そういや、最近は投稿してなかったな〜
そろそろ投稿しないと!え〜、前回は…
約 1 2 ヶ 月 前(1 年 前)
本当に申し訳ない
それと、三高に居る一部のキャラを強化します。
理由は、超強化森崎のライバルキャラを欲しく
なってしまったからです。
シルヴァリオシリーズを使ってるにも関わらず
戦闘シーンが少ないのは仕方が無いんや…
この作品は、序盤ら辺は特に戦闘描写が無いのだ
我、病院カラ退院の為、完全復活ナリ!
全身骨折も脚部の複雑骨折も刺し傷も
俺の大事な大事な左耳の鼓膜も全部完治だぜ!
渡辺先輩を護った代償として全治数時間の
軽傷を折ってしまった事は気にするな!
アレだ、必要な犠牲でしたって奴だな
それより驚いた事が二点発生したわ
まず、渡辺先輩の代わりとして1年生の
深雪がミラージュバット本戦に出ることだ
普通は控えの…いわゆる代打が居るから
その人に任せる所を新人の深雪に任せるのは
普通の事では考えられん人選でしかない
幾ら、深雪が成績1位とは言えだ
達也からの通達で聞いた時は流石に耳を疑ったぞ
達也は秘策が有ると言っていたが…
なんだ?マジで飛行魔法を実戦投入すんのか?
その場合は流石に今度こそ彼奴の事を
魔法に取り憑かれた化け物と呼んじまうぞ
次に本校の得点に三高が追いつき始めてる事だ
いや、流石に渡辺先輩が妨害されるのは考慮してたが
先輩方が活躍出来ていないのが響いてきたな
新人戦は本日から開催なんだが何せ、三高には
一条という新人とは思えぬ最高戦力をリーダーとし
カーディナル、一色、十七夜、四十九院と
数字持ちに新たな基本コードの発見者が居るからな
一条とカーディナルは対戦で当たるならば
俺が抑え込めるし打破出来るが女子は無理だ
深雪を筆頭とした有能女子軍団に任せるしかねぇな
いや、俺と森崎含む男子組は逆立ちしても女子組の
層の厚さに勝てる気しないのが問題なんだけどさ
そんな中で新人戦を犠牲にしてでも本戦を勝つって
深雪が本戦ミラージュバット行きだから困ったもんよ
さて、そんな訳で本日は最大戦力が抜き取られた
我らが1年生が高校の威信を賭けて争う新人戦だァ!
まず、午前中に女子スピード・シューティングの決勝まで
午後に男子スピード・シューティングの決勝までが
行われると共に、朝から昼までの一日を掛けて
男女バトル・ボードの予選も実施される。
レース間の整備に時間の掛かるバトル・ボードはともかく
スピード・シューティングは砕けたクレーの残骸を
撤去するだけなので試合間のインターバルは長くないらしい
プログラム上では各試合の間隔は15分で設定されてるし
例年通りならば、ほぼ予定通りに進行するらしい
例外は準決勝と決勝の間隔だけなんだってさ
え?なんで、こんなにあやふやなのかって?
総て雫さまぁから教えられてたからだよ
言わせんな恥ずかしい///
今は女子スピード・シューティングが行われていて
準々決勝進出者が8人まで出た筈だ、てか出た
達也からの連絡で一高3人がベスト4入り
更に雫が同校のエイミィを破って勝利と
凄まじい戦績を記録した事までは良かったんだが
パーフェクトまで出されて負けたって事だ
対戦表的に仕方が無いが出来れば準決勝で
雫と当たって欲しかった所だが…流石に負けるとは
その連絡も一緒に届いた時はビックリしたね
え?俺は今、何をしてんのかって?
男子スピード・シューティングに出る森崎は勿論
男子組のCAD調整は俺が総て担当するからだ
そして、森崎のCADは俺が貸し出している、つまり
必然的に森崎のCADを作り上げた俺が同行するって事
そんな訳で森崎の部屋に来て作戦会議をしていた訳だ
「決勝戦までは、今のお前の実力ならば簡単に行けるだろうが、
そう、森崎なら決勝戦までは想子をそこまで使わず
スコルとハスティすら使わないで行ける程度に強くなったが
カーディナル・ジョージと当たった場合は別なんだよな
俺の見立てなら良くて勝率4割と言った所まで落ちる
それは森崎もそうなのだろう…なんなら更に低い
「いや、全くと言ってさっぱりだ…魔法師としての実力で言えば魔法式の構築速度ならば負ける気はしないが、魔法式の規模、事象干渉力ならば遥かに吉祥寺の方が上だろう、、どれだけ運が傾き続けたとしても、勝率は2割だろうな」
「そうか、で?俺が作った後、使わなさ過ぎて俺の家で埃を被っていたという不名誉な物を競技用デバイスにまでダウングレードしてやったスコルとハスティは勿論だが、2人の貴重な昼休みは勿論、放課後という時間すら費やして教えた鷹の目…どちらも使った場合の勝率は?」
「どれだけ低く見積っても5割だな」
「なら行けるな、後はお前がマグレを必然にまで持っていくだけだ」
「分かってるさ、それよりトュール、ここに来る前までに雫さんに呼ばれていたんじゃなかったのか?」
そう言えばせやったわ
ここに来る前に雫に会ったんだよ
その時に作戦会議が終わったら控え室まで来てって
雫に呼ばれてんだよな、雫は女子の部で出てるから
控え室に居るのは必然と言っていいんだが
いや、でもさ…
「ん、そうだな…でも達也が居るから良くね?俺、彼奴が居るなら、CAD触る気ないから、本当にやる事ないぞ?なら、お前と作戦会議してた方が有意義じゃ…」
「いや、女の子との約束を破るのは流石に男として良くないだろ…?」
「…それもそうか、んじゃあ、行ってくるが、決勝戦まで鷹の目は勿論、スコルとハスティも使わない事、そして…なるべくってか、スコルとハスティに仕込んである術式は使うなよ?使うと想子は一日分を総て使うレベルに消費するわ、お前の脳の処理限界1歩手前まで脳の演算領域使うから馬鹿にならん程に脳が疲労するからな」
俺がそう言うと、森崎は呆れた様な仕草をしつつ
俺の肩を押して部屋から追い出すようにしてくる
そこまで俺を追い出してぇのか貴様ァ!?
「あぁ、分かってるさ、ほら!さっさと行け行け!」
「へいへい」
森崎の部屋から半ば追い出される用に出ると
さっさと雫と達也が居るだろう控え室まで走る
選手用の薄暗い通路を駆けること数分
目的の控室へ到着した為、扉へ手を伸ばし
中に居るであろう、雫と達也に向けて
ノックをし、応えを受けてから入室する。
部屋へと入ると、モニターを見つめる
達也と雫の姿が目に入った。
達也は相も変わらず仏頂面なのは変わらんが
雫は、既に本人の準備は終わっているな、だが
じっと画面へ視線を送る雫は小さく握り拳を
作ったまま、試合のハイライトを見ていたが
此方に首だけだが振り返る
「トュール、遅かったね。」
「お邪魔するぞ〜っと…済まんね、森崎と作戦会議の為に話し合っていると時間が流れるのが早く感じてしまうんだ…あぁ、言い訳は不要か、試合、見れなくて済まんね」
「うぅん、気にしてない、トュールは一高優勝の為に尽力してるから」
「それでも、だ、とりあえず決勝戦進出おめでとう、映像は見れていないが達也から活躍は聞いていたぞ」
「うん、でも決勝戦も楽には行かない」
そうだろうな、雫は達也によるCADが有り
パーフェクトを取り続けているとは言え
相手は達也という魔工技師は居ないが
達也が専用にチューンナップしたCADを持った
1年生を打ち負かし、パーフェクトを取ったのだ
そう易々と勝てる試合では無いのは誰でも分かる
「そうだな、相手は雫と同じパーフェクトを達成している、幾ら達也が調整したCADのバックアップがあるとは言え、扱うのは達也ではなく雫だ…気を抜くなとは言わないが一筋縄では行かない相手だ」
「わかってるよ、だから…トュールも応援してて?」
「あぁ、勿論だとも…健闘を期待している、頑張れよ」
「優勝するよ、絶対、勝ってくる」
雫に向かって軽く微笑みながら言うと
雫もまた微笑みながら返してくれたな
時計を見れば、間もなく試合開始の時刻。
達也が呼び掛けると雫の目もスッと真剣味が増した。
真っ直ぐに見返してくる眼差しを受けてだろうか
あの達也ですら、小さく笑みを浮かべる。
「頑張ってこい、雫」
「うん、頑張る!」
達也がそう言うと雫は微笑んで返す
この子、本当に感情薄いように見えて
感情の起伏は、ほのか並だよなぁ
そうして、雫を見送った後、俺は観客席に行った
別に達也と同じく選手用の通路から眺めても良かったが
出来ることなら良い場所で見たいじゃないか?
そういう訳で、観客席の上の通路から俯瞰して見る
試合開始のカウントダウンのブザーが鳴っていく
両者共にCADを構え、想子を流し込んでいく
三度目のブザーが鳴り響いたと同時に
紅白二つずつのクレーが四方から射出された。
すかさず雫が待機させていた魔法を発動。
一拍遅れて十七夜も魔法を発動するが雫の魔法により
飛び出した四つの円盤は間もなく軌道を変え始めた。
右手前と左奥から飛来する白のクレーは上方へ
左手前と右奥から飛来した紅のクレーは綺麗に
エリアの中心へと引き寄せられていく。
すかさず十七夜の魔法が白いクレーを捉え
一つが振動魔法によって砕かれると同時に
砕けた破片がもう一方のクレーを貫く。
直後、紅の方は中央まで引き寄せられ
そのまま衝突して砕け散る
「ほぉ…なるほどな…達也め、驚かせてくれるじゃあないか」
俺は今の今まで雫の練習風景は勿論の事だが
試合の映像すら見ていなかった為、度肝を抜かれた
流石に達也の様に何工程も読み解く事など出来ないが
その動作、過程、結果くらい見れば分かる程度には
この世界に来てから魔法に対して見識を広めたんだ
にしても、流石は達也が弄ったCADと言った所だろうか
構造は予想では15〜25m四方の箱型に指定された
仮想領域内部全域を搭載した収束魔法系統だろうか?
規定内容は
【中央に近付くほど雫が指定したクレーの密度が高い領域】
と言った所だろうか?もう少し簡単かも知れんが
この規定内容により雫の狙う紅いクレーは中央へ
十七夜が狙う白いクレーは外へと軌道を逸らされる
余りにも性能が違い過ぎる、巫山戯ているぞ達也
対して、十七夜が扱う魔法は名称は知らんが
振動魔法によって破壊したクレーの破片自体を弾丸とし
移動魔法で他のクレーにぶつけるというもの。
干渉力が小さく済むことに加え、他の魔法と違い
弾丸の生成過程が無い点が優れていると言える。
そうこうしていればどんどんクレーは射出され
その度に両者はクレーを的確に撃ち抜いていく
つまり、横並びのスコアがノーミスのまま続き
その度に観客のボルテージは上がっていく。
当然だろう、本戦でもなかなか目にできない
両者共にパーフェクトへ向かうだろうペース。
それを新人戦の、それも女子の部なのだ
こんな光景を観られることになるなど
一体、何処の誰が予想できただろうか?
まぁ、1人は居るがな、お前の事だぞ達也
さて、そろそろスコアが同時に50を超え
間もなく70を超えようかという頃になると
いよいよ観客席の盛り上がりは最高潮に達してきた。
だが、選手である2人は既に満身創痍になりかけている
雫は想子量が軽減されているとはいえ多大に消費され
精度こそ落ちないが、着々と制限時間が迫っている
十七夜は雫の魔法により軌道を逸らされたクレーを
的確に撃ち抜かなければならない為、集中力は勿論
瞬間的な判断能力に精密さすら要求されている
キツさで言えば、断然、十七夜に軍配が上がるだろう
それでも尚、撃ち漏らしゼロに抑えられているのは
彼女の技量が高い事を裏付ける良い証拠となる
だが、そんな拮抗状態も長くは続かなかった
二人の得点が80を数えたところで
十七夜の魔法によって飛ぶ破片が的を外した。
即座にリカバリーに動いた為、十七夜は
間一髪の位置でクレーを破壊する事に成功し
思わず安堵の息が漏れたのだろうな肩が降りた
だがその一息は、致命的な隙に繋がった。
そのミスをカバーしたほんの数秒も無い隙間
そこにすかさず雫の指先が動く。
ミスをカバーした、疲労を見せた瞬間を
勝負所と判断して起動式を一つ多く待機させたのだ。
続く一波が飛び出し、十七夜による魔法でクレーが
破壊され、移動魔法で操られた破片が衝突する瞬間
雫は待機させていた振動魔法を発動させた。
直近の震源から振動波が三連続で発振される。
破片が白のクレーを貫き、大小いくつもの破片が飛び散った。
十七夜が次の弾丸を選別し、魔法式を投射する直前に
すべての破片が粉々に砕け、小さな砂となり地に落ちた
そうなれば砂は弾丸とは成らず、十七夜は弾丸を
作り出す為に選別し直し、魔法を使わなければならない
幾ら演算能力が高い彼女と言えどカバーには時間がかかる
残る二つのクレーのうち一つは間に合った。
だが、最後の一つは間に合わず、得点エリアの外で砕けた。
86対85の表示が電光掲示板に踊り
一際大きな歓声が鳴り響く
音量は客席の場所によって異なっていた
一高サイドでは会場が割れんばかりの
三高サイドでは悲鳴交じりの声が
会場内を彩る様に響き渡った
ここへ来て、初めての失点。
重い1点差に、十七夜は折れそうになる
自身の心をなんとか奮い立たせる。
その後、持ち直した十七夜は
雫の点数にどうにか追い縋るも
以降の雫は自身の魔法にのみ集中し
全くミス1つしなかった為、点差は1で並行し
最後の二つをループ・キャストさせた
収束魔法で衝突させた直後、四度目のブザーが鳴る。
結果は……ーーーーー。
『優勝は第一高校、北山選手!』
この日一番の歓声に、雫は笑顔で応える。
俺は、この試合を見て思った事がある…
確かに雫や他の一校の女生徒達は優秀だ
それこそ深雪なんて中でも突出している
だが…ここまでの戦績を刻めたのはやはり
達也がCADに一枚噛んでいるからだろう
末恐ろしき男…そう締めくくりたい程に
「…達也、お前はどんな
新人戦女子スピード・シューティング決勝は
雫の大勝利で幕を下ろした。
最後の最後まで結果のわからない一点差の競り合いに
観客席の興奮は最高潮のまま。
終了のブザーが鳴るとより勢いを増して轟いた。
雫と十七夜栞が向き合い、互いに握手を交わした。
それと同時に両者の健闘を称え惜しみない
万雷の拍手が送られる。
一高と三高のどちらもが自身の座る席から
立ち上がり、手を叩いている…
今、この時代にも続くノーサイドの精神が
魔法師の競技にも変わらず残っていることを
この場で示していると言えるだろう。
敗れた十七夜栞が一礼してその場を去り
雫は片手を天に向けて綺麗に立てあげる
それは勝者の務めであると同時に彼女を
称える歓声と拍手を受け入れる為だ
これにより、一校は1位、3位、4位を獲得
三高は2位、5位、6位を獲得する事に決まった
新人戦では珍しい2つの高校による上位独占である
その事を会長はとても喜んでいたし、選手3名も
達也の調整したCADを使うと魔法が上手くなったみたい!
と絶賛する程だったようだ…達也が教えてくれた
え?俺は何してんだって?雫に優勝おめでとうって
惜しみ無く称賛して、直ぐさま、森崎達の元に向かったが?
しょうがないだろ、俺が森崎と他2人の担当なんだから
そんな訳で、時は進んで決勝戦になったんだが…
「まさか、俺が調整したCADを使っても3位と4位…か、出来れば2位と思ったが、ここは1つ、男の癖に情けん!根性無し共よ!って言ってやるべきか…?」
「それは流石に辞めてやれ、実践でも成績でもCAD調整ですら勝てない奴から責められたら精神が終わってしまうだろ?それと流石にカーディナルに勝ては無理な話だろ…トュールから直接手解きを受けて専用の魔法まで教えられた僕ですら、今の状態じゃカーディナルに勝てるか、どうかなんだぞ?」
「それを言われたら終わりだ終わり」
そう、既に決勝戦前なのだ、他2人は3位と4位
三高の生徒と争い無事上位にはくい込んだが
森崎が3位を、カーディナルが4位を倒した訳だ
その後は準々決勝で勝敗が決したという形に落ち着いた
流石に2人分を纏めていっぺんにやるのは疲れたぞ
そうなれば後は、森崎に全集中出来るわけで
丹精込めて練り上げた調整をしてやったから
「さて、スコル、ハスティ共々調整は以上だ、感想を言いやがれ〜、森崎!」
「流石にCADの大きさは変わってるが、使い心地は相変わらず変わらない、ここまで来ると逆に気持ち悪く感じるぞ?」
おい、俺だって人間だ、心があるから傷付くんだぞ?
それはそうと、立ち上がり森崎の背中をバシンと叩く
あ、勿論、非力な人間が軽めに叩いた位に抑えてな?
「そうか?まぁいい、俺はここで結果を待つ、コレは最初から変わらんスタイルだ…だから、勝ってこい」
準決勝の時に2人に向かって言った言葉通り
変わらぬ言葉で送り出してやる
それが技術者として、待つ者の責務として
そう伝えてやる…安心して撃ってこいとな!
「あぁ、わかってるさ…勝つ、必ず、勝ってみせる、トュール、お前が凄まじい技術を持ってるって事をカーディナル・ジョージに知らしめてやる!」
そう言う、森崎の顔は戦士の…否、男の顔から
本物の漢の顔に変わっていった…なら安心だな
お前がどれ程、俺が取って付けたような羽で
飛んで見せるのか、その勇姿を見せてもらうぞ
控え室から出て、どんどん試合会場に進んでいく
「凡人だ何だと言われた俺より遥かに才能がある、お前ならば…俺の付けた羽を超え、翼に変化する事ができるだろう…気張れ、森崎」
迎えた男子スピード・シューティング決勝戦
無事に準決勝を勝ち抜いた先には当然
吉祥寺 真紅郎が待ち構えている。
そして…その反対には同じく当然勝ち抜いた
森崎 駿が相対するが…二丁の拳銃型CADは
準決勝で扱っていた競技用とは見た目が異なる
太陽のような緋色に染め上げられた軽い物と
太陽のような反対に位置する月夜の様な鮮やかな
黒が特徴的な物…その二つに加え腕輪型のCADと
3つを同時に持つ姿は異様としか言えなかった
「初めまして、森崎 駿、唐突で悪い事だとは分かっていますが、ご容赦を…準決勝では使わなかった、その見慣れないCADを3つも持ってきたのは僕への対抗策ですか?」
「あぁ、初めまして、吉祥寺 真紅郎、それと先程の質問だが…そうだ、僕は君への対策として、この3つを所持している」
「なるほど、ですが、それでも僕は受けて立ちます、君の空気弾は驚異的ですが僕も負けてはいられません、正々堂々戦いましょう」
「お互い様だろう?君の不可視の弾丸を僕は対策出来るか正直不安だ…でも負けられないかなら、正々堂々戦い打ち砕くと誓うさ、両者の健闘を祈るよ」
入場口前で軽く挨拶を交わすと
吉祥寺はその紅い目を細めて笑んだ。
森崎もまた、良い笑顔で返した
スポーツマンシップに乗っ取って2人は
全力を出し合うと誓ったも同義なのだ
だが吉祥寺は負ける気は少しもないのだろう。
『いい試合』にはなっても自分の勝利は揺るがないと
心の底から思っている…そう感じさせる余裕がある
実際、2人の総合実力差を考えればそう考えるのも当然。
だが、森崎にはクイックドローに加え新技が4つも有るのだ
負ける道理は無い…森崎もまた負けると言っていたが
その心は自分の勝利は決定していると揺るがないのだ
係の人間に促され
2人は自身のシューティングレンジへ向かって歩いていく。
隣り合った二つのレンジの左側に立ち、枠線の内側へ。
一つ目のブザーが鳴り響くと同時に左手側に存在する
ホルスターに入るCAD…スコルに手をかけ抜き取り
感触を確かめ、構える…この魔法で外す事は決してない
二つ目のブザーが2人の耳へと鳴り響いた。
体内の想子をCADへ充填し、待機状態で留める。
吉祥寺も同様だろう、想子が高まってゆく
体内に巡る想子を脳へと向ける周囲の音が
遅く、遠ざかって行く感覚が広がっていく
何もない空間に得点エリアが薄青く浮かんで見える
一拍の間があった後ーーーーーー…
三つ目のブザーが耳に届いたと同時に
紅白のクレーが3つずつ吐き出された。
吉祥寺と森崎は同じ速度でクレーを撃ち抜く
得点が入る速度すら同速、早撃ち勝負の真髄が
今、始まったのだ
クレーが更に3つずつ射出され宙を舞い
得点有効エリア内側に到達したと同時に
吉祥寺は不可視の弾丸により紅いクレーを
的確に撃ち抜いていくが、それより早く欠片が舞う
僅かに…森崎の反応の方が早く空気弾により
白のクレーが寸分違わず真ん中を撃ち抜かれているのだ
森崎が現在使用している魔法は空気弾の他にもある
脳の演算領域を使用し自身の目に浮かぶ物を
的確に情報処理し1つのタイムラグ無く動作に活かす
という精神干渉系魔法による外法に位置する方法
どれだけ、術者が精神干渉系統に精通していなくとも
実行に移せるだけの演算処理をCADが肩代わりする事により
まるでFPSゲームの様な操作感で的を撃ち抜けるのだ
四葉家に真っ向から喧嘩売ってる様な魔法だが
外来であるトュールだからこそ実行に移したのだ
勿論…誰がどう見ても精神干渉系に見えないよう
独自の細工はしてあるが
森崎は一度も瞬きなどせず
ただひたすらに的を撃ち抜く
脳が悲鳴を上げようと関係は無いのだ
脳が悲鳴を上げる程度で止まる程
トュールに性根から叩き直された彼はヤワでは無い
綺麗に撃ち抜かれていくクレーに会場は湧き上がる
そして、対する吉祥寺も同様に一度のミスもなく
クレーを撃ち落としていく…女子の部決勝戦同様に
高密度で、このままのペースで続いた場合
パーフェクトゲームになる展開を確信した観客は
割れんばかりの音量で応援をし続ける…
だが、森崎には、そんな声すら聞こえていない
精密性動作、集中力の極地へと近付く彼には
その様な事は不要と脳が判断しているのだ
四方から計6つのクレーが勢い良く飛び出す。
紅白3枚ずつのクレーは得点有効エリアの内側へ
入った直後、時間も置かず全てが破壊されていく
1つはまっすぐ二つに折れ、1つは中央に弾痕の穴が開く
電光掲示板に9対9の文字が浮かび、更に歓声が上がった。
決勝戦であり、新人戦とはいえ男子の部なのだ
観客にとっては白熱する試合をこそ求めていて
タイプの違う『弾丸』の撃ち合いは観客達が望む
注文通りの派手な展開だった。
期待に応えるかのような応酬に
観客のボルテージが否応なく高まる。
次に射出さらた計4枚は射出され得点エリアに
飛び出した瞬間、一気に加速したが白は同時に
真ん中を撃ち抜かれ、ほんの少し遅れ赤が折れる
その様な応報を続けていくがクレーの加減速は止まない
その理由は、森崎 駿が右手にいつの間にか取り出した
拳銃型CAD、ハスティーに内蔵されている加速魔法
【指定した範囲内に侵入した物体を法則性無しに加減速する】
という極めて単純だが自爆必須の戦法であった
だが、この自爆必須はスコルにより相殺される
どれだけ速度が変わったとしても森崎の判断速度は
時間が進めば進む程、増加していくのだ、つまり
森崎 駿のクイックドローでしか対応が難しく
…あの、カーディナル・ジョージすら対応は極めて難しいのだ
射出された紅のクレーの1枚を撃ち抜けた吉祥寺は
次へと向けたが、既にクレーは傷つくことなく
レンジの外へ飛び出した。
14対13という数字に試合を観ていた
ほぼすべての人間が息を呑む。
あの吉祥寺真紅郎が失点したのだ。
予選はおろか、準々決勝、準決勝でも
問答無用のパーフェクトを叩き出した傑物
優勝候補の一番手が、序盤のこの場面で点を失った。
ただでさえ術式が追いつかない人もいる
スピード・シューティングという競技において
本来、すべての標的を狙うことのできる選手の方が稀なのだ
本戦ですら満点を出せる選手は限られる程に
狭き門に新人戦で満点など年に一人もいない年が遥かに多い
そんな背景があって尚、有り得ないクレーの加減速による
変化を扱うなど正気の沙汰ではないのだ。
だが、今、この場において、ただ一人、森崎 駿だけは
動揺する事もなく、淡々と自身のクレーを撃ち抜いていく
吉祥寺は既に対応し始め、失点を3に抑えながら
森崎に食らいつかんと、自身の点を加算するが
それでも尚…3点の差は埋まる事も無く続き
気付けば53対50と後半戦に突入しようとしていた
だが、幾ら脳の覚醒をしている森崎と言えど
人間には限界点が存在している、森崎は素早く
その限界点を見極め、加減速魔法を止めると
腕輪型CADに想子を流し合図を送ると
情報処理速度が更に加速する…鷹の目だ
そのまま片方ずつCADを持ちながら
同じ魔法式の空気弾による射撃を始める
同じ魔法同士とはいえ、司波 達也の様な芸当を
脳の覚醒という特殊条件下で再現して見せているのだ
その撃ち方に観客席から上がる歓声は
いよいよ最高潮に達していた。
吉祥寺も自身の脳を全力で稼働させ3点の差を埋めんと
1枚たりとて外す事無く正確無比に折り壊していく
彼にも譲れられない想いが有るのだ
一条、将輝の大親友として彼の副将として
絶対にココは勝たねばならないのだ
でなければ、顔向けなぞ出来ないと言わんばかりに
そうして残り20枚に差し掛かろうとする時
2人同時に無理な脳の稼働による反動でよろけたが
何方も両の足を地に縫い付けんと固定し
顔を下げる事無く、各々の魔法をクレーに向け撃ち込み続ける
本戦ですら見ることが無い、ハイレベルな戦いは終わりへと
着々と進み続けている事を示唆するように
その姿を見た観客は益々、歓声を上げ、2人の戦いを
最後まで2人の勇姿を観ないとと目を開き続ける
残り12枚
吉祥寺は数十枚前まであった余裕のある表情は
とうに消え去り、顔から汗を垂らしながら目を開き
何時、加減速するか分からない次のクレーに向けて
拳銃型CADを落とさぬ様、ガッシリと掴み続ける
森崎は脳の全力稼働による反動で
噛み続ける大臼歯が軽く欠け、歯茎から血を流し始める
それでも尚、脳は思考を停めず、森崎の意志によって
クレーを撃ち抜く手を、クレーを見る為の目を停めない
残り6枚
森崎の右目から血涙と共に右目が血によって
紅く染まり、視界不良を起こし始めたが
クレーを撃ち抜き続ける…だが、とうとう
射出された3枚の内、1枚を視界不良により
勘で撃ってしまい外れを引いてしまうが
動揺をする事なく残りに集中する
残り3枚
森崎と吉祥寺は既に限界点は突破し
想子制御に使う程の演算領域は使い果たした
後は己の精神力と技術力によって決まる
息も絶やさぬ壮絶なる早打ち合戦
新人戦とは思えぬデッドヒートは…
残り 0 枚
最後の最後…森崎 駿が最も近く、最も遠い
1 点という差を付け、勝利した
森崎は鷹の目から開放された脱力感により
危うくCADを取り落としそうになるが
そうなる前に何方もホルスターへ収め
震える手を抑え、覚束無い視界と息を
深い呼吸と共に整えていき、落ち着いていく
目に溜まった血涙を家族から渡されたハンカチで
綺麗に拭き取っていく、なるべく綺麗にしていく
それは、忘れてはならない事をする為に
自身の隣に今だ、倒れそうな肉体を立たせる
ライバルであり、超えるべき壁であり
果てしなく強い存在であり
必ず追い付く者であり
…果てしない5分間を共に駆け抜けた戦友
吉祥寺 真紅朗の方へ顔を向ける…
吉祥寺の顔には悔しさや屈辱感などは無い
彼の顔に有るのは、とてつもなく満たされた
その様な感情が分かる程に顔に出ていた
「全くもって完敗だよ、森崎 駿。はっきり言おう、僕は傲慢にも君の事を侮っていたとね。けど次は…新人戦のおおとり競技、君も出るだろう?その時には絶対に負けない…いや、負ける訳には行かないね」
吉祥寺は汗をハンカチで拭ってから
満足気にホルスターにCADを収め
CADを持っていた利き手の右手を差し出す
それに対して森崎は迷い無く、その手を取る
「はは…あぁ、そうだな侮られていたのは確かに悔しいが、君と僕の基礎実力差を考えれば普通だろうね。どうせ出るんだろう?一条…君の親友も、だけど僕だって歴代の森崎家に名を連ねる男の一人だ、確かに君達2人のコンビに勝てるかは全く分からない…でも、簡単には負ける訳にはいかない」
そう言った2人は互いに固く結んだ手を離し
両の眼をキチンと開き、互いを完璧に認識し
その口を同時に開いた
「ありがとう、君と競い合えたのは確かに僕の成長を促した」
「ありがとう、君と出逢え、こうして競えた事で僕は君に追い付けた」
「「だから、次はモノリスコードだ」」
そうして、吉祥寺 真紅朗は去っていき
今年の新人戦、スピード・シューティングにて
優勝を果たした、森崎 駿は溢れんばかりの
喝采と歓声に答える様に右手を天高く突き出した
まさか、あの状況から保ち続けるとはな…
流石、俺のブーストレッスンを受けて耐えた
肉体性能と精神性を兼ね備える男だぜ
森崎は控え室まで何とか歩いて帰ってきたが
直ぐさま、椅子にガダンと座り込み顔を覆う
だからこそ、俺は脳が沸騰しそうになっている
森崎に用意していた冷えたタオルを頭に被せてやる
「お疲れさん、見ていたぞ、お前の勇姿と立ち姿を」
顔に被さったタオルを調整した森崎は
そのまま、顔は天井を見上げたまま
目を瞑っていたが、その顔は…
「そうか…なぁ、トュール、今の僕は…どんな顔をしているんだ?」
「あぁ、物凄く満ち足りている…そう己の持ちうる総てを出し切った時の様な顔だぜ?」
「そうか…そうか…そっかァ〜…あぁ、駄目なんだろうな、こんな事を言ったら、こんな事を思ったら、でも言わせてくれ、トュール…僕は…とんでもなく幸せで、あの時間が一生続いても良いと思えた…!」
森崎の顔が満ち足りた顔から変化していき
僥倖とした顔に変化した時に分かっていたが
吉祥寺との競争によって森崎は覚醒した
最後の方は鷹の目すら完全に途切れ
脳の覚醒状態は効果時間はとっくに切れていた
それでも尚、二丁のCADを同時に扱えたのは
森崎自身の脳が吉祥寺 真紅朗という男に勝つ為
進化した証なのだろう…
「はっ、言うようになったな森崎…だが、その気持ちは嫌という程分かる、今のお前はハイになっているから聞こえるか知らんが既に昔のお前とは掛け離れた状態になった。確かに想子量に事象干渉力は、これぽっちも変わっていない、それを示すように既に想子は空っぽを超えた状態、普通ならば想子の使用限界を超えた時点で魔法師生命に関わる程だ、今のお前には指1本動かすのすら辛いだろう?だが、それでも身体を動かせる精神力に加え、2つのCADを両の手で個別に扱う事は造作もなくなっているだろう!だからこそ…俺は、強くなったお前がモノリスコードにて一条に一矢報いる事、この面に期待している。」
「…分かってるさ、ここは所詮、諦めが着く場所だがモノリスコードは違う新人戦に出た皆の意志を引き継ぐんだ…なら、その期待に応えるのは当然だ…だから、トュール…アイス・ピラーズ・ブレイクで必ず、一条に勝ってくれ、勝って、俺たち一高1年男子に希望を見せてくれ」
「あぁ、任せろ、友よ…そして、これはお前のCADを調整した者としても、そしてお前の練習相手として務めた者として言う…良く吉祥寺 真紅朗に勝った、おめでとう、森崎、お前は1人前の魔法師だ」
「そぉ…か、お前に褒められる、なんてな…御免、脳が疲れ…過ぎたか、ら…少し…や、すム…」
そう言った森崎は、脱力するように椅子に全体重を預け
深い眠りーーーほぼ気絶に近いがーーーへと誘われた
まぁ、あそこまで保有想子を超え、消耗し切り
それでも全力を出し、真正面から小細工を出し切り
吉祥寺 真紅朗から細い勝利の糸を掴み取ったのだ
今の此奴を責める権利を持つ者なんて居ない
そう、森崎に対して誰も責める事は出来ん
それ程までの結果を一高に齎したのだから
「深く、深く眠り、疲れを癒せ、素晴らしく悔い無き勝利を掴んだ戦士には休息は必須だ…改めて祝おう、スピード・シューティング優勝おめでとう、森崎」
係員に森崎が寝た事というか気絶した事を伝え
担架によって病院に運ばれていく様を送り出し
森崎から返されたスコルとハスティを調整し直す
つまり森崎の専用CADにする為に調整用の車がある
一高専用テントまで向かっていた途中…
「後ろからコソコソと…そんなに聞きたいことが有るなら真正面から来たらどうだ?達也」
俺の後ろを音も気配も無く着いてきていた男
俺の友人であり、この一高女子の部の新人戦
勝利の鍵を握る男に向かって、振り向いて言う
「…コソコソしていた訳では無いが」
「嘘だな、気配も消して着いてくる何て疚しい事がある奴の仕草だ…な〜んてな、そういう事だろ?着いてこい」
「助かる」
俺と達也は2人揃って進行方向を変え
人気の少ない場所まで歩いていく
場所は…適当な使われていない物置
その影になる場で話す事に決まった
「で?何の話だ、達也」
「…トュール、1つ聞きたい、森崎は無事なんだな?」
あ〜…なるほどな、達也は心配になったのだろう
森崎は明らかに自身の保有想子以上の芸当を仕出かし
それを持続させつつ別のCAD操作までしながら
あのカーディナルにすら勝ててしまったんだ
俺に聞きたい理由は揃っているな
「まず、大前提として森崎は無事だ、数時間眠れば起き、半日もすれば想子は8割がたまで回復し普段通りに動けるだろう…まぁ、軽い筋肉痛は起こるだろうがな」
「そうか…森崎がCADを同時に3つも扱えた理由は?」
「それも簡単な質問だ、お前なら分かるだろう?あの3つは波長が違うが精密に計算した結果の果てに互いに干渉せず事象干渉を起こす魔法である事を」
「それは…分かってはいるがお前ならばまだ分かる…だが、彼奴には申し訳ない様な言い方になるが入学当初から今に至るまで森崎が3つを同時に扱える程の技量は無かった筈だ」
「それはそうだ、だが俺がこの数週間を棒に振る様な真似はせんよ、森崎にはスパルタに等しい教育の末に3つの端末を扱えるだけの精密性を身につけさせた…いや、魔法によって使える段階まで付け焼き刃とはいえ身につけさせた、が正しいな」
達也は、その言葉に不快感に近い感情
いや、どちらかと言えば俺への疑念だろう
其方に近い感情を隠さずに俺に向けてきた
言いたい事は分かる、精神干渉の事だ
「分かっている、精神干渉は人によって廃人になる可能性が懸念される程に扱いの難しい魔法であり、お前のようにエイドスに接続可能な奴に見られた場合は簡単に発見される程に分かりやすい魔法だ」
「それを分かっているなら、何故、森崎に使わせた?」
「思っているより森崎に適性があったからだ、何故、森崎に適性があったのかは知らん、俺は日本には詳しくないからな…だが、結果は更に俺の予想を超えていた…良い意味で裏切られた結果だな。」
「それが…あの魔法だと?」
「あぁ、そうだ、俺はアレを
俺はそう言うと森崎の腕から抜き取っておいた
白い腕輪型CADを手に持ってくるりと動かす
コレが鷹の目にまで至る為の魔法であり
森崎には使うなと言っていた
内蔵しているCADである
空気弾全域斉射は確かに超強力であり
使えば自身のクレーのみを的確に撃ち抜いてくれるが
演算領域も潰され、想子もガバッと持っていかれる
正に、必殺技なんだ、使わせる物か
「…そうか、分かった、お前がキチンと理論を持って言うならば信じるが」
「わかっているさ、何、確かに俺は人殺しだろうが、マッドサイエンティストでは無いからな、無闇矢鱈に魔法師生命を終わらせる様な真似はしないとも」
「スコルもハスティも調整する予定だ」という
言葉を続けながら、苦笑しつつ言うと
達也もまた、眉間に寄っていた皺を緩ませ
疑ってしまった事を詫びてくれたが
別に疑われるのは仕方が無い事だと思っていた
だからこそ、俺は思う…お前は凄まじいなと
「ループキャスト…どうやったら組み込めるんだ?俺では構造が一切分からんぞ、いや、達也、お前に探りを入れる訳では無いが…流石に目の前で見せられては…な」
ループキャストなる方法を確立しており
その機能を存分に活かせる機構を搭載しながら
雫を楽に勝利させた達也に比べ
俺は森崎の技量任せの調整しか出来なかった
この時点で、俺と達也は技術者としての差がある
だからこそ、ダメ元で聞いてみたが…
「それは…まだ、秘密だ」
「ならば、まぁ仕方が無い、だな、いずれ世に出た頃に学ぶとするさ」
そういう事らしいのでな
無理だったよ、そりゃそうだな
俺はどうあろうとフランス国民の外様だ
日本が誇る技術を世界に売り渡す売国奴には
誰であろうと、なりたくないだろう
達也と話しながらテント近くに駐車してある
調整用の車に乗り込み達也とは別れ
森崎様に完全にチューンナップを施し
モノリスコードに備える事にした
クラウドボールに出るんだろ、準備は?って?
俺の身体能力でゴリ押せる競技に準備は要らん
そんな事より、想定外にやばい状況が変わらん
新人戦の結果的には存外楽に進めるだろうが
男子側にテコ入れ出来るのはコレが最後
俺は二日連続で競技をこなさねばならんのだ
普通ならば、その程度はどうだってなるだろう
何せ、想子量では上位に食い込めるからな
だが万全を期さねばならん、と十文字会頭から
お達しが来た為、ここから2日は男子にテコ入れ不可
予選敗退という惨敗をしなければいいんだがなぁ…
[九高戦-5日目-新人戦2日目]
新しい朝が来た!
希望という絶望を叩き付ける朝がなぁ!
と、言う訳で新人戦2日目になった訳だが
ここで問題が発生した
「ラケットが見当たらない…」
そう、俺のマイ・ラケッツォが見当たらないのだ
この日の為に丹精込めて練り上げた作戦という
ゴリ押しに耐えうるだけの性能を持つラケット
ナノカーボンとアラミド繊維を混ぜ込んだ
混合化学繊維をタングステンで作り上げた
ラケットのフレームに編み込んだ特注品である
「おっかしい…昨日の夜まで整備用の車に乗せといたのだが…」
そう思い、車の中をくまなく探し続けたが
ついぞ見つかる事は無く、仕方が無いから
達也に相談した所、なんとビックリ仰天
我がマイ・ラケッツォは使用不可とされた様だ
その為、マイ・ラケッツォはボッシュート
九校戦が終わるまでは返却されないとさ
おのれ…この屈辱は忘れん…許さん…!
許さんぞ…無頭竜…ッ!生かして返さん!
と言う訳で、まだ朝日が天にまで至らぬ
少し暗い時間帯の今、達也と共に買出し中だ
勿論、問題が発生するのはお約束だ
「なぁ、達也、一つ質問なんだが…ラケットの善し悪しは分かるか?」
「いや、全く分からない、だが耐久性と言う観点なら分かるが」
「まぁ、俺の腕力に耐えうる性能かと言われるとってなると駄目だろ?…仕方ない、奥の手を使うしか無いのかもな」
「奥の手?」
達也が俺を軽く見ながら言った為
俺は思考していた事をぶっちゃける
「あぁ、死ぬ程簡単な事だ、物質硬化魔法と強化魔法の併用でラケットを強化し続ければいい」
俺がそう言うと、達也は少し驚き
ちょっと考える素振りを見せた後に
「それは…あり、かも知れないな」
そう言ったのだ
なんと言う事でしょう、達也くんは
俺の思考回路に毒されてしまったようだ!
普通の彼ならば、こんな事を言った場合
お前は何を言っているんだ?と言わんばかりの
表情で見ていたであろうが、そこは対面が俺だ
彼の常識には囚われない存在と認識されているからな
この位はやるだろうって思われてるのだろう
実際、それ以外の方法はあるには有るが
競技用の玉の耐久性も分からん内はコレが安牌だ
と言う訳で、俺と達也は2人揃って店内を歩き回り
適当なラケットを数本軽く振り気に入った物と
テーピングと脚と腕を保護するプロテクターを買い
さっさと、会場まで帰る事に決まった
[司波 達也side]
トュールが出場するクラウドボールは
何の不明確な点も無く物質硬化魔法と強化魔法によって
壊れる事がほぼ無いラケットを使いながら
相手選手が弾き返すボールを総て得点範囲で
落とし続けるという異常な戦績を刻み続けたが
問題はこっちの方だろうか?
「雫、そろそろ出場の時間だが…」
「うん、でも大丈夫…会場入りまで数分もかからない、だから、トュールの試合を見てる時間が残ってるから見てたい」
そう、雫が試合後にトュールの試合の録画を
見続けていることだ…それも目をキラキラさせながら
別に、その事に文句もないのだが…
「ねぇ、達也さん、トュールのこの魔法は何かな?」
「トュールの得意な収束系統魔法で、何時かのアイス・ピラーズ・ブレイク様に組み上げられた[ピラー・レイ]だろう」
「確か、太陽光を収束して一点に発射する魔法…だよね?でも、その魔法は収束に時間がかかるからアイス・ピラーズ・ブレイクには向いてない筈…」
「あぁ、そうだ、普通ならば収束にかかる時間の問題によって相手からの攻撃を凌ぎ続けなければならない…だがトュールの場合は収束にかかる時間は魔法式の構築・展開と共に終わらせられる様になっている…と、本人からは聞かされている」
「そっか…だから、こんなに早く終わるんだね」
雫の見ているモニターに目を移す
そこには
見事に着こなしたトュールが堂々と二刀を携え
黒色の大きなペリースが風によって靡き続ける
一見すると何処かの軍人が来たのだろうか?
そう思えてしまうが、その顔は正にトュール本人
ならばアレは目の前の雫が着ている振袖のような
本人が1番気合いが入る衣装なのだろうか?
とは言え、その腕にはCADが見える事から
星辰光は使っていない様だ、試合開始の
ブザーが鳴ったと同時に対面の二校選手が
CADを操作した…その時にはトュールは
CAD操作を終わらせ収束すら完了した
ピラー・レイを掃射し敵陣の氷柱を溶かし切り
自身の氷柱を冷却式魔法で形状を保ち続ける
正に、一方的な試合運びに観客席は静かであった
優勝最有力候補である一条ですら
六校の生徒に氷柱を破壊されていたというのに
トュールは今の今まで一度も破壊されずに
既に準々決勝まで進出しているのだ
「相変わらず、規格外の反射神経に判断速度、そして魔法式の構築速度だよ」
「うん、私やほのかは勿論の事だけど…深雪でもここまで構築速度は早くない、やっぱりトュールは実技試験は全部手を抜いてる…正に神業」
確かに、深雪の構築速度より遥かに速い
ブザーが鳴ると同時に動かしている様な速度で
相手がCAD操作中に収束を完璧に終わらせ
魔法式が組上がる前には発動しているのだ
構築速度ならば森崎ですら敵わない
そうして話していれば、雫が立ち上がる
「うん、トュールが頑張ってるから、私も頑張ってくる…まだ、深雪には勝てないかもだけど、それでも絶対に諦めない」
「あぁ、頑張ってこい」
「うん、任せて」
雫に激励を送りながら会場に向かって
送り出す…だが、何故、振袖なのだろうか?
いや、それを言うならトュールの方が不自然か
まさか、軍服を着ながら入場するなんて
普通は思わない事だ
「…ーーーっと…随分話し込んでしまったな、さて、ではな、キチンと身体を休めよ?」
「分かっているさ、クラウドボールとアイス・ピラーズ・ブレイク…必ず勝ってくれよ?」
「勿論」
俺は通話を切り、ベンチに座り直す
さて、また暇になってしまった訳だが
ここまであった事を話していくと本日は
アイス・ピラーズ・ブレイクとクラウドボール
どちらも出場する俺は2つの会場を行き来していたが
先程、クラウドボール準決勝を終わらせた後
アイス・ピラーズ・ブレイク準決勝もちょうど終わり
控え室に行く前に入院中で安静を取らされている
森崎と話していたが、流石に病院内での長時間会話は
世間的に駄目だと思い切った訳だ
「これでアイス・ピラーズ・ブレイクは一条の御曹司と当たるのは確実…俺以外の2人は揃って予選敗退、クラウドボールも同様に2人揃って敗退か…これは益々、俺が勝たねば来年度の男子の士気が下がりかねんな」
会頭から渡された日程の写しに結果を記入しながら
ボソッと呟くが…まさか、ここまでの結果になるとはな
女子の部はエイミィが三高の女子生徒を破り勝利
雫や深雪もまた勝利を重ね、決勝の三枠総て一校
つまり、一校の上位独占が揺るがない状態となった
クラウドボールこそ三高に優勝されたが2位と4位
女子の方は順風満帆と言った所なんだが…
「やはり、男子の部は壊滅的だな、優勝は今の所、森崎の1人のみ、入賞すらスピードシューティングの3位と4位のみ…か、それにクラウドボール、アイス・ピラーズ・ブレイクは俺が1位を取った所で2位3位4位と三高が独占する状態…不味いな」
これでは来年度は本当に不味いな…
十文字会頭を筆頭とした主力である3年が抜けた後
女子は1年組が何とか出来るだろうが男子は
現在の2年と俺と森崎が何とかするしかない…
「ままならんな…森崎のみが出ていた場合はどうなっていた事か」
いや、結果は見えている、森崎のみの場合には
俺という介入が無い…つまるところ良くて
スピードシューティング2位だっただろう
その未来は、想像しただけで何とも悲しい状態だな…
「とは言え、そうも言ってられんか」
ベンチから立ち上がり、身体を伸ばし整える
次はクラウドボール決勝戦、負けられん試合だ
そう思いつつ、身体を伸ばし切り整った為
近くに立て掛けてあるラケットを脚で蹴り上げ
それをヒョイっと掴んで軽く回してやる
「握り心地よし」
素材は良品を選んだし、ガットの張り具合も良し
破損箇所も無いし、破損したらぶん殴って
玉を戻してやるつもりだから大丈夫だろう
俺の全力スマッシュはファランクスさえ
耐えられるか微妙なラインだからなぁ〜
そうして会場に出た俺の格好は極めて普通
男子用の競技服に身を包んだだけだからな。
応援に来てくれたのは…お、男子組か
俺は一高の方に向けて軽く手を挙げておく
「トュール、いっけぇ!お前の力、存分に使ってやれ!」
「森崎に続くんだァ!俺達1年の底力を見せ付けれ!」
「うぉぉぉぉぉぉ!やっぱり、お前は最高だぁぁぁぁぁっ!!!!!」
相っ変わらず、体育会系の魔術師は煩い!
だが…今は、その五月蝿さが…
「心地良いじゃないか…あぁ、任せておけ諸君ら、勝つのは""俺だ""のだ」
俺は豪胆不敵の怪物であり不変の獣
英雄?違うな悪を喰らう悪なのだ
そう何処までも大胆に行けばいい
さすれば俺の手が勝利という栄光を
貴殿らに与え続けられるのだからな
対戦相手を見る…流石にここまで登ってきたのだ
それ相応の面を持っている為、俺に対して尾を引き
臆すことは無いな…その闘争心が向けられるが
その気配すら今の俺にとっては心地が良い…
戦場とは遥かに違うが熱は似ているのだ
となれば浮かれるのは無理もないとは思わんか?
確かに、昔の俺なら鼻で笑う事もなく首を切る
それ位には俺は浮かれているが…それが祭りだろう?
1つ目のブザーが鳴った
「貴殿には朗報と悲報がある…朗報は貴殿は運がいい、俺と当たらずにココに来たのだからな?」
そして2つ目のブザーが鳴る
コートに足を踏み入れながら顔を下に向け
そのまま深い笑みを浮かべてしまうのを
抑えようとしたが…すまんな、無理だ
「…そして悲報は単純だ、ここが最終地点となるのだからなぁ?」
溢れ出す星辰光により俺の右目が光り
気味が悪い笑みを浮かべてしまうのは
それ程までに相手に敬意を払いながらも
俺のこの満たされる事の無い腹を軽くでも
満たしてくれる可能性がアルカラダロウカ?
3つ目のブザーと共に玉が此方に射出された
相手はダブル・バウンドによる壁を貼ったが
そんな脆い壁、何の意味になるのだろうな?
さぁ…とりあえず、玉はあるのだ…これを
ゴバジュゥッッッッッッッ!!!!!!!
相手コートに向けて弾き飛ばす
やっている事は至極単純だが…コートが抉れるのは
流石に自重をしなかったな?ふっ、ラケット?
勿論、俺の完璧な強化と硬化、更に加えて
俺の星辰光の付与により耐えきってくれたぞ?
あぁ、玉の方は…加速に追い付けず燃え尽きたな
だが、得点は入っているのだし良かろう
相手のダブル・バウンドは情報処理をしきれず
燃え尽きたかのように事象を戻し消え去った
「ほれ、次を打つぞ?」
「くっそ!ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!」
其処からはただの一方的な蹂躙となった
相手はさぞ名のある存在だったのだろう
その不遜で傲慢にも自信があっただろう顔は
見るも無惨に想子を減らし、焦り続け…
顔色は悪くなってしまったではないか
あ〜あ、可哀想に…解釈をしてやりたい
だが、済まないな貴殿、これは競技なのだ
一方的に点数が増える様を見ていてくれ
相手コートが穴だらけになり切る前に
第1セット終了の合図が出た…
点数・671 対 0
「…ふん、あと300は楽に取れたが…腕が落ちたな」
全くといっていいほど汗もかかず
想子も使わなかったからが身体のギアは
全く上がっていないからか点数が伸びんな
…あ、やっべぇ点数を見た相手選手が
両膝を着き空を仰いでしまった…これはァ〜
「…き、棄権…しますぅ…」
最終的に、この試合は休憩時間終了を待たずに
三高側の降参により俺が勝利を収め…優勝を果たした
クソッ!俺がテニスをやると何故こうなる!?
客席からは一高のメンバーだけが大絶叫で
俺への賞賛を与えてくれるが会場は…静かだ
一方、その決戦を見ていた一高テントにて
七草 真由美は『やったわぁぁぁぁ!』っと喜んだが
服部刑部少丞範蔵と十文字 克人等数名以外の選手達は
揃って沈黙を貫いていた…と言うか2年3年のみが
沈黙を貫いていたのだ…1年男子は会場に居るのだ
「…真由美、トュールが優勝を果たして1年男子にも春が来たのは嬉しいのは分かるが、彼奴は本当に強化と硬化の魔法以外は使っていない…そうなんだな?」
その沈黙を破ったのは渡辺 摩利であり
質問に答えたのは市原 鈴音であった
「渡辺先輩、そうです。彼の使用した魔法はラケットに向けての単純な硬化魔法と物質強化の2つのみです。コレは彼自身が話してもくれましたし、司波 達也くんも証言してくれました。」
と市原は淡々と言う。
そもそも論でいえば学生の魔法競技としても
魔法を補助にしか使わず、完全に身体能力だけで
ここまでの点数を取ったと言う魔法に真っ向から
喧嘩を売っている所業からは目を逸らしたのだろう
「そうよ?あの戦法は本当は魔法なんか使わず純粋な身体能力で勝つつもりだったのよ?ほら、没収されたラケットがあるじゃない?アレ、特注品でトュールくんが"本気"で振るっても絶対に壊れない素材で作られてたの、練習中にあの亜音速球に何度も魔法を壊されて嫌になっちゃったもの…」
七草はプンスカプンスカと言いつつも
後輩の力が自身を超えた事に嬉しく思い
顔を綻ばせながら自慢する様に言う
そして黙っている男子陣の中で頷いている
十文字 克人や服部刑部少丞範蔵などは
不思議な身体能力を持つ傑物なのだ
これくらいやってくれるだろうと
常識を破壊されたあとであった
《アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦・決勝》
「…ーーーーという事だ、エイミィは棄権、深雪と雫は決勝にて当たる事になった」
「へぇ、そうなのか…んで、達也はどっちに付くことも出来ないからCAD調整だけはパパっと終わらせてから俺の所に来た…そう言う事だな?」
「あぁ、そうだ本当ならば深雪に着いてやるのが兄の勤めなんだろうが…」
「雫もお前が手掛けたCADで順調に勝ち進んだからな、どっちに着いても恨みは買うなぁ?アッハッハッハッハッ!!!!」
「ふっ、友の困り事なんだから普通、笑い事では無いと思うんだがな」
俺は女子の部の事を達也から聞いてから
ココに留まった達也の事を笑ってやる
こいつめ、コレだからジゴロがよぉ(笑)
「…一条には勝てそうなのか?」
「まぁ、俺の展開速度で言うならば五分、魔法の性能で言えば負けって所だろうな、破壊規模で爆発には流石に勝てん」
「…お前が、そこまで言うんだな」
いや、舐めてたね、一条は凄まじい
俺の演算領域を総て回して耐えながら
残った微かな燃えカスみたいな領域で
無理やり演算して魔法を発動する以外の攻略法が
浮かんでこない時点で相性がゴミカスってる
「つまり、使う訳だな?」
「あぁ、超不本意だが使う、じゃないと俺達が負ける」
俺や森崎、ほのかや雫が勝っているとは言え
上位のほぼ全てを三高に持っていかれている
つまり三高が思ったより接近しているのだ
ここで、俺が一条に負けてみろ新人戦は負けだ
となれば先輩方に思った以上に負担をかけてしまう
それだけは何とか阻止しないと駄目なんだよ
「んじゃ、とりあえず時間が近付いてきたし行ってくるが、達也、お前は俺を見る位なら、そのモニター越しでもいいから深雪と雫の2人…その勇姿を見てやれ」
「…分かった、だが…勝ってこいよ、トュール」
「馬鹿言え、言ったろ?勝つのは"俺達だ"と」
櫓がせり上がると、スタンドは早くも歓声に包まれた。
何方も相手のピラーを破壊しながらも自身のピラーを
ほぼ壊されないという1年らしからぬ成績を収め続けている
猛者同士なのだ…ほぼ、ここが本戦と思っている者は多い
方や、戦闘服らしくもあるが軽装の服装にCADを
方や、何処の国かは分からない軍服を身にまとい刀を
それぞれがそれぞれらしい変わらぬ衣装を身にまといながら
合計24本の氷柱が並ぶフィールドで相対したのだ
『お待たせ致しました、新人戦男子アイス・ピラーズ・ブレイク、決勝戦の開始時刻となりました』
アナウンスに合わせて再度歓声が上がる。
両校の応援席からは選手への声援が送られ
数多の期待を背に浴びた二人は方や拳銃型CADを
方や腕に巻かれた腕輪型CADを構える
試合開始を合図するポールに赤い光が灯る…ーーーー
瞬間、スタンドを包む声援が波の引くように静まる。
少しの間が空いて黄に変わり
そして少しの間を置き
青へと変わった瞬間…ーーーー
二人の干渉力の手がフィールド全域へと伸びた。
互いに攻撃と防御の魔法を併用し
相手のピラーを崩さんと挑みかかろうとするが
何方の干渉力も異常な数値によりフィールドが
形成されず崩壊を続ける…だからこそ2人は
即座に干渉力勝負から魔法の威力勝負へと変更
干渉領域を自身の氷柱があるフィールドに限定し
一条は爆裂を決めんとトリガーを引くと氷柱の1つが
亀裂を入れながら少しだけ欠け始める
だが、トュールは薄らと笑いながら行動せず
大胆不敵に彼だけの
【創世せよ、天に描いた星辰を───我らは煌めく流れ星】
その瞬間に、空から光が降り注ぎ始める
まるでトュールを祝福するかのように
一条はそれに構わず爆裂を決める
【太陽を受け継ぐ勝利の剣、悉く打ち砕く雷神の槌】
トュールのフィールドにて
氷柱の1本目がグジャリと崩れ落ちる
トュールはその光景にすら笑みを浮かべ
大胆不敵に歌を紡ぎ続ける
【民衆が求める限り、悪による恐怖から民を解放せよ】
一条は更に爆裂を決め続ける
そう、彼は焦ってもいるのだ…
嫌な予感がヒシヒシと感じ続ける
この感覚から来る焦燥感に
【勝利の光で天地を照らし続けよ、光と共に、新たなる希望が訪れるのだ】
【終末を司る大蛇よ、汝を運命の輪から解き放とう】
【勝利を告げる
【全てを消し去る悪を───偉大な聖火で焼き尽くさん】
トュールのフィールドに不可思議な現象が起きる
氷柱が1本を残し、グズグズと溶け始めたのだ
会場に居る全員が目を見開く、何をしているのだ?と
一条はその隙を逃さず爆裂を最後の1本に放つが
事象干渉を"その1本"のみに注いだ氷柱は…
あまりにも強固すぎたのだ
【決戦は此処に在り。さあ傑物よ、この足跡へと続くのだ。】
星空を想わせる煌びやかだが太陽を想わせる
引き寄せられる様な光がフィールドを照らす
【約束された栄光を、新世界にて
【
詠唱完了と共に"星"の誕生を祝福するように
トュールの左顔に亀裂が入り"金色の光"が漏れ出し
髪の一部が太陽を想わせる緋色に変色した
「ーーーー…すまんな、一条 将輝、俺のBS魔法は特殊でなぁ?CADを媒介としないが俺の"身体"を媒介に呼び出すんだ…だから詩は必要な事項だ、別に貴殿に対しての侮辱ではない事をココに羅列する…クハハハハハハハッ!!!」
「いや…本気を出してくれるなら、俺は何も言わないよ」
全力とは程遠くとも、沖縄以上の出力に
トュールは久方振りの爽快感を覚える
確かに盟友であり親友でありライバル
アイツとの決戦に比べれば比べるのすら
烏滸がましいと感じる程度には下だが
それでも尚、身体から湧き出る力に酔う
その理由は扱う星辰光が変異したからだろう
溢れ出てしまう笑みを隠す事も無く
大胆不敵に笑い続けるトュールから発される
極点の熱気は一条が集中し強化し続ける
氷柱を無情にも溶かし続ける…
「…っ…どんな魔法かなんて分からないけど…何とも規模感と干渉力が狂っている魔法だね?」
「そうであろうな、俺の、この力は干渉力で問われるならば…誰の干渉も受け付けんよ、それが一定を超えた魔法の極点だろうとな、さて一条…お前には最高の敬意を払う事を先程の非礼に対しての禊としよう」
「敬意…?まさかっ!」
一条が残り数十本の氷柱を即座に取捨選択し
数本まで絞り込んだと同時に情報強化を施す
だが…それすら鼻で笑うかの如くトュールは
詠唱を開始する…
[世を照らすは我が
翳した左手の掌に集束された小さな太陽が
更に圧縮され小さな白い弾になった時には
1つの極光線となり目で追う事すら出来ず
一条 将輝が残した氷柱6本を跡形もなく消しさり
残りの数本は
"氷を覆うように火が燃え広がり溶かしきった"
程なくして、試合終了のブザーが鳴り響く…
戦況で見たならば僅か1本差だ…だが、その1本が
一条 将輝にとって遥かに遠い1本差であった
余りの光景によってどよめいていた空気から
会場を埋め尽くさんと遅れて大歓声が轟く。
激闘を讃える声が響き、場内のアナウンスが
試合の勝者を告げた。
勝者:第一高校 - トュール・レイ
アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦では
一高の男女1位独占が決まった瞬間であった
トュールは星辰光を消す様に押し止めていく
顔に出来た亀裂はジワジワと治っていき
髪色も霧散するかのように消えていく
本人は満ち足りた様に笑顔のまま全員に向け
手を振り返しながら勝者の特権を味わった…
ここだけ裏話
此奴の全力は抑止が無い、この世では
圧倒的過ぎて、世界が拒絶反応を示す
つまり、此奴が本気を出せる日は来ない
更に言うならば此奴の身体の中には未だ
親友の痕跡が残り続けている
《ヒント:トュールの光は赤色に近い黄色と極点の白》