ハリー・ポッターと闇堕ちルートのレガ主 作:今井亜美(ハーメルンのすがた)
知らなかったかもしれませんが、この作品のジャンルはギャグです。
ハリーが目を覚ました時、そこは医務室のベッドだった。メガネをかけてぼんやりした視界と頭を覚醒させると、テーブルの上に山のように積まれた見舞い品があるのが見えた。
皆の温かい優しさに思わず笑みを浮かべるが、すぐに、自分は何故助かったのか? という疑問が湧いてきた。
「目が覚めたようじゃのう」
医務室のカーテンを静かに揺らして話しかけてきたのは、ダンブルドア校長先生だ。
「先生……! みんなは、どうなったんですか!? メアリーは、ロンにハーマイオニーは?」
「おお、安心せい。大丈夫じゃ。既に三人共起きて、キミを待っておる……まあ、約一名はまだ寝ておるかもしれんがの?」
お茶目なダンブルドアのウィンクで、メアリーのだらしない寝顔を思い浮かべたハリーは笑った。
確かに彼女なら、どんな日だろうと朝はぐっすり寝ている事だろう。
「賢者の石はどうなったんですか?」
「そうじゃの……石は砕いてしもうた。先輩……あ、いや、人生の先輩であるフラメル夫妻と何とか話がついての。説得は大変じゃった……そりゃもう本当に大変じゃったが、何とか納得してもらったのじゃ」
ダンブルドアがとても疲れた顔を見せたので、ハリーは余程大変だったのだろうと思った。
(でも、そりゃそうだよね)
だって、誰だって死にたくはない筈なのだから。
それは説得も苦労しただろう。
「じゃあヴォルデモートはもう復活しないんですね?」
淡い期待をこめて聞いてみるが、残念ながらダンブルドアは首を振ってこれを否定した。
闇の帝王が復活する方法は、まだ魔法界に存在しているらしかった。
「僕は、どうして助かったんですか?」
ハリーの言葉に、ダンブルドアは優しく目を細める。
「それはのう。お主の身体に、お主の母親が授けた強力な加護が、今も残されておるからじゃ。ユニコーンの血を飲み呪われた上に、ヴォルデモートの魂を宿したクィレル先生は、それに耐えきれなかったのじゃ。彼は、心をやられ、廃人になってしもうた。今はもう牢獄の中じゃよ」
ダンブルドアはハリーから目を外して、見舞い品の山に視線を移す。ハリーも釣られて、それらを見た。
『早く良くなって』
見舞い品の中にあるメッセージカードに書かれた下手くそなそれが、ロンの字だとハリーは気が付いた。他のメッセージカードの文字も、ハーマイオニーだったり、ネビルだったり、フレッドとジョージのものだったりした。
「ハリー。キミの身体に宿っている加護は、この魔法界において最も強力な魔法なのじゃ。そして、キミはそれをこんなにも沢山持っておる」
「……それって、一体何なんですか? 先生」
ダンブルドアは、ハリーの純粋な瞳に、かつての自分を重ねていた。
百年前、まだ一年生だった自分が、世話になっていた(というより振り回されまくっていた)七年生の先輩に聞いたあの日の事を。
『アルバス、最強の感情って何だと思う?』
『え? そりゃ、怒りとか……憎しみとか?』
『確かにそういった感情も美味し……じゃなくて、強いね。他にも痛みとか……激しい感情は魔法的にも強い意味を持つ。でも最強じゃない。最強の感情って言うのはね、確かに皆が知ってるのに、手に入れるのが最も難しいものなんだよ』
『それって、一体何なんです? 先輩』
『それはね────』
「────愛じゃよ、ハリー。愛じゃ」
「また1年が過ぎた。今年の最優秀の寮を表彰したいと思う」
ダンブルドアの演説から、最優秀寮杯の発表は始まった。
しかしハリー達グリフィンドール生のテンションは低かった。
というのも、寮ごとの得点は常に大広間の砂時計で確認出来るからだ。
そしてそれによれば、ハリー達グリフィンドールは現在圧倒的最下位。
どっかの問題児達が、学校の規則を破りまくったせいである。
「第4位グリフィンドール、312点! 第3位ハッフルパフ、352点! 第2位はスリザリン、372点。そして第1位は426点で、レイブンクローじゃ!」
全ての人に分かり切った結果が発表される。
テンションが高いのは1位を取ったレイブンクローと、ノリの良いハッフルパフくらいだ。
「よーしよしよくやった、レイブンクローの諸君」
ハリーは惰性で拍手をしていた。
自分達のせいであのスリザリンにさえ大敗を喫したのだ。
親しい友人もいないレイブンクローの事をそこまで褒める気にはなれなかった。
「だがのぅ」
突然の否定形。
生徒達の拍手がまばらに止んでいき、困惑へと変わっていく。
最も長くホグワーツにいる七年生達といえど、こんな事は初めてだ。
「最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまい……ギリギリで得点をあげた者がいる!」
ざわ……ざわざわ……。
静かなどよめきが響く中、ダンブルドアが続ける。
「まず、ハーマイオニー・グレンジャー。冷静に頭を使って見事仲間を危機から救った。50点!」
一拍遅れて。
グリフィンドールのテーブルを歓声が包んだ。
これはもうそういう事なのだと。
あの秘密の戦いについての総決算が今、始まったのだとみんなが理解し始めていた。
ホグワーツで秘密と言う事は、みんなが知っているという事なのだから。
「次にロナルド・ウィーズリー。ホグワーツでも近年まれに見るチェスの名勝負を披露してくれた。50点!」
再び歓声が上がり、ロンの兄達が得意げに弟の頭をくしゃくしゃと撫でた。
ロンは嫌がりながらも、そのにやけ顔を隠せていなかった。
「…そして。3人目はハリー・ポッター。その強い意志と卓越した勇気をたたえたい。そこでグリフィンドールに60点!」
今度はハリーの番だった。
同級生達が興奮のあまり、ハリーの事を滅茶苦茶にした。
「凄いわ! グリフィンドールの圧勝よ!」
ハーマイオニーが嬉しそうに叫ぶ。
いや、グリフィンドール生の誰もが叫んでいた。
「そして最後に。敵に立ち向かうのは大変勇気がいることじゃが、友達に立ち向かうのはもっと勇気がいる。その勇気を称え10点をネビル・ロングボトムに与えたい」
歓声は最早最高潮だった。
よく分からずぽかんとした顔を浮かべるネビルをみんなが祝福していた。
でもその裏で、ハリーは、いや、ハリー達三人だけは、違和感に気付いていた。
「さて、わしの計算に間違いがなければ表彰式の飾り付けを変えねばの……」
ダンブルドアが手を叩くと、青いワシが描かれた飾り付け達が、赤いライオンに変わっていった。
「では、グリフィンドールに優勝カップを───」
「待ってっ! 待ってくださいっ先生っ!」
ハリーはたまらず叫んだ。
だって、功労者は、自分達だけじゃないのだから。
「メアリーは!? 僕達だけじゃない、メアリーもあの場所にいた! メアリーも加点されるべきだ!」
「そうよ! メアリーがいなかったら、トロールに勝てなかったわ!」
「スリザリンは好きじゃないけど……メアリーがいたから、勇気を貰えたんだ」
ハリーの言葉に、ハーマイオニーが、ロンが続いた。
ダンブルドアはその美しい友情にニッコリと笑う。
「おお、そうじゃな……忘れる所じゃった! ありがとう、ハリー」
そうして改めて、総決算のやり直しとなった。
「圧倒的な強さと突出した魔術の才で仲間を導いたメアリー・オールド! 彼女に50点を与える」
ダンブルドアが宣言し、会場を再び拍手が包む。
だが先程よりも歓声は少なかった。
何故なら50点追加された所で、スリザリンは2位止まり。
不俱戴天のグリフィンドールには勝てないからだ。
スリザリンの純血達は、マグル生まれが得点した事実も踏まえ、まだテンションが低かった。
────そう、ここまでは。
「さて……導く、にも色々ある!」
ピタリ。
と拍手が止んだ。
おかしい、もう得点を取る者はいない筈なのに。
総決算が、まだ終わっていなかった。
みんなのざわめきが収まるのを待って、ダンブルドアが続ける。
「仲間達の手を引っ張るのも良いが、その背中を押すのもまた、導きじゃ。そこで一年間、メアリーの世話をし、最後には優しさからその背中を押したダフネ・グリーングラスに! 60点を与えたい!!」
わああっ! と会場が一斉に盛り上がった。
グリフィンドールの大逆転劇から、敵であるスリザリンに塩を送り、更にはスリザリンも追い上げ、二寮同時の優勝!
最早出来すぎなこの劇的展開に、誰もが興奮した。
純血達のテンションも爆上げだ。
マグル? 血を裏切る者?
知らんな。彼女達こそ、スリザリンの救世主!
俺達のヒーローだと、みんながメアリーとダフネを持ち上げた。
「何であれを知ってるのよ……!」
ダフネは顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたが、内心は何だかんだ嬉しがっていた。
メアリーはもみくちゃにされながら、はしゃいでいた。
遂にメアリーを中心にスリザリン生達による胴上げが始まった。
このホグワーツの英雄を誰もが称えていた。
ダンブルドアが再び手を叩き、赤いライオンの中に、緑のヘビが混じる。
「よーしよしよくやった! グリフィンドールとスリザリンの諸君」
「だがのぅ」
「!?」
ざわ……ざわざわ……。
突然の否定形。
生徒達の歓声がまばらに止んでいき、困惑へと変わっていく。
まだなのか。まだ何か、隠されているのか。
もう僕達何も知らないんですけど?
秘密はみんなが知ってるとは何だったのか。
お前知ってる? いや、分からん……。
そんな会話があちこちで始まった。
「最近の出来事を勘定に入れるなら、常々言われていた事も勘定しなくてはフェアじゃあるまい……ギリギリで得点を下げた者がいる!」
いやな予感が会場を駆け巡った。
そして僕たちのダンブルドアは、いっつも期待を裏切らない。
「まずはメアリー・オールド! 一年生にも関わらずホグズミードで姿を見ると監督生から苦情が来ておる。マイナス50点」
胴上げされていたメアリーはポイっと身体を投げ捨てられた。
ゴミの扱いによく似ていた。
ぞろぞろと能面の様な顔をして、純血達が席に戻っていく。
「次にメアリー・オールド。幾ら実技が出来ても授業の欠席が多すぎじゃ。他に示しがつかんのでマイナス50点!」
純血達は一斉にナプキンに手を伸ばした。
穢れた血に触れて汚れた手を拭かないといけなかった。
「最後にメアリー・オールドじゃ。ヒトの許可なくキスするなボケナス。マイナス100点」
哀れだった。
余りのスリザリンの哀れさに、あのロンでさえ同情を禁じ得なかった。
「悲劇的だよな」
ロンの言葉に思わずハリーも頷いた。
「さて、わしの計算に間違いがなければ表彰式の飾り付けを変えねばの……と、思ったが」
ダンブルドアは三度手を叩こうとして、動きをピタリと止めた。
「よくよく考えると減点は全て一人の生徒の行いの様じゃ。流石にこれをスリザリン全体のせいには出来んのう。仕方ない、特別に今回の減点はまた、別口で管理するものとする!」
そう宣言するやいなや、大広間の砂時計の隣に、もう一つ『メアリー・オールド』と書かれた小さな砂時計が生まれた。スリザリンの点数が増えるのと同時に、『メアリー・オールド』に黒い砂が入っていった。丁度今回減点された、200点分の砂だ。
スリザリン生達の気持ちは一つだった。
どうか来年も、それがまだありますように。
「さて、わしの計算に間違いがなければ表彰式の飾り付けは変えなくていいの! いや本当によくやった、グリフィンドールとスリザリン! 二寮に優勝カップを!!」
ダンブルドアの宣言により、優勝カップが二寮に送られた。
ハリーが、ロンが、ハーマイオニーが、ネビルが、ダフネが。
みんなが笑っている。
メアリーは笑った。
笑って、ダンブルドアにボンバーダを撃ち込んだ。
賢者の石編、完!
●最初レイブンクローが勝ってるー!?
どっかのバカが足引っ張ってるから。
●愛じゃよ、ハリー
ダンブルドア屈指の名言。
実際、これが戦いの命運を分けたと言っても過言では決してない程重要なもの。
愛は魔法界において最強。
なのでホグワーツレガシーで言われてた訳じゃないが、感情の中でも最も強い力を持つ、という設定をつけました。
●ホグワーツの秘密
ホグワーツで秘密という事はみんなが知っているという事。
ダンブルドア先生が言った台詞。言う時の顔がお茶目でカワイイ。
ホグワーツレガシーでは、全てが終わった後にウィーズリー副校長に会うクエストが発生し、この台詞を言われる。最後までネタたっぷりの神ゲー。
●最優秀寮杯
ホグワーツレガシーにおけるラストクエスト。
主人公がどんな選択をしていようと、ウィーズリー副校長に百点加点されて、主人公の寮が逆転優勝する。
コイツに点をやる副校長の目は節穴か?
まあ、ブラック校長の仕事も殆どやってたみたいなので忙しかったんでしょうね……。
●ボンバーダ
小規模な爆発を引き起こす魔法。
ホグワーツレガシーでも使用でき、範囲が広く威力も高めだが、クールダウンがまあまあ長く、使い所を選ぶ。
爆発オチなんてサイテー!
この後、アフロ姿でパーティーに参加する校長先生がいたらしいっすよ。
や、約束通り賢者の石まで書き終わったよ……!
これ投稿したら、私、消えっから!
(暫くオリ小説の方に集中するので)サヨナラって事!
続き? 無いよ(笑)
まあ、また次の息抜きの時に会えるかもね……。
かもだからね。かもだから。
出るとしたら一年後かな……映画ってそういうもんでしょ?