木の葉の里の化け狐とババァ   作:眠りたい時だけ手が進む人

11 / 12
男は黙って棒付きアイス

里外れの森の中にて。

 

「影分身の術!!」

「「……しゃー!!増えたァ!!」」

 

「だいぶ様にゃなってきたのォ。影分身のかの字もねェ頃に比べりゃ分身の強度も安定してきとる。後の問題は……チャクラ、かのォ。」

 

 

もはや卒業試験は問題ないだろう、と。2人に増えたナルトを見ながら妙木山の蝦蟇仙人、三忍の一人である自来也は顎を擦る。

影分身の術はそれ自体が分身の術の上位互換と言ってもいい。

 

分身の術は『質量を伴わない分身』であり、その用途は主に囮など敵の目を誤魔化すためのモノでもある。

忍びになればどんな些細な任務であっても死の可能性がついて回る。そして忍びに限った話ではないが、何事も成長とは時間が伴うもの。初戦で、僅かな成長段階で死んでしまっては、将来的に『猿飛ヒルゼン』に繋がるかもしれない才能を持つ子であっても意味がない。

分身の術を使えることで僅かでも生存率を上げる。アカデミー卒業にこの術が必須であることにも納得の術である。

 

影分身の術はそれとは違い、『質量を伴う分身』である。分身の術よりも用いることの出来る用途は遥かに多い。更に言えば、分身の経験は本人に帰属する。覚えさえしてしまえば、本人の可能性を更に引き伸ばすことができる。

故にこそ必要とされるチャクラ量は通常より多く、本来ならある程度の経験を積みチャクラの制御…自分のチャクラ保有量を加味し、生命活動に支障のない範囲で術の発動を行えるレベルになって始めて発動可能となるもの。

 

ナルトがこの術を発動可能なのは、偏に化けぎつね由来の膨大なチャクラ量故であろう。

 

そして、影分身の術はあくまで前段階であり、ナルトが託された巻物…禁術『多重・影分身の術』。まだ2人では意味がない。

この術の効果、この術の真価はチャクラ量を多分に消費しなければいけない影分身の術を、より多く、より多く…一人で一個師団レベルを築けるレベルの影分身を"一度に"呼び出すこと。量とは脅威であり、その術者本体の質が尋常でなければそれは恐るべき軍団となる。

 

ナルトはまだ未熟だが、それを数で補うことが出来ればどんな相手にも容易には負けることはないだろう。更に言うなら、経験値が本人に帰属する…という特性は多重・影分身の術にとっても例外ではなく、ナルトの成長を飛躍させてくれるだろう。

この巻物を手渡した、西郷の意は……つまるところ、ナルトへの親心と言ったところになるのかもしれない。

 

「……だが。」

 

問題は、ナルト本人が未だ『分身の術』を使えていないということだ。

影分身の術はその子供の身に余る多量のチャクラをゴリ押しして消費することで発動させている。メラを、メラゾーマのMPと同じ消費量で発動させているような状態。

 

分身の術は、少ないチャクラで質量の伴わない分身……映像を映し出しているようなもの。

要するに、技術的に言えばチャクラの消費量云々を除けば分身の術の方が難しい。だが、分身の術はアカデミー生の時点で習得可能と証明されている、言ってしまえば子供ですら出来る簡単な術なのだ。それすら使えていないというのは……ナルトの才の有無もあるのだろうが、チャクラを制御出来ていない、ということ。

 

「……鍵、か。」

 

原因は分かっている。恐らくだが、封印の鍵が経年劣化で少しずつ歪みかけているせいで、チャクラの出入り口が九尾のモノとナルトのモノとがめちゃくちゃになっている。蛇口の栓が緩んでいる、と言ってもいいか。

しかし、自来也は未だ暗部の中でナルトを万が一の時には切り捨てる論が残っているのを知っている。ナルトの封印が緩い、ナルトと九尾が半ば一体化する状態ならばかえって弱体化しているため御するならそちらの方が容易い、という理由で、敢えて封印の緩みを放置しているのだろう。

 

 

自来也にとって、九尾とは己の愛弟子を奪われた怨敵。この論も分からなくはない。

 

……だが、ナルトは……

 

「なぁなぁエロ仙人!次ぁ三人だけじゃなく四人、いや五人……」

 

「その前に!!」

 

「あ?」

 

年相応な笑みを浮かべて此方に近づいて来るナルトに、その心が暖かくなっていくのを感じながら、自来也はある物を取り出す。

 

「…よくやった、確かな成長だ。頑張ったのォ。」

 

「……へへ。えへへへへ……」

 

2つに分けるタイプの、棒付きアイスを半分にして片側を手渡す。

師として、甘すぎるというのは自覚している。何せあまりにも、進歩としては低過ぎるものだったから。

だが、それでも褒めずにはいられなかった。数日前には、分身を一人すら作れなかったナルトが、多少雑とは言え一人でも生み出せたのだ。

 

何より、何よりも。

 

自分の愛弟子の子であり、孫のような、愛おしい存在に思えてならなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

そんな二人の姿を、木陰から見つめる者が居た。

何処か二人を……否、ナルトを見下すような嘲りの視線を向けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また見てますね、全く。……あぁ、ハイ。サブちゃんです。えぇ、例の人物は今……ハイ、えぇ、頼みましたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「───という訳で、カツ丼はどっちがいいですか?ソースカツ丼ですか、卵で閉じてある方ですか?」

 

「いや、あの……」

 

「あぁ、安心してください。卵で閉じてある方には三つ葉を乗せておきますよ。……あっ、グリンピースの方が良かったですか?それはすみません、今日は食堂で海老ピラフが日替わりで出る日でしてね、生憎グリンピースは切らしてるんですよ。えんどう豆ならありますよ、えんどう豆でいいですね?」

 

「いや知らねーよ、代わりにもなってねぇよ。」

 

「あっ、すみません。親子丼の方がよかったですか?親子丼のえんどう豆乗せですね?山岡さんに丼ぶち撒けられるような冒涜的な親子丼ですね?三つ葉いりませんもんね?」

 

「ちげぇし山岡さんって誰だってばよ!?!?」

 

「うっさいですねもう。間を取ってかつサンドでいいですねもう。貴方あれでしょう、どうせ赤いギャバンをまだ受け入れられてないんでしょう?もういいじゃないですか、ビルドの後のジオウだって受け入れてきたじゃないですか。どうせ少ししたら慣れてくもんなんですから我慢ぐらいしてください。」

 

「…………だーかーらーよーォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「なんでオレが逮捕されてんだってばよ!?!?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。