場面は戻り、6月20日のアジト(メメントス)にてベレスと雨宮、真により金城の改心の作戦の詳細が語られる。
ベレス
「改めてイチから説明する。まず決行日――予告状を送るのは7月6日。残り2週間だね」
雨宮
「この期間内に潜入ルートを確保する。繰り返すが、怪盗団としての動きは今までと変わらない」
真
「変わるのは先生達のほうね。さっきも言ったけど、先生、シェズ、八神さんの3人は別動隊として金城一派にカチコミに行く。
これは金城を改心した後、連中が逃げたり、金城を殺すまたは監禁する恐れがあるためよ。この3人で確実に拘束して、警察に引き渡す」
ベレス
「幹部をまとめて改心するのが一番確実だけど、時間も人手が足りない。これまでと違って今回は組織が相手だからこういう手段も必要だと思う。
そして、そのためには金城一派の当日の拠点を把握しておく必要がある。警察も把握できてない拠点を特定する方法だけど――」
雨宮
「1人、幹部に限りなく近い側近のような人物を改心する。仮に『A』とするが、そいつに拠点の場所をリークさせる。皆、ここまではいいか?」
全員が黙って頷く。
真
「さて、当日の流れだけど、先にカチコミ班から動いてもらうわ。理由は、改心と拘束はほぼ同時が理想だから。
金城達に時間を与えたくない。なんなら改心より先に拘束してしまってもいいぐらいね」
ベレス
「予告状は私達が直接金城に渡す。だから今回は複数作る必要はない。作成は喜多川くんに任せるね」
雨宮
「先生達が予告状を渡したあとを見計らって、俺達はパレスに潜入してオタカラを奪う。
金城達が拘束されて、改心を確認したらカチコミ班は撮られた写真を消去して速やかに立ち去る。
ただし操作履歴を警察が調べることも考慮し、先生達同様にまだ脅されている段階の被害者の写真も消して警察の捜査を誤魔化す」
真
「警察への連絡は改心させた『A』にしてもらう。自首のついでにね。タイミングは拘束が終わったあと――これはカチコミ班が逃げる時間を確保するため。
ちなみに『A』はかなり罪が軽くなるだろうから、あまり悪くない人を選ぶ予定よ」
ベレス
「まとめると、こうなる」
① 決行日は7月6日
② パレス攻略は怪盗団、現実での金城一派へのカチコミ、拘束はベレス、シェズ、八神
③ カチコミ組が先行して動き、金城に直接予告状を渡し金城、幹部、構成員を拘束する
④ ③のために当日の金城のアジトを幹部に近い側近(A)を改心し、事前に場所を特定しておく
⑤ ③を待ってパレス攻略組が潜入開始、オタカラ奪取及び変貌したシャドウ金城を倒す
⑥ Aが警察に自首すると共にタレコミ、カチコミ組はベレスと真が撮られた写真を消してその場から速やかに撤退
ベレス
「今、『A』を誰にするかの選定と調査を八神探偵がやってくれてる。それが終わり次第、私とシェズで『A』を改心して接触を図る。
みんなはとりあえずパレスの攻略に集中してくれればいい――こんなところかな。ジョーカー、何かある?」
雨宮
「いえ、特には」
*
そして、来たる7月6日。
ベレス、シェズ、八神の3人は渋谷某所に集まっていた。怪盗団はセントラル街に待機し、決行の時を待つ。
「それが春を射止めたっていう男装ね……なかなか様になってるじゃない」
「シェズはウィッグだけか……」
「私は面が割れてないからね。八神のほうも結構気合入ってるじゃない」
シェズが目を向けた八神の変装は野球帽とつけヒゲと薄汚れたパーカーを着たホームレスのような格好だ。
「俺も裏の界隈ではそれなりに有名なんで。それじゃ、もう行きますか?」
「そうだね――」
金城の拠点に向かおうとしたところ、ベレスのスマホに着信音が鳴る。雨宮かと思ったが、真からだった。
「真、どうしたの?」
『すいません、せめて見送りにと思って……でもよく考えたら直接会うわけにはいかないと思って、電話で』
「そう、ありがとう。真は今どこに?」
『近くまでは来たので、見える位置にはいますよ。探さなくてもいいですけど』
「気配で分かるよ。そっちの準備は万端?」
『はい。あの……先生。くれぐれも気をつけてくださいね。先生やシェズさんが負けるなんて思ってませんけど、あの時みたいに卑怯な手を使ってくるかもしれませんし」
「今回は被害者のいない純粋な幹部の集まりのようだから、心配はいらないよ。でも、肝に銘じておく」
『作戦の成功を祈ってます。始まったら連絡くださいね』
「うん。それじゃ、切るよ」
ベレスは通話を切り、スマホを内ポケットに仕舞うと二人を振り返る。
「行こうか」
シェズと八神は黙って頷いて、3人は目的地へ向かって歩き出した。
*
その日、金城一派は数日おきの定例報告会という名目で渋谷の某所に集まっていた。
半円形のソファーの中心に金城が座りその両隣には幹部ではない女性がぴったりと肩を寄せている。
帳簿や金の入ったトランクケースが乗った楕円形のガラステーブルを挟んで、対面のソファーには幹部がずらりと座っている。
その周りには10人程度の幹部付きの側近がそれぞれ適当な場所で待機している。
「そういや――あの秀尽の生徒会長と女教師の期限はそろそろだったな……何か連絡は?」
金城がぼそっと呟くと、幹部の一人が素早く言葉を返す。
「いや、何も聞いてないですね……確か合わせて1300万でしたっけ? 逃げる算段でも整えてるんじゃないスかね?」
「それはねぇな。逃げれば写真をばらまくだけの話だ。そうなりゃまともに生きていけねぇ。
逃げるってことは未来をかなぐり捨てるに等しい覚悟がいる。ああいう強気な女はそういうことはしない」
「部下に時々監視させてますが、特に金を集めてる様子もないとか……どうするつもりなんでしょうね?」
金城は煙を吐きながら、もうすぐ支配下に置けるだろう二人のことを思い出す。
「あの女教師――ベレスとか言ったか? あの女が生徒のぶんも肩代わりするつもりなのかもしれねーな。まぁ、させねーが」
「生徒会長のほうもかなりの上玉でしたからね。あの2人が風俗堕ちたら俺通いますもん」
「まぁ相当稼げるだろうな。1300万どころじゃなく」
「てか、潤矢サンの女にしないんすか? あの二人侍らせて奉仕させるとかマジ男の夢っしょ」
話を振られた金城は、溜め息を吐きながら「くだらねぇ」と吐き捨てる。
「そんなことして何の得がある? 俺にとって
「えー、ひどーい笑」
横に座る女がそう言って笑い、ひとしきり談笑が続く。ふと、1人の幹部が欠席者の存在に気付く。
「……そういやアイツ来てないな。お前の部下の、■■」
「あー、そうっすね。何か用事があるとかで――」
その時、何かが倒れたような物音が響いた。
「何だ?」
幹部の1人が顎で部下を確認に向かわせる。すると、続けて人の呻き声が連続して扉の向こうから聞こえてきた。
異常を察知した幹部が立ち上がって警戒を露わにする。
「まさか、警察か?」
「それならもっと騒ぐだろ。あいつらも警察も」
「ってことは――」
幹部たちが結論を出す前に、蝶番が壊れる破砕音と共に部屋の入口の扉が音を立てて倒れる。
「失礼しまぁ~っす……こちらに金城サンはいらっしゃいますかね?」
*
建物の外の見張り、そして部屋の入口の見張りを倒したベレス達は部屋の扉前に立つ。
「流石に気付かれましたかね」
「たぶんね。でも、逃走経路は■■が塞いでくれてるから問題はないわ」
「うん。あとは全員倒して拘束するだけだ」
さらっと言ってのけるベレスに、八神は難しい表情を浮かべる。
「簡単に言ってくれますね……たぶん中、15、6人はいますよ」
「1人あたり5人でしょ? 楽勝じゃない」
「油断は禁物。始めよう」
ベレスとシェズは扉の両サイドに待機する。八神は扉を蹴破るため、距離を取って助走する。
勢いをつけて、猛烈なドロップキックで扉を破るとそのまま堂々と足を踏み入れる。
「失礼しまぁ~っす……こちらに金城サンはいらっしゃいますかね?」
八神の挑発的な物言いに、金城はピクリと反応するが言葉は発しない。代わりに幹部の1人が声を張り上げる。
「誰だてめぇは!!」
「誰でもいいじゃないですか。それより、そこの白いスーツの方。あなたが金城サンですね」
八神は金城を見据えながら、懐から一枚のカード――予告状を取り出す。
「こちら、お届け物です。この国の悪を挫く悪党――心の怪盗団『ヴィジランツ』様から」
そう言って、八神は予告状を金城に投げて寄越した。
それを見たベレスはスマホで雨宮達に連絡を入れる。
予告状を受け取った金城は不機嫌な顔のまま首を傾げる。
「心の怪盗団……『ヴィジランツ』……なんだそりゃ。おいお前、知ってるか?」
「知らないんすか!? 6月に斑目って芸術家が罪を告白して逮捕されたって結構話題になってましたよね」
「知るかよ、俺は金以外興味ねぇし……で、その怪盗団が俺の心を盗んで罪を告白させるってか?」
「は、はぁ……そうらしいです。改心とか言われてて……潤矢さんこれ――まずくないっすか?」
「何もまずくねぇよ……改心なんかできるかボケ。問題はこんなちんけな予告状じゃねぇ」
金城は八神を睨みつける。
「お前、ただ予告状を渡しに来ただけか? 違うよな」
「そりゃもちろん。あんたを改心してハイ解決ってほど、物事は簡単じゃない。脅迫スキームで甘い汁を吸ってきた取り巻きが、改心したあんたをどうするか分からない。
怪盗団としては確実にあんた達を警察に引き渡したい。そのために俺は派遣された――あんたらをボコボコにしてふん縛るためにな」
金城は黙って立ち上がり、親指で首を掻き切るポーズを取る。
「――殺せ。めった刺しでも銃でハチの巣でも、金属バットで撲殺でもなんでもいい――さっさと殺れッ!!」
金城がドスの効いた低い声で命令を飛ばすと、幹部と側近、総勢16名ほどが武器を取り八神に向かっていく。
「やれやれ……大人しくするならやさしく縛ってあげるけど?」
「ざけんなスカタン!! その顔、ぐちゃぐちゃに潰してやる」
金属バットや角材を手にする金城一派とは対照的に、八神は何の武器も持たずただ格闘の構えを取る。
「舐めすぎだろお前……1人でしかも素手って」
「死にに来たんじゃねーの?」
ギャハハと品のない笑い声が響く中、八神は首を傾げる。
「子供相手にしかイキれないチンピラに、武器なんか必要ないでしょ」
「「「「ぶっ殺す!!!」」」」
男たちが八神に向けて殺到する。その隙を突いて、まずシェズが入り口脇から飛び出す。
そのスピードは八神に視線が集中している状態では、知覚すら困難なほど早かった。
シェズは懐からロープを取り出し、一直線に金城のもとに向かう。背後に回り、ぐるぐるとロープを金城に巻きつけ拘束していく。
「てめえ――いつの間に」
「あんたは特等席で組織の崩壊を見ていなさい」
そう吐き捨てて、シェズは金城を部屋の隅へ放り投げる。
「潤矢さん!!」
金城が拘束されたことに気付き、男たちの視線がそちらに向かう。
その一瞬の隙を八神――そして後ろに控えるベレスも見逃すはずはない。
「「余所見厳禁」」
八神は手近な男の顔を掴み、思い切り壁に当てて磨り潰し。
ベレスは入口から飛び出て、余所見をする男の後頭部を上段から蹴りつけて床面へ叩きつける。
「ひ、1人じゃなかったのか」
「誰もんなこと言ってないでしょ……ほら、来なよ」
八神は4本の指で手招きして挑発する。
「
そう宣言したベレスもまた武器は持っていない。木刀などを用意してもよかったが、当たり所が悪ければ殺してしまう可能性と、そこから警察に特定される恐れもあり格闘が安全だと判断した。
一応格闘術の技能も多少は習熟しているので、現代のチンピラ相手に遅れは取らない。
「死ねや!!」
1人の男が角材を八神の側頭部目がけて振り抜く。八神はすり足で後退して回避し、空振ったことで出来た後隙に拳をリズム良く叩き込む。
「ふっ、はっ、しゃあ! これで終い!」
最後に顔面に膝をぶち込むと男は昏倒する。その光景に怯まなかった何人かが殴りかかってくるが、八神は一つ一つ丁寧に処理していく。
「たった3人だぞ!? 何を手こずってんだ、早く殺せ!」
幹部に急かされて、2人の男が金属バットを持ってベレスに襲い掛かる。
頭部と腕に迫る凶器を、ベレスは事もなげに両手で止める。
「は?」
「なっ」
バットを強く引っ張り、バランスを崩した男の鳩尾にラリアットの要領で強烈なパンチをお見舞いする。
「――次は誰?」
辺りを見回して、油断なく構えるベレス。次々倒れていく仲間に、男たちは臆して動けない。
「クソがっ」
圧倒的に有利なはずの自分たちが劣勢になりつつあることに焦れたか、幹部の1人が懐から拳銃を取り出す。
誰も自分に近づいてきていないことを確認し、引き鉄に指を掛ける。
その瞬間、近くにいた男と格闘していたシェズが手加減なしの肘打ちで男の胸骨を破壊してから、全速で銃を持つ男の傍まで駆け寄る。
銃声が鳴る前に、シェズのハイキックが男の右手に当たって銃は地面にカラカラと転がっていく。
「銃弾より速くは動けないけど、引き鉄を引くまでなら私のほうが速いのよ」
尤も、それは能力を使わない場合の話だ。『無間の瞬動』や『閃影』を使えば銃弾より先に着弾地点へ到達できる。
「残り10人ぐらいか。こりゃ余裕ですね」
「この調子で行こう。最後まで油断せずに」
1人、また1人と幹部と側近が倒れていく。昏倒している者、あまりの痛みに動けない者が辺りに散らばりまさに死屍累々といった様相だ。
対するベレス達はこれといった傷もない。残っている者もあと5人と僅かになった。
「あとは俺に任せて、お二人は倒れてる奴を拘束していってくれません?」
「いいけど、大丈夫?」
「少しはカッコつけさせてくださいよ。このままじゃ俺の見せ場がなくなっちまう」
「分かった。気をつけて」
ベレスとシェズは八神から離れて、用意したロープで倒れている男たちを縛り上げていく。
「さて……まだやる気はあるかな? 改めて聞くけど、大人しくするなら痛い目を見ずに済む」
「ここまでコケにされて引き下がれっかよ……せめてお前だけでも倒して、人質にでもして逃げ果せてやる」
「いいね。その意気だ――じゃあ、闘ろうか」
八神は力強く踏み込むと、手直な男に正拳突きを放つ。その速度に即応できずまともに喰らうが、倒れずにナイフを取り出して八神に切りつける。
しかし刈り取られたのは八神の命ではなく、男の意識だった。八神はナイフを持つ手首を掴み、掌底で男の顎を強く打ち脳を揺さぶった。
目の前の男が倒れると同時に、残りの4人が一斉に八神へ向かってくる。そのまま応戦するかと思われたが、八神は背を向けて壁に向かって走る。
「逃げてんじゃねぇ!!」
「んなわけ――あるかッ!!」
八神は壁面を蹴り上がると、そのまま1人の男の頭を支点にして頭上からの回し蹴りを放つ。
4人が痛みに怯んでいるうちに八神は素早く起き上がり、近くのガラステーブルを持ち上げる。
「お、おい」
「じゃ、お疲れさん」
ガラステーブルを顔面めがけて思い切り叩きつけ、激しい破砕音と同時に男たちも意識を失う。
「派手にやったわね……」
「ははは……こいつらも拘束お願いします」
「はいはい」
全員を拘束し終えると、部屋の外にいた下っ端も含めた全員を1か所に集める。
「これで、構成員は全員?」
「いや、下っ端はもうちょいいるはず。まぁそいつらは放っておいても問題ないと思う」
「そう。それじゃあとは……」
ベレスは金城に視線を向ける。
「脅迫に使った写真や映像のデータはどこ?」
「馬鹿が……誰が言うかよ」
まだ改心されていない金城はベレスの問いかけに応じる気配はない。
「私用のスマホじゃないの?」
「流石にないでしょ。それ専用のスマホと、クラウドか何かに保存してると思う」
「だろうね。私から■■に連絡しない限り、警察も来ないしゆっくり改心を待つのが得策かな」
それから30分ほど待つと、金城の様子が変わった。
「お、俺は……今まで何を……」
「おっ、改心された?」
「みたいだね――改めて聞くよ、金城潤矢。脅迫に使った写真や映像のデータは?」
金城はカッと目を見開いたかと思うと、肩を落とし俯いてポツポツとデータの在り処とアクセス方法を喋りだした。
「あとはあんたら二人の写真と、脅迫で止まってる被害者の写真を消すだけね」
「そのあたりも吐いてもらおうか、金城」
「……ああ、分かった」
八神が水を向けると、観念した様子の金城が小さな声で応じた。
*
『やめろぉ……!! 俺の
「豚に真珠は似合わない。檻の中でフゴフゴ言ってるのがお似合いよ」
『てめぇ……
「哀れね……あなたから金がなくなったら何もない。お金は大事だけど、世の中お金だけで動いてるわけじゃないのよ」
『ガキのくせに知った風な口を……!! 金がなければ人はゴミ同然だ。金があれば全てが手に入る! 友も、女も、権力も!!」
叫ぶ金城の言葉を、モルガナが切って捨てる。
「そこがお前の認知の歪みだ。友達も恋人も手に入れるものじゃない。信頼を勝ち取って、認め合うことで生まれる絆をそう言うんだ」
竜司はモルガナの言葉に頷いて、更に言葉を繋ぐ。
「どうしようもねークズ野郎を俺達が改心してやるぜ。なんと無料でなぁ!!」
「フッ、タダほど怖いものはない……か。金を求めた男が、無償の善意に泣くとは皮肉だな」
そうこぼした祐介は「もういいだろう」と、真に判断を仰ぐ。
「ジョーカー!!」
真が頷いて、雨宮に向かって叫ぶ。
「分かってる。一斉に攻撃して、奴をブタトロンから叩きだすぞ!!」
全員がそれぞれの仮面に手をかけ、勢いよく剥がす。
「「「「「「――ペルソナ!!」」」」」」
火炎、氷結、電撃、風、念動、核熱、呪怨、破魔。全属性の魔法がブタトロンに叩き込まれる。
ブタトロンに亀裂が走り、一部が砕けて巨大な穴が空く。
その隙間から這い出てきたシャドウ金城を俺達は取り囲む。
『ひぃぃ!!』
「終わりだな。金城潤矢……悔い改めろ。現実のお前に戻って、罪を償え」
「無駄に痛い思いはしたくないでしょう? 殺しはしないけど、二度と脅せないように舌を抜くぐらいはしてもいいと思ってるの」
真が凄むと、シャドウ金城はへたりこみながら後ずさる。
『わ、分かった……もう悪いことはしないと誓う!! だから許してくれぇ……!』
「許すわけないでしょう。あなたに人生狂わされた人がどれだけいると思ってるの?」
真がシャドウ金城の脂肪を蓄えた腹を踏みつける。
「生涯をかけて贖罪するのよ。刑務所はただ法律上のペナルティに過ぎない。それでも許されないかもしれない、そういう罪を犯したことを自覚しなさい」
「もう二度と取り戻せないものを失った人は、土下座したって許してくれませんよ。それでも誠意を尽くして贖い続けるんです。いいですね?」
春とかすみが諭すと、シャドウ金城は観念したのかゆっくりと身体が消えていく。
『これが金を介さないと人と関われなかった男の末路だ……笑えよ、怪盗団……』
「笑えねーよ」
「貴様に何があったかは知らん。口ぶりから察するに貧乏だったのだろうな。
金は己の器に収まる量なら頼もしいが、それを超えると怪物に変わり持つ者を狂わせる。
貴様は所詮、大金を持てる器じゃなかったのだ。全うに稼げなかった時点でな」
祐介の言葉に、シャドウ金城は苦々しい顔を浮かべながら消えていった。
「終わったな。オタカラは?」
「せっかくなら、あの大きいのを」
真が巨大な金塊を指差す。
「どうやって持って帰るんだよ!?」
「アタッシュケースがあるよ。あれでいいんじゃない?」
杏が指差したアタッシュケースを手に取る。それと同時にパレスの崩壊が始まる。
「急ぐぞ! ワガハイに乗れっ!!」
モルガナがバスに変身してドアを開ける。
「全員乗れんのかよ!?」
「拡張済みだ。早くしろ!」
「そんなのできるの!?」
全員で乗り込んで、パレス内を疾走する。
「ちょっと待って。この銀行は空中にあるのよ? どうやって脱出するの?」
真が疑問を呈すると、全員の顔が青くなる。
「問題ねぇ!! 猫のバスは地上を走るだけじゃなくて空も飛べんだ!」
「何だと!?」
「飛び出すぜ!! いっけええええええ!!!」
モルガナの叫びと共に、モルガナカーは空を確かに飛んだのだった。
*
改心した金城から聞き出した情報を元に、ベレスと真を含むまだ被害が出てないケースの写真を消去することができた。
「私達も帰ろうか。やるべきことはやったし、あとは■■に連絡して警察に通報してもらえば終わりだ」
「そうね。早いとこ帰りましょう」
「ちょっと待ってください。俺達の痕跡が残ってないか確かめます」
八神はそう言って、部屋を隅々まで見て回る。5分ほど時間を使って、二人の元に戻ってくる。
「大丈夫だと思います。帰りましょう」
ベレスは頷いて、3人で堂々と金城のアジトから抜け出した。同時に■■への連絡も済ます。
その後渋谷で、何故か身体の節々を痛めた怪盗団と合流し――両面作戦は無事完遂された。
*
1時間後。明智は公安の鏑木管理官に同行する形で金城のアジトを訪れていた。
金城をはじめとする半グレのメンバーが1か所に集められ、拘束されていた。
少しづつ連行され、病院や取り調べ室に移送する準備が行われている。
「すごいですね。これを怪盗団が?」
「ああ。改心されたと思われる半グレのメンバーがタレ込みと共にこれを届けてきた」
鏑木管理官は明智へ一枚のカードを差し出す。
我々は心の怪盗団『ヴィジランツ』。
学生を狙い詐欺・脅迫・売春斡旋などで金銭を巻き上げた
半グレ集団とその首魁、『金城潤矢』を下記の場所に拘束している。
こちらは罪を暴くことはできても裁くことはできない。
是非、警察諸君の力で彼らを逮捕し立件してほしい。
東京都渋谷区■■■■■■■■■■■■■■
「――で、来てみれば本当に金城達が拘束されていたわけですか」
「ああ。首謀者である金城は改心されていた。まったく舐めた真似をしてくれる……」
「大きく動きましたね、怪盗団。これまでは慎重な印象でしたが……」
「金城を改心するだけでは解決しない、という可能性を考慮した結果だろうな。ともかく、何か証拠が残っている可能性があるから今、鑑識に調べさせている」
「僕も、少し現場を調べてみても?」
「構わない。ただし何か見つけたら報告しろよ」
「もちろんです」
明智はまだ拘束されたままの半グレメンバー達に近づく。
いずれも気絶しており、しばらく目を覚ましそうにない。怪我の程度は軽いから移送は後回しにされているのだろう。
順番に見ていくと、1人の男が拳を握っているのが目についた。
「……」
明智は振り向いて、誰も見ていないことを確認してその拳を開かせる。
そこには一本の髪の毛が握られていて――その髪は薄緑色に光っていた。
(迂闊だなぁ……先生)
明智はその髪の毛をこっそりと回収する。
カツカツと、鏑木管理官が明智に近づいてくる。
「何かあったか?」
「いえ――特に何も。やっぱり手強いですね……怪盗団は」
「そうだな。鑑識からもこれといった報告は受けていない」
明智は「何か分かったら連絡お願いします」とだけ告げ、現場から立ち去る。
(まだ怪盗団を逮捕させるわけにはいかない。軽率な行動は謹んでくださいよ、ベレス先生)
明智は回収した髪の毛を風に流して捨てた。
*
翌日、半グレグループが逮捕されたことが大々的に報道される。
その陰に怪盗団あり――と、ある週刊誌が独占スクープを発表しそれも大きな話題となった。
※モルガナカーは本作では本当に飛べますが7人は普通に重量オーバーでした
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亀更新ですが今後ともよろしくお願いします。