遅れてきた直接攻撃の……   作:灰色の空

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ジャキーニ農園

 

 

 

 

「それで私に面会の許可なく患者の部屋に入ったのは何故ですか?」

 

「最善の行動をとるにはまどろっこしい手は取らん前進あるのみ」

 

「……放電!」

 

「ぐぉおおおお!!?……肩こりが治った気がする」 

 

 クノンからの放電を受けギャレオは感電…したと思えば肩を動かし好調そうだった。そんなギャレオにクノンは呆れてそのまま去っていった。

 

 それが今レックスの前に行われている珍光景である。

 

「でもいきなりどうしてヘイゼルさんのお見舞いに?もちろん俺も行くつもりだったのだけど」

 

「いやな。何だかんだで俺が重傷を負わせた原因だから…」

 

 ギャレオはカイル達の船から離れてこのラトリクスの案内をレックスに頼んだ。

 

 快諾したレックス。まずはアルディラのいる管制塔からかと思ったがギャレオの要望は寝泊まりしているリペアセンターで。

 

 そこでヘイゼルの見舞いをしたいと言い出したのだ。

 

「俺一人で行く案もあったが、流石にクッションがいるかと思ってな」

 

「あれで?」

 

「すまん」

 

 心底落ち込んだ雰囲気で自分が持ってきたであろうおやつを口に入れているギャレオ。

 体は大きいし行動も大胆なのに意外と繊細な所もあるんだなと評価を改めてるレックス。

 

「って、本当に食べているよ…お腹壊さないの?」

 

「胃袋は頑丈でな。そこんじょそこらの物では死なんさ」

 

 召喚獣用のおやつをぱくついているギャレオ。レシィが見たら苦言をされそうだと笑っているその顔に本当に不調はなさそうだった。

 

「……ああいう人間はな」

 

「うん?」

 

「苦痛には耐性があっても不意に受けられる優しさに耐性がない。だから好意をぶつけたが…やはり難しい」

 

 それはもしかしてさっきのヘイゼルの事だろうかと言おうとしてレックスは少しばかり頷いた。

 

「ちょっといきなり過ぎたのかもね。スカーレルと上手くいってると良いけど」

 

「時間が必要だったか。レックス、お前も気にかけてやってくれ」

 

 勿論だとそう言って、それにしてはやけに気にするんだなと不思議そうにギャレオを見る。

 

「……奴に関してはな。色々とあるんだ」

 

「聞かないではおくけど、あんまり不躾にしちゃだめだよ」

 

「善処する」

 

 そう言って苦々しくギャレオは頷いたのが印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 補給ドッグ。そこはラトリクスで働いている機械たちが補給を受ける場所だ。

 

 本来ここに来る人は少ない。それはそうだ、ここに来るのは意思がない者達。正確にはコミュニケーション能力をもたない機械たちが来るのだから。

 

 ラトリクスでコミュニケーション能力を持つのは2人と1機だけ。このラトリクスの主アルディラとリペアセンターに勤務するクノン。

 

 そして後もう一人は……

 

「…今は休憩中か」

 

「うん、見回りが終わったらここで待機をしているんだヴァルゼルドは」

 

 レックスと一緒になって見ているのは蒼黒の機体ヴァルゼルドだ。今は目の光が灯ってなく大人しくしている。

 

 こういう姿を見ると本当にかなりリアルな機械人形にしか見えない。

 

「機械の精密さと頑丈さ、そして出力を持つ。最高峰の機体もこう見れば大人しくて可愛らしい物だな」

 

「か、可愛い…? うん頼りになっているよヴァルゼルドは」

 

 ヴァルゼルドを見上げるレックスの目は優しさとそれを超える様な寂しさを感じる。

 

 

「……ヴァルゼルドはね。最初はこうじゃなかったんだ」

 

 そうしてレックスは語ってくれた。ゴミ捨てのスクラップ上にいた寝坊助で猫が苦手でとぼけた頼りになる仲間の事を。

 

 今までずっと眠っており目覚めさせた自分の事を教官と慕ってくれて、力になるとそう言ってた彼を。

 

 メインユニットが損傷しサブユニットを損失してて限界ギリギリだった彼を助ける為に手助けをして…。

 

 

 そうして復旧したかと思ったが暴走して襲い掛かって来た彼を泣く泣く撃退し、今まで仲良くなっていた人格はバグで発生したから生まれた物であり。

 

 そう言ってレックスの力になる為人格を消去した彼『ヴァルゼルド』の事をレックスは語ってくれた。

 

「……良い奴だな」

 

「ああ、本当に頼りになる仲間なんだ」

 

 ヴァルゼルドの問題は、俺にはどうすることもできない話だ。アルディラならひょっとしてと思う事はある。

 

 だが彼は…ヴァルゼルドの人格は、決して語られないだろうが……倫理的に問題のある話なのだ。

 

(リメイク版での話だったが…確か『生体部品のプロテクト』が損傷したせいで『ドナーの人格』が表層化しているだったか?)

 

 単語だけでもある程度想像することができる。ロレイラルの機械兵士は生体部品が組み込まれており、レックスが仲良くなった人格は今はもう存在しない生きたロレイラルの融機人兵士の人格だったのだろう。

 

 それがメインユニットとサブユニットの損失で表層に出てきてしまったのだ。

 

(ある意味、オレと同じか)

 

 ギャレオの肉体に無断で入ってしまったプレイヤーだった誰か。ギャレオの魂はどこに行ったか不明でギャレオになるしか選択肢が無かった哀れな誰か。

 

 ギャレオはどこに行ったのか、死んだのか、俺が食ってしまったのか。…それは分からない。

 

 だから俺はギャレオをする。なり切るのではなく俺がギャレオとなる。……この世界に来てそう決めたのだ。

 

 

 兎も角ヴァルゼルドの裏設定は誰もが知らなくていい話だ。

 

 

「…いなくなってはいないさ」

 

「ギャレオ?」

 

「お前が仲良くなったその人格は深い眠りについているだけだ。いなくなったわけではない」

 

 実際に只のプログラムで行動する機械兵士としては少々柔軟過ぎるのだヴァルゼルドは。

 俺と戦った時に上手く倒してくれた事、無色へのダメ押しの追撃なんて、すごくあのポンコツ兵士らしい。

 

「そう、だよね」

 

「ああそうとも。…頼りにしてやれ、それがお前の知っているヴァルゼルドの願いなのだろ」

 

「……うん」

 

 そういってレックスは懐かしそうで凄く寂しそうな顔をしてヴァルゼルドを見上げた。

 

 ヴァルゼルドの人格は残っている、夢でも何でもなく俺はそう思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここはユクレス村。えっと宴会をしていたから知ってるとは思うけど」

 

「ああ、随分と世話になった。こうやって堂々と歩いていられるのは有り難い」

 

 と、言う事で今度はユクレス村へとやってきました。勿論先日の宴会の名残は残っており住人たちが後片付けをしているところだ。

 

「……手伝うか」

 

「そうだね」

 

 という事で宴会の残りをレックスと共に片づけることに。酒瓶が何本か転がってるのがまた酷い。

 

「レックスお前はあの時何をしていたんだ?」

 

「俺?俺は皆と一緒にいたよ」

 

 誰と特別な仲なのかと聞くつもりであったが、もしかしてこやつ特定の相手というのがいないのか?

 

 八方美人…では無くて本当にみんなと一緒に居たいんだろうなって。打算抜きでマジで本心から。

 

 そう言うところがまさしく皆から慕われる所なんでしょうなぁと。ブ男である俺はそう思うのです。

 

 

「それで、どこへ行きたい?」

 

「そうだな…ではまず、ここの主の元へ行こうか」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーぅ。よく来たな。……野郎二人で散歩か?」

 

「あ、シマシマさん。動いちゃ駄目ですよぉう」

 

 迎えてくれたのはマルルゥから絶賛毛づくろい中のヤッファだった。それもそのはずこの場所はヤッファのねぐらである『怠け者の庵』だ。

 

 要は中年?ナイスミドル独身男の一軒家に立ち寄ってるみたいなものである。…すまんね。

 

「マルルゥは何をしているの?」

 

「シマシマさん綺麗な鬣をしているのにいっつも毛づくろいをさぼってしまうのですよ。だからマルルゥがこうやって綺麗にしてあげてるのです」

 

「俺は適当でも良いんだがな…」

 

 ぷんスコしているマルルゥがせっせとヤッファの毛づくろいをしている。今の今まで気にしていなかったがそう言えばヤッファは毛皮のある獣人虎人だ。身だしなみは人とは少々違うのだろう。

 

「気持ちよさそうだな…」

 

「ギャレオ?」

 

 人間でいう所のマッサージみたいなものだろうか?俺もストレッチは欠かしていないがどうしたって体に疲労が残るときもある。

 そんな俺の身体をほぐすにはそれ相応の力が必要で…何を考えているんだ俺は?疲れているのだろうか。

 

 そうやって見ていてふと気が付く。マルルゥがヤッファの世話を焼くのはまぁ当然だ。確かな信頼関係があるのは明白。

 

 だが、絵面的に言えば幼い妖精が中年のおっさんの世話を焼いていて……

 

「事案…?」

 

「おいこらそこのゴリラ!滅茶苦茶失礼なこと考えてねぇか!?」

 

「いやしかし、いい年をして幼女に面倒を見てもらうのは…」

 

 毛づくろいされてるって要はあれでしょ?体を洗ってもらってるみたいなもんでしょ?……ナイスミドルが幼女に体を洗われてるのはどうなんでしょうか?

 

「ギャレオ、そこは大丈夫」

 

「どういう事だ、レックス」

 

 話を聞いていたレックスが一人頷いている。教育者としてそこら辺どう考えているのか、ご教授願いたいが。

 

「マルルゥとヤッファは家族のような物だから。だから大丈夫なんだよ」

 

「父親と娘…?」

 

「おいレックスお前も一体何を話して、いてっ」

 

「あーシマシマさん勝手に動いちゃ駄目ですよぉ」

 

 ヤッファが勝手に動くものだからマルルゥがぷんスコしている。なるほど、確かにこれは家族だ。親子の絵面だ。

 

 考えてみればヤッファのマルルゥの気遣いの仕方は完全に保護者のソレ。それなら納得。

 

「それにギャレオもレシィのお世話になってるんでしょ?」

 

「!」

 

 言われてみれば絵面が酷いのは自分も同じ。完全に胃袋を掴まされているし日頃の生活の雑多な事はレシィが自ら進んでやってくれている。

 

 ……いや考えてみれば部隊そのものがレシィに依存している様な気が?

 

「どうしたのギャレオ」

 

「い、いや。なんでもない」

 

 レシィに完全に依存している我々なことに気が付く一場面だった。

 

 

 

 

 

「あ、待ってください~ムキムキさ~ん!」

 

「む?」

 

 と、そろそろお暇しようかという所でマルルゥから呼び止められてしまった。

 何だろうと首を傾げればマルルゥはちょっとそこで待っててほしいと。

 

「あー マルルゥの奴。お前に召喚術をぶっ放したのを気にしててな」

 

 ヤッファがボリボリ顔を掻きながら説明してくれた。何でもあの無色の一戦で行った味方に対しての召喚術を当てたことに関してマルルゥは結構気にしていたらしいのだ。

 

「必要な事だったので気にする必要はないのだが」

 

「お前は気にしなくてもマルルゥの奴は気にするんだよ」

 

「むぅ」

 

「んで少しでも耐性を高める為にマルルゥの奴。ちょっと探しモンをしててな」

 

 何か贈り物だろうか?正直な話俺としては必要な事だったので終わった話ではあったのだが。

 でも確かに考えてみれば味方ごと召喚術を放つ召喚師なんてそれこそ外道しかいないことを考えればマルルゥが気にするのも仕方なしか。

 

 ……必要だったとはいえマルルゥには申し訳ない事をしてしまったな。

 

「あったです~。さぁムキムキさん。これを着てください」

 

「これは…毛皮のコート?」

 

 マルルゥが割かし頑張って引きずって持ってきたのは俺のでかい図体に程よく合う毛皮のコートだった。…ん?これベストハーベスト?

 何故とマルルゥを見れば胸を張ったどや顔の可愛らしいマルルゥ。

 

「それを着ればムキムキさんは大丈夫ですよぅ。マルルゥも安心です」

 

「ヤッファの家にあった物だが大丈夫なのか?」

 

「シマシマさんは直ぐに物を溜めこむのでこうしないと物が減らないんです」

 

 チラリと見れば持って行けとヤッファは苦笑していた。人のものを持ち出されても仕方ないで済ますあたりやはり器がデカい。 

 という事なので早速ここで試着することにした。サイズが合ってない場合はレシィに頼んで採寸してもらおう。

 

「…どうだ?」

 

 着心地は悪くない。毛皮なので暑いかと思ったが意外にも快適だ。サイズも丁度良く動きを阻害する事は無い。毛皮と言えども防具であることに変わりはないという事か。

 

「ちょうどいい感じですねぇ~」

「ありがとう」

 

 マルルゥはニコニコと嬉しそうにほめてくれた。そんな気にいっている俺に変わってレックスとヤッファは…

 

 

「「ブホォッ!?」」

 

 思いっきり噴き出していた。なんなん二人とも。そんなに俺が毛皮を着てはしゃぐのが可笑しいか?オォン!?

 

「さ、山賊じゃねぇか!!」

「とても軍人には見えない…!」

 

 思いっきり爆笑しているヤッファに笑うのを堪えて奇妙な顔になっているレックス。言われて自分の姿を確認して。

 

 褐色の筋肉ムキムキな図体のデカい漢が毛皮を着こなしているのだ。胸や腹にはそれなりに古傷があり貫禄は抜群。

 確かに、軍人には見えないか?…山賊は言い過ぎだとは思うが。

 

「……マルルゥ。凄く有り難いのだが」

「ゴメン!冗談だって良く似合っているよ!」

「似合いすぎて帝国軍人だとは誰も思わねぇな…!!ククッ」

「先生さんにシマシマさん!そんなに笑っちゃダメですよぉ~」

 

 マルルゥに返そうとすればレックスは謝って来るがヤッファは笑いこけて涙をこらえていた。マルルゥはそんな二人に怒っているが…

 

「…取りあえず貰ってはおく」

 

 結構似合っているなと思ったセンスがコケにされたので憮然とした顔でも、貰った以上は有り難く受け取る俺なのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、ここがジャキーニさん一家がお世話している芋畑」

 

「……デカいな」

 

 ここがあの噂の芋畑。ジャキーニ一家が野菜泥棒などをしたその罰として管理している畑だ。近くには果樹園などもありその領域一帯を海賊であるジャキーニが管理しているのだ。

 

 その畑なのだが中々に面積が広い。これだけで集落の食糧を担ってるのでは?と思うほどだが…俺は農業に関しては素人同然だから詳しくはわからんが、この面積をせっせと世話できるのはすごくないか?

 

「ここで取れる芋とかは中々の大きさで質が良いんだけど…」

 

「だけど?」

 

「良くモグラに食べられそうになってる」

 

 モグラ……俺のめっちゃ大好きなミニゲーム『こらっ!モグラだらけのイモ畑!』の舞台か…芋を貪るから穴から出てきたモグラを木づちで叩いて追い出すという。

 

 言葉にすると結構中々に凄い事していない?

 

「あのさギャレオ。へんな顔してるけどモグラって結構厄介なんだよ」

 

「む?」

 

「本当に野菜とか貪るからね。何度追い返しても懲りずにやって来るんだ。何度も叩いているのにね……」

 

 レックスが溜息を吐いて遠い顔をしているのは……いやこえーよ。いくら追い出すためとか何度もハンマーで追い出すとか怖えーよ。

 そしてなにその諦めて悟りの領域に入った顔は。

 

「あ、先生さん!?すんませんけどまたモグラが!」

 

「分かった直ぐに行くよ!」

 

 そうしている間にもまたモグラがやって来たらしい。オウキーニが血相を変えてレックスを呼んできた。

 

 慌てて駆けだすレックス。いざ俺の目の前でミニゲーム開始だ。

 

 

 

 

 ゴスッ! ゴスッ!

 

 

「……なぁ」

 

「なんじゃ?」

 

「レックス、アイツ分身していないか?」

 

 さて始まりましたミニゲーム。芋をほじくり返すモグラを懲らしめる為にわざと出てきやすい穴を掘りエサで釣るというゲームでは見られない工夫を作り出してモグラを叩いて懲らしめるのだが…

 

 レックス、複数の穴から出る土竜を叩くために移動しているのだが、その動きが…

 

 

 気持ち悪い!

 

 

「いや、おかしいだろう、ハンマー結構の大きさだぞ!? 何でアイツ分身してるんだよ!?」

 

「し、知らん!なんか…軍人のアレって奴じゃろ!」

 

 隣で見張っているジャキーニに聞くが、ジャキーニはレックスを視界に入れないようにしている。

 

「そもそもなんだあのレックス!?振りがえげつないぞ!」

 

 ゴッゴッゴッゴッ!!!

 

 穴から出てくるなぜかヘルメットつけてるモグラを躊躇なく木槌で叩きのめすレックス。その顔には怒りや悲しみはない。

 只無心でモグラに目がけてハンマーを振り降ろしている。もはや作業に徹した職人のそれだ。

 

 とてもではないが話し合いだとか戦いはしたくないとか言ってた先生とは別人である。元農家の方ですか?

 

「知らん!…アレじゃろ!なんか害獣処理は別なんじゃろ!」 

 

「程度があろうに」

 

 ブォンと唸りを上げたハンマーがモグラの脳天に躊躇なく振り下ろされる。

 ゴチンと当たった土竜はやられたと顔をして引っ込み…また別の穴からモグラが出てくる。

 

「何故何度も叩かれているのにあそこまでの執着を見せるのだ?…そもそもなぜペンタ君も出てくるんだ?アイツペンギンではないのか?」

 

「だから知らんゆーてるじゃろ!」

 

 いや、実は何となく理由は分かる。単純にジャキーニの作る芋が非常に美味なのだろう。だからペンタ君はいざしらずモグラたちが狙ってくるのだ。

 

 穴から出て叩かれると分かってても。ペンタ君の爆発に巻き込まれるかもしれないと分かってはいても。

 

 

 それほどジャキーニの芋は美味いのだ!多分。

 

 

「…畑の肥料に依存性のある変な薬物を使ってるわけでは?」

 

「ないわ!」

 

 否定するけどこえーよマジで。そうこうして居たらある程度追い払ったのかレックスがヘルメットを外しながらやって来た。

 

「今回はどうやら結構な集団が来ていたようだね。少し時間が掛かっちゃった」

 

「あ奴ら、なーんで懲りなく儂らの畑に来るんじゃ?」

 

 そりゃお前、ジャキーニ一が指導管理する畑で作物だもん。質が保証されてるし高級品に近い…狙われるのもやむなし?

 

「…仕方ない少しおまじないを掛けるか」

 

「?おまじない」

 

 不思議そうにしているレックス達を置いて恐らく畑の中央まで足を運ぶ。広大な畑で土の状態も非常に良さそうだ、丁寧に土地の管理をしているのだろう。

 

 これを海の上で生き、略奪行為をする海賊がしているのだというのだから本当に不思議な話だ。

 

「スゥゥゥー」

 

 微笑ましい気持ちで気が緩みそうになりながらストラの力を高める。ゆっくりと丹田に力を入れ体に巡らせて…地面に手を着ける。

 

 

「フンッ!」

 

 

 気合と共に地面にストラを流し込む。要領は豪砕拳・牙壊と同じ。アレの快復バージョンとでも言えばいいのか、要はストラの応用なのさ。

 

「ギャレオ何をしているの!?

「畑をぶっ壊す気か!?」」 

 

「ふふ、まぁ見てな」

 

俺のストラが地面に伝わり碧の光が地面に所々に光って…そして思ったかのように変化が訪れた。地中にいたモグラが飛び上がってきたのだ。

 

「なんじゃ!?」

「土竜が…森へ帰ってる?」

 

 飛び上がったモグラは混乱したかのように驚き慌てふためき森の方へに逃げて行った。まぁざっとこんなもんよ。

 

「これでしばらくの間は被害は減るだろう」

 

「…ストラ?でもこれ絶対普通の使い方じゃないと思う」

 

 レックスは本当に不思議そうにしているがまぁ結果が良ければそれでいいのだ。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ~これはまた立派な」

 

 そうして芋畑のモグラ駆除を手伝ってくれた礼としてジャキーニ一家のもう一つの仕事場である果樹園へと案内された。

 

 目の前に広がるのは色とりどりの果実をつけた果樹園。元海賊…違った海賊であるジャキーニ一家が農作業している果樹園は実に瑞々しい生命力に満ち溢れているような気がする。

 

 実っている物からまだ成長途中の物までいろいろな果実がある。どれも品質がとても良さそうだ。

 

「ここがジャキーニが農業をしている果樹園だよ」

 

「ふんっ 何でわしらがこんな事を…」

 

 近くにいるジャキーニがぼやいているが実際この果樹園は立派なものだ。これが海賊の作る果物か…

 

「ふむ。このナウパは実に上手そうだ」

 

「でしょ、俺も貰ったんだけど滅茶苦茶美味くてさ」

 

 バナナとよく似たナウパの実。レックスの好きな物の一つであり俺の好物の一つ。美味いのだ。

 

「ほら、先ほどのお礼でっせ」

 

 という事でオウキーニが野菜を一つくれた。食べていいらしいのでさっと拭いて齧る。

 

「…!?」

 

 改めて生の新鮮な物を食べて分かるこの美味さ。瑞々しくそして身がぎっしり詰まってる。一口で止めたかったのに気が付けば完食してしまった。 

 

「これは素晴らしい。ここまで美味い野菜を喰ったことはないぞ」

 

「だよね!ほらギャレオもこう言ってるんだよ。ジャキーニの野菜」

 

「なんじゃ藪から棒に…」

 

 照れて謙遜しているけどこれはガチだぞ!?帝国の市場にも劣らぬ…いや

 

「帝国の物よりも美味いな。間違いない。これは完全にその道一筋の職人の一品だ」

 

「下手な世辞はいらんわ」

 

「いや世辞ではない。事実だ」

 

 世辞では無くて本当のことを言ったのだがジャキーニは何とも妙な顔をされてしまった。ナンデ?

 

「軍人から褒められても信じられん」

 

 まぁなるほど?気持ちはわからんでもないか、俺は海賊を取り締まる立場だし。今は島にいるから特にカイル一家やジャキーニ一家にあーだこーだ言う立場ではない。

 

 軍人仕事をお休み中なのだ。

 

「しかしお前たちは海に生きる海賊だろ、何故ここまで良質な物を作れるんだ?」

 

「そりゃ日々丁寧に大切に作れば誰だって作れるじゃろ」

 

 ジャキーニさぁお前それ農家の人に絶対に言うなよ!?こんなもん誰だって作れるんなら帝国はもっと豊かに。…まぁいいか。

 

 しかし何故海で生きるジャキーニ一家にこんな才能があったんだろう?

 

「もともと農家の出か?」

 

「いやうち等はそんな大層な出身ではありませんさかい…」

 

「もともと才能を持っていたのが開花したとか?」

 

 レックスも不思議そうだ。海に生きる男が何故野菜というか農業をここまで………ああ、そうか。

 

「そうか、わかったぞ」

 

「?」

 

「ジャキーニ一家は、()()()()()()()だからだ」

 

 何を言ってるんだコイツみたいな顔をされているが、考えてみればこの芋畑や果樹園はなるべくしてなったのだ。

 

 そもそもジャキーニたちは海賊だ、海の上で長い航海をする者達だ。地上に降りるのは補給や娯楽とか…略奪はこの際置いといて生活基盤は海となる。

 

 そして海の上では野菜系列…つまりビタミンCは必要不可欠だ。壊血病の恐ろしさはたとえ世界が変わろうとも変わらない。

 

「海で生きるからこそ野菜の重要性を理解している。違うか?」

 

「そうですなぁ。うち等魚だけではやっていけませんので」

 

 オウキーニは確かにと頷いている。副船長でもあるがジャキーニ一家のコックを兼ねているのだとすればその重要性はよく理解しいるだろう。

 

「わ、わしはお魚が嫌いじゃ!」

 

「ならジャキーニのその農業の手腕は本能によるものか」

 

「本能?」

 

 海で生きる男、ましてや魚が苦手だとすれば地上の恵みである野菜の重要性を良く身に染みついているという事だろう。

 

「ビタミンCが不足する恐ろしさを本能で理解している、つまり野菜の重要性を理解しているから農業が丁寧になる。

 その有難みを体が本能的に理解している、それがこのジャキーニの農業の上手さと質の良さに繋がるのだ」

 

「な、なるほど?言われてみれば海の恵みはもとより厳しさを理解しているからこそ地上の重要性を知っているのか」

 

 レックスも軍学校でそれなりには知っているのだろう。海戦部隊に配属されたわけではなくても首席だ。心の底から納得という事に頷いている

 

「な、なんじゃ?び、ビタミン?何を言ってるんじゃお前らは?」

 

 俺やレックスの敬意を示す視線ジャキーニは狼狽えている。ジャキーニ一家は戦闘能力はとしてはまぁカイル一家よりは劣ると言えども海賊としてのとしての能力は決して劣っているわけではなかったのだ。

 

「お前は、ジャキーニはまさしく海で生きる男なのだと理解したのだ」

 

「海で生きる上に何が必要なのかわかってるからこそ地面の大切さを良く知る、海の苦楽を知る男なんだね」

 

「そう言えばお前たち部下は全員いるという話だったな。なるほど誰も手放さない手腕もまたお前の資質か」

 

 カイル一家の部下達はあの嵐の中小舟で下ろしたらしい。その判断がどういった物かはわからないが…今は三人。ジャキーニ一家は全員がこの島にいる。

 

 一家全員が五体無事でこの島に流れ着いたその幸運と指揮能力は確かな物だろう。オマケに部下達からは慕われている。

 

「お前はこのまま島で農業をやらんのか?非常に素晴らしい才能だと思うが…」

 

「わ、儂はお前らにどれだけ煽てられても海へ帰るんじゃ!儂は海に生き海で死ぬ!そう心の底から誓ったんじゃ!」

 

 照れて顔を真っ赤にしながらもジャキーニはそう言い切った。部下の面倒を見る頭領として海に生きる男として、そして大海原を往く海賊として、海に生きるとそう叫んだ。

 

 だからまぁ本人の才能とは違ってこれが良いのかもしれない、海で生きて死ぬのがジャキーニなんだから。

 

 

 

 

 

 

 

「どれだけ言おうとも儂は…だから陸に上がるのは嫌なんじゃ~~~!!!

 

 

 




ギャレオの獣服装備は良いぞ…MDFが上がって打たれ強くなる。斧の破壊力と二者択一だけど。
サモンナイトコレクション画像保管所に画像があったのですが非常にカッコイイです(布教)

ジャキーニ一家は好きです。
3から始めたので2だとチョイ役な悪者でとても驚きました。
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