本当は怖いウマ娘プリティダービー   作:電動ガン

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やめようね。辞める辞める詐欺。

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第22話 退職騒動

「ほーん。そうなんですねぇ。」

 

『そうなんです。私も潮時なのではと思いまして。』

 

「いやーまぁ確かに潮時な感じはしますね。」

 

『でしょう?なのでURAから声が掛かってまして。そこに行こうかと。』

 

「ええ!それはすごいじゃないですか栄転ですよ。」

 

「ですよね!とまぁこんな感じなんです。」

 

「良かったですねぇ円満に終わって。」

 

『ほんとですよ代行なんて使ったら目も当てられないですね。』

 

「代行なんて使うもんじゃないですよ。立つ鳥後濁さず!!これが一番ですね。」

 

『おっしゃるとおりで・・・・・・すみません着信が入りました。』

 

「では、また飲みいきましょう。」

 

『ええ。お疲れ様でした。』

 

電話を切る。おっすお前ら!!異世界転移トレーナーだぞ。今の電話は雑誌社の人がURAにスカウトされて転職するなんて話を聞いてたんだ。俺もネットで辞職事情を調べつつ話しを聞いてたわけだがちょっと厄介だな。こっちは。普通は従業員の権利も保障されてるんだがこっちでは一番偉い経営者の権利も付いてくるってんで仕事を辞めるのは泥沼になりやすいらしかった。おっかねぇ〜

 

「ん?LANEきたわ。」

 

「こんにちはトレーナーさん。」

 

「おう!ジャーニー!」

 

「ふふ、なんか忙しそうですね。珈琲淹れますよ。」

 

「ああ、いやすまん。今から会議なんだ。新人集めて方向性みんなで詰める会議だから時間がかかる。」

 

「そうなんですか・・・・・・」

 

「ああ。だから今日下手したらトレーニング見られん。この後ルドルフも来るはずだからさ。ジャーニーと二人でみんなの音頭取ってくれないか?」

 

「わかりました。ですが私の指示を聞いてくれるでしょうか・・・・・・」

 

「大丈夫さ!なんだかんだジャーニーもカリスマあるからな!!」

 

「ふふ。そうですか。」

 

「おう。じゃあもう行くから後頼む。」

 

「はい。行ってらっしゃいトレーナーさん。」

 

今日7人だっけかな。新人いっぱいいるのはいいけど勝手に育つわけじゃないからな。気合い入れるぞ!!

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

「いってしまいましたね・・・・・・」

 

コーヒーメーカーでコーヒーを淹れるジャーニー。待ってる間にいつものトレーナールームを見渡し、掃除が行き届いてることを確認した。花瓶の花が新しくなっているのを発見し頬が緩む。全てが、いつもの。いつもので満たされた部屋はジャーニーが安心感を覚えるのも自明の理であった。

 

「む・・・・・・」

 

ジャーニーが気付いたのはトレーナーの机に置き去りにされたトレーナー自前のパソコン。閉じられておらず画面も付きっぱなし。忘れ物かと思ったがトレーナーはちゃんとパソコンを持って行っていたはず。自前のはただの片付け忘れか・・・・・・と思って。ここで魔が差した。

 

「・・・・・・。」

 

タッチパッドを触り、ブラウザの検索履歴の項目へ。ほんの少し。知りたかっただけだ。大好きなトレーナーが普段どんなことを検索しているのか。少しばかり、気になった。だが。それがこれから起こる騒動の始まりだった。

 

「・・・・・・?」

 

検索履歴に残る、『転職』『退職』『辞表』の文字。最初はジャーニーも意味がわからなかった。だがジャーニーの聡明な頭脳はその文字列を理解するのに数瞬も掛からなかった。血の気が引く。顔が青ざめる。手が震える。尻尾が伸びる。耳が絞られる。震える手を離し、思案する。

 

「ち、違う。まさか・・・・・・」

 

恐らく知人の退職相談に乗ったのだろう。ジャーニーはそう考えていた。実際当たっているのだがそれを確認出来る事は無かった。そして再び血の気が引いて白くなった指でタッチパッドを触る。今度は閲覧履歴を見た。

 

「・・・・・・ッッ!!!!」

 

閲覧履歴に残る退職支援のホームページの数々、そしてトレーナーが辞める(勘違いだが)ことが事実だと加速させる事態がログに残っていた。

 

「AIサポートのチャットの更新が、こんなに・・・・・・」

 

それはAIがサポートしチャットする項目の更新が無数に残っていた。チャットの内容こそ見られなかった。が、そしてその先に見つけたものでジャーニーは目から涙がこぼれ落ちたのだった。

 

「あ、ああ・・・・・・ッ!!」

 

それはAIがオペレーターに繋ぎそのオペレーターとかなりの数をやりとりして、何かを決済したログだった。トレーナーは、本気だと。本気で辞めるつもりで退職支援ページを開きオペレーターに聞き、何かを支払い申し込んだ(実際はチャットが有料だったのでその料金280円を支払っただけ。)。ジャーニーは震えが止まらなかった。歯がガチガチと鳴り、いつもの陽気な冗談の類いではないことを理解した(勘違いだが)

 

「(ど、どうする。誰かに知らせるか、いや、それはむしろパニックを助長することになる。それに退職するのがバレたと感じたトレーナーが僅かな時間も残さず消えることになるかもしれない。どうする。まだ精神的に軟弱で幼い担当もいる。その子達へ伝わったら・・・・・・)」

 

年長者として落ち着かなければならないがどうにも震えが止まらない。聡明だと称される頭脳は空転するばかりで発揮されない。いつもなら、いつもならあのオルフェーヴルの姉として力を振るえた。だが、今回のトレーナーの本気度(そんなものはない)を見たジャーニーは確実にいつもと違うと確信した。聡明(今回に限りポンコツ)な頭脳を働かせ、今出した答えは。

 

「違うという可能性を見つけよう。」

 

ふらふらになった身体を落ち着ける為にトレーナーの椅子に座る。そしてパソコンと向き合い検索履歴と閲覧履歴を深く探る事にした。

 

「これは・・・・・・」

 

出てきたのは『URA』『企業幹部キャリア』『栄転』『引き継ぎ資料』などの項目とブックマークもされているURA幹部紹介や事業紹介のページ。ジャーニーは理解した。理解してしまった(その理解は間違い)

 

「トレーナーさん・・・・・・そうか、そうなんですね・・・・・・」

 

ジャーニーはその聡明な(今回に限りほんとポンコツ)頭脳で理解した。トレーナーは異世界人だ。トレーナーというウマ娘に囲まれる危険な仕事を続けられなくなったのだ。恐らく役所、それ以上の組織から通達が来て、トレセンにいられなくなってしまったのだ。ジャーニーはさめざめと涙を流し、トレーナーの安寧を祈るなら私たちは別れなければならないと決断を下した。

 

「(さようなら・・・・・・トレーナーさん。貴方としたトレーニングや交流は、私に星々の輝きの宝石のような宝となって息づいています。)」

 

そして燃え尽きた。がっくりとトレーナーの椅子で血を吐いたジャーニーは静かに気を失うのであった。この事態はメールボックスを一目見れば簡単に解ける誤解だったが。流石にそこまでプライベートに踏み込む不躾さを持ってる担当など。いるはずもなかった。

 

「トレーナー君おつか・・・・・・いないのか。む、ジャーニ・・・・・・どうしたジャーニー!?!?ジャーニー何があった!??!ジャーニーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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