歩side
歩「(さて、どうしたものか…)」
俺は正直困っている。
調査対象である三枝葉留佳さんが修学旅行中なぜか違うクラスのバスに乗り込み、そのまま事故に遭い入院中だからだ。
俺たちは一族の本家が近くにあるという情報しか持ってない。
いくらなんでもこの御時世、個人情報なんてそう簡単に手に入らない。
彼女が入院している病院に行く、または手当たり次第に彼女についての情報を聞き込むという手段があるが敵に警戒される可能性がある。
出来る限りそれは避けたいところだ。
歩「(場合によっては最悪の事態になりかねないし)」
三枝一族が裏自衛隊と繋がっているということはここを報復活動の標的にされかねない。
そうなれば沢山の人が犠牲になるかもしれないし絶対避けなければならない。
歩「それよりも…」
今は目先の問題から解決していこう。
紅「真‼︎起きなさい‼︎遅刻するわよ‼︎」
さっきから紅姫が起こしてるにもかかわらず全く起きないこの寝ぼすけをどうするかを…
食堂に向かうため廊下を歩いていると
真「なにも踏んずけて起こさなくてもいいじゃないか…」
と先ほど俺に踏まれた腹部を押さえながら抗議してくる。
歩「紅姫が優しく起こしてくれている間に起きないからだよ」
紅「そうね、あんた全く起きないんだもの。だから歩に頼んだのよ」
歩「そういうこと」
紅「全く、葵が羨ましいわ」
真「なっ⁉︎」
葵「まぁ、歩は私が起こさなくとも自分で起きて準備をはじめますからね」
「ただ…」と葵が続ける。
葵「変なところで頑固なので、それさえなければ…」
歩「うっ」
紅「分かるわぁ、うちのも同じで頑固だもの。困った主よねぇ?」
まずい、そろそろ話題を変えなければ。
真「そんな事より早く飯食いに行こうぜ!」
歩「(話そらしたな)」
紅「(話そらしたわね)」
葵「(話そらしましたね)」
さっき同じような事を考えていたが、なかったことにしよう。
食堂に着き、食堂のおばちゃんから食事を受け取って真と席を探していると
真「…あっ」
真が誰かに気づいた。
歩「ん?」
その人は俺も知っている人物だった。
理樹side
鈴「暇だぞ…」
朝食を食べていると鈴が唐突に言い出した。
というかここ最近いつも言ってる気がするけど。
理「まぁ、後一週間すれば小毬さん達も退院できるって言ってたしもう少しの辛抱だよ」
真人や謙吾も夏休みまでには退院できるって話だ。
…恭介だけはまだ分からないけど。
※申し訳ありませんが作者の都合、恭介さん以外の退院時期を早めます。
鈴「そうか?なら我慢する」
どうやら納得してくれたようだ。
鈴「ん?あいつは…」
すると鈴は誰かに気づいたようだ。
僕は釣られてそちらに向く。
歩side
これはなんという行幸。
真が見つけた人物は直枝先輩だった。
ちょうど良い、直枝先輩は三枝葉留佳さんと同学年。
つまり何かしら聞き出せるかもしれない。
よくやった真‼︎
歩「あの…」
昨日の件の謝罪も含めて直枝先輩に話しかけようとしたとき、
鈴「突っ込まれ役の真‼︎」
真「飛鳥 真だ‼︎」
歩・理「ぶっ‼︎」
俺と直枝先輩は盛大に吹き出した。
鈴「なんだ?違うのか?」
真「違うもなにもあるか‼︎なんだその恥ずかしい通り名みたいな呼び方‼︎」
さっきのは撤回するよ真。
最悪だよ‼︎この状況じゃ話が出来ないじゃないか‼︎
直枝先輩なんか苦笑いだし。
歩「(って早くとめなくちゃ‼︎)」
そんな事考えている間に喧嘩はエスカレートしていた。
鈴「なんだ?やるのか?」
真「上等だ‼︎やってやる‼︎」
歩「やめなさい‼︎」
と真にげんこつを落とす。
結構痛かった。
真「ってぇ、なにしやがる‼︎」
俺は満面の笑み(喫茶店にやって来るクレーマーを撃退する時に使う奴)で真に言う。
歩「なにしやがるじゃないでしょ。目上の人には敬語を使いなさい。それに女性に手をあげようとはどういうことかな?」
真「だ、だってあいつが変な呼び方するから‼︎」
少しは聞いたらしいがまだ抗議をしてくる真に俺はさらに声のトーンを下げて続ける。
歩「変な呼び方されたら殴っていいんだ?よく分かったよ。そういえば真、この間俺に”女子力高い系男子”とか変なあだ名を付けてクラスで定着させようとしてたよね?」
真「あ、あれはクラスに早く馴染めるように…」
歩「そっかぁ、俺のことを思っての行動だったんだぁ?これは沢山お礼をしないとね」
真「ごめんなさいでしたぁ‼︎」
涙目になりながら真が謝る。
なんか新しい謝り方だなぁ。
歩「謝る相手が違うでしょ?」
真「…すいませんでした」
そしてやっと真は鈴という先輩に謝った。
理樹side
理「(この子達は昨日の二人だよね?)」
僕は鈴が真という子と揉めているのを横目にそう考えていた。
二人が取っ組み合いになる前に歩という子が止めに入り、真が鈴に謝る。
そして鈴も謝れば無事に事態を収拾出来たのだが、
鈴「うむ、分かればよろしい」
なぜ上から⁉︎
あっちの二人がびっくりした顔しちゃってるよ‼︎
あの世界で鈴も成長したはずなんだけどなぁ。
根っからのものまでは無理なのかな?
僕は取り敢えず鈴に注意する。
理「鈴も悪かったでしょ?」
鈴「あたしは悪くない。間違われるこいつが悪い」
なんて理不尽な。
仕方ない。
本当はちゃんと反省させたかったけど、今はこれで行こう。
理「本当に悪くないって言うんだね?」
鈴「そうだ。あたしは悪くない」
最終警告終了。
理「なら、今度からモンペチの買い出し付き合わないから」
鈴「なにぃ⁉︎」
ここまでは予定通り。
さて、どう出るかな?
鈴「おいお前、悪かったな」
以外にもあっさり謝った。
真「お、おう」
真も驚きを隠せていない。
まぁ、取り敢えずは事態を収拾できた。
…でも、
理・歩「(二人とも絶対反省して無いんだろうなぁ)」
…
歩side
なんとか事態も収まり、俺たちは直枝先輩たちと朝食を同席させてもらった。
歩「直枝先輩、昨日といい今日といい本当にすみません」
理「もう済んだことだし怒ってないよ。それに今回のは君の起こした事態じゃないから君は謝らなくても大丈夫だよ」
なんて寛大な人だろうか。
真も見習うべきだ。
理「それで?本題はそれじゃないでしょ?」
鋭い人だ。
こちらも本題に入りたいが、先ほどの騒動で他の生徒から注目されている中話せるような内容ではない。
歩「ここで話せる内容ではないので放課後空いてますか?」
理「いいけど、何について話すかだけは聞いてもいいかな?」
歩「それくらいなら…三枝葉留佳さんについてです」
俺は敵もいるかもしれないと考慮して直枝先輩に聞こえるくらいに声を潜めて言った。
理「…もしかして、葉留佳さんに惚れちゃったとか?」
歩「違います」
なぜか直枝先輩も声を潜ませながら見当違いな質問をしてきたので即答で返す。
理「だったら、直接本人に会ってみる?」
歩「えっ?会えるんですか?」
思わず聞き返してしまう。
理「うん、ちょうど放課後にお見舞いに行くつもりだったし」
これは真に感謝すべきなのだろうか?
昨日真が俺に喧嘩を吹っかけてこなければこの人に会うことすらなかった。
今日も真が揉め事を起こしたからこうして会話を切り出せている。
結果的に三枝の情報を聞き出せるかもしれない。
今度なにか奢ってあげよう。
理「やっぱり葉留佳さんのことが…」
歩「先輩、くどいです」
取り敢えず今は先輩の質問を否定させてもらう。
続く。
次回はるちん登場です。