
「ただ、確かに“考えている間に手遅れになる”というのは、正しいのかもしれません。」
「……お前が素直に認めるなんて、珍しいな。」
「……その言葉は撤回したくなりました。」
ウェディングは静かに歩を進めた。
「……次に同じことが起こった時は、あなたの判断が正しいとは限りませんよ。」
「わかってるさ。」
プレイヤーは肩をすくめ、ウェディングの隣に並んだ。
「だから、次はお前の判断に任せるよ。」
ウェディングは一瞬だけ足を止め、プレイヤーを見つめた。
「……期待しないでください。」
そう言って、彼女は前を向く。
暗闇の中、二人の足音が静かに響いていた。