五歳の時、私に個性が発現した。
朝目を覚ましていつも通り鏡で髪型を確認しようとしたところ、私ではない誰かが映っていた。
私が動くと鏡の中のその子も動く。
サラリ…。とそこまで長くないはずの髪が私の視界に入り私はようやく気付く。
鏡の中の女の子は私だった。
見た目は元の私からは様変わりしていて、黒だった髪は綺麗な金色に、黒だった瞳は真っ赤な赤に、そして特に目を引くのはその背中、羽と言うにはお粗末な枯れ枝のようなナニカと小悪魔とかサキュバスのような尻尾。
私はパジャマのまま慌ててお母さんの所に行った。
お母さんは台所で朝ごはんを作っていて、私の声に反応すると、少し戸惑ったようだったけど私と認識してくれた。
今日は学校だったけどお母さんが先生に連絡して病院で個性診断をしてもらうことになった。
とりあえず私はパジャマを着替えて、朝ごはんを食べて、少し時間が空いてから病院にお母さんと向かった。
因みにお父さんは朝早くからヒーローの仕事で居ない。
病院で検査してもらった結果、私の個性がおそらくは"吸血鬼"であることが分かった。
おそらく、というのはどうやら私の中に何かがあって、それが本来個性をハッキリさせる筈のものが阻害されていて、個性の判断が曖昧になってしまっているらしい。
吸血鬼ということで、もしかしたら吸血衝動や他にも味覚の問題や障害が沢山出てくるかもしれないので経過観察として週に一回病院で検査することになった。
こういうのは稀にだがあることのことのようで、さらに言えば私は俗に言う突然変異型の個性。両親の性質を受け継がず、全く別の個性が発現するというものだった。
因みに、DNAは両親のものだったので浮気だとかそういうことではないらしい。
その日はお父さんとも昼頃に合流して、病院の先生と一緒に色々と試すことになった。
結果は、この羽では飛べなかったり、物凄い速さで走れたり、体力が尽きなくなったり、力が少し強くなったり、伝説上の生き物とされていた吸血鬼に大凡似ている特徴があると分かった。
それとは別に、太陽や銀といった吸血鬼の弱点らしい弱点はないようで、普通に外でも活動できると分かった。
そんなところで、今日の検査は終わって家に帰宅。
検査は夕方までやっていたので結構ヘトヘトになった。
夜ご飯は個性が発現したお祝いということで出前のお寿司となった。
そんな1日だったので疲れ果てた私はお寿司を食べた後やることをやってすぐに眠りにつくこととなった。
翌朝、鏡を見ると昨日の出来事が嘘ではない証拠として、金髪赤目の羽の生えた女の子が映っていた。
いや、少しぼやけて見える。
目が悪くなったのかと思ったけど、霧の中のや蜃気楼ようにユラユラとしている。
このまま消えてしまうのかと思った私は慌ててお母さんに報告。したのだがどうやらお母さんからは普通にハッキリと見えているらしい。
もしかしたら個性が原因だろうと当たりをつけて病院の先生に話すと今日も病院に行くこととなった。
病院で調べてみるとどうやら吸血鬼の特徴として鏡に映らない特性が反映されていることが判明した。
そしてこれからも吸血鬼の特徴が現れるかもしれないとして、経過観察の日を増やすこととなった。
それからは定期検診として何日かに一回病院で検査をするようになった。
それから定期検診が始まってから1年が経つも、私の身体は内も外も日に日に変化をし続けた。
そして今日、私の眼の前には外傷も血もなく倒れて動かなくなった両親が。
これが個性が原因だとわかったのは病院で検査受けてからだった。
私にしか見えない私が"目"と呼ぶソレはありとあらゆるものの核だと知った。
私の非力でも簡単に壊せてしまうソレはモノを見ただけで核を見つけ、ソレを手繰り寄せることが出来て、ソレを壊すとそのモノも壊れると知った。
個性に目覚めた時の私はそれを知らずに両親の"目"を壊し、両親を殺した。
まるで操り人形の糸が切られて崩れ落ちるかのように事切れた両親を幼かった私はなんの感情も揺らがないまま見つめていた。
それからは個性事故ということもあり私は施設に預けられ、そこで暮らすようになった。
初めの頃は施設の子どもたちやお姉さんお兄さん、先生たちも歓迎してくれたりしていたが、まだ未熟だった私の個性が暴発して遊具を壊した時にそこにいた人達は恐怖や嫌悪感を含めた目で私を見てきて、それからは双方ともに極力関わらないようになった。
それから、個性が発現してからもう10年も経つというのに私の身体は一切成長しなかった。
多分、個性の影響なのだろうと自然とそう考えた。
しかし、この10年で制御し、成長した個性の影響はそれだけではなかった。
はじめの頃は違和感がなかったが、段々と破壊衝動に魘われる事が多くなり、少し前では無意識にモノを壊していることに後で気付くことが多くなってきた。
決定的だったのは、モノの見え方が変わったことだ。
個性を使って核を見ようとせずともそれが当たり前かのように"目"が見え始めた頃。
初めは小さな無機物の"目"だけが見え始め、また個性の暴走かと思っていたが体に不調や違和感はなく、むしろ好調とも思えてしまうほど気分が高揚していて、目を手繰り寄せようと思わずともそこに目があって、自然体のように握り潰し壊していた。
それからは加速度的に普段の見えるものが変わっていった。
小さな無機物しか見えていなかった"目"は遊具や小屋といった大きなモノの"目"が見え始めて、更に家や車、ビルといったモノの"目"まで見え始め、最後には人や動物、植物、虫等といったモノの"目"まで何もせずとも見えるようになった。
それで終わりならばまだ楽だった。
目を閉じれば"目"は見えなくなり、幾分かは気持ちが落ち着いたから。
目を閉じているのに"目"が見え始めたとき、私の中の何かが壊れた音がした気がした。
そんなある日のこと
私が気付いた時には周りには大勢のヒーローや警察がいて、周りは火の海や瓦礫が散乱していて、理解する。
私は狂気に侵され、破壊衝動に負け、ヴィランとなってしまったのだと。
ならばと私はヒーローに告げる、己の危険性を、個性の危険性を、ヴィランの生まれる理由を、ヴィランとなってしまう個性を。
この身を捧げて警告する。
「キャハハハハハハハハ!!!!
ワたしのなマえは『破壊の個性』わたシが個性でヴィランのフランドール!
ヒーローたちよ!恐怖するとイい!
個性によって人格を奪われることニ!
個性のせいでヴィランとなってシまう人に!
普通になレない個性たちに!
それではみなさんさようなら」
そう言って私は自らの核を手繰り寄せ握りつぶした。
願わくば、個性に対してもっと優しい世界になりますように。