Decide Zone Zero   作:犬咲夫藍

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ごめんな、忙しくてな、中々書けんくてな。
はい、ヤバいです。原作前やってる間にゼンゼロがシーズン3に突入しそうです。マジかよ……。

ところでその、うろジョジョって、面白いですよね……。だからごめんなさい。


二九話 夜に掛かる太陽

 

前回のあらs「で、何か頼みたい事があってあたしを呼んだんでしょ? 言ってみなさい」

 

あらすじキャンセルやめてね。

 

クレタがホロウ内に囚われている事を突き止め、その場所を探る為にパエトーンに協力を依頼……を、する為に仲介人として誘い出したニコ(あんた)が狂乱したと思ったら冷静になってビックリしてるんだからこっちは。*1

 

まあ、それは置いといて用件を言おう。

 

「実は

 

*2

 

ってことで、あんたからパエトーンに連絡して欲しいんだが……頼めるか?」

 

「ふーん、なるほどね……」

 

ニコは少し考える仕草を見せた。多分この依頼を受けるメリットとデメリットを測っているのだろう。

 

いやぁお願いしますよニコの親分〜。よっ! 皆のカリスマ! 子供達の人気者! ナイスおっぱい!

 

 

「全く、あたしはそんな安っぽい褒め言葉に乗せられる程馬鹿じゃないっての……。でもいいわ、それくらいなら協力してあげる」

 

返ってきた了承の返事に喜びを禁じ得ない。やったぜ! 流石ニコ! 伊達に肌を露出してないな。

 

「ありがt「ただし仲介料として一万ディニーは払ってもらうわ」……マジで?」

 

どうやらパエトーンに話をつけて貰うには、仲介料を払わないといけないらしい。だが、これに対して横暴だとか理不尽だとかいう気持ちは一切湧かなかった。いや全然想定はしてなかったけど、考えてみれば仲介も仕事の一つだし。ましてや仲介先は伝説のプロキシパエトーンだし。(そりゃ)そうだよ*3

 

俺のお小遣い三ヶ月分の金を払うのもやむなし。金! 捜索! 救出!

 

 

 

 

 

 

 

 

【十四万三千ディニーやるから脱げ】

 

【"高過ぎる。一ディニーにしてくれ"と一ディニーにしてもらうまで言い続ける】

 

 

 

 

……この、馬鹿野郎ゥ!!

 

いつもいっつも唐突にぶっ込んでくるなお前な!? 例の如く両極端だしよぉ……! 今時間がねぇんだから大人しくしてなさい!

 

【上】とかマジな〜にを言ってんだ……な〜にを言ってんだマジ!

いいか? 脱がすな!

 

人を!

 

脱がすな!!

 

例え十四万三千ディニー積んでも駄目なものは駄目だぞ。ぼったくりでも何でもない。

 

けど一番駄目なのは【下】! お前だよ! 安すぎんだろ!

確かに値段交渉の時は少し罪悪感を覚えるくらいの安値を提示してから妥協していくって言うけど! それにしたって安すぎるわ! 億が一にでもこんなの選んでみろ……

 

〜〜〜

 

「一万ディニーは高過ぎる」

 

「はぁ?」

 

値段交渉開始!

 

「一ディニーにしてくれ」

 

「はぁ!? ……なるほどね、この状況であたし相手に交渉なんてやるじゃない。その度胸に免じて九千五百ディニーに「一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニー! 一ディニーじゃないとヤダヤダ〜!」

 

「ガキが……舐めてると潰すわよ……!」

 

〜〜〜

 

こうなるから!

 

クソ、ふざけられる状況じゃないのに、急な極端選択肢に頭を悩ませるなんて聞いてないぜ。*4一体どうすれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……いや、待てよ?*5 これ、【上】は何も服を脱げと言ってるわけじゃないんだから口八丁で誤魔化せるんじゃないか?*6

 

ククク……! 焦りで頭が回りきらない事が多いが、残念だったなぁ選択肢。長年貴様に振り回されてきた俺にとって、その程度の抜け道を見つけるのは朝飯前なんだよ! 今はもう夜だが。

 

ヨシ、【上】にしよう。

 

ピコン!

 

選んだ瞬間、抗えない力により口が勝手に動いて言葉を発した。

 

「十四万三千ディニーやるから脱げ」

 

それを言ってからは劇的だった。

 

「え!?」

 

「ンナ!?」

 

「はぁ〜〜〜!?」

 

俺の突然のセクハラ発言に驚愕の声が続出。

 

 

 

ふ、想像通り混乱しているようだな。だが問題無い! もうすでに、抗えない力は無くなっている! ここからが言い訳タイムだぜ!

 

「いやいや、ニコさんに一肌脱いで欲しいって事ですやん? 高名な邪兎屋さんに護衛してほしいなってことですやん?」

 

それ以上の事は無い。当たり前だよなぁ? 逆に何と、ナニと勘違いしたんですかもう。えっち!

 

「紛らわしいにも程があるわよ! もうちょっと言い方を考えなさい!」

 

「本当に申し訳ない*7

 

俺は頭を下げざるを得なかった。普通に正論だったから。これも全部、選択肢ってやつのせいなんだ。

 

「はぁ、悪いけど護衛の依頼は受けられないわ」

 

ニコは呆れたように断りの言葉を口にした。

 

……成る程な。成る程成る程成る程な。実のところ未知数の相手に対してアンビーさんやビリーさんの力を貸してもらえるなら、これ程ありがたいことは無かった。それがご破産になるっていうのは……。いやけど、元々力を借りる予定は無かったしな。しょうがない。

 

「本当に申し訳ない*8

 

「なんでいきなり土下座してるのよ?」

 

「いや、ニコ様の気分を害してしまったようなのでお詫びに」

 

や〜、そうは言ってもやっぱり欲しいんだわ、人手が。プロフェッショナルの助けなら尚更! という事でニコ様、私めの数々の無礼を詫びますのでどうか、どうか護衛を!

 

「あ、あの、僕からもお願いしますっ!」ドゲザ

 

「ンナッ!(僕からもッ!)」ゴタイトウチ

 

土下座コンボ。ビルドなんかもう、手足が短すぎてうつ伏せに寝転んでる感じになってる。ちょっと可愛い〜。

 

「はぁ。あのねぇ、あたしがそんな器が小さい人間に見える?」

 

ニコは呆れたように言った。

いや、よく見ると全然おっぱいがデカいな。

 

「視線を上げなさい馬鹿。見る場所が違うのよ……!」

 

「ンナ……(まあ、広義の意味ではおっぱいも器と言えなくもないですがね……)」ヒソヒソ

 

「しー。きっと今、お兄さんとニコさんは僕達では測りきれない深淵謀慮の交渉をしているから邪魔しちゃ駄目だよ……」ヒソヒソ

 

「ンナ(それもそうですね)」ヒソヒソ

 

そんな思惑無いからね。俺にもニコにも。それと君達、さっきから口数が少ないと思ってたらそういう事考えてたの? ありがとう。助けてくれ。

 

「何も気分を害したから……そしてさっき借金取りに殆どの財産を"差し押さえられた(うばわれた)"からって意地悪言ってんじゃないの」

 

借金はそもそも返すものでは?*9 というか最初に頭おかしかったのはそういう事情だったのか。そりゃ路地裏にいるもんな。逃げてるよな。

 

「じゃあ、なんで護衛は断るんですか?」

 

「それが今、アンビーとビリーは郊外で仕事してるのよ。どこからかその情報が漏れて、借金取りに一斉に返済させられた(おそわれた)んだケド……。ま、あんたなら戦闘に支障は出ないでしょ。パエトーンには仲介してあげるから、それで良いでしょ」

 

「ええやん。気に入ったわ」

 

「何その口調?」

 

気にするな。名残りだ。

 

「ま、あんたのそれは今に始まったことじゃないわね〜」ポチポチ

 

なんだと。

 

 

 

【殴る】

 

【殴らない】

 

 

なんだと? 

いや、殴らねぇよ。

 

ピコン!

 

 

 

……ピコンピコン

 

【殴らない】を選んだ後少し待っていると、ニコのスマホが鳴った。三連続選択肢ではないよ。

 

「パエトーンからね。ま、あいつらの事だから返事は見なくても分かるけど……やっぱり。受けてくれるらしいわよ」

 

やったぜ。

 

 

 

 

〜しばらくして〜

 

 

 

 

「久しぶりだね! よろしく!」

 

俺達の前に、オレンジ色のスカーフが特徴的なボンプが現れた。可愛い。

 

「……やっぱり、あの時助けてくれたのはパエトーンさんだったんですね」

 

あ、そうだ。シノは治安官の卵たった。やべぇよやべぇよ……。パエトーンはバリバリプロキシだよ伝説の(謎倒置)。しかも指名手配犯だよ。いや、お、おち、おちちち、餅付け!*10 ここは俺の話術で場をなあなあにして……ん?

 

シノが人差し指を立て、口元に当てた。

 

「しー……ってね」(世の中の全てが善悪の二つに分けられるわけじゃない事は流石に弁えてるよのウインク)

 

まるで、"世の中の全てが善悪の二つに分けられるわけじゃない事は流石に弁えてるよ"と言う様なウインクだった。そっか。

 

「えへへ、そう! 実は私がパエトーンだったんだよね! けど積もる話は後にしよ! 今は早速出発して、クレタって娘を助けなきゃ!」

 

「ふふ。ええ、そうですね!」

 

「ンナ!(行きましょう!)」

 

んじゃあ早速行こうぜ。待ってろクレタ。今助ける!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

 

Sideクレタ

 

「知らない天井だ……」

 

目を覚ますと、そこは知らない廃墟だった。灰色のコンクリートの壁には、ところどころヒビが入ってる。窓は無いが、天井に照明がついている。今は何時か分からない。

 

「てか、夕焼け小焼けの帰り道からなんでいきなりこんな廃墟で寝てるんだよ?」

 

クロトと別れてからの記憶が無ぇ。けど思い出せないもんはしょうがねぇか。

       

「取り敢えず出るk……ん?」

 

ガシャン

 

起き上がろうとして気がついたが、いつの間にかあたしの手足が鎖で繋がれてやがった。廃墟、拘束、知らない天井、何も起きてない筈がなく。

 

──もしかして誘拐されたのか?

 

ドクン

 

身体の表面が青ざめたような感覚の中、速まる心臓の音が妙に頭に響く。

 

「ッ!」

 

その瞬間、こんな状況になった全てを思い出した。あれは、クロトと遊ぶ約束をしてから別れた後の帰り道 

 

〜〜〜

 

『明日はどんな映画を借りるかな〜。やっぱりド派手なアクションが観てえけど』

 

『クレタ・ベロボーグ……』

 

『ん? 誰だあんた』

  

次の日に借りる映画を考えていたあたしの前に、謎の男が現れたんだ。何の変哲もない、普通の男。だからこそ

 

『グレース・ハワードは、お前の姉だったな……』

 

そう言いながら、姉貴が使ってるゴーグルを取り出されて取り乱した。

 

『そのゴーグル!? テメェ何をしやがっ』

 

ガン!

 

その瞬間後頭部に物凄い衝撃が来て

 

 

『存外大したことなかったわね。所詮はガキって事かしら?』

 

意識を失う間に、そんな声が聞こえた。

 

〜〜〜

 

つまりなんだ、あたしは間抜けにも不意打ちを喰らって安々と誘拐された訳か。

 

「……舐めた真似しやがって

 

取引先にガキだからって舐められた時よりもムカつくぜ、やられっぱなしってのはよぉ? 腹の虫が堪忍袋の緒を噛みちぎるような滾りで脳ミソが爆発しそうだクソが。姉貴達の努力と、クロトの協力のお陰で会社が予想よりも早く良い感じに軌道に乗りかけてたのによぉ!

 

コツンコツン

 

「!」

 

怒りに燃えているあたしの前に、一人の女が現れた。その顔に見覚えは無いが……。

 

「おっと、どうやら目を覚ましていたようね。今の気分はどう? 不意打ちを受け、何も出来ずに無様に拘束された気分は。どうやらブレイカーの称号はあんたじゃ役不足みたいだったけど」 

 

笑うのを堪えるようにそんな事を言う声には聞き覚えがあった。恐らくこいつがあたしに不意打ちを喰らわせた実行犯。あの時舐めた事を抜かしやがった、生涯絶対許さん奴リストに名を連ねた期待の犯罪者だろう。

 

そんな豚がまた舐めた口をきいてきやがったせいで、頭にカッと血が登るのを感じた。そしてその怒りの衝動のまま口から罵倒が飛び出しそうになる。

 

「ふざっけんじゃn」

 

『俺は不器用だが、どんな時も冷静である事を心掛けてるんだ。慌ててミスをすると、会社全体に迷惑がかかってしまう。経理ってのはそういう業務だからなぁ』

 

その時ふと、こないだベンが言っていたことが頭をよぎった。そして、急に頭が冴えていくのを感じた。

 

ああそうだ、落ち着けよクレタ・ベロボーグ。可愛い部下が冷静であろうと努めてんだ。社長のあたしが真っ先に取り乱してどうする? それに、動揺してたとはいえ、あたしに対して不意打ちを成功させたこいつは相当の実力者だろう。挑発に乗るな。

 

「……いや、なんでもない。何しに来たんだよ」

 

「あら? 前情報から考えるともっと取り乱すと思っていたのだけれど。中々冷静なのね。後ちなみに言っておくけど、"役不足"を本来とは違う意味で言ったのは自覚しているわよ。挑発の為にわざとそうしたの。それだけは分かってちょうだい」 

 

知らねぇよ。どっちでもいいわそんなん。けど前情報、か。ゴーグル、姉貴の事、帰り道の把握……なるほど納得だ。あんな用意周到な不意討ちをするって事は、こいつらやっぱり只の犯罪者じゃねぇな。 

 

「うちには優秀な経理がいるもんでな。それで、何しに来たんだよ」

 

「経理……ベン・ビガーの事かしら。まあいいわ。所詮あなたは檻に囚われた哀れな子猫ちゃん。冷静になったところで何ができるわけでもないのだから」

 

ウフフフフフと、心底可笑しそうな声で女は笑う。

 

「ふ、フフフ……! 子猫ちゃん……フフ!」

 

……いや本当によく笑うなお前な? そんな面白くねぇだろその例え。つーかどちらかというと下手だからな。

 

「チッ、楽しそうにしやがって。で、何しに来たんだって聞いてんだが、そろそろ答えてくれねぇか」

 

「フフフフフ!」

 

いやもう良いからさっさと答えろよ。なあ。

 

「フフフフフフ!!」

 

おい。

 

「フフフフフフフフ!!」

 

フフフじゃなくて。マジで! こっちも困るんだよ! というか困ってんだよ! クソ、もう情報の探り合いってレベルじゃねぇぞ!

 

「フフフフフフフフフ!」

 

 

 

 

〜十分後〜

 

 

 

 

「……」

 

「し、死んでる……」

 

えぇ……?(困惑)

 

 

 

 

 

 

いや流石に気絶してるだけなんだが。

これ、あたしが悪いのか? 悪かったとしても罪悪感が一ミリたりとも湧かねぇが。

 

笑わず(ポーカーフェイス)の異名を持つこいつが笑い過ぎて気絶するとは。侮れんな、お前という存在は」

 

「!?」

 

呑気な事を考えていると、突然背後から男の声がした。この声は、誘拐される時あたしの目の前に現れたあの男の声だ。

 

クソ、誘拐やらなんやら展開が速すぎるだろ。けどその割には何も進んでねぇし。……一体今何が進んでるんだよ。

 

「つーかてめぇ、いつからそこに居やがった?」

 

「おっと、お前は気が付かなかったようだが、俺は五分前からここに居たぞ」

 

五分前……まじかよ。あたしが声をかけられるまで気付かないってのは相当やり手だぞ。ちゃんと真正面から戦っても勝てるのか?

 

思わず額から汗が出て落ちていく。

 

けどよ、それはそうと

 

「そんな前から居たんなら笑いを止めてやれよ……」

 

「クックックッ……

 

 

 

 

 

あいつがあんなに笑うのを見るのは初めてでな。正直俺も怖かった」

 

「えぇ……(困惑)」

 

なんだよそれは。というかこんな奴らにまんまと誘拐されたのかあたしは? もしかして本当にブレイカー失格なんじゃ……。

 

「まあいい。食え」

 

そう言うと男は何処にでも売ってそうな固形の携帯食料を差し出した。

 

「……」

 

「どうした。食べないのか?」

 

「……ふん」

 

見た目はただの食いもんでも、何が入ってるか分かったもんじゃねぇ。筋弛緩剤とか睡眠薬とか、もしかしたらエーテル侵食を速めるような薬を仕込んでやがるかもだからな。こいつらがあたしを何らかの交渉の為の人質として誘拐したのなら、あたしの弱った姿を相手に見せて成功率を上げようとする可能性は低くねぇはずだ。

 

だからここは何も食べない事を選ぶ。

 

「……その警戒心は褒めてやろう。だが、俺にとってはお前が腹を満たそうが満たすまいがどちらでも良い。"どちらにせよ"お前は弱っていくんだからな」

 

じゃあ毒入り確定じゃねえかその言い草だと。絶対食わねぇよ。

 

「けれど、捕虜は丁重に扱うのが……いや、それは捨てたんだったな。フン!」

 

男はいきなり、あたしの腹を思いっきりぶん殴ってきやがった。

 

ドゴォ!!

 

「ぐぁっ!!?」

 

重心の移動、姿勢、腰の捻り、全てがチンピラのそれじゃない。徹底的に鍛え込まれたアッパー。やっぱりこいつはただ者じゃねぇ!

 

「ぐ、うぅぅぅぅぅ……!!! い、痛い……!!

 

 

 

 

 

 

 

お前、どんな腹筋をしてやがる!? 鉄でも仕込んでんじゃねぇの!?」

 

「あ? 鍛えてんだから当たり前だろ」

 

けど、あたしの腹筋の方が硬かったようだ。奴の右拳が腹筋に負け、手首が嫌な方向に曲がっている。*11ったく、雑魚が……引っ込んでろ。*12

 

「きたえ、鍛えた……? 馬っ鹿お前、だからってこれは人体に許される硬さじゃねぇだろ頭おかしいんじゃねぇの……?」

 

「むむむ!」

 

「むむむじゃなくて……」

 

こんな状況でもあたしの冷静さを奪おうと挑発してきやがるとはな。敵ながらあっぱれという他ねぇ。

 

「待て、お前は何か勘違いをしている。俺は本当にお前のことをイカれた腹筋の化物だと思って「なんだと?」ごめんなさい」

 

"謝るので腹筋大根おろしは許してください"と意味不明な事を言いながら男は頭を下げた。

 

しねぇよそんな事気持ちわりぃ……。

 

「ほう、謝らず(パーフェクト)の異名を持つこいつに謝らせるとは。ガハハ! 侮れんな、お前は!」

 

!?

 

強敵風の男のみっともない姿にドン引きしているあたしの背後から、突如として豪快な声がかけられた。また背後を取られちまって……相手が凄いのかあたしが未熟なのかこれもうわかんねぇな。

 

つーか謝らず? それただの嫌な奴じゃねぇか。そう思って振り返ると、身長二メートルはありそうなデカいおっさんがいた。……本当にこれに気が付かなかったのかあたしは??

 

「ふっ、こいつは絶対にミスをしないからな。謝らないんだよ。故に謝らず(パーフェクト)だ」

 

なる程な。そんだけ凄ぇ奴ならあの隠密も頷ける。だが、ミスをしないからってわざわざ"謝らず"なんて言葉を使うか? 何か別の意味が含まれてるんじゃ……。

 

「……ミスをしないなら"謝らず"じゃなくて"完璧"とかにその読み方を振ってやれよ」

 

あたしは軽く探りを入れた。この状況、少しでも多く敵の情報が知りてぇからな。

 

「ああ、ミスをしない故に他人のミスに厳しくてプライベートでもその愚痴ばっか言っててな!

 

だから……その、嫌われてるんだ」

 

"嫌われてるんだ"

 

「「……」」

 

おっさんは、急に気不味そうに言った。

 

"嫌われてるんだ"

 

「「「……」」」

 

誰も喋れなかった。まるで通夜みてぇに。何を言ってもどうしようもねぇ。

 

"嫌われてるんだ"

 

「「「……」」」

 

沈黙が辺りを支配していやがる……。

これ、謝らず(パーフェクト)かおっさんのどっちかが何かを言わねぇと進まねぇよな? けど

 

「「……」」

 

おっさんは厳しい顔で沈黙を貫いてるし

謝らずの男はボケっとしてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、喋れよ! あんたが言い出したんだぞおっさん! なんでずっと難しい顔して黙ってんだよ!?」

 

「……」

 

おっさんは黙っている!

 

「喋れや!」

 

「……いや」

 

魂から出た渾身の喋れやは、ついにおっさんが重い口を開いた! よ、よーし、それでいい! なんでも良いから言っちまえ! 展開が先に進めばなんでもいいからな!

 

「なんか、今なら勢いで皆からの文句を言えるかなって思ったんだが……。そしたら思ったより緊張してな……」

 

おっさんがずっと黙っていたのは、本当に緊張していたかららしい。

……こいつガチかよ。

 

「手も足も出てねぇなお前な?」

 

あと今気が付いたけどあんた、あたしと同じ口調じゃねえか。言葉少ないから気付かなかったが。やめろよあたしの口調で弱っちい事言うの。紛らわしい上に風評被害が甚だしいわ。

 

「「……」」

 

しかしあたしの健闘虚しく、またこの部屋が静かになっちまった。まさかおっさんが喋ってもなんも展開が進まねぇとはな。進めよ。謝らず、お前なんか言えよ。

 

「「……」」

 

「くっ……全然喋らねぇなお前らな? まあ、その、うん。これからはもっと仲間に優しくすればいいんじゃねぇの? ミスしないってのは凄い事じゃねぇか。だから気を取り直していこうぜ!」

 

あまりの気まずさについ、そんな事を言っちまった。なんであたしは誘拐犯をてんだ……?

 

「いや、俺はちゃんと任務をこなしているし、できないあいつらの方が悪いだろ」

 

「へ?」

 

「予想外の事態がどうとか、事前情報より敵がとか、そんなのは臨機応変に対応できるだろう。実際俺はできている。まったく、言い訳ばかりしやがって……」

 

……多分、そういうところだぞ"謝らず"。

 

「てかお前、言うほど不測の事態に対応できてねぇだろ! さっきの沈黙に手も足も出て無かったし!」

 

「ヒェッ。ごめんなさい」

 

「チッ、お前の謝罪なんて……まあ必要だが。それで、結局何しに来たんだよお前らは」

 

「私はあなたに携帯食料を食べさせて水を飲ませにきたわ」

 

「笑わずが携帯食料と水を飲ませるだけの仕事の筈なのに中々帰ってこなかったからな。きっと途中でこぼしてしまったのだろうと尻拭いに来てやった」

 

「こいつらが遅いから心配で見に来た。ついでに嬢ちゃん、お前に水と食料を与えようとな」

 

あたしの問に、誘拐犯たちが答えた。律儀なことだ。各々の性格が滲み出てる回答だが……いつの間にか笑わずの女が起きてんじゃねえか。起きてるんだったら何か言っとけよ。それだけで状況変わっただろ

 

「ごめんなさいね。なんか面倒臭そうだったんだもの」

 

潰すぞ。

 

「……! てかオイ、待てよ」

 

突然、この状況をパズルのピースがカッチリと組み合わさったみたいに完璧に把握したような感覚が走った。あたしは、全部理解しちまった。

 

「「「?」」」

 

「今まで長々と色々あったわけだが最終的に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしに飯を食わせる奴らが三人に増えただけなのか?」

 

 

「「「……」」」

 

再びの沈黙。

 

「それはもういいって!」

 

どうなる次回!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスドスドスドス

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?

 

何だか、この建物が少し揺れている様な気がした。気の所為か?

 

 

 

ドスドスドスドス

 

 

 

い、いや、気の所為じゃない! 何かが壁の外を壊しているような音が

 

 

ドスドスドスドス

 

 

近づいて来てやがる!!

 

「な、なに? なんなの?」

 

ドスドスドスドスドカーン!

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

灰色の壁をブチ壊して突撃してきたのは

 

「〜〜〜見つけたぞ!!! クレタ!!! 三十一時間と三十三分四秒振りの再会だな!!!」

 

「クロト!!!」

 

最高の親友だった。

誘拐されているとか、ヤバイ奴らに囲まれているとか、知らない場所に縛られているとか、そんな状況に対する不安が、その姿を見た瞬間に吹っ飛んだ。

 

「……ったく、お前って奴はいつもそうだな」

 

あたしがドン底にいる時に、優しく照らしてくれるんだ。進むべき道を、頼れる家族を。一緒に居るだけで何だか安心できる。アツくなる。満月の夜空を背に飛び込んできたクロトが、まるで太陽の様に思えた。

*1
あまりに自然なあらすじ

*2
説明省略(キング・クリムゾン)!!

*3
献上

*4
いつものことやないか

*5
クロトに電流走る

*6
いつものことやないか

*7
無能博士

*8
You know(ゆうのう)無能博士

*9
クロトは訝しんだ

*10
落ち着けよ

*11
そうはならんやろ

*12
そうはならんやろ




次回、ついに原作開始前完結!
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