遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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たこ焼きとお見舞い

 

 

 

 おはようございます。ギャレオです。

 

 先日の宴会はそれはもう楽しいありさまでしたね。部下達はもれなく二日酔いでグロッキー状態となりました。何やってんねんアイツ等。

 

 隊長?隊長はですね、朝起きたら俺に説教をしてきました。内容は右から左だったのであんまり覚えていないが風紀がどうたらとか。

 

 一応ね。一応言い訳をして謝りました。

 

『隊長。申し訳ありません。近頃レックスの距離間が妙に近いので怖くなりまして…』

 

『レックスが?誰に…まさかお前に!?』

 

『まさかレックスにそっちのケがあるとは思いませんが、貞操の危機を覚えまして。隊長に丸投げをしました』

 

『……そんな。アイツにそんな趣味が、だが私に何もしなかったのは…嘘だ…嘘に決まって』

 

 そうして考え込んでしまったアズリア隊長。百面相をしていたのでさっさと抜けてきました。

 

 レックスがそんな趣味な訳ね―じゃん。何で隊長ってレックスが絡むと急に乙女心全開になっちゃうの?可愛いかよ。面白っ!

 というか雰囲気からしてレックスとは何もなかったようだ。残念無念。

  

 

 さて、そんなこんなで原作16話となります。はっきり言えばここらへんは羽休めなお話で。俺もゆったりと心を休めて行こうかと考えております。

 

 その代わりイスラと戦う時になったらそのまま一気に最終決戦まで話が進んでしまうので最後の休息だという事なのですハイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う事なのでカイルさん達の海賊船へ行きましょう!」

 

 日々の鍛錬を終わり、ストレッチをしていたところだった。それはもうレシィがとてもいい表情で俺を遊びに誘ってきたのだ。

 

「なんかあるのか?」

 

「なんでもオウキーニさんの新作料理が出来たとか。それで皆が食べに行ってる様なんです」

 

 目がすっごいキラキラしているレシィ。なるほど…オウキーニの料理は確かにレシィからしてみれば興味を惹かれてしょうがないのだろう。

 

 もはや料理のその道の職人になりつつあるレシィこのまま何処へ進んでいくのか…。

 

「ふむ、そうだな。それでは隊長からの許可を得て」

 

「行って来い阿保」

 

「ビジュ?」

 

 と話していたらビジュのインターセプト。どったのと首を傾げれば溜息一つ。

 

「隊長からの御下命だ。お前は島の住人たちと交流を深めろとの事だ」

 

「俺がか?」

 

「隊の中で一番安全そうだからだとよ。…どこがだよ」

 

 えぇ… いや俺からすれば渡りに船のだが、良いのだろうか?そもそも俺見た目凶悪なんだけど…。

 

 もしかして厄介払いじゃないですよね隊長!?

 

「そのアホそうな面じゃ警戒なんざしねぇよ」

 

「ぬ?」

 

「ギャレオさん凄く嬉しそうな顔をしていますよ?」

 

 ビジュとレシィに言われ自分の顔を触ってみるが今一よく分からない。そんなに緩み切ってしまっているのだろうか?

 

「その面で部下達の前に出んなよ」

 

「多分ですけど、島の人たち誰も警戒しないと思います」

 

 ……やっぱイベントに参加できると思ってると顔に出てしまうのか、少し自分が心配になりつつも外へ行く準備をする俺なのでした。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっち焼けたでー!」

 

「おう、お前ら!しっかりひっくり返せや!」

 

「「「「ヘイ、船長」」」」

 

 カイル達の船にレシィと一緒に来れば、そこには人だかりが出来ていた。仲間たちは勿論だが見たことのない島の住人達が大勢いる。

 

 そんな中でジャキーニ一家が総出でいるのだ。人の熱気というか楽しげな雰囲気が実にお祭りを感じさせる雰囲気だ。

 

「人多いですね」

 

「ああ」

 

「でもそれ以上に」

 

 レシィの鼻がクンクンと動く。いや分かるよ、この港?をいっぱいにする何とも香ばしくそして俺からすれば非常に懐かしい匂いが充満しているのだ。

 

 

「「良い匂いがする」」

 

 レシィと顔を見合わせ破顔する。

 

 そう、これは俺が好きな蛸イベントの最終段階である

 

 

 たこ焼きのイベントだったのだ。

 

 

 

「アレ、ギャレオとレシィ」

 

 という所で、近づけばどうやら青空学校の終わりであろうレックスとばったりと出会った。

 その顔や雰囲気からして…やはり隊長とは何もなかったか。落胆のため息が出てしまう。

 

「はぁ~」

 

 キィン

 

「す、すまん」

 

 無表情でいきなり抜剣覚醒しようとしている!?やっぱ善人を怒らせると怖いのって本当だな。

 これからも善良なこの若者を揶揄っていきたいものだ。 

 

 で、蒼い光をピカピカ放っていたレックスはそれで怒りを収めたのだろう。鼻をヒクつかせながら、実に興味深そうに話しかけてくる。

 

「これ、一体何の集まり?」

 

「なんでもオウキーニさんの新作料理のお披露目会みたいですよ」

 

「誰からも絶賛らしいな」

 

 海賊船が止まっている砂浜及び広場はなかなかの盛況ぶりだ。ジャキーニたちは元より島の住人たちがごった煮状態。あれだけ良い匂いに良い音を鳴らせているのだ、それはもう一大イベントだろう。

 

「何かを焼いているのかな?…良い匂いだね」

 

「ソースの匂いだな。まさかそれまで再現できるとは…」

 

 たこ焼きまでならまぁ小麦粉とキャベツやその他もろもろと肝心のタコがあればそれでできるが、ソースまで作るとは…市販の奴を改良したのかな?

 

「でもこの調子じゃ食べれそうになるのは時間が…」

 

「あ、先生!これ貰ってきました!」

 

「アリーゼ、ありがとう」

 

 綺麗な良い笑顔なアリーゼが嬉しそうにレックスにたこ焼きを差し出していた。それまぁ嬉しそうに受け取るレックス。 

 微笑ましい仲の良さだ。女子学生に餌付けされている成人男性っぽくて絵面が完全にアレだが!微笑ましいな!

 

「うわっ!?外はカリカリで中はアツアツのトロトロだ!」

 

「美味しいです~」

 

 ハフハフしながら食べるこの先生と生徒よ。可愛いな~自分の故郷の料理を嬉しそうに美味しそうに食べてくれると心が癒されてしょうがない。

 

 ……リィンバウムに来てからだいぶたったがそれでもまだ日本を故郷と考えているのか俺は。

 

「おぉそうかそうか。美味いか」

 

「うぉ!?」

 

「ええ、とてもおいしいですよゲンジさん」

 

 ニョキっと出てきてご満悦の笑みをレックスに向けるのはレックスの先生となる日本生まれのゲンジさんだ。

 

 今は風雷の郷に住まわせてもらっている日本から召喚された生粋の日本人だ。元は教師をしていたのでまだまだ新人家庭教師のレックスの指導をしているとか何とか。

 

 ……古き良き頑固ながらも温かみのある良い人なのだが俺は苦手である。なんていうか逆らえないというか…やましいことは一つもしていないのに怖いのだ。

 我ながら避けている理由が酷くね?

 

 まぁ本当の理由はこの人と話すと……どうしようもない寂寥感があるのだ。

 

「すごく美味しいんですけど、特にこの具材の中にあるコリコリとした食感の奴が一番うまくて…」

 

「ほぅ コリコリとねぇ」

 

 したり顔である。中身が何であるか知りつつそれをレックスが食わず嫌いをしていたという事をすべて知りつつ微笑ましく見守るしたり顔である。

 

「どや、美味かったやろ?」

 

「ええとっても。それでこの食べ物の名前はなんて言うんだい?」

 

 オウキーニ渾身のドヤ顔でレックスににじり寄っている。俺は見ていないけどずっとタコを食べずに拒絶されていたからね。その汚名?返上できると思えばあそこまで良い顔できるか。

 

「その名前はな」

 

「あ、ギャレオさん。たこ焼き貰ってきましたよ~」

 

「あぇ?たこ焼き?」

 

「む、ありがとうレシィ」

 

 ネタバラシをするとその時にレシィが良い笑顔でたこ焼きを持ってきてくれた。俺がレックスの反応を楽しんでいる間に気を利かせて持ってきてくれたのだ。

 

 なんて気遣いの出来る素晴らしい護衛獣か…あ、先ほどのレックス達と被ってない?な、情けねぇ~。

 

「あー言っちゃったか。ま、ええわ、ドヤ先生これがタコのうまさや」

 

「これがタコ…ゴメン、確かに俺見た目でだけで判断していたかもしれない」

 

「ま、確かにタコは見た目で受け付けん奴もいる。だが食ってみなければ味は分からんという事だ」

 

 談笑しているレックス達を尻目に俺はレシィが持ってきたタコ焼きを一つパクリ。アツアツだが火傷をするわけでもなく、程よい熱さ。

 

 そしてこれは確かに上手い!

 

「おぉ…カリカリでトロトロだ…何よりもタコのうまさが格別だ」

 

「ソースも美味しいですねぇ。この美味しさなら色々と調味料を加えてもよさそうですねぇ」

 

「おろしネギとかか。てりたまや明太子…うむ、故郷を思い出してきたな」

 

 食べながらも味を追求するレシィはまるで料理人だ。そんな呟きを聞いて俺も故郷のタコ焼きを思い出した。

 

 一番ポピュラーで王道のソースにサッパリのおろしネギ。照り焼きソースで卵をつけるのもありで明太子で味変もまた味わい深い。

 

 人によって好みが違うだろうがどれもタコ焼きの旨さを損なわない。

 

「知ってるんですか?」

 

「ああ、故郷ではそれなりに食ってたからな。…ここまでカリカリトロトロのは食ったことが無かったが」

 

「へぇーギャレオさんが故郷で食べていたタコ焼きはどんな感じだったんですか」

 

「んー。割と中身がぎっしりだったな。キャベツが多くて。肝心のタコは小さ目だった。喰いやすくてそれでもよかったがな」

 

「ふむふむ、他に何か特徴はありましたか」

 

「特徴は…どうだったろう?地域差によるとは思うが俺が食っていたのは関西風で関東とは確か違うのか…?」

 

 駄目だ思い出そうとすると途端に記憶が怪しくなる。そもそも俺の故郷は関西方面だったのだろうか?関東とは違う気もするし…もっと田舎の方だった様な…?

 

 前世の俺個人としての記憶は虫食いでしかもおぼろげだ。知識が残るのみでもはや想像で補っているような物。

 

「ん?関東と関西を知ってる…?」

 

「ああ、そうだ思い出した。俺冷凍を喰ってたんだ」

 

「冷凍って何ですか?」

 

「冷凍食品だ。冷凍したたこ焼きを電子レンジでチンして食う奴だ。だから関東も関西も関係なかった」

 

 一人納得した。スーパーで売ってる冷凍タコ焼きを思い出していたのだ。そんな奴がタコ焼きを語るのはお門違いだったなとふと自虐してもう一つレシィの持っていたタコ焼きを摘まもうとして…皆が俺を見ているのに気がついた。

 

「む、なんだ?」

 

「えっと、ギャレオの故郷って?」

 

「リィンバウムのか?辺境のド田舎だ。もう寂れて廃村になってるだろうし、実家も森の奥で潰れてるはずだ」

 

 レックスの問いに正直に答えたらどうにも複雑そうな顔をされた。首を傾げながらもたこ焼きをパクリ。

 

 噛めば噛むほど蛸の旨味が出てくる味だ。部下達にお土産として持って帰りたいが…量の関係で無理そうだな。残念だ。

 

「…お前さん、日本人を。いや日本を知っておるのか?」

 

 ゲンジさんが驚いたかのように聞き出し。自分がタコ焼きに浮かれて迂闊な事を口走ってしまったのに気が付いた。

 

 俺の正体は元日本人で、リィンバウムに魂だけ召喚されギャレオの憑依した謎のはぐれ召喚獣。多分そんな感じだ。

 

 だが今の俺はギャレオだ。この世界で育って生きてきた人生がある。…それを想うとあんまり日本の事を言うのも憚れるような気がした。

 

「…名も無き世界を調べて多少の関りがあっただけです」

 

「そう、か」

 

 俺の声にこれ以上聞いてほしくないという思いをくみ取ってくれたのかゲンジさんはそれで引き下がってくれた。

 

 たこ焼きで楽しい話をしているはずなのに本当にごめんねゲンジさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う事でだレックス。頼みがある」

 

「どうしたの急に」

 

 という事なのでたこ焼きイベント並びにタコパ?を終わらせボランティアで掃除を手伝いある程度の片づけが終わった所でレックスを呼び出した。

 

「この島を案内してほしいんだ。多少とは言えこの島の住人と交流して警戒を解いて来いという隊長の命令でな」

 

 なんて言ってはいるが本音としてはこの島を自由に歩き回ってみたかったのだ。

 

 そう、ずっと敵対していたのでこの島の集落に入ることはなく、無色のごたごたで集落に向かえず。ずっと歯がゆい思いをしてきたのだ。

 

 隊長やビジュの許可も得た。ならもう俺が我慢をすることはない、そうだろう?

 

「アズリアが?そっか、うんわかった。この島を案内するよ」

 

 という事で快諾を受けたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事でまずここ、カイル達の船だね」

 

「お前たちの拠点だな」

 

 という事で始まりはレックスの拠点でありカイル一家の海賊船だ。正直心が躍る。何せ主人公の拠点だ。レックスの部屋とか内装どうなっているのか気になる。

 部屋に何を飾ってるのか、何を持っているのか。やっぱり清酒・龍殺しを大量に持っているのだろうか?

 

「それで案内をしたいんだけど……大丈夫かな?」

 

「うぅむ」

 

 と案内する筈のレックスと中を探索する気満々だった俺は悩んでしまった。 

 

 単純にね。カイル達が軍人を船に乗せることに良い顔はしないだろうなって思うのよ。

 

「カイル達は気にしないだろうけど」

 

「軍人が海賊船に乗り込むのは大抵捕獲するときだけだからな」

 

 勿論彼等がそんなことを気にする人達ではないのはわかるけどね。でも彼らに配慮するのはまた必要だと思うので…入れないなぁ。

 

 緊急事態なら躊躇なく乗船するけどね!

 

「せめて船長室…それが駄目なら宝物庫に入ってみたかった」

 

「宝物庫!?船長室は良いとしてもナンデ!?」

 

「海賊だろ?宝がぎっしりではないのか?」

 

 カイル一家の本業は冒険業なので略奪品などは入っていない筈。ならやっぱり冒険で見つけた物が隠されていたリ?

 

 金銀財宝は…無いだろうな。でも曰く付き品とかはあるのだろうか?

 

「レックス。待っててやるから探してきてくれないか?」

 

「いやだよ!そもそもカイル達そんな物持ってないって」

 

「残念だ。せめて船長室だけでも見たかった」

 

 やはり海図があって代々カイル一家の船長の航海日誌だとかあるんだろうか?見たいな…でも流石に怒られそうだしなぁ。

 

「仕方ない。また別の機会に見せてもらおう」

 

「それが良いよ。そもそもカイル達にちゃんと許可を取ればいいんだから」

 

 と、言う訳で。カイル一家の海賊船を後にしてレックスと一緒に歩くのでした。

 

「で、どこへ向かうの」

 

「そうだな、やはりここは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見舞い品だ」

 

「…………」

 

 ヘイゼルは、先日の戦いにより足が負傷し戦闘不能となってしまった。その時気絶していたのもあり無色の派閥に置いて行かれた…すなわち見捨てられてしまったのだ。

 

 その事に関してヘイゼルは不平不満は言うつもりはない。使い捨ての道具扱いだったのは理解していたし自分だって使えなくなった者達をそうやって置いてきたこともあった。

 

「アストラルパイにミスティスフレ。…おっとファントムロールを忘れるとはうっかりしたな」  

 

 そうして捕まって捕虜になってしまった所で文句を言うつもりはない。敗者なら当然の処置であるし負けたのは紛れもなく真実。

 

 治療されているというのは流石に内心では非常に驚いてはいるが…拒むつもりも抵抗するつもりもましてや脱走なんてするつもりもない。

 

 ないのだが…

 

「さぁ 食え」

 

「……拷問?」

 

 だからと言って目の前の狂人が召喚獣用のお菓子を目の前に並べてくるのは何なんだろうかとそうツッコミならぬ文句が出るのは仕方がなかった。

 

「見舞い品だが?」

 

「……ねぇ誰か…どうにかしてよ…」

 

 人間が食べられないお菓子を差し出してくることに一切の疑問を持たず不思議そうに首をかしげる狂人。その余りの堂々っぷりにヘイゼルはドン引きした。寧ろ誰かに助けを求めてしまった。

 

「そうか。毒が入ってると思ったのか。すまん配慮不足だった」

 

「違うわよ!?」

 

 不甲斐ないとは分かりつつもこの狂人は自分の手には余り過ぎる。寧ろ自分を戦闘不能にさせたのは間違いなくこの男のなのだ。 

 

 認めたくはないは恐ろしい存在だ。どうしてあの看護師は面会の許可を許したのだろうか?無視してやって来た?

 

「では俺が毒見をしてやろう…うむ、美味いな」

 

「貴方可笑しいんじゃないの?」

 

 パクリと一口。実に上手そうに頬張る狂人の食べっぷりは見るものが見れば食欲を刺激させるものだろう。…ヘイゼルは逃げるようにベッドから抜けそうとしていたが。

 

「…何故食わん?」

 

「だから、それは!」

 

「待って待って!?何ヘイゼルさんに勧めてるのさっ!?」

 

 そこで慌てて部屋に入ってきたのは魔剣の主ことレックスだった。凄まじい慌てっぷりなのになぜか手には飲み物の容器を手にしている

 

「どうして見舞いに行こうって話になってそれを勧めているのさ!?」

 

「見舞い品とは甘い物や体力が快復するモノが推奨されている*1おかしくは無いだろう」

 

「いやいやどう見たって人が食べれる物じゃないからねそれ!?ヘイゼルさん人間!ソレ召喚獣用のおやつ!」

 

「なんと贅沢な…」

 

「どう考えてもおかしいから!」

 

 レックスのツッコミが冴え渡りギャレオは渋々と引き下がり…フォークで器用に食べやすいようにお菓子を切り分けていた。

 

「レックス、食いたいのなら正直に言えばいいんだぞ

 

「ちーがーうーってば!」

 

 有ろう事か口元を緩ませ味方であるはずのレックスにさえ振舞う始末。ヘイゼルは心底この狂人は本当に何なんなのかわからなくなり…

 

 遂には疲れてしまった。 

 

「……捕虜」

 

「え?」

 

「んん?」

 

「捕虜、何でしょう私は…」

 

 完全なやけくそだった。見れば無気力で何も抵抗できない捕虜が言ったかのように見えるが実際は狂人の対応に疲れての発言だった。

 

「回りくどいことは嫌いなの…聞きたいことがあるのならさっさと済ませたらいいじゃない」

 

 投げ槍の発言だが本音でもあった。鬱陶しいのだ。なぜ自分に構ってくるのか、考えれば無色の情報を聞き出す事それしかない。

 

「拷問でも、薬でも好きに使えばいいわ。慣れっこだし…」

 

 だからさっさとやりたいことを済ませて消えてほしい。そう願っての言葉だったが狂人はふむと頷いた。

 

「では単刀直入に済ませよう」

 

「ちょっ!?ギャレオ!」

 

 レックスが慌てて止めようとする。それを見てヘイゼルは内心でこの男二人を見下した。所詮は男、結局はそう言う事なのだろうと。

 

(結局、私が欲しいのね)

 

 だからヘイゼルは内心で溜息を吐いて

 

 

 

「お前が食べたいと言った甘い物とは何ぞや?」

 

 

「は?」

 

 

 狂人の言った言葉に呆けた声を出してしまった。

 

 

「えっと?どういう事」

 

「レックス、コイツを運んだのは俺だという事は知っているな?」

 

「うん」

 

 当然のように頷くレックスを見てヘイゼルは負傷した自分を運んだのがこの狂人である気がついた。それに関しては嫌ではあるが驚くことはない。

 

 気絶していたとはいえ警戒するのは当然だ。だから戦力として一番頭の可笑しくて強い奴に任せるのは理にかなっていた。

 

「その時おぶっていたのだがな。悪夢を見ていたようでうなされていてな」

 

「そうなの?」

 

 こちらを確認する様にレックスが聞いてくるがヘイゼルは黙って…そうしてふと思いだした。確かに悪夢にうなされていた。

 

 なんだかデカい大男に無理矢理振り回されているという悪夢だ。実際正夢だった。

 

「その時に怪我が治ったらうまい物を喰わせてやると言ったんだ」

 

「…ってない」

 

 気が付けば呟いていた。それは確かにどこかで言ったような気がしたからだ。黙ってるべきだったのに口に出してしまった。

 

「甘いものを食べたいとな」

  

「私はそんな事言ってない…!!」

 

「そっか。だからおやつを…そうだったんだ」

 

「そんな目で見るなッ!」

 

 狂人の暴露に救いようのない善人の温かい目。否定したいのに口に出した事を思い出してしまったから上ずる声。

 

 ヘイゼルは強い羞恥心で顔が赤くなる。マフラーで顔を隠しているのに羞恥心を隠すことは出来なかった。

 

「でもそれで召喚獣用のおやつを出すのは間違いだと思うよ」

 

「むぅ。アレを喰えば甘くておいしくて体もすぐに回復出来て一石二鳥だなのだが…年頃の娘の好みはよくわからん」

 

「あはは…」

 

 なんだか完全に空気が緩んでいた。まるで自分が駄々をこねたせいで贈り物が良く分からなくなって困ったという空気になっていた。

 

 ヘイゼルが完全に知らない空気感で対処の仕方が分からない空気だった。

 

 だから狂人のお見舞いという名の暴走を止める事が出来ない。

 

「仕方ない、ではとっておきを出させてもらおうか」

 

「とっておき?」

 

 バチンッ!と指を鳴らす狂人。非常に堂が入ったそれはもしかして練習したのだろうか、小さくガッツポーズをしていたのをヘイゼルは見逃さなかった。

 

「はい、お待たせしました」

 

「レシィ?」

 

 部屋に入ってきたのはメイトルパの少年だ。ニコニコとした笑顔でどこかレックスとよく似ている様な微笑みだ。

 

 可愛らしいエプロン姿でお盆を持っており…何かが入っている器があった。ヘイゼルの鋭い嗅覚はそれが甘いものだと認識した。無意識な本能で意地汚くてちょっと悲しくなった。

 

「レシィ手作りのスィーツだ。部隊では争奪戦になる程に人気でな。これを喰えばまぁ文句もでん」

 

「いきなり作ってほしいと言われたから材料が心もとなくて…2つしか出来ませんでした」

 

「十分だ、よくやってくれたレシィ」

 

 少年を撫でるその狂人は非常に優し気だ。素直に撫でられてはにかんでいる少年との関係を見るに護衛獣とその主か。

 

「美味しそう…」

 

「レックス、残念ながらそれはヘイゼルの物だ」

 

「わ、わかってるよ!?」

 

 それがヘイゼルの為に作られた本当に普通にお見舞いの品だと言われて、何とも言えないそのやり取りを見て、差し出されたそのスイーツ『月光プリン』を見て…小さな息を吐いた。

 

「貴方達本当になんなの…」

 

「「「???」」」

 

 そう言えば3人とも不思議そうに首をかしげる。その余りの敵意の無さ、そしていっそ不躾にすら感じるほどの善意。

 

 それがヘイゼルの情緒を乱れさせる。

 

「何が目的なのよ…何がしたいのよ…私に何を求めているのよ…

 

 うわ言のようにつぶやいて、レックスが困ったように眉を下げて、護衛獣の少年が狂人を見て、そして狂人が口を開きかけた時に救い主は現れた。

 

 

「はいはい、そこまでにしておいてもらえるかしら」

 

「スカーレル」

 

 するりと現れたのはヘイゼルにとって昔の同僚であった男。すらりとしたつかみどころのない男だ。

 

「珊瑚の毒蛇…!」

 

「大変ね『茨の君』さん」

 

 心底同情している様な目で労わって来る元同僚にヘイゼルの警戒心が上がるがスカーレルはふと息を吐いた。

 

「先生にギャレオ。悪いけどこの子はアタシに任せてくれない?」

 

「でも…」

 

「昔馴染みで話か。そうだな、それが良い」

 

 納得したように頷くギャレオは、自分が持ってきた品々を片付け始めた。対するレックスは持ってきたお茶を置いて少し困った顔をしてスカーレルを見た。

 

「大丈夫よ先生、誰も死なないし、死なせないから」

 

「…わかった」

 

 一つ頷いたレックスは改めてヘイゼルを見る。その眼にはやはりどこまでも敵意がない。澄んだ目だとヘイゼルはそう感じた。

 

「信じてもらえないかもしれないけどヘイゼルさん、俺達は貴方を捕虜として扱う気はありませんから。だから今は傷を治す事だけを考えてください。それじゃ」

 

 そう言ってレックスは出て行って…狂人はチラリとこちらを見て口を開いた。

 

「まぁ先ほどのアレは冗談だとしてだ、レシィが作ったプリンは本当の見舞いの品だ。どうか食べてやってくれ」

 

 残ったのは少年が作ったプリンが2つ。丁寧な事にスプーンはおしゃれなものだ。

 

「俺からはそれだけだ。行くぞレシィ」

 

「はい。あ、食べれなかったら残しても構いませんからね」

 

 そうして狂人と少年は、部屋から去っていった。後に残されたのは昔馴染みの同僚と何とも居た堪れない空気感だけだ。

 

「……子供過ぎない?」

 

「そうね。ああまで無防備に人に心を許せている?のね」

 

 重い溜息を一つ、スカーレルはそうして少年が残したプリンを一口食べて、止まった。

 

「……美味し過ぎるわね。どんだけ力を入れているのよ…」

 

「ねぇ、あの狂人と護衛獣って本当に何なの?」

 

「深く考えるとドツボに嵌るわよ。それよりもアンタも食べなさい。…帝国領のスイーツよりかも美味しいかも」

 

 小声で何やら呟きプリンを食べるスカーレルに心底冷めた目を向け、だからと言って食べないという選択肢をするには余りにも魅力的すぎるプリンを前にして…

 

 

 

 

 

 

 

 

「……美味しい」

 

 ヘイゼルは思わず小さな小さな声を出してしまった。  

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ギャレオの偏見




書きたかった話なのにどんどんシリアス方面が強くなる。
本当に困ったものです。
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