※この作品に出てくるタシンおじさんは、ワイルズ本編の人物とは完全に別人です

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エアプタシン概念が書きたくて書いてみた
完全な見切り発車なのでご了承ください


この野蛮人(ワイルズ)共が!!

「タシンおじさんが居なくなった!?」

 

かつて…約1000年前に栄華を誇った大国の跡地、『禁足地』。その中枢で今も尚生き残り、祖先の業を見守り続けていた守人の一族の里“シルド”に褐色肌の少年の声が響く

 

少年の名はナタ。数年前、謎のモンスター“白の孤影”に里を襲撃され、逃がされた事で外の世界に流れ着いた子供。彼は外界でハンターズギルドという組織に保護され、その組織の協力もあり、ハンターやアルマ、ジェマ達と共に果てしない冒険を経て故郷に辿りつき、亡き父の友人であり保護者でもあったタシンとも再会を果たした

 

そして、絶滅したはずであるモンスター、白の孤影の正体が…太古に生み出された人工のモンスター“護竜(ガーディアン)”の1体であったという衝撃の真実。生存本能と取り戻した故に周囲の全てを喰らい尽くす怪物と化してしまい、ハンターはやむを得ず“白の孤影 アルシュベルド”を討伐

 

人間の都合で生み出され、死に絶えたアルシュベルドの最期にナタは気落ちするが、その直後、追い打ちをかけるように里人が現れ「タシンが里から失踪した」という事実がナタの心を揺らした

 

「どなたか見かけなかったのですか?或いは、どこに行ったか心当たりがあったりは…」

「分からん。1人で里の外を出ることは何度かあったのだが、こんなに長く、まして誰にも言わず居なくなることなど…」

 

アルマの質問に里人も答えられなかった。ナタの決断は早かった

 

「おじさんを探そう!もし護竜にでも見つかったら大変だよ!」

「ああ。それに、あの護竜の捕食者(シーウー)の別個体もいるかもしれないしな」

「でも、どうやって探すの?」

 

加工屋ジェマの疑問に、全員が少し唸ってから、アルマが思いついた

 

「そうだ!タシンさんの私物があれば、その匂いを元にセクレトで追跡出来るかもしれません」

「それならば、持ってこさせよう。彼の安否に関わるかもしれんのだ、急ぐ必要がある」

「…! ありがとう!」

 

そう言われて数分後、持ってこられたのは1冊の分厚い本だった

 

「本?」

「数年前、里が壊滅の憂き目に遭って避難した時でも、彼が肌身離さず持っていた本だ。余程大切な物だったのだろう」

 

あの心優しく、欲のないタシンがそこまで大切にしている本。思わず気になったナタは軽くページを捲り…その内容に驚く

 

「これ……護竜の事が書かれた本だ」

「護竜の?」

「うん。ほら、こんなに詳しく」

 

全員が覗き込んでみれば、それは確かに護竜に関する書物…いや、もはや研究書と言っても過言ではないほど、護竜の生態や運用、専門用語がズラリと並んだページが続いていた

 

「おじさん、なんでこんな本を…?」

「護竜の事、どうにかしたかったんじゃないの?」

 

ジェマの推察は、タシンらしい責任や優しさに溢れていたが…ハンターだけは違うものを感じ取っていた。まるで、かの轟竜の獲物に対する……否、それ以上の執着心を感じ取れた。そう、悍ましいほどに

 

しかし、いくら考えても答えは出ぬと思考を断ち切ると、ハンターは締めるように口にした

 

「準備を終わらせたら、出発しよう」

 

 

 

タシンの捜索は難航した

 

理由はタシンの匂いを追跡出来なかったから…ではない

 

追跡そのものは順調だった。問題は、その追跡を阻むように数多くの護竜がハンターの前に立ち塞がったからだ

 

その数は、優秀な調査員であるアルマの推薦を受けた歴戦のハンターですら、その半数すら相手取るのを諦めさせるほど夥しい数であり、セクレトで細道や断崖を経由し続けなければならないレベルであった

 

それでも狩猟を避けられない状況もあり、その時は迅速に護竜アンジャナフ亜種を討伐することで警備を掻い潜り、何とか竜都の跡形深部まで辿りつく事が出来た

 

護竜達による追跡を振り切ったのを確認したジェマは、ため息と共に愚痴をこぼす

 

「ハァ…まったく、とんでもない数だったわ…」

「凄かったね」

「この辺りは、護竜も見当たりませんね」

「最奥まで近づいているということだろう」

「おじさん、どうやってこんな所まで来たんだろう…」

 

ナタの独り言を耳にしたハンターは1人思案する

 

そう、ナタが呟いた通り、この先にタシンがいるとして、たった1人でどうやってここまで辿りついたというのだろうか?

 

ここに来るまでに見かけた護竜の数は尋常ではなかった。並のハンター、否、おそらく歴戦のハンターがフルパーティー(4人全員)で挑んだとしても、深部にまで到達するのは1日や2日では足りないだろう。ましてやセクレトが無いならば逃げ切ることも出来ず、ひたすら物量で押し潰されて死ぬ

 

「……それにしてもあの護竜達、まるで私達が先に進むのを阻むかのような…」

 

カチリカチリと、ピースが嵌っていく。そして、仮定として浮かび上がってきた結論は…信じ難いもの

 

(まさか……)

 

結論を出せぬまま、ハンター達は進む

 

そうした果てにハンター達に待っていたのは……酷く広々とした空間と、その奥で光り輝く巨大な結晶

 

「あれは──」

「…タシンおじさん?」

 

そして、その結晶の前で佇む、タシンだった

 

こちらに背を向けたままタシンは息を吐く。まるで出来の悪い子供を見て、失望したかのように

 

「…まさかここまで辿りつくとはな…外界の人間達を侮り過ぎたか」

「おじさん、どうしてこんな所まで?危ないよ、早く帰ろう。里の皆も──」

 

そう言ってタシンに近寄ろうとセクレトから降りるナタを、ハンターは庇うように手で制した

 

「え…?」

「ナタ、降りるな。皆もだ」

「なるほど…勘がいいな。護竜の群れを潜り抜けただけの事はある。流石野蛮人(ワイルズ)共」

 

振り向いてこちらを見るタシンの眼は、明らかに、残酷なまでに、ハンター達を見下し切った眼をしていた

 

「ワイルズ?」

「お前達の事だよ。1000年経っても尚、我々の技術の足元に辿りつけない。武器を手に血みどろになってモンスターを狩る…まさに野蛮人(ワイルズ)と呼ぶに足る野蛮さだ、そうだろう?」

「…なーんかやな感じ…」

 

自分達の技術を見下されたこともそうだが、初めて会った時とは比較出来ないほど冷たい雰囲気、態度にジェマは顔を顰める

 

そして、そんなタシンの変貌を目の当たりにしたハンターは、当たりたくもなかった予想が当たってしまったのだと臍を噛む

 

「やはり、あの護竜は貴方が仕向けたものか」

「えっ!?」

「ふむ、流石に分かるか」

 

ハンターの言葉をあっさりと肯定するタシン

 

「どうやって?護竜達はコントロールを失っているんじゃ…」

「先入観で考えるのは良くないぞ小娘。かつて我々の先祖は護竜を動かしていたのだ。ならばその子孫である私に動かせぬ道理はあるまい」

「ま、待って!それじゃあ、タシンおじさんは、僕達を…」

 

ナタはその先を口にしたくなかった。もしそれが真実とするならば、タシンは護竜を使役して、ナタ達を外敵として排除しようとしたと…

 

「なんで…おじさん、どうして!?」

 

そんなナタの悲痛な叫びを

 

「邪魔だったからだ」

 

タシンは無情な一言でもって答えた

 

「………えっ」

 

葛藤も含みもなく、ただただ簡素に伝えられたが故にナタは思わず放心してしまった

 

いくらその言葉を分かるように噛み砕いても、ナタは一切が理解出来なかった。だって、それを理解してしまえば、タシンとの生活や思い出は……全部、全部が、偽りのものだった事になってしまうのだから

 

当然、その言葉に怒りを覚えるのは、数年間ナタと交流し続け、彼を弟同然のように可愛がっていたアルマだった

 

「なんて事を言うんですか!ナタが、ナタがどれだけ貴方を心配してたのか、分からないんですか!?」

「…貴方の目的はなんだ?ここで何をしているんだ?」

 

このままでは埒が明かないとハンターは問いを投げかけた

 

タシンがあれだけの数の護竜を配置してまでここに侵入者が来る事を拒んでいた。その理由は一体?相応の理由があるはずだ

 

「やれやれ、せっかちなものだな。…いいだろう、教えてやろう」

 

そうしてタシンは、静かに、ゆっくりと口を開く

 

「この地にはかつて、果てしない栄華を誇る大国があった。無限のエネルギー、尽きぬ資源、竜さえも生み出し使役する技術……永遠の繁栄が約束された千年帝国…しかしそんな大国は滅びた。何故か?」

 

タシンは手振りで視線を促す

 

「嘘!?」

「あれは!?」

 

その先には巨大結晶、すなわち龍灯があり…逆光で見えていなかったが、その中には巨大な龍の影が見えた

 

「自らが生み出した最強の護竜“ゾ・シア”に滅ぼされたからだ」

「ゾ・シア…」

「その先は知ってのとおり、生き残った我々の祖先はこの竜都の跡地に根付き、護竜達を見守る使命を連綿と受け継いできた…」

 

言い終えるとタシンは拳をブルブルと震わし…怒りの表情で叫んだ

 

「ふざけるなっ!!何故顔も知らぬ先祖達の尻拭いを、我々が永遠に続けていかねばならんのだ!?下らぬ罪滅ぼしの為に、我々が自由を失う道理がどこにある!?」

「………」

「いや、そもそも罪と考えること自体間違いなのだ!!かつて竜都が滅びたのは神罰などではない!ゾ・シアを支配出来なかったからに他ならない!!」

 

興奮し、唾を飛ばしながら語るその男の眼は、狂気の坩堝が渦巻いていた

 

「支配…?タシンさん、もしや、貴方の目的は…」

「そうとも!私は愚かな先祖とは違う!この手で全てをコントロールし、今後こそ、永遠に繁栄出来る竜都を復活させるのだぁ!!」

 

その衝撃の宣告に、全員が閉口した

 

あまりに壮大なタシンの目的。人間1人が抱えるには大きすぎる野望

 

それが、まさか人が居ないとされていた禁足地で行われていたなど、一体誰が想像出来るというのだろうか?

 

「今!我々の野望の第一歩が歩みを始める!!ハァーッハッハッハッハッハッハ!!」

「違う…」

「ハッハッハッハ……何?」

 

だが、そんなタシンの高笑いに水を差したのは、今まで黙りこくっていたナタだった。ナタは地に足をつけ、歩を進めながら静かに言う

 

「なんでタシンおじさんがそんな風になっちゃったのか、僕には全然分からないけど…支配だの繁栄だの、そんなの、絶対に皆も、父さんも望んでいないッ!!」

「ナタ……」

「竜都を復活させるって、つまり、新しい護竜も造るってことでしょ!?アルシュベルドは、人間のせいで苦しんで、自由に生きられなかったのに…そんなモンスターがたくさん生まれるんだよ!そんな悲しい事、絶対に間違ってるっ!!」

 

血を吐くように少年は叫んだ

 

自分を育ててくれた恩人と相対する。それはとても辛いことだ。まだ子供のナタには尚のこと

 

それでもナタは、タシンに立ち向かった。かつての優しく、思いやりのあるタシンおじさんに戻ってほしい一心で…

 

そんな子供の大きな決心を前にしたタシンは……眉間に皺を寄せながら、忌々しげに吐き捨てた

 

「…ナタ…お前は本当に、父親に似てきたな……私の計画の邪魔をした、あの忌々しい男と瓜二つだ」

「え…?」

 

タシンは思い浮かべた。友人気取りで自身の野望を幾度と邪魔してきた男の顔を

 

「あの男は、お前と同じ事を言いながら私の夢を…自由を否定し続けた。それに、あいつは私の計画を無に帰すほどの役割を担い…そしてそのペンダントを持っていた」

「ペンダント…?」

「お前の父親は、いざと言う時に龍灯を停止させる権限と役割を持っていたのだ。そのペンダントは無限のエネルギー、竜乳を打ち消す反物質の塊…それを龍灯に投げ入れるだけで、龍灯を完全に停止させるほどの代物なのだ」

 

ナタは、ふと気づく。そう言えば、父は失踪する直前にこのペンダントを自分に渡してきた

 

今なら分かる。父さんは、龍灯を止める力を子供に託したのだと

 

「そのペンダントこそが、私の計画における最大の障害…故に、目障りだったお前の父親を私は始末したのだ」

「と…父さん、を…?」

「正確に言うならば、生かしてはおいたがね」

「ど、どこに!父さんはどこにいるんだよ!?」

「もう会ってるじゃないか」

 

そしてタシンは、口元に薄い弧を浮かべながら…告げる

 

 

「アルシュベルド…だったか?」

 

 

「───」

 

今度こそ、ナタは言葉を失った

 

背後にいたハンター達も、予想外すぎる回答に動揺を隠せずにいた。ジェマが絞り出すように呟く

 

「どういう、意味よ…!?」

「私は研究し続けた。ゾ・シアほどの力を持つ護竜を制御するにはどうすれば良いのか?意思を奪って制御した程度では、強過ぎる力が暴走してしまう。ではどうすればいいか?…私はこう考えた」

 

 

「空っぽの護竜の肉体に、人間の意志を植え付ければいいのだとな」

 

 

「お前の父親は実にいい実験材料だったよナタ。奴のおかげで人間と護竜を融合させる技術は飛躍的に向上した……だが、完全に誤算だったのは、奴の意識がアルシュベルドの中でまだ生きていたことだった」

「何…?」

「まだ研究が半ばだった故に、里での立場を失うのは避けねばならん。だからこそゆっくりと時間を掛けてお前を絆し、ペンダントを手に入れ破壊しようとしたのに…あの男めッ!最後の最後まで邪魔をしおって!」

「アルシュベルドが…父さん…?」

 

タシンが思い出して苛立つ中、ナタは顔色を真っ青にしながら唇を震わせる

 

「そんな……じゃあ、あのアルシュベルドは、僕を助けようとして…それなのに、僕は…!!」

「結局、私はペンダントごとお前を里の外に追放することしか出来なかった。しかし、里の中で生まれ育った子供が外の世界を生き延びられるはずがない。そう思って楽観視したのが間違いだったと言わざるを得んよ…まさか、本当に生きて帰ってこようとはな」

 

そのセリフは「お前は死んだほうがよかった」と言外に告げているものであり、その意味を理解した瞬間、ナタは膝から崩れ落ちた

 

その身勝手な振る舞いは、ハンター達を激怒させるには十分過ぎた

 

「酷い…!酷過ぎる!!」

「このへぐなちゃごがっ!!」

「ナタをよくも…!!」

野蛮人(ワイルズ)がごちゃごちゃと…しかし無駄だ!もはや私の計画は誰にも止められん!止められんぞ!!」

 

ハンター達に背を向け、龍灯に近づいていくタシン。それを薄目で見たナタは、跳ね上がったかのように体を動かし、ハンターのセクレトの鞍に付けられていた片手剣を握り、タシンに向かって走り出す

 

「ナタ!?」

 

アルマが慌てる。が、彼女より早く気づいたハンターがナタを拘束し、押さえつける

 

「ぐぅぅ!!」

「落ち着け、ナタ」

「いやだ、離せよ!」

「ダメよ!ハンターの武器は、人には向けてはならないって決まりがあるのをナタも知って…」

「人なもんかっ!!」

 

その叫びに、一瞬固まる

 

「父さんを護竜にして!僕を里から追い出して!皆も殺そうとして!あいつが…あいつこそモンスターだろ!!」

「ナタ……」

「あいつのせいで!あいつのせいで、めちゃくちゃになったんだ!父さんも!!里の皆も!!僕も!!」

 

留まるところを知らない怒りの氾濫を吐き出す少年の涙に、3人とも胸を締め付けられる思いだった

 

だが、悪は待ってくれない。龍灯に辿りついたタシンはその結晶に触れながら、恍惚の笑みを浮かべる

 

「さあ行け、ゾ・シアよ。まずは我らの縄張りに巣食う侵入者共を片付けてこい!」

 

龍灯を覆う結晶が砕ける。中から現れたのは、全身が結晶化した竜乳に包まれた、四脚二翼の巨大な龍。その龍は悍ましい雄叫びを上げながら、龍灯の上部にある巨大な穴から地上を目指す

 

「ゾ・シアが!?」

「あれを放置したら地上がマズイよ!」

 

ゾ・シアを放置すれば、“シルド”にいる皆どころか禁足地全域が危険に晒される。下手をすれば西の大陸にまで被害が出る可能性がある。急いでシルドに向かおうとして、ナタがハンターの防具を掴む

 

「待って、あいつはどうするの!?あいつを放ったらかしにしたら!」

「今は皆を守らなければならない」

「っ……!! うわっ!?」

 

悩んでいる時間はない。ハンターはナタを無理やり自分の後ろに乗せると、全速力でセクレトを走らせた

 

 

「さらばだ野蛮人(ワイルズ)諸君。もう会うことはないだろう」

 

 

そして、去っていく者達に聞こえるように、タシンの声が広場に響いたのだった




気が向いたら続き書きます
なかった場合は勝手に補完してくだしあ

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