The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.17-04 アビドス高校

アビドスへの帰路は辛かった。全員疲れ切っていて、眠気も酷かったので、着いたらすぐに寝てしまった。

 

そして書類仕事が舞い込んでくる。アビドスは土地を取り戻した。もちろん合法だ。

 

“ホシノ、俺も一緒に戦い抜くぞ。”

今にも飛び掛かろうとするように、俺は目の前の頑固なおじさんに言い放つ

 

「それじゃあ前と変わらないよ先生。」と机に突っ伏したホシノが言う。俺は飛び掛かろうとする寸前だった。「色んな仕事でバタバタしながらの土地の管理ができないからおじさんたちに渡されたんでしょ。管理以外にもビナーとそれの起源の研究をしたり、税金を集めたり他のこともしないといけない。合理的に考えると、ただ集めるだけじゃ駄目だし、だからといって断るのも失礼だけど…質の悪いことに他の誰かに奪われるかもしれないんだよね。だから提案したいことは──」とホシノはアヤネへ向き、アヤネはうなずく。

 

「私たちをシャーレに登録し、先生がいつでも呼び出せるようにすることです。」とバッグからファイルを取り出して他の書類と一緒にテーブルの上に置いた。「そして先生が必要になる支援を無料で行います。」と締めくくる。その明るさで俺は思わず身をすくめてしまう。

 

シャーレがやったマネーロンダリングは対策委員会には伝えていない。俺が部の顧問であるという事実とカフェのおかげだ。その名義で借金の返済も可能だ。

 

ブレイキング・バッドとサポートエージェント時代の経験が活きた。

 

もちろん、これを問題視しなかったシャーレのメンバーのおかげもある。

 

“ああ、だが君たちがしたのなら、成果も君たちのものだ。必要な書類手続きは全て済んでいる。恩返しされるのは予想外だった。むしろして欲しいとは思っていない。”

そう呟き、ホシノはうなずく。

 

「そうだね。でも恩返ししないと罪悪感を感じたまま過ごしちゃうからね。」肩をすくめてホシノが言うと、シロコがうなずき他もうなずく。

 

“無理にしなくていいぞ。”

そう言いながら手で目を覆い、こする。

“正直──”

 

「あーもー!」と俺の顔面へセリカが応募書類を叩きつける。「さっさと署名しなさい!やることがまだいっぱいあるんだから!」

 

“分かった分かった。”

そう言ってため息をつき書類を見通す。何故か金色だったりするものもあれば紫色もあったが、署名を終える。

“はい。これで君たちは正式なシャーレの一員だ。”

 

「ん。」とシロコは呟き、他も微笑む。「やった。」

 

「じゃあこれで…SCHALEテックを使えられるようになったかな?」といたずらっぽくホシノは微笑む。

 

“あれは一回限りだ。”

頭を振ってそう答える。

“ISACは…”

言葉を濁す。ISACのことをどこまで説明すればいいか分からない。ディセントで聞いた内容は理解出来る範囲を越えていた。

“シャーレ専用AIだ。”

 

「え~…」とうめくホシノ、耳が垂れるシロコ。「つまんなーいの。」

 

「ん、便利そうだったのに。」

 

「どうせ銀行強盗に使うつもりなんでしょ先輩!」とセリカが言えばシロコは顔を背ける。「いや図星かっ!」

 

“カイザーに狙われない限り、何をやっても俺は気にしないぞ。”

これ以上は言わない。その言葉を聞いたシロコの目が輝く。

 

「ちょっと!!!」とセリカは俺の方に向く。「先生なら生徒の銀行強盗は止めなさいよ!」

 

“犯人が分からなかったとしてもシロコがやったと断定できるのか?”

 

「そうよ!!!!!」

 

「そ・れ・か!ライブを開催してこんな風に…」とノノミが手を突き上げて言うと…何かの動きをし始める。

 

「もういい!!!!!」と叫んだセリカは一枚の紙を机に置く。「この人たちの講習会に参加し──」

 

「マルチ商法だ。」とホシノが口を挟み、セリカの顔が赤くなる。

 

「人の話を最後まで聞きなさいよ!」

 

「その前フリだと、ね…」とホシノは自分の頭を軽く叩く。「おじさんはね、色々と経験豊富だからマルチ商法だともう知っているんだよね。」

 

「ってそもそも見てないじゃない!」とセリカが言うが、アヤネの目つきは更によろしくないものになる。

 

「なら──」とノノミが言い始めるが、俺は既に教室の外に出ていた。そして懐かしく感じて、微笑む。

 

彼女たちなら大丈夫だ。

 

「うへ〜」といつのまにか誰にも気づかれずに音もなく教室から出たホシノが、隣にいた。「先生、D.U.に行くの?」

 

“ああ、リンへレポートを渡しに行く。”

そう答えると、ホシノの顔は明るくなる。

 

「そっか〜。そこ、長いこと行ったことがないし、平和だから確認ついでについていこうかな。」

 

“ホシノがイラついた時に止めさせる人がいたら後でとやかく言い返されずに済むしな。”

そう答えるとホシノは一瞬だけ驚いた顔を見せ、軽く笑って頬を掻く。

 

「おじさんのこと全部お見通しみたいだね。」

だが俺は首を横に振る。

 

“ホシノは若い頃の俺にそっくりだ。”

肩をすくめる。

“ヘイローはないが。”

ホシノを見やる。

“髪はピンクじゃないし、目の色も左右で違ってもないし...まあ、そこは違う所だらけだが。“

 

「ほんと〜?」とホシノは驚き、俺をざっと見る。「いやぁ…流石に似てないでしょ。」

 

“まっ、その時にキヴォトスへ来なくて良かった。”

そう呟いて鼻を鳴らす。若い頃の俺は今よりずっと攻撃的で強引だった。D.C.やニューヨークでの経験で多少落ち着いたとはいえ、それでも暴力第一という考えは根強く、どんな状況であっても暴力を振ることができた。言葉での交渉を重ねていくうちに丸くなっていった。

だがそれでも──

“真っ先にカイザーを狙い、君たちを助けようとはしなかった。”

 

俺のことを誰よりも理解していたのか、ホシノはその言葉を受け入れたくない様子だったが、ヒナもそうだろう。だがホシノは…

 

そうして、校舎の外に出た。近くのヘリコプターを見ていた俺とホシノだったが、俺の袖をホシノは抱き寄せる。「先生。」と呼びかけられるが、その口元は微笑んでいた。「先生がいい。カイザーよりも、ずっと。」

 

“なぜなら先生は手強い相手だから?”

ジョークを言えば、ホシノは頬を膨らませて眉をひそめる。

 

「冗談じゃなくて本気でおじさんは言ってるんだよ!先生はもう対策委員だから、遠慮せずに時々顔を出してきてね。」

 

本気で言ったことは分かっている。俺が起こしてきた行動はホシノよりもよく理解している。どんな理由があっても、俺は二度目のチャンスには値しない人間だ。

 

それでも、与えられたからには最大限に活用するしかない。

 

“ありがとう。”

そう言えば、ホシノは微笑む。

 

「どういたしまして。」

 


 

ISACが報告書を書き、アロナが数値分析をし、俺が確認と修正をして、満足感と共にうなずく。そしてリンに手渡す。ホシノはオフィスの外で待っていた。

“報告書はこれだ。”

 

「お仕事お疲れ様です。」報告書に目を通すリン。「全て問題なく記入されています。アビドスでのご滞在は…充実したものになられたようですね。」と鋭い視線を俺に向ける。

 

“最高の砂漠だった。もちろんビナーみたいな蛇を見たのは初めてだ。”

そう呟くとリンはため息をつく。

“怪我以外は何ともない。”

 

「その怪我があったからこそ今、先生へお伺いしています。」リンは身体を前に倒してきて、眉を心配からかひそめられていた。「最低でも二週間以内は──」

 

“俺も自分の報告書に目を通したし、身を以て体験した。自分が経験したことは把握しているつもりだ。今となっては普通のことだ。”

 

リンは呆れたのか、ため息をつく。「普通の方ならば、その時点で疲労困憊になっています。」

 

“俺は普通じゃない。とはいえ、少し落ち着けられるのはありがたい。リニーもだぞ。”

そう念を押せば、リンの眉がぴくりと動く。

 

「そのように呼ばないでください。」と言われたので俺は両手を挙げて宥めようとする。そしてリンはため息をつく。「して、これからの予定などはお決まりでしょうか?」

 

“さあ。多分しばらくは、色んな学校へ回って色んなことをするかもしれない。”

 

「つまり何も決まってないと?」と鋭い視線を向けられて、俺はうなずけばリンは息を吐きながら頭を振る。「ですが、それでも構いません。」と小さく微笑む。「本当にお疲れ様でした。他に何かなければ、私はこれにて。」

 

俺はうなずいて机に手をつきながら伸びをした後、リンの髪を優しく撫でる。

“リンもお疲れ。何かあったらいつでも呼んできてくれ。”

 

困惑するリンを背にして後にして、待合室にいるホシノを見つける。

“待たせたか?”

 

「いや~」と更にソファーに沈み込む。「このソファーとってもふかふかで…もうちょっとだけぇ…」

 

“駄目だ。”

腕を持ち上げて引き剝がす。ホシノはがっかりしていた。

“アビドスの皆を確実に登録しないといけない。そうしないと小言を言われるハメになるぞ。”

 

「うへ~分かった~」と立ち上るホシノ。「次はどこ?」

 

“多分保健室と財務室だ。”

そう言って顎に手を当てる。

“この辺りにある。行こう。”

 

「おっけ~」

 


 

対策委員会の身体面での情報はまだ更新されていない。そして財務室長はいなかった。

 

正直に言うと、財務部の方が怖く感じた。一歩踏み出す度に自分自身が数字に分解されるような感覚だった。

 

「思っていたよりも楽だったね。」俺が先導してシャーレに戻る途中、ホシノは携帯を見ながらそう呟く。「久しぶりにD.U.に来たけど、初めての感覚に襲われたんだよね。」

 

“すまない。”

そう言って頬を…正確にはマスクの側部を掻く。

“もしもの為の保険みたいなものだ。”

 

「もしも、シャーレや連邦生徒会とかサンクトゥムタワーの共有スペースに侵入者が入ってしまった時の為?」と信じていない様子のホシノ。

 

“あくまでも保険だ。”

そう強調すれば、ホシノは首を振って携帯電話を見た後に鼻で笑う。

 

「別にそこまで騒ぐようなものじゃないと思うんだけどね。」とホシノは画面を見せてきて、俺は気になって顔を近づける。思わず目を疑ってしまった。

 

アビドスにあるカイザーの本拠地で俺が戦っている動画だ。投稿元は…

“クロノス?”

そう呟くと、ホシノはうなずく。動画は詳細なものではなかったが、敵の装備や斧、ナイフ、カメレオン──ありとあらゆる手を使って敵をなぎ倒していく俺の姿がしっかりと捉えられていた。

 

「うん。」とホシノは興味深そうに動画を細かく見る。「腕が鈍ったって言ったよね?」

 

“あー…”

言葉を濁す。軍の施設というのは通常、人の出入りが多く、ドルインフルが流行った際、警備が手薄になった所も少なくはなかった。一部のPMCはこれに乗じて襲撃をした。つまりは、戦車等が格納されている施設を奪還したことがある。

“うん…”

 

「こっわ~い」と冗談めかして後ずさりをするホシノ。

 

俺は目を転がして、自分の携帯電話を出してコメントを読み始める。

 

憧れ、好奇心、恐怖、荒らし、憧れ──オッケー、皆ティーンエイジャーだとは分かっているが、少し憧れすぎだ。

 

それにしても、どんな方法でこんな動画が公開できた?

 

まあいい、どうでもいいことだ。

 

スリープモードにして、シャーレのビルに着く。

“それで、どうしてホシノは一緒についてきた?”

 

「今の時間帯だとアビドス行きの乗り物がないから。」と微笑む。「あとは建物を見て回りたかったんだよね。」

 

“そうだな…まあいいか。”

肩をすくめ、シャーレの証明証を見せながらビルに入る。ISACに開けてもらうのもできるが、たまには普通に入るの良い。

 

ホシノも俺の後についてオフィスに入り、ソファーに目を留めるとすぐに駆け寄って軽やかに飛び乗り、満足げなため息をつく。「おひるねスポットはっけ~ん」

 

俺は首を横に振る。

“シャワーを浴びてくる。”

 

「あ~い」とホシノはソファーに沈み込んだ。

 

寝る準備がすべて終わり、階段を降りる。するとソファーで眠るホシノの姿が目に入りる。俺はため息をつきながら、毛布をかけ、軽くうなずいて自分の寝る場所へと向かう。

 

一つ確かなことがある──それは、アビドスを助けるのは政府の再建よりもずっと簡単だった。

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