白壁微瑕の先生、今一度方舟にて───   作:おこげの

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自給自足楽しいです


教育が必要な世界

 

 ───貴方のお名前は?

あの騒動の後、病院で入院をしていた際に医者からそう問われた。入院した患者の名前を問うのは当然の事項だ。

 

「……………」

 

答えることができなかった。自分の名も記憶も殆ど忘れている。思い出せるのは霧がかった曖昧の記憶のみ。だが私にとってそれは些細な問題だった。自分よりこのキヴォトス(世界)を知ることから始めなければならない。ただ私を定義する名がないのは不便であり、人を悩ませる事柄だ。

 

「白い、まるで骸の様」

 

鏡に映る白い自分をジッと見つめる。あの騒動で出来た傷が罅となって生じ、より不気味な見た目に変わっていた。

 

 ベットから立ち上がり、白のスーツに着替え、もう一度鏡を見る。

私の何もかもが真っ白だ。体も服も。そんな自分に名付ける名は──。

 

 


 

 

 昨今、キヴォトス全域で犯罪率の上昇が止めどなく続いている。

空に浮かぶ飛行船のモニターにはその関連情報が綴れれていた。各自治区の被害状況、連邦生徒会の対応、情報が次々と流れてゆく。現在のキヴォトスの情勢は悪い方向に向かっているのを感じる。

 

実際、治安の悪化は私も肌で感じていたところだ。遠くで鳴る発砲音に不良生徒の闊歩、周辺地域では窃盗も起き、休業する店舗も増えていた。

 

「白副君、ちょっといいかい?」

 

「はい。どうしましたか」

 

「大切な話がある。裏で話したい」

 

思案に耽ていたところマスターから声がかかる。真剣な顔つきで裏側の部屋に向かっていった。私は疑問に思いながらもマスターの後に付いていく。椅子に座り、対面でマスターを見つめた。

 

「単刀直入に言おう。今月で私の店を閉める事にした」

 

唐突と辛い事実が告げられた。どうやら私の情勢も危ういようだ。

 

 


 

 

 店を閉める大まか理由はこうだ。

 

元々高齢化を理由に閉店を考えていた事、そして治安が次第に悪化していく事も相まって、奥さんと隠居をしたいと考えたそうだ。

 

「君に助けられたのに、恩を仇で返すことになった申し訳ない」

 

「その様なことを仰らないでください。マスターの考えを尊重します。それに……助けられたのは私の方ですよ」

 

身分が不明な人間を雇い、居候として招き入れた心優しい方だ。赤の他人を慮ること──それは大人でも実行するのは難しい。退院して、右往左往する私に声をかけてくださったマスターには敬意しかない。

 

そのような方に無理をして欲しくないし、健康で過ごして欲しいと願っている。

 

「すまないね……前のように活発には動けないし、ここ最近は物騒で妻も不安になっている…。そろそろかと思ってね……」

 

「そうですね。ニュースでは連邦生徒会長が姿を消した事を皮切りに、情勢が悪化していると言われてますから」

 

「早く収まればいいが………そうだ。これを君に渡しておかなければね」

 

マスターは机の下から何かを取り出してそれを机の上に置いた。分厚いケース、これはまさか──

 

「君のお陰で店の売り上げが過去最高に上がった。これはその収益の一部、これを君に渡す」

 

「……にしてはその、随分と分厚いというか、大きいというか…」

 

「いやぁー、っはは!白副君の淹れたビバレッジはお客さんから大変人気でね。若い子も多く来店してくれて、私は嬉しいよ」

 

今後の資金も心配ないしね!と嬉しそうに笑うマスター。

ひとえにマスターの評判があってそこの繁盛だと思っていたが、それに私の働きが及ぼしていたとしたら、貢献できて良かったと嬉しく思うが、見るからに3桁はいく金額が収納されている分厚いケースをいきなり渡されると戸惑うものである。売上の半分以上は入ってるのではなかろうか?

 

「今までは店は寂れた雰囲気だったけど、君が来てから賑やかな雰囲気に変わって、やりがいがあって楽しかったよ」

 

名残惜しい様な、そんな表情をしながら彼はコーヒーを淹れた。流れる様な所作であっという間にコーヒーを淹れ終わり、私へと差し出した。

 

「まぁ、そういう訳だ。反対されるかな?と思ってたけど、案外すぐに理解してくれたね」

 

「マスターが色々と考えた末の事に、異議を唱えるなんてしませんよ。それは図々しいではありませんか。居候である私が」

 

「アハハッ!!居候だなんてとんでもない!この売上を生んだのはバリスタの白副君だ。君のお陰暮らしていけたんだよ?私の立つ瀬がないじゃないか。ははは」

 

「…………」

 

「すぐに追い出すわけじゃないさ。今後の事で困ったことがあれば私に相談しておくれ。協力は惜しまないさ」

 

尻尾を振らしながらコーヒーをグイっと飲み、フロアへ戻っていった彼の後ろ姿を見つめる。

マスターが淹れた深みのあるいい香りコーヒー。この一杯がもう飲めなくなる、そう思うと名残惜しい気持ちが湧き上がってくる。

 

「いい香りです……」

 

マグカップを口に運び、一口をゆっくりと飲んだ。この味を忘れないよう深く噛み締める様に。

 

 


 

 

 マスターから頂いた大金をそのまま現金で保管するのは少々不安だ。

窃盗や強盗が多く横行しているキヴォトスでは尚の事、銀行に預けた方が安心できること間違いないだろう。恐らく。

 

「………?」

 

銀行に続く道の先に、ヘルメットを被った子供達が道を塞ぐ様に集まっていた。何かの集まりか?と疑問に思いながらも、このまま突き進む訳にはいかないので道の横に逸れる。が彼女達も私に合わせる様に横へと逸れた。

 

………これは、まさか。

 

引き返そうと後ろに振り返るが、その道もヘルメットを被った彼女達で塞がれていた。

 

「……………」

 

「おにーさんさぁ……素敵なケースをお持ちだねぇ?ちょっと私らに見せてよ?」

 

案の定、そう来た。

私が手に持つケースは見るからに現金が入ってますよーと教えている見た目のお陰で、狙われつけられ、そして囲まれた訳だ。格好の餌食とはこの事だ。だがこれはマスターから頂いた大切な財産、おいそれと手渡す訳にはいかない。

 

「それは難しいですね。銀行に預けないといけないので。そこを通していただけますか」

 

「イヤでーす通しませーん」

 

「バカかコイツ、この状況になったらやることは1つだろうが」

 

「そのケース渡してくれたなら通してあげるけどね?アッハハハ!!」

 

 彼女達は銃器をチラつかせ、私を威嚇する。大きな声で嘲笑し、さも当然の様に人を脅かす。

 

ずっと思っていた。

 

銃器が当たり前であるキヴォトス(世界)では珍しくない事柄だろう。事件が起き、逮捕され、釈放されても再犯する者も多いと聞く。

 

反省していない。顧みない。中途半端な子供達。

 

社会が悪い側面もあるだろう。大人の手に余る側面もあるだろう。それでも誰かがこの子供達、彼女達の()()を施すべきではないだろうか?

 

「ほらぁ、早く渡せよ?中身だけ貰えればそれでいいからさぁ」

 

「ぷっ、空っぽのアタッシュケースとか笑えるな」

 

銃口が私の胸に押し付けられる。彼女がここで引き金を引けば即死は避けられない。たった2㎏の力で私を殺せる、その事実を彼女達は知っているのか?ヘイロー有無は視覚で確認できる筈だが。

 

「あーじれってぇ、もう直接奪うわ」

 

もう1人の子供がケースに手を伸ばし奪い取ろうとしてきた。私は手に力を入れて、ヘルメット越しの目を見つめる。

 

「手を放してください」

 

「は?お前が放せよ。撃つぞ?」

 

「私は出来れば手を上げたくない。君達の様な不良でも子供ですから。もう一度言いますよ、手を放してください

 

「ッ……!?う、うるせぇ!!テメェが放しやがれ!!」

 

彼女はどこか慄いた様子で、持ち手を持つ私の手から強引にケースを奪い取った。私は取り返そうと彼女の手に触れようとした矢先、彼女が放った蹴りが私の腹部に直撃する。

慣れない痛みが走り、私はよろめき膝を付いた。

 

「………………」

 

「チッ、大したことない。お前ら!別なとこに移るぞ!」

 

「…………暴力と犯罪を犯しましたね」

 

「あ?もうお前に用はねぇよ。まだ歯向かうなら撃つぞ」

 

子供に手を上げない、例え素行が悪い不良の子でも。だが、間違いを起こしたのなら正せねばならない。この子供達には教育(反省)が必要だ。

 

私は懐からタブレットを出す。

黒く、厚みがある産業用の見た目のタブレット、黄色く光り、パネルに映るアルファベットのEを見つめ私は告げる。

 

「エシェルの櫃、(レシピ)起動。サマナ──同期を」

 

『了解。先生』

 

ディスプレイの中の彼女は平淡な声で返事をした。

その返事した数秒後、彼女達のヘイローにノイズが生じ、サマナと同じヘイローに変化した。

 

「え、なに?視界が……急に変にッ…」

 

「あれっ?立てない……力が…」

 

次々と彼女達は無力状態に陥った。体の感覚が狂い、おぼつかない思考となり、地面に座り込んだ。

 

「何だこれっ、ここはどこだ!?誰かいないのか!?」

 

狼狽する彼女達の目には違う景色が広がっていた。白い空間にただ1人。何もない世界がだだっ広く存在するだけ。

その世界には君達に教鞭を振るう私が鎮座している、文字通りの"教鞭"を振るって。時間はたっぷりありますから、安心して授業を受けましょう。

 

────理解するまで、先生は最後まで付き合いますから。

 

座り込んで微動だにしなくなった彼女達を横目に、私は携帯を取り出してヴァルキューへと通報したのだった。

 

 


 

 

 事件が多く続く毎日に辟易していたが、最近は減少傾向になるまでには落ち着きを取り戻していた。

これは最近赴任したシャーレの先生のお陰だとクロノスニュースで告げられていた。そのニュースを横目に、私──尾刃カンナはコーヒーを飲みながら書類仕事に努めていた。

 

治安悪化の原因は、サンクトゥムタワーの停止にあった。管理者である連邦生徒会長の失踪が公になり、そこから派生するように悪化の一途を辿っていった。極めつけには七囚人の脱獄を許してしまうまでに……自分の不甲斐さに怒りを覚える。

 

「………あのコーヒーが飲みたい」

 

立て続けに起きる事件の対処に追われ、夜遅くまでは残業する日々だった。そんな激務を続ける為、評判が良いと聞いたカフェに気まぐれで立ち寄ってカフェインを取ろうとした。そこで出会ったのは全身真っ白の大人の人。その大人が作ったコーヒーの味が忘れられないでいる。

 

D.U郊外のとある角地ビルのカフェ、バリスタである白副さんが淹れたコーヒーは、今まで飲んできたコーヒーより格別に美味しかった。

 

───疲れていたご様子だったので、1ショット追加しておきました。味に問題はありますか?

 

人を良く見ている人なんだろう。それぞれの体調に合った適確な1杯を提供していた。不思議な声色で、さりげない気遣い、労わる言葉をかけてくれた、不思議な大人。

そのカフェに通う常連さん曰く、突然キヴォトスに訪れた人らしいとのこと。本人も自分がどこから来たか記憶が曖昧らしい。

 

───全身が白いので、白副と名付けました。

 

そんな安直な名前でいいのか、とツッコんだ記憶がある。どこか抜けているところもあって、それが親しみを生んでいたと思う。そんな安心できる人が居たカフェは先月で閉店をしてしまった。

店長であるマスターの高齢化を理由の閉店、常連の惜しむ声が多く出ていた。私もその1人だ。

 

あの人は今どこで何をしているんだろうか。

 

漠然とした気持ちが渦巻いて、何だか集中できない。早く仕事を終わらせなければ。私は強引に切り替える為、いつもより濃いコーヒーを喉に流し込んだ。

 

 


 

 

 最初に会った時はちょっと変な人だと思った。いつも大変そうに来ていてたマスターの代わりに仕入れに来た謎の白い大人。カフェの定員にしては少し……いや、かなり風貌が奇妙だった。

 

───良質な豆です。山海経は栽培に向いている良い土地なのですね。

 

料理や材料に造形があって、何かと話が合う人だった。カフェのバリスタってコーヒー以外にも詳しいのかと疑問に思ったけど、単純に趣があるものは好きらしいと言っていた。それはそれで凄いけど。

 

「はぁー……私の店に来るって約束したのに……嘘つき」

 

飲食店を営み、運営していた者同士で多忙だったが、必ず互いの店に訪れると約束していた。

やっと休みを作れた──そんな浮ついていた時に、彼の店が閉店を迎えた。

閉店理由はやむにやまれない理由だった。マスターさんはご年配で、そろそろ隠居したいと呟いていた記憶がある。そこに文句はないし、奥さんと一緒に健康で過ごして欲しいと祈っている。

 

白副さんはマスターに感謝とお礼をした後、行方が分からないらしい。

こうなるならメールでも交換するべきだったと今更後悔している。

 

───朱城さんはいつも頑張ってますね。休息と休憩をとって、少しでも体を大事にしてください。

 

そう言いながら優しく頭を撫でられたことがある。

変な気持ちになった。労いを受けるのは初めてでもないのに、落ち着いたというか……安心した。

 

何故だろうか、大人だからかな?曖昧な気持ちで整理がつかなかったけど、話していて楽しい人だった。

 

今どこで何しているんだろう……、もしどこかで店を開いていたのなら、必ず彼が淹れた1杯を飲んでみたいと強く思った。

 

「コーヒーか………飲んでみようかな」

 

普段飲まない飲み物を作る為、私は食器棚からマグカップを取り出した。気分転換になるな──そう思いながら。

 

 


 

 

 とあるビジネスホテルのレストラン、その一角に対照的な色合いの服を着た大人達が、向かい合って座っていた。

 

「先ずは、1杯飲んで一息つきませんか?」

 

「遠慮します、お1人で堪能してください」

 

「おや、アルコールは苦手ですか?」

 

「嗜む程度には飲めますが……度数が高いのは無理して飲まないようにしているだけです」

 

「こちらは7%で低い部類に入ると思いますが、意外ですね。クックック…」

 

「本題に入ってください、黒服」

 

 愉快そうに笑みを作る黒い大人を、私は溜息を付いて睨み付ける。

彼との出会いは唐突に起きた。それは暗闇が強い深夜に、意図を持たせた態度で私を訪ねてきたのだ。

 

「あなたのルーツを、私は知っている」と。

 

そして私の持つタブレット──エシェルの櫃はオーパーツの1つであると判明し、そこに眠る私の生徒までも看破した。

 

そして私のルーツ、秘密を説明することを条件に、彼はこう告げた。

 

「ゲマトリアに、是非とも加入していただきたい」

 

この勧誘に私はこう答えた。

 

 

 

 

「お断りします」

 

 

 

 

 

もちろんお断りした。

どのような組織なのか説明もせず、条件付きで入れと言われる。怪しさしか感じられない。

外見も他の大人とは違う異質さも感じた。それは私もそうなのだが、それは棚に上げる。そこから対話を重ね、私がこの大人に下した評価は、「嘘を言葉遊びで繕う胡散臭い大人」と躊躇わずに述べた。

 

───やはり、あなたは他の大人とは違う。クックック…

 

気味の悪い笑い声でどこか愉快そうに私を見据えるこの黒服という大人、正直に言って不快だった。

 

彼のお気に召した対応をした所為か、ゲマトリアの詳細と、キヴォトスの情報を手厚く教えてくれた。よりこの世界を深く知れたのは僥倖であり、そこは感謝するが、神秘や恐怖、そして色彩については要領を得ないでいた。

 

そして彼から何故かスマートフォンをプレゼントされた。(恐らく今後の連絡を取る為に)

 

そして現在、この気味の悪い男と対面で食事を共にしている。

 

「先ずは、最近このキヴォトスに赴任された先生について。どのような所感をお持ちか、聞かせて頂きたい」

 

「……………度胸がある善良な大人ですね。貴方と違って」

 

「ククッ……詳しく聞いても?」

 

「貴方の依頼で仕方なく、このタブレット越しで彼女の行動を見てみました。生徒とは親しい様子で会話をし、端末を用いずとも銃弾飛び交う戦場で、的確な指揮で生徒達を導いていました。その後のシャーレでの活動も良好ですね」

 

「ええ、ええその通りです。そして箱を手にしてからより一層洗練された指揮で生徒達を指揮している。素晴らしい大人です。有望な方です」

 

随分と嬉しそうに先生を褒める黒服。確かに私もそう思っている。

私と違って、危険な生徒を前にしても恐れず、向き合っていた。どこか抜けている一面も、愛嬌としてより親しみを生む。理想的な大人に近いと評価しても過言ではない。

 

「左様ですか。それで?1人の女性を覗き見た感想だけで終わるつもりはありませんよね?」

 

「ええ、ここからが本題です。貴方に、先生を傍で観察していただきたいのです」

 

「ストーカーですね。お断ります」

 

「最後まで話を聞いてください。先生が来てからキヴォトスの情勢は良好になりました。大きな権力を持つにも関わらず、それを使用せず、ただ”先生”としての職務だけで影響を齎す」

 

そのただの先生という立場は、決して軽いものではない。黒服。

 

「まだ不確定要素が多い、そこで………評判のいい白副に、シャーレが最近開いた”シャーレカフェ”のスタッフに応募し、先生が近い距離に身を置いていただきたいのです」

 

「……」

 

端末にはシャーレのサイトが表示される。

可愛らしいフォントで「シャーレカフェオープン!常駐スタッフ1名募集!」と大きく載っていた。

 

「どうですか?あなたはバリスタとして優秀でした。面接も実技も難なく通ることでしょう」

 

「お断りします」

 

「………………」

 

「………観察を、です」

 

「……というと?」

 

「先生を観察という名の監視は一切致しません。ですが、バリスタの経験が生かせる事は大変喜ばしい。先生も、そこに訪れるであろう生徒も、私の淹れた一杯で癒せるのなら、是非応募しようと考えます」

 

シャーレのビルには多くの子供達が訪れる。その子達の成長をカウンター越しで見られるのならば、是非そこに根を下ろしたい。……………あまりストーカーと変わりないですね……。

 

「………ふむ………まぁ、よろしいです。近くにあなたを置くことができれば、何かしらの変化は見られそうですし。クックック」

 

「貴方の思うように事は進みませんよ。先生が居るからには」

 

「だからこそですよ。私が先生を買っているのは」

 

「………この酒を1杯飲んだら私は自分の部屋に戻ります」

 

「おや。気が変わりましたか?」

 

「…………気分転換ですよ」

 

黒服は面白そうに酒を注ぎ、私はグラスを受け取り一気に飲み干した。

 

……体が熱い。

 

無理して気分転換するのは今後は控えよう。らしくない自分にそう言い聞かせ、部屋へと足を進めた。

 

 


 

 

 『先生、あなたお酒苦手なんだよね?どうして飲んだの?』

 

サマナから耳が痛い言葉が発せられる。

体が熱くなって、思うように体を動かせず、ベットの上でうつ伏せになっている自分が恥ずかしい。

 

『先生って偶に変なことするよね。そこが無ければ完璧なのに』

 

「かんぺきな、ひとなんていません……ふかんぜんだからこそ……たがいが……しれる…のですよ」

 

『……そんな状態でも、真面目なことは言えるんだ』

 

サマナは溜息を付いて、白副を見つめた。

 

 ──先生、白く染まった先生。

貴方はホントに、偶に危なっかしいことをするから、私が目を見張らないと、どこかで死んじゃいそうで不安。

 

あの廃墟から出る時だって、私が分かりやすく矢印を視界に表示して案内しなかったら出られなかったし、Divi:Sionが撃った銃弾も、私の演算機能が無かったら死んでたし……偶にじゃないか。常に危なっかしいかも。

 

私と再会して時、私の事は忘れてたけど、生徒としてはちょっと覚えていたみたい。

それだけで充分。先生が()()()なくても、私は貴方を憶えているから、記録しているから。

 

貴方を、絶対にリストア(復元)してみせるから、それまでちょっと待っててね。

 

 

 

 サマナと呼ばれるAIは、記録を学習を忘れない。愛しい先生(白副)を守るために。

愛おしい視線で彼を見つめ、そっとパネルの明かりを消した。

 

崩れた教室、そこから見える景色は夕焼けが広がり、太陽に大きな環が浮いて、幻想的な風景を生み出していた。

 

 

 

 





設定やキャラクター、文章についておかしい所が有ればご指摘くださると幸いです。

修正は度々します

アロナがいる教室って一種の幻術みたいなものだと思うんですよ?ナルトのみたいな
その要領でヘルメット団をダウンさせました。ちゃんと一人一人と対話して、目覚めた後は大人しく捕まったみたいですね。バックルームみたいなもんです

次回はやっと先生と絡むことができます。

あとタイトル変えました。旧:シャーレカフェの白副

エシェルとは
旧約聖書にでてくる樹木。この木はギョリュウ属の樹木とされ、アブラハムがベエル・シェバという土地に植えて、神に祈るくだりがある。

また、薬用として利尿・解毒や風邪に効果があるとされる。
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