【完結】リリー・ポッターの存在否定   作:夜風ミシェル

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30.リリー・ポッターのいない世界で

 

 

 一月中旬。

 ふくろう便で手紙が届いた。差出人はウィゼンガモット。

 内容は、『三日後に行われる裁判に出るように』とのこと。

 ついに来たか⋯⋯と私は目を閉じた。

 

 

 

 連日、死喰い人の裁判がひっきりなしに行われている。戦争が終わっても、その事後処理は色々大変なのだ。

 裁判には当然、証人も必要。つまり私は、死喰い人に裁きを下すための証言をしなくてはならない。

 言いかえれば、私の発言次第で刑罰を重くすることもできるわけで⋯⋯。

 

「⋯⋯ぐへへへへへ」

 

 私はゲス顔で拳を握った。

 誰の証人として招集されたのか知らないけど、『素敵』な発言をして差し上げますわよ〜!

 

 

 

 

 で、裁判所なう。

 私の到着と共に、裁判官が一斉に頭を下げた。

 

「ミス・エバンズ。公平であるべき裁判において、我々は誤った判断を下してしまった。結果、無実のあなたを犯罪者扱いしてしまったことに対して、一同、深くお詫び申し上げます」

 

 私が指名手配されたのは、闇陣営所属のギボンや闇祓いの発言を鵜呑みにした彼らのせいもある。いつもの私なら、「もっとしっかり調査しろ!」と叫び散らしているところだが、今日は違う。

 私は、天使の如き笑みを浮かべる。

 

「いえいえ、もう過ぎたことですから。さて、早速本題に入りましょう」

 

 さぁ、早く死喰い人をここに!重刑に処してやるわ!

 内心はりきっていると、裁判長的ポジションの人が滔々と述べる。

 

「私たちは、いついかなるときでも、どんな人でも、その裁判を公正公明に行うことを誓います」

 

 私は小さく頷く。それ大事。これからはしっかりやるんだぞ、裁判官。

 裁判長が巻物を取り出し、読み上げる。

 

「11月、グリンゴッツ魔法銀行に侵入した際、レストレンジ家とエイブリー家の金庫から金品を持ち出す」

 

 ⋯⋯⋯⋯ん?

 

「そして先の戦争で、ジェームズ・ポッターに服従の呪文を行使した。以上の出来事に、異論はありますか?」

「え?えっと⋯⋯あの⋯⋯あはは⋯⋯」

 

 毛穴という毛穴から、嫌な汗が吹き出してくる。

 ちょっと待て。

 

 

 これ、私、裁かれる側じゃねーか!!!

 

 

「グリンゴッツ魔法銀行に侵入したことは、事情が事情なので罪に問うことはしません。ですが、他家の資産を持ち出し⋯⋯つまり、窃盗に関しては、法に則って処罰します」

「アッ⋯⋯」

「証人をこちらに」

 

 裁判長の目線の先には、両側を闇祓いで固められたレギュラスの姿が。

 彼は私と目が合うと、それはもう腹が立つくらい綺麗に笑った。

 

「レギュラス・ブラック。あなたが見たものを嘘偽りなく答えなさい」

「はい。彼女はエイブリーの股間を蹴り上げた後、彼が所持していたエイブリー家の金庫の鍵を奪いました。そして金品を漁り、その後レストレンジ家の金庫に戻って同様の行動をしました」

「それを見て、あなたはどう思いましたか?」

「合理的理由のない窃盗だと思いました」

「ありがとうございます。下がりなさい」

 

 ⋯⋯ふざけんなよレギュラス!!

 ぷるぷると震える拳を、必死に宥める。くそが。やっぱりタキシード仮面とかいう小っ恥ずかしい名前をつけるべきだったわ。

 

「また、許されざる呪文の行使は、死喰い人以外には違法です」

「えっと、それにはワケがありまして⋯⋯」

「ミス・エバンズ。我々は先ほど、公正公明な裁判を行うと誓いました。例外は作りません」

 

 だからって、私にまで厳しくしなくていいだろ!これでも私、巷じゃ『魔法界を救った英雄の一人』として名前が広まってるのにぃぃぃ!!

 公正公明な裁判、反対っ!

 

「ふっ⋯⋯」

 

 狼狽える私を見て、小さく吹き出すレギュラス。笑ってんじゃねぇわ。

 焦る私の脳内で、エイブリーやギボンが踊り始める。手を差し出して曰く、『ようこそ、アズカバンへ!』────その言葉に、私は悲鳴を上げそうになる。

 私はぼんやりと裁判官たちを眺めた。綺麗に整えられた髪型や服装、そして怪我一つない腕を見ていると、段々と腹が立ってきた。

 そして、ブチ切れた。

 

「⋯⋯こっちは死にそうになりながら戦ってきたのに、あなた方はいいですよねぇ!安全圏から眺めるだけで!最終決戦のときも、ホグワーツに来て一緒に戦ってくれなかったし!」

「それは⋯⋯我々にも、仕事がありますので」

「だーまーれー。この⋯⋯権力の犬が!」

 

 私はビシッと人差し指を突き出した。

 

「あなたたち、さっき『誤った判断をしてごめん』的なこと言ったけど、正しくは『高官から賄賂貰ってごめん』でしょーがっ!」

 

 裁判長含め数人が狼狽したのを、私は見逃さなかった。

 私を死喰い人だとして指名手配したのは、闇陣営と権力者の思惑が絡み合った結果である。ダンブルドアが目をかける人が、実は犯罪者⋯⋯なぁんてことがあれば、ダンブルドアの社会的地位を落とすことができるから。

 そのための根回しとして、司法官に袖の下を送っていてもおかしくない。半ば勘で言ったけど、どうやらそれは正解だったらしい。

 勢いづいた私は、止まることを知らない。

 

「確かに、他人の財産を盗んだのは悪いと思ってます。でも、そうでもしないとやってられなかったんですよ。謂れのない罪で苦しい逃亡者生活を強いられたのですから」

「⋯⋯だからといって、窃盗行為を見逃すわけには」

「分かりました、でしたら盗んだ金品は全て返還します。幸い、まだ手をつけてませんし。⋯⋯その代わり!」

 

 私は再び人差し指を突きつけた。

 

「私は国家に賠償金を求めます!金額は、私が返還した金品と同額で」

 

 法廷がどよめいた。『国家賠償請求』など、このイギリス魔法界ではそうそう聞くものではないからだろう。

 

「服従の呪文の使用に関しては、罰金という形で減刑を求めます。あれは、被害を最小限に抑えるために必要でしたので」

「そんなことは許されない!」

 

 裁判官の一人が台パンした。しかし、私は怯まない。

 にやっと笑ってこう言った。

 

「ならば、私はあなた方の罪を暴きます。誰が誰から、どのくらいの額の賄賂を頂いたのか⋯⋯全てを明るみにします」

「なっ⋯⋯!」

「私を裁くか、自分たちが裁かれるか、選んでください」

 

 顔色を変える裁判官たち。

 国を訴えたところで、彼らのポケットマネーが減るわけではない。しかし、自分たちまで訴えられるとなると、我が身可愛さに減刑したくなるだろう。おおよそ法廷であるまじき取引だが、このままじゃ私の人生が詰むので手段は選んでいられない。

 私は高笑いをかます。

 

「では皆様方。次は法廷で会いましょう」

「⋯⋯」

「ここも法廷ですよ」

 

 黙りこくる裁判官の代わりに、レギュラスが口を開いた。

 私は、余計なことしか言わないレギュラスを睨む。

 

「あなた、アズカバン出たら覚えてなさいよ」

「裁判長、脅迫罪も追加で」

「トッピング注文しないでください」

 

 私を殺す気か!

 

 

*****

 

「⋯⋯てな感じで、法廷で叫び散らかしてきたんだけど。結局私、どうなったと思う?」

「⋯⋯」

「聞いてる?セブルス」

 

 鉄格子を挟んで向い合っているセブルスは、神妙な顔をしていた。ぶっちゃけ、今の話より気にかかることがあるのだろう。

 私はにやにやした。

 

「そう恥ずかしがらないで?刑務官やってる幼馴染に対して、『僕のこと忘れないでぇ』とか、『アズカバンを出たら、また会おう』とかいう台詞を吐いたこと」

「ごふっ!」

 

 吐血するセブルス。そのまま床に倒れ、「誰か殺せ⋯⋯殺してくれ⋯⋯」と呻き声を上げた。芝居がかった台詞が、今更恥ずかしくなってきたようだ。まさかこんなすぐに再会できるとは思っていなかったのだろう。ウケる。

 私は刑務官の仕事に復帰した。

 冤罪も晴れた今、復帰するのは当然とも言える。⋯⋯それをすっかり忘れていたのが、彼というわけだが。

 

「いやぁ、私頑張って耐えたのよ?あなたがいい感じの別れの挨拶をかますから、流石にツッコミを入れるのは野暮かな〜っと思って」

「⋯⋯う゛う゛う゛!」

 

 セブルス、瀕死!最早言語を忘れてしまったようだ。

 私は追撃するのをやめて、新聞を渡した。

 

「元気出して。ほら、今日の一面を飾るのはこの私、リリー・エバンズよ」

 

 餌に釣られ、のそのそと起き上がるセブルス。恋って難儀ですね。

 新聞には、昨日の裁判でのあれこれが書かれている。

 

「えっ⋯⋯」

 

 どーんと掲載されている私の写真に、セブルスは固まった。私の写真が嬉しいのだろう(ちなみに、今朝会ったシリウスはこれを見て、「凶悪犯罪者⋯⋯?」と呟いた。失礼な奴だ)。

 

「ちょうど私がキレてるときで写真写り悪いけどね。枕の下に入れたらいい夢見れるわよ」

「いや、これはもう写真写りが悪いとかそういうレベルの話じゃ⋯⋯」

「ん?」

「⋯⋯」

 

 圧をかけて黙らせてから、私は記事の後半部分を指差した。

 そこには、私の判決が記載されている。

 

「インペリオは、状況を鑑みて罰金という形に収まったわ。窃盗罪に関しては、金品を全て返還することで不問に」

「ああ⋯⋯良かったね⋯⋯」

「あと、『国を訴えるぞ!』って叫んだからか、その後魔法省のお偉いさんがやって来てね。私が盗んだ金品の半額を、賠償金として支払うことを約束してくれたわ」

 

 おかげで私の懐はほかほかだ。でもこうなるなら、もっと多額のお金を奪っておけば良かったな⋯⋯。

 

「⋯⋯まぁでもね?大金を得たとはいえ、早期退職できるほどじゃない」

「確か君、働きたくないって言ってたな」

「ええ。でも仕方ないから、あと二十年くらいは刑務官やろうと思う」

 

 私は──なんでもない風を必死に装いながら──微笑む。

 

「だから、さ。それまでにアズカバンを出られるように頑張ってね、セブルス。ほら、香水買いに行こうって、前に言ったでしょう?」

 

 ホグワーツ卒業日の私の言葉を覚えていたようで、セブルスは小さく頷いた。

 

「分かった。退職祝いだな」

「そうね、よろしく」

 

 私とセブルスは小指を絡めた。

 私は、何があってもこの人を恋愛的な意味で好きになることはない。それはセブルスも分かっている。

 だからこれは友愛で、友情の証。

 それはとても美しいものだと、私は思う。

 

 

 

 

 

 鐘の音で仕事を思い出した私は、監獄の外に出た。そこには、必死に田畑を開墾する死喰い人たちの姿が。

 戦争後、アズカバンの制度の見直しが行われ、ここは随分変わったのだ。ディメンターはクビになり、全て滅ぼされた。そして囚人は、魔法を使わない農作業に従事することが義務付けられた。

 部下と交代して、私は死喰い人たちを監視する。今は監視員も一人で事足りるが、これからのことを考えると憂鬱だった。なんせ、病院に送られた犯罪者たちが続々と移ってくるからね。

 戦争で負傷した死喰い人は勿論、『葬送のロックハート』によって記憶がオブリビエイトした人も、今は病院にいる。というか、記憶喪失が多すぎて医療従事者も大変らしい。なんとか記憶を戻そうと、ロックハートは病院に通い詰めだとか。

 そんな中、極悪死喰い人だけは最優先で記憶を戻させた。

 それがこちら。

 

「穢れた血め⋯⋯っ!この私を、よくもっ!」

 

 悪魔のベラトリックスである。農具を握る姿が似合わなさすぎて笑ったら、脳天をかち割ろうとしてきたので慌ててプロテゴ。もうそこに、『天使のベラ』の片鱗を見ることはできない。

 私は目頭を押さえた。

 

「ちょっと前までは『りりー!』って呼んでくれて可愛かったのに⋯⋯。子どもの成長は早いわね、ぐすん」

「黙れ、殺すぞ」

「はい、刑務官に暴行&暴言。懲罰室に行ってらっしゃーい」

 

 私は、別の刑務官に連れて行かれるベラトリックスに手を振った。

 

「あまり煽るなよ、エバンズ⋯⋯」

「本心ですけどね、ギボン先輩」

 

 くるりと後ろを振り返って、呆れた表情のギボンに笑いかける。囚人服に身を包んだギボンは土で汚れていた。真面目に農業に勤しんでいたらしい。

 

「模範的囚人で非常にグッドですね。そんなあなたにはご褒美を上げましょう」

「刑務官が囚人に物を渡すのは禁止だぞ」

「ここでは私が法ですよ。はい、これ」

 

 私はギボンの手を取ると、小さな石を握らせる。「本物の蘇りの石ですよ」と教えると、ギボンは目を丸くした。

 

「死の秘宝⋯⋯っ!?なんで君が持ってるんだ」

「話すと長いので語りません。重要なのは、これで死者と話すことができる、という点です」

 

 片目を瞑ってみせると、私の言わんとしていることが分かったらしく、あからさまに顔を曇らせるギボン。

 

「⋯⋯これで、モリソンさんと話せってことか」

 

 私は、頷く。

 モリソンの死に、彼は深く関わっている。本心がどうであれ、モリソンを殺したのはギボンだ。

 そのことについて、彼がどう思っているのかは分からない。でも、モリソンはギボンと話したがっていた。

 

「私は既に、モリソンさんに会いました。次は、あなたの番です」

「気まずすぎるだろ。あの人は⋯⋯俺を、恨んでるはずだ」

「『クソ野郎覚えとけよ』って言ってました」

 

 勿論、嘘である。モリソンはそんなこと言う人ではない。

 でも、モリソンとの会話のあれこれを教えるつもりはなかった。

 死者となったモリソンが、私にくれた笑顔も、言葉も。そして、私が泣いたことも。

 全て、私だけが知っていればいいのだから。

 

 

 ギボンは息を吐いた。

 それから小さく、「ありがとう」と言った。

 

 

*****

 

 世界が平穏を取り戻しつつある頃。

 不死鳥の騎士団は久しぶりに結集することとなった。慰労会みたいなもので、各々が食事を持ち込んでワイワイする感じだ。

 勿論、最初は犠牲者に黙祷を捧げる。私や、私の友人は生き残れたが、それは奇跡に近いのだと私は知っている。だから、瞳を閉じて静かに祈った。

 それから、ダンブルドアが二言話して、パーティーの開始だ。

 私は、大量に買い込んだ和菓子をテーブルの上に並べた。

 早速、エマが手を出す。

 

「これ何?」

「八ツ橋よ。日本の甘味」

 

 どうやら口に合ったらしく、エマはにっこりしている。

 女子二人できゃっきゃしていたら、ジェームズが乱入してきた。

 

「なんてセンスのいいスイーツなんだ!よし、結婚しよう」

「何が『よし』なのか知らないけど、嫌です」

「無慈悲!シリウスぅぅ〜、リリーが冷たいよ〜」

「俺はぁぁ、魔法大臣になるんだああぁぁ!」

 

 既にアルコールの回ったシリウスは、ジェームズの嘆きなど聞いちゃいなかった。傷心ジェームズ、リーマスとピーターに絡み始める。

 

「リーマス、シャンパンをくれ!ピーターはつまみを!」

 

 「呑みすぎないようにね」と不安げな顔をしたリーマスの隣で、ピーターがキッシュやビスケットを皿に盛り付けていた。

 私はそそくさと近づき、その背中に話しかける。

 

「よ、『剣を抜きし英雄』様」

「その呼び方やめて⋯⋯」

 

 ピーターは極まり悪そうに縮こまる。もっとも、これは私が呼び始めたのではないのだが。

 いかにして悪は滅びたのか。世間はそれを知りたがった。そして、それに呼応するように数多の記事が出回った。その中で、ピーターはこんな二つ名が付けられたのだ。ちなみに、私は『手段を選ばぬ英雄』と呼ばれている。褒めてないだろ。

 ひとしきりピーターを揶揄ってから、今度はソファでジュースを飲んでいるロックハートに声をかけた。

 

「キッシュ食べた?美味しいわよ」

「まだ食べてないです」

 

 私は、自分の皿からキッシュを切り分けてロックハートに渡した。「ありがとうございます」と言って口に運ぶ彼に、いそいそと書類を見せる。

 

「出版社から話があったの。曰く、波瀾万丈な経験をした私に、本を書いてほしいんだって」

「確かに。冤罪をかけられて逃亡したり、かと思えば記者会見を乗っ取って宣戦布告したりと、普通ならありえないことばかりやってきましたからね」

 

 苦笑するロックハート。改めて聞くと、私ってやべー経験してきたなって思う。ハードモードすぎるぜ。

 出版社の人は、戦争にまつわることなら何でも、好きなように書いていいと言った。絶対に売れるからだ。

 とはいえ、せっかくなら文才のある人に書いてもらった方がいいわけで。

 

「ロックハート、あなたが書いてくれない?」

「いいんですか?」

「ええ、許可はもらったわ」

 

 頷くと、ロックハートは笑みを浮かべた。

 

「実はですね、私も本を出したいなーと思ってたんですよ!構想も練ってます」

 

 懐からメモ帳を取り出して、ロックハートはぱらぱらとめくった。覗き込むと、『逃亡生活、苦しさを盛る』『メディア化』『恋愛要素ないと売れない?』『結末:リリー・ロックハート』などと書かれており⋯⋯ちょっと待てぃ!!

 私はロックハートの胸倉を掴んだ。

 

「なんか結婚させられてんだけど!?」

「メディア化狙ってるので!売れるためには、程々の嘘も混ぜていかないと」

「どこが『程々』なのよ!名誉毀損だわ!」

「そこまで言わなくても良くないですか?」

 

 ロックハートはちょっと泣いてた。

 小説の内容について言い争っていたら、酒臭いシリウスが私たちの肩に両腕を回した。

 

「そーいやお前ら、会見に乗り込んだときぃ、変なことしただろぉ〜?」

「変なこと⋯⋯?」

「なんかぁ、職場が『ジェシリ』つって騒がしいんだけど」

「「あっ⋯⋯」」

 

 それ絶対、私とロックハートが壁ドンしたのが原因だわ⋯⋯。

 「おい、目ェ逸らすな」と圧をかけるシリウスの横から、「ジェシリ?何それ詳しく」とエマが生えてきた。

 二人の追求から逃げるように、私は視線を彷徨わせる。すると、こちらを笑顔で見つめるダンブルドアと目が合った。

 その眼差しは、温かい。

 私は一歩引いて、騒がしい友人たちを見る。

 ジェームズはキモいし、シリウスはキレてるし、エマはやっぱり腐ってる。リーマスは穏やかに微笑み、ピーターは前よりも楽しそうに見える。ロックハートは、なんかウインクしてきた。

 そして、アズカバンではセブルスやレギュラスが必死に働いていることだろう。

 

 

 

 ここは、かつて私が夢中になった物語とは全く違う世界だ。生き残った男の子はいないし、愛をもって死ぬリリーもいない。

 

 けれど、私はそんな世界が大好きだ。

 

 死ぬ定めだった彼らが楽しく生きていけるなら、それは何にも代え難い幸福だと思う。

 

 

 

 ハッピーエンドの条件に、『リリー・ポッター』は必要ない。

 だから私は、リリー・ポッターの存在を否定する。

 

 

 





 リリー・ポッターは存在しない。なぜなら、リリー・ロックハートになるからだよ!!


 ⋯⋯という雑な冗談は放っておいて。
 これにて『リリー・ポッターの存在否定』、完結でございます。ジャスト30話、気持ちいいですね。
 投稿し始めて半年ちょっとが経過しました。私は元々支部の民だったので、「章ってどうやって追加するんだ?」って悩んでいたのが懐かしいです。
 展開やら語彙力やら色々反省点はありますが、それでも読んでくださった方々には感謝しかありません。全キャラの知能レベルが下がったような作品なのに、ありがとうございました。振り返れば、変態やアホが増殖している気がします。『キャラ崩壊』タグを免罪符に、いろいろやらかしましたね。
 これからもちょくちょく修正はしていこうと思っているので、もし気づいたら「ここのネタがつまらないってようやく自覚したな、こいつ⋯⋯」と生温かい目で見守ってください。


 改めて感謝を。
 まずは、素晴らしき原作者様に。
 そして、この二次創作を読んでくださった方、お気に入りや感想、評価などしてくださった方、本当にありがとうございました!反応が貰える度に作者はにっこりしてます。完結記念に感想を頂けたら、もっとにっこりします。よろしければ、評価の方もお願いします。
 それでは、またどこかでお会いしましょう。
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