遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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筆が乗った今日この頃。
この調子でどこまでも進めればいいな。


夜会話

 

 

「よぉ 飲んでるか?」

 

「下戸でな。食わせてもらってるさ」

 

「そうかい、ちっと残念だがまぁいいか」

 

 カイルは上機嫌で酒を飲んでいた。宴会が始まってから結構な時間がたってるはずなのに今なお飲めるとは流石というべきか。

 羨ましいというか、それでこそというか。やっぱり海賊なんだなってそう思う。

 

「アンタんとこの部下達と酒を酌み交わしてきたが、良い奴らだな」

 

「…自慢の部下達だ」

 

 いつの間にカイルは部下達と一緒に酒を飲んでいたんだろう。全く気付かなかったしそして驚くのはそのカイルのコミュ能力の高さだ。

 

 陽キャというか気風の良い男だからか。裏が無く明朗快活だ。人に好かれやすい男であるし実際俺もカイルには好感を抱いている。

 

 

「で、そんな面して俺に何の様だい?」

 

 だが、それはそれとして思うところがあったのだ。

 

「……すまん、ずっと腹に入れておこうと思ったのだが」

 

「いいさ、アンタが俺に対して何か含むのがあって尚且つそれを我慢してることも知ってたさ」

 

 本当に良い男だ。この俺のどうしようもない感情をそれもまた良しと受け入れてくれていたのだ。

 

 だが、それもやめにしよう。島での戦いはもはや最終局面にたどり着く。俺がその時に腹に抱え込んだまま器用に協力なんてできるはずがないのだ。  

 

 深呼吸を一つ、そしてはっきりと言い切った。

 

「お前たちカイル一家が船を襲った事。俺は未だに根に持っている」

 

「…………」

 

 カイルは何も言わず、酒(ワイン?)を眺めていた。辺りには幸運な事に誰もいない、騒々しいのにどこか静かだ。

 

「お前たちが極力人を襲わない者達だというのは理解している。海賊業と言っても略奪ではなく冒険業が本職なのだろう」

 

 そもそも魔剣を奪うのだってヤードに頼まれたから行ったのだ。いわばヤードが依頼しただけでカイル達は仕事を行なっただけにすぎん。

 

「だが、だがな」

 

「あの船には堅気の連中が乗っていた。それこそレックスやアリーゼが」

 

 口を開くカイルの声は静かだ。その声には感情は含まれずどこか淡々としている。

 

「そうだ。一般のただの船旅を楽しもうとしていた人たちがいた。目的地へ行くために乗っていた人々がいた。……船を操るその仕事に携わる人たちが大勢乗っていた」

 

 船旅をしようとしていた人たちは勿論、船を動かすには多くの人の力が必要になる。多くの人が乗っていたその船を。

 

「……魔剣を目的に動いていたから一般人を襲っていたわけではないのも知っている。警備兵たちは襲撃にはあったがな」

 

 警備兵は船とその乗船客たちを護るのが仕事だ。だからその者達を襲った事それについてをとやかくは言わない。  

 

 俺が言いたいのは…一般人に恐怖を与えたのが許せなくて。でもその責任は俺自身にも大いにあって。

 

「カイル」

 

「ああ」

 

「俺の八つ当たりに付き合ってくれ」

 

「勿論さ」

 

 結局、そういうことなのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞きたいが、マストが折れた船は嵐にあったら沈むのか」

 

「その状況による、としか言えん。俺達の見立てでは嵐は一貫性によるものだ。被害が出ても船は沈むとは考えにくい」

 

「そうか…」

 

 歩きながらそう会話する。目的の場所は丁度ユクレス村の中心地だ。まだまだ仲間たちの宴会は終わってはいないがそろそろ幕引きも近いと言おうそんな時間帯。 

 

 しかしそれを聞けて安心した。てっきり沈んだかと思っていたが…いや。結局のところこの島から出なければそれはわからんという事だ。

 

「では一つ頼むとしよう」

 

「なんだい?」

 

「騒動が終わったらで良い。お前たちのやり方でいい」

 

 どちらにせよカイルには一つ頼みがあった、彼等でしかわからず彼らが一番知ってることを。

 

 

「お、なんだなんだ?」

「カイルに…ギャレオ?」

「何やってるんだアイツ等」

 

 広間のど真ん中にいるからかギャラリーが集まって来た。誰も彼もが不思議そうに見ている。

 

「アレは…なるほど流石副隊長」

「んぁ あぁ海賊とやり合うとは律儀な」

「真面目な人だな。それが良いんだけど」

「大人になれないのさ、いい意味でも悪い意味でも」

 

 …いや部下達は何をするのか察したのだろう。次々と青白い顔をしながら酒瓶片手に集まり出した。物好きな奴らめ。

 

 

 そしてカイルと向き合う。

 

「祈ってほしい。あの船に乗っていた者達が無事であると。お前たちのやり方で」

 

「ああ、祈るさ。あの船を襲ったのは俺がそう決めた事だ。そしてその責は全て俺にある」

 

 やはりカイルは良い男だ。船を襲ったことに後悔の色が見られない。それは開き直りではなくそれ相応の覚悟がある男の顔だ。

 

 だからコレに乗ってくれたんだろうけど。

 

 

「では」

 

「ああ」

 

 そうしてゆっくりと構えて…俺達は盛大に

 

 

 殴り合った。

 

 

 

 

 

 

 

「「うぉおお!!」」

 

 放たれた拳は両者の顔に躊躇なく入った。拳の威力は互角だ。ではカイルと俺の違いで言えば

 

「オラァ!」

 

「ッ!」

 

 奴の方が一手早いという所だろうか。『先制』『ダブルアタック』か?まぁいい。何にせよカイルの方が攻撃性能が上。

 

 では俺はというと?

 

「…どうした?まさかそれで終わりだとは言わんよな?」

 

「へっ どんだけ頑丈なんだよアンタは!」

 

 耐久力という面では俺の方がはるかに上だ。単純な体力はもとより筋肉の分厚さでは俺の方が圧倒的な優位性を持つという事だ。

 カイルも鍛えてはいるが俺よりは細身。…正面から見ると細身なのに横から見ると胸板厚いんだよね。目の錯覚か?

 

「フンッ!」

 

「せいやっ!」

 

 と両者の性能が分かった所で何をするわけでもなく殴り合いをするのですが。

 

「おっしゃヤレヤレ!」

「副隊長かましてください!」

「やっぱ話し合いの根源は殴り合いになるんだよなぁ」

「しょうもねーなぁ馬鹿ばっかりなんだから」

 

 部下達のヤジが飛んでくる。無責任に煽って殴り合いを楽しんでいる馬鹿共。後で隊長に怒られても知らんぞ。俺もだけど。

 

「ちょ、ちょっと二人ともどうしたの!?」   

 

 そうして遠慮なくカイルと殴り合っていればまぁ来るのはレックスだよな。かなり慌てているが安心してほしい。

 

「見て分からんか?」

 

「何処からどう見ても、殴り合っているようにしか見えないよ!?」

 

「レックス止めてくれるな。何も憎くてやってるわけじゃねぇ」

 

 割かし殴っていたので顔には青痣をこさえたカイルが俺に視線を向けたレックスを止めた。

 

「レックス。別に俺は憎くてカイルを殴っているわけではない。自分のわだかまりを解消するためだ」

 

「わだかまり?」

 

「俺達が襲った船の事だ。――ギャレオ達が守っていた船の事だ」

 

 その言葉を聞いてレックスははっとした顔をした。周りにいた連中も分かったのだろう部下たち以外は複雑そうにしていた。

 

「アレは結局のところ船を守れなかった俺の責任だ。だからカイル達を責めるのは違うだろう。だが…」

 

「だがあの船には堅気の連中が乗っていたのもまた事実だ。そいつらが嵐でどうなったのか…俺は何も言えん」

 

 結局のところ悪いのは襲ってきたカイル達であっても、その船を守れなかった俺達の責任は大きいのだ。 

 

 そしてその責任は俺個人の責任も大いにある。原作が何が起きるのか知っていたのに対策をしておらず見逃していたのも事実で…。

 

「これは俺の八つ当たりだ。船を守れなかった事に対する後悔だ。それをカイルに付き合わせてもらってる」

 

「そしてその八つ当たりを俺は受ける責任がある。だから止めてくれるなや先生」

 

「カイル…ギャレオ…」

 

 暴力沙汰が嫌なレックスには理解できん話だが、こればっかりはどうしようもない。

 

 俺の燻るわだかまりを解消するためにどうか納得できる方法で終わらせたかった。

 

「心から感謝するカイル。俺の我儘に付き合ってくれて」

 

「良いって事さ。アンタにはいろいろと世話になったからな」

 

 ニヤリと笑い血を拭うカイルは本当に男前だ。その顔を見れると心の憶測でくすぶっていた悪感情が抜け落ちていく。

 

 船を襲った事、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そんなしこりの様に残っていた疑念や怒りが溶け落ちていく。

 

「アニキ―やっちゃえ!」

「カイルさんファイトです!」

「しょうがないわねぇ」

「治療をしなければいけない私の身になってほしいのですが」

「クノンでっかい注射器を用意しておきなさい」

 

 ガヤに徹しているカイル一家は、まぁいいか。クノンとアルディラは本当にごめん。怖いからその目を止めてほしいのです。

 

 

「さぁ、これで終わりにしようか」

 

「おう、行くぜ俺の十八番!」

 

 カイルが拳を構えた。これはあの頼りになる必殺技が来るか。カイルを不動のエースたらしめる優遇技が!

 

 なら、俺のすることはただ一つ。

 

「フゥゥウウウ!!」

 

 ストラを纏い、ただ耐えるのみ!

 

「やってやるぜ!でっやぁああああ!!!」

 

「ぬぉぉおおおおお!!」

 

 カイルの渾身の一撃が、俺に迫ってきて……

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさぁ、そう言うの分かってるつもりだけど。もっと穏便に出来なかったの」

 

「すまんすまん、どうしてもあの場ではそう言うノリになってな。すまんかったな」

 

 宴会が終わって片づけはひとまず適当にして明日掃除をしようとなって、俺は気が付けばレックスと会話していた。

 

 顔や体中は青痣だらけで中々痛い物だが、それも明日には良くなっているだろう。

 

「…奴には悪いことをしてしまったな」

 

「大丈夫だよ、カイルも気にしていたんだし。…何処かでそう言われたかったのかもしれない

 

 カイルの事で流石に不躾だったかと思えばレックスは気にしてなくて寧ろ気晴らしになれたんじゃないかと。

 

 ……話題にしていなかっただけでやっぱ気にしていたのかな?俺にはよくわからないけど。

 

「船の人たち、無事だと良いが」

 

「そうだね。…きっと大丈夫だよ」  

 

 結局、あの必殺の一撃を喰らっても俺は耐え抜き、カイルは疲労困憊という結果になった。最初から勝ち負けをしようとしていた訳ではないので別に構わないのだが。

 

 それでカイルはちゃんと船の人たちが無事であるように祈ってくれるという事だった。そういうところはやっぱり船長なんだなと。

 ……スカーレルがこっそり教えてくれたがカイルはカイルでこの島に流れ着いた時から海賊式の方法で乗客たちの無事を祈ってたらしい。

 

「そういえばさ」

 

「何だ」

 

「皆の事止めてくれてありがとう」

 

 何事かと思えば、集いの泉で皆が無色に対して突撃かまそうとしていた事だった。俺としては当然というか…。

 

「礼を言う事ではない。いやそもそも奴ら脳筋すぎんか?何も対策も作戦も無しにただ力押しでぶつかろうとしていたんだぞ?」

 

「あ、あはは、それだけ皆が追い詰められていたというか、必死だったんだよ」

 

「原因が言うと中々に説得力があるな」

 

「うぅ…」

 

 それもこれもレックスが引き籠ってしまったからで。皆でどうにかして無色を追い払おうとしたわけで。そして更に言えば魔剣をぶっ壊したイスラが原因で。

 更に言えば覚悟もなく無謀にイスラと戦ったレックスが原因で?

 

 やっぱ巡り巡ってレックスにも責任があるような?

 

「はぁ~この話は止めよう。皆が無事だった。それで良しとしよう」

 

「そうだね。みんな無事で、無色を追い払えた。それで良しだ」

 

 俺の無理矢理な納得にうんうんと頷くレックス。…改めて見ると若いな。大人なのに若い。言ってる意味は分からんがとても若いな。

 

 俺より年下の普通の青年だな。

 

「後は…イスラを止めないとね」

 

「ああさっさとあの玩具を取り上げんとな」

 

「玩具って。魔剣だよ」

 

「そう、持ち主の精神が刃となる魔剣だ。なら大した脅威ではないさ」

 

 魔剣『紅の暴君』レックスが持つ剣と対になる魔剣。イスラが適格者だったので持ってはいるが…アレに関しては実はそれほど脅威だとは思っていない。それはゲームシステムだとかそういう問題では無くて。

 

「随分と余裕そうだけどイスラは甘くはないよ」

 

「無論だ。しかし、だ。俺とお前達、全員がいる。寧ろ負ける要素が見当たらんが?」

 

 普通に考えると、俺とそしてレックスたちが協力すれば敵なんて者はいないのだ。数的な優位もあるが精神的な物。

 

 つまり

 

 正道の道を大手を振って歩くことにのなんと気持ち良さよ。

 

「それじゃ遠慮なく頼りにさせてもらうよ」

 

「おう、どんとこい」

 

「分かり合うために戦う事になるから結構大変かもしれないけど?」

 

「承知の上だ。そもそもお前がそう思って奴の所へ行くのだろう。なら俺はその道をこじ開けるまでだ」

 

「そうだけど…ああ、アズリアが頭を抱える訳だ

 

 あ、レックスが苦笑した。そして小声でアズリアが頭を抱える訳だって笑った。聞き逃してやるけど覚えてろよまったく。

 

「ギャレオはさ。この戦いが終わったらどうするんだ?」

 

「俺か?俺は、まぁ帝国に帰って軍法会議を受ける事になるな」

 

「あ……」

 

「責任は隊長が持つとはいえ任務は失敗した。護送していた船は襲撃され、魔剣紛失おまけに俺達の軍船は破壊されており言い訳は出来ん」

 

 その為にビジュが無色の情報をすっぱ抜いてきたが、それがどこまで役に立つかはわからん。部隊が壊滅はしていないとはいえ…

 これは体面的に情けないが隊長の実家であるレヴィノス家の力も借りた方が良いのかもしれん。

 

「隊長は降格されるかもしれんが部隊が解散となるかどうかは…こればかりは帰って見ないと分からんな」

 

「その」

 

「何も言うなレックス。お前は守るべきものを守った、それだけだ」

 

 部隊の事については申し訳ないがレックスは謝らないでほしいし申し訳なさそうにしないでほしい。

 悪く言えばこの島に流れ着いた、いいや魔剣の護送が任務として命令を下された時から分かり切っていた事だ。

 

「俺、力になるから何でも言ってくれ」

 

「だから…ん?何でもと言ったな」

 

「え?そうだけど…」

 

 罪悪感か責任感か滅多なことを口走るな馬鹿者!そこでキョトンとするなお前はどうしてそう…んもぅ!    

 

「それでギャレオはアズリアと一緒に行くの?」

 

「そうだな。色々とあの人を支えなければ…」

 

 部隊の事は勿論、レヴィノス家の事も考えなければいけないのだろう。あの人の父親がどんな人かは知らんが話の分かる人だと良いが…

 

 俺も副隊長として出来る事はしなければ…元々何も出来ないとかそんな事は無いよ!ビジュに聞いてみようかな…

 

「そっか、ギャレオはアズリアについて行くんだね…」

 

「うん?」

 

 なんか寂しそうな様子のレックスが一つ頷いた。その顔はなんというか……え?

 

「アズリアの事、頼むよ」

 

 この男を認めて女性を託すような言い方とその口ぶりとこの覚悟を決めたような顔。まさかレックスお前。マジ!?

 

「あ、ああ……もしかしてお前、俺がアズリア隊長の事を女性として意識していると思ってるのか?」

 

「え!?違うの!?」

 

 物凄く驚くレックス。マジかこの男本気で言ってんのかと表情が物語っている。えぇ!?結構失礼な事を言う奴だな!?

 

「あんなに慕ってて?それで弱った時には支えているのに。傍から見ていたらそう見えるのに違うの!?」

 

「お前隊長と俺の事を何だと…」

 

 傍から見てたらそう見えたのか?いや違うだろう。レックスが勘違いしているだけだ。そうに違いない。

 

「そもそも俺はあの人の事を上司として上官として慕っているだけだ。そこに男女としての恋情はない」

 

「あんなに迷惑かけているのに!?アズリア、ギャレオの前だと凄い優しい顔になってるんだよ!?」

 

 んなこと言われても…思い当たることは多々あれどそれはアレじゃない?手のかかるペットのような…俺あの人のペット枠かよごめん言ってて少し悲しくなった。

 

「兎も角だ、俺にはあの人を副官として支えるつもりではあるが人生のパートナーとして支えようともましてや求めているわけではない。勘違いするな」

 

「そうなんだ…」

 

 あ、レックス今絶対ほっとしただろうお前!無意識か!?無意識なのか!?そう言う所やぞお前ぇ!

 

 そもそも確かに隊長はとても美人で可愛らしい人なのは間違いないのだが!俺の好みとは外れるというか!俺と隊長がくっつくのは解釈違いというか!

 

 俺は後方副官面して隊長が幸せになるのを見ていたいんだよ…このボォケがよ~オォン!?

 

「なら副官としてアズリアについて行くんだね」

 

「………うむ」

 

 そう、この戦いが終わったら俺はそのままアズリア隊長の元へ行く。部隊の皆はどうなるのかはわからんが…出来れば揃って隊長の元へ行きたい。

 

 確かアズリア隊長は、左官され国境の警備兵の隊長となるのだ。確か聖王国の監視員か?老年や左官された者達が行きつくまさに窓際部族。

 出世は見込めない嫌がらせの極地である。

 

 

 まぁ辺境の警備兵か。俺もそうして……

 

 

それで、本当に良いのか?

 

 

 ふと、胸に何かの言葉がざわついた。この島の戦いが終わってレックスの言葉で改めて将来を考え。そうしてふと思ってしまったのだ。

 

 原作で言えばギャレオは確かにアズリアと共に辺境の警備兵となった。遥遠い未来である4では紫電部隊と名を改めて精鋭部隊になっているらしくまぁギャレオもその部隊に所属しているのだろう。

 

 …言い換えればその間ずっと辺境にいて未来は閉ざされたままだ。可能性という未来はなく、決まってしまっている結末(悲劇)を受け入れるしかない。

 

(それで…本当に良いのだろうか?)

 

 確かにアズリア隊長の元は非常に心地が良い。何だかんだであの人は話が分かる人でまた支えがいのある人だ。

 

 だがそれは、…隊長を言い訳にして未来を捨てていないだろうか?隊長の副官という立場を言い訳にしてわざと枷にしているのではなかろうか。

 

(原作は……ギャレオは…俺は)

 

 一度渦巻いた疑念、そして未来という言葉は強烈なほど俺を揺り動かす。今までずっと島での戦いの事しか考えなかった、それしか俺の未来は無かった。

 

 だがこの島での戦いが無事に終わり、俺の懸念事項だった部隊の皆そして戦友ビジュがこの島から生還できるのなら…

 

 

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「――ギャレオ?」

 

「む?」

 

 どうやらレックスに呼ばれていたようだった。心配そうな顔がこちらを見ていて少し深く考え込んでしまったらしい。いかんいかん、思い悩むと人の話を聞けなくなるのが悪い癖だ。

 

「何か悩んでいるようなら力になるよ」

 

「…ありがとう。そうだな、その時が来たら世話になる」

 

 薄々俺が何かに悩んでいると見抜いたのか、出された言葉には深く感謝する。まぁまずはこの島の戦いを無事に終えてからだ。

 幸いにも時間はたっぷりとある。

 

 

 その時が来たら今後の事はゆったりと隊長とも話せばいいのだ。 

 

 あの人は相談に乗ってくれる優しい人だから。

 

 

 

「それにしても……」

 

 とそう考えていたらレックス。なんだか歯に挟まったような言い方だ、なんだろうかとじっと顔を見れば、レックスは少し照れ臭そうに頬を掻いた。

 

「あ、いや。折角こうやって背中を預けることになったんだしもうちょっとギャレオの事がどんな人なのか知りたいなって、そう思ったんだ」

 

「俺の事をか?」

 

「う、ほらずっと前からギャレオは俺達の事をずっと心配してくれてたじゃないか。何でだろうなって思っててさ。勿論戦いになるのは止められなかったとしてもギャレオは説得で俺達を止めようとしていたし…」

 

 それはまぁ、単純にレックス達と争うのが嫌な話で…うぅん?

 

「部下達を護るために戦って、それから無色と戦う時は率先して手助けをしてくれて」

 

 部下を護りたいのは当然だとしても無色も当然というか。帝国軍人だし個人的に気に入らないし…。

 

「皆が無茶なことしたら止めてくれたじゃないか。そして無色と戦うために事前に作戦を考えてくれた」

 

 あれはもう、突撃思考で凝り固まってそのまま突撃敗北が原作でもあったのでから必要な事で、あの何度も言うけどなんでアイツらそこまで脳筋になってたの?

 俺が言うのも何だけどさ。

 

「だからどうしてギャレオはそこまでしてくれるんだろうなって気になっちゃって」

 

「…何も気にする必要はないと思うが…」

 

 何だろうこの、妙に気にしてくれるというのは?…これは、まさかあれか?

 

 

 この天然タラシもしかして俺を攻略しようとしているのか!? 

 

 マジで!?こんなムサイ男を!?

 

 あ、なんかレックス凄く親しげな距離感にいる!?

 

 

「待て、レックス」

 

「???」

 

 待て待て待て。ふー。考えたらおかしな話ではないな。男を攻略云々では無くて。単純に同性である野郎と話をするのは何もおかしくはない。カイルとだって話はするだろうしヤードにスカーレル、ヤッファやキュウマとなんて普通も普通。

 

 そもそも同性友情ENDがあるのだ、夜会話相手に男が男を選んでも何らおかしくはない。逆で女主人公アティで女性キャラを攻略しても何一つとして問題はない。

 

 そう、サモンナイト3は異性を攻略するギャルゲーや乙女ゲーでありながらも同性が同性を攻略しても構わないとても懐が深い万人受けをするゲームなのだ! 

 

「ふーーー」

 

「???」

 

 いや、アカンやろ!?それでエンディング対象は俺か!?俺なのか?帝国軍人ルート!?だったらアズリア隊長を選べやこの唐変木が!

 

 いくら俺がレックスに好意を抱いていても至極真っ当な友情兼敬意的なものだから!!

 

「…んな!?」

 

「!?」

 

 あ、そう言えばコイツと俺13話の夜会話しちゃってたよ!肝心要の夜会話という好感度爆上がりの機会を俺に使ったよコイツ!?

 

 オマケに15話の相談相手を俺にしたよコイツぅ!アレ夜会話の相手も兼ねているんだぞ!?だから今俺の目の前にいるんだけども!!

 

 ちがうだろぉ!そこは隊長の元へ行けよ馬鹿!あんなにお前の事をガチ惚れしてるんだぞ!? 

 

「お前という男は……」

 

「え、何その呆れた顔?」

 

 アカン。無自覚とは言え男を攻略するレックスは解釈違いだ。友情を否定はしないけれども、せめて女性といるところを大いに冷やかさせてほしい。

 

 幸せになってほしいのだ!他の誰でもないお前には!お前の幸福を俺に祝福させてくれよ!!

 

「さっき何でもするといったな?」

 

「え、あうん」

 

 困惑しながら頷くレックスに俺はニヤリと笑い…

 

 

 

「ひとまず、俺の部屋で一杯飲まないか?」

 

 

 お部屋にお誘いをするのだった…

 

 

 

 

 

 

 

「……先生?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正直治療施設を宿泊施設にしている事には大いに申し訳ないと思うのだが…」

 

「クノンは気にしないと思うよ」

 

「だと良いのだがな」

 

 という訳でそのまま二人でリペアセンターへと向かってる最中でございます。宴会場の片づけは大きい物はさっさと片付けして細かいところは明日にすることになっているのでそのまま解散という事になってたのだ。

 

 ある程度の下準備は済んだのでそのままレックスを伴ってあるく。腹ごなしにもちょうどいい散歩道だ。

 

「とはいえだクノンの情緒的にも部下達が迷惑をかけているかと思うとな」

 

「う~ん。そこは…アズリアを信じよう」

 

 別に部下達がクノンに粉を掛けているわけではないのだが良い影響を与えているかとかと思うと首を傾げざるを得ないというか。

 

「そもそもギャレオの方が結構迷惑をかけているんじゃないの?」

 

「まさか清廉潔白なこの俺が?あり得んな」

 

「えぇ~」

 

 レックスの冗談に笑ってしまう。ゲームの中ではそれこそ呆れたりツッコんだりなレックスだが意外とお茶目な事を言うらしい。

 ゲームでは知り得なかった一面というか。好感度が高いからだろうか…?ゆ、友情値が高いからだと思おう…*1  

 

 

「さて、俺の部屋だが…」

 

 とまぁそんなこんなでリペアセンターについたわけで。レックスは特に気にした様子は無い。

 宴会で多少のお酒を飲んだのだろうか頬に赤みがさして普段よりも気が抜けているようにも感じられる。

 

 俺のたくらみはバレては無さそうだ。チョロイもんだぜ!じゃなくて慎重に事を進めなければ…

 

「ヘイゼルさんは如何?目を覚ました?」

 

「いいやまだだな。何クノンがいる以上直ぐに目を覚ますさ」

 

 何気ない雑談を交え慎重に歩く。件の人はもう帰っているのを確認している。今頃明日に備え寝る準備をしている頃合いだと予測する。

 規律に厳しくそう言う所は真面目な人だからな。

 

「っと、ついたな」

 

「ここかぁ~」 

 

 目的地に到着!自動兼手動である扉に前に立つ。扉は病院などにあるいたって普通の横開きのドアだ。ロレイラルの技術により自動で開く事も出来るが…まぁそれは良い。

 

 ドアの前に立ち施錠されていることを確認。流石に防犯意識はちゃんとあるようで感心感心。勿論レックスは気付く様子はない。

 

「…む?」

 

「どうしたの?」

 

「開かなくてな。建付けが悪くなったか?」

 

 そんな事は無い。しっかりと施錠されているからだ。お休みの準備中か?ふふ、すまんな。俺のためにも一肌脱いでくれや。

 

 静かにそして素早く手早く扉の施錠を物理*2で解除する。音をならぬように注意を払った為気付かれてはいまい。

 

「そうなの?建付けが悪いなんてことは……」

 

 そういってレックスは俺の代わりに扉に手を掛けた。無論施錠は俺が解除しているのでスルリと開いて…

 

 

「ん?」

 

「あれ?」

 

 

 中にいたのはもう寝ようとしている所だろう、寝間着姿に着替えたアズリア隊長だ。お酒を飲んだのか赤みがかったお顔がセクスィ~。

 

 隊長はポカンとして扉を開けたレックスを見て、レックスは中にいた隊長を間の抜けた顔で見つめて。

 

 

「ふん!」

 

「うわっ!」

 

「ひゃっ」

 

 

 俺は素早くレックスの背中に手を当て部屋へと押し出す。突然押されて体勢が崩れたのだろうレックスは部屋にいた隊長を押し倒してしまった。

 

 そして俺は素早く扉を閉める。大きな音を立てて部屋は閉じられた。うむ完璧だ!

 

 

「え?うわっ!?ご、ごごごめんアズリア!」

 

「え?ええ!?れ、レックス!?ななな、何故お前がここに!」

 

 中からは何とも仲睦まじい男女の声が聞こえるではありませんか!!これは堪りませんなガハハ!!

 

「ギャ、ギャレオ!何でアズリアが此処に!?」

 

「すまんレックス!ここは隊長の部屋だった!いや~ウッカリ」

 

 無論俺がわざと隊長の部屋にお前を案内していたからに決まってんだろうが!!そもそも上官と自分の部屋を間違える馬鹿がどこにいる!

 おっと俺だったな!ワハハ!

 

 

「れ、レックス…その手を…」

 

「ゴ、ゴメン!!」

 

 なんだ、中の様子はわからんが隊長のどこに手をやったんだレックス~。俺とお前の仲って奴で聞かないでやるよ! 

 

 そんな事をやってる隙に扉に向かって拳と蹴りを四発。勿論四隅に的確に放てば扉は壊れてもう動かない完全な密室の出来上がりだ。

 

「ギャレオ何でいきなり…!…扉が閉まっている!?

 

「すまん!手が滑って扉を閉めてオマケに壊してしまった!」

 

「なんでそんな事になるの!?」

 

 そりゃオメー仲の良い男女を密室にさせるために決まってるからだろうが。お互い相手とは昔からの顔なじみで悪い気はしない間柄。

 そんな関係を一歩だけ進めるそんなハプニング。 

 

 俺の気配りっていう真心よ。*3

 

 そもそも俺を攻略しようだなんて性別変えてから掛かってこいや!!ヘタレて逃げるけどなワハハ!

 

「クッ う、うぉぉおお!!

 

「れ、レックス…そんな、逃げようとしなくても

 

「今すぐでるからね!アズリアはそこで待ってて!」

 

 所がレックス扉を開けようとしているのかそんな踏ん張っている声が聞こえてくるではありませんか。

 

 ふむ、急すぎたか?でもそれぐらいのハプニングでも無ければお互いなぁなぁで済ませて終わりそうだし?

 そもそもの話レックスが俺を夜会話に誘ってきたのが間違いだし?俺は悪くないもん!

 

「どうかしたのですか?」

 

「ぬ!?」

 

 しかしここで新たに現れたのはなんと巡回していたのかクノンだ!このリペアセンターの主だ、これは流石にマズい事になったか…。

 

「あ、クノン!?それが扉が壊れちゃってアズリアの部屋に閉じ込められたんだ!」

 

 レックス必死なのか物凄い早口で現状を説明しやがった。そらまぁアズリア隊長の部屋に閉じ込められたら外聞悪いもんね。

 

 ちなみに部下達は今更あーだこーだ言わない弁えた男達である。寧ろようやく隊長に春が来て喜ぶんじゃない?賭けにしていたからね。

 

「なるほど…」

 

 クノン扉の現状を見て(俺の拳とケリが放たれた場所。へこんでいる)俺を見て、そして中にいるのがレックスとアズリア隊長と判別して。

 

「仲の良い男女……密室……何も起きない筈がなく……恋する乙女にあった……」

 

 呟いて俺に向かって親指を上げた。俗にいうサムズアップである。マジか。

 

「分かりました。レックス様。扉に不調が見られたので今しばらくお待ちください」

 

「えっとどれだけ待てばいいのかな。出来れば今すぐに火急的速やかに出ないといけないんだけど」

 

「これは、ハイ。明日の朝までかかりますね」

 

「嘘でしょ!?」

 

 ちなみにクノン。そう言いながら物凄い速さで手をドリル状にして扉を閉鎖している。恐ろしい速さで俺でも分からんほどの速さだ。何がそこまでこの娘をそうさせるのか…俺にもわからん。

 

「それではレックス様アズリア様。明日の朝には復旧しますので。お休みなさいませ」

 

「待って!クノン開けて!男女が一緒の部屋で寝泊まりするの物凄くマズい事なんだよ!!」

 

 レックス必死の説得である。スゲェ…ここまで必死な声は今まで聞いたことがないや。

 

「しかしレックス様はアズリア様に何かなさるわけではないでしょう?貴方は先生なのですから」

 

「そうだけど!絶対に何もしないけど!!

 

「え…?何もしないのか…

 

 隊長の微かな寂しそうな声が聞こえた。隊長酔ってる?酔ってたな。

 

「ではそう言う事なので。それではギャレオ様もお休みなさいませ」

 

「ア、ハイ」

 

 そう言ってクノンはスタスタと去っていきました。……クノンの情緒を乱しているのは俺なのでは?ま、別に悪い事じゃないしええやろ!*4

 

「それでは隊長、レックス。良い夜を」

 

「う、うむ」

 

 扉の前で見えているわけではないのに敬礼して部屋を去る俺。隊長混乱してるけど大丈夫かな?……まぁ大丈夫やろ!

 

 それじゃ隊長の事をよろしく頼んだでレックス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってー!開けてーー!!」

 

 

 

 とか、そんな声がリペアセンターに響いた素敵な夜でした。

 

 

 

 

 

*1
そんなものは無い

*2
馬鹿力

*3
余計なお世話

*4
良くない




レックス・抜剣覚醒をして扉を壊し急いで船へと帰った。必死で走ったので汗だくだった。
アズリア・開け放られた扉を見て寂しそうな声で「レックス…」と呟いた。
ギャレオ・そのまま部屋で熟睡した。反省は一応している。
クノン・壊された扉を見て落胆した。









アリーゼ・レックスがギャレオと一緒にどこかへ行く所を目撃した。その後汗だくで帰って来たレックスを目撃してしまった。
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