ウチと彼と深層心理   作:mos

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part C

 アキの家に到着したウチはリビングに案内された。

 そのリビングには誰もいなくて、小さめのテーブルがひとつだけ置かれていた。

 

 ウチが一番乗りなのかな。

 

「坂本たちはまだ来てないの?」

「あぁ、雄二たちは呼んでないんだ」

「えっ? そうなの?」

「うん。まず美波に食べてもらいたくてさ」

「ウチに……?」

「うん。皆も呼んだ方が良かった?」

「う、ううん! そういうわけじゃないんだけど……」

「そっか。よかった」

 

 ウチはてっきり皆も呼んでいると思っていた。

 今までこういう時は決まって坂本たちが一緒だった。

 こんな風にウチだけが呼ばれるなんて、今までの記憶には無い。

 だから正直驚いた。

 驚いたけど、それ以上に嬉しさが込み上げてくる。

 

 アキと二人だけの時間。

 こんなのはホント久しぶり。

 あ、でも今日は土曜だし、玲さんがいるのかな。

 

「それじゃ、もうすぐできるからその辺でくつろいでてよ」

「うん」

 

 ウチはソファでアキの料理を待たせてもらった。

 

 玲さんは仕事で出掛けているみたい。

 ウチの両親と同じで忙しいのね。

 

 そういえばアキは玲さんにウチらが付き合ってること言ったのかな?

 いつも『不純異性交遊は禁止』なんて言ってたけど、

 ウチらは不純な付き合いじゃないから玲さんも反対しないはずよね。

 もしアキが言ってないならウチが言っちゃおうかな。ふふ……

 

 えっ──?

 

 玲さんがいないってことはアキの家で二人っきり!?

 まさかアキ、それを意識してウチだけを呼んだの!?

 

 も、もしかして──!

 

 

 

 ……ダメダメ! ウチったら何考えてるのよ!

 

「美波、お待たせ。……どうかした?」

「あ……ううん! なんでもない!」

「大丈夫? 顔が赤いみたいだけど……」

 

 えっ? ウチ、顔が赤いの?

 へ、変なこと考えてるからよね……。

 

「そ、そう? 走ってきたからかしら?」

 

 ウチは適当な言い訳をつけて誤魔化してみた。

 と言っても、嬉しくて駆け足になってしまったのは事実。だから嘘はついていない。

 でもアキはそんなウチを(いぶか)しげに見つめている。

 

 とにかく落ち着かなくちゃ……。

 ウチは目を瞑り、大きく息を吸って深呼吸をしようとした。

 

  ぴとっ

 

 息を吸って止めた時、(ひたい)に何かが当てられた感触があった。

 

 ?

 

 不思議に思って目を開けると、目の前は暗くて……。

 と言うか……目の前にアキの(まぶた)があった。

 

「っ──!?」

 

 ウチは驚きで声の無い叫びを上げ、ソファの上で跳び退いた。

 その勢いでウチは背もたれにまで登っていた。

 

 ま、まさかアキ────!!

 

「熱は無いみたいだね」

 

 えっ……? あ、そっか。熱を計ろうとしたのね。

 び、びっくりした……急に額を合わせてくるんだもの……。

 

 ウチは背もたれから降りてソファに座り直した。

 

 でもアキ、本当によくウチを見てくれるようになったな。

 今みたいにウチの表情にも気付いてくれるし。

 見当違いな反応が多いけどね。

 それでも一生懸命に考えてくれるのは嬉しいな……。

 

「大丈夫よ。ホントになんでもないから」

「ホントに?」

「どうしてそんなに心配するのよ。ウチってそんなに信用無い?」

「だって美波は自分のことを考えずに行動することがあるだろう? だから心配なんだよ」

「えっ……? い、今なんて言ったの?」

 

 ウチの耳がおかしくなったのかしら。

 信じられない言葉が聞こえた気がする。

 

「美波は無茶をすることがあるから心配だって言ったんだけど……。なんかおかしかった?」

 

 ……

 

 呆れた。

 

 アキの口からこんな言葉が出てくるとは思わなかったわ。

 こういうのを『自分のことを棚に上げる』って言うのよね。

 確かに気付いたら無茶をしてたこともあるけど、アキほどじゃないわ。

 

「心配してくれてありがと。でもね、アンタにだけは言われたくないわよ?」

「ほぇ? なんで?」

「アンタ自覚無いの!?」

「自覚? なんの?」

「今アンタが言った言葉、自分に当てはめてみなさいよ」

「僕に? んー……?」

 

 アキは腕組みをして目を閉じ、思考状態に入った。

 そんなに考えることかしら……。

 ウチは黙ってアキが考えるのを待った。

 

「「…………」」

 

「?」

 

 しばらくして目を開けたアキは眉をひそめて、とっても間の抜けた顔を見せた。

 分からないのね……。

 

「はぁ……。まぁいいわ。アキだものね」

「うん?」

「ふふ……なんでもないっ。ねぇ新作貰っていい? お昼食べて来なかったからお腹すいちゃった」

「あ、そうだった」

 

 ウチはテーブルに案内されて席に座った。

 

「さ、どうぞ召し上がれ」

「いただきま~す」

 

 

 

      ☆

 

 

 

 アキの新作はとってもおいしかった。

 点数を付けるとしたら文句なしの十点ね。

 お店に出してもいいくらい。

 

 材料には昨日の帰りに買った食材が使われているみたい。

 あの買い物はこのためだったのね。

 

 この辛さは山椒かな?

 葉月でも食べられなくはないけど、おいしいとは言わないでしょうね。

 連れて来なくて正解だったわ。

 でもお父さんとお母さんには喜んでもらえそう。

 ウチも作ってあげたいな。

 どうやって作るんだろう。

 

「ねぇアキ、これのレシピ教えてくれない?」

「ん? それは教えられないなぁ」

「なんでよ。いいじゃない。減るものでもなし」

「だってさ……。教えたら美波の方がおいしく作れそうだからさ……」

「え……?」

 

 何を言っているのかしら。

 ウチよりずっと料理上手いくせに。

 どうしてそんなに劣等感持ってるのかしら。

 

 でも今は教えてくれそうにないわね。

 まぁいいわ。後で聞き出してやろうっと。

 アキのことだからちょっと揺さぶりをかければ口を滑らせるだろうし。

 

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