石足りるか?(現在約9000個)
Chap.18-01 D.U. 公園
ドルインフルが起きたその時や後、人は様々なものを置いていった。例えば、自動販売機の中にあるまだ飲める物や冷蔵庫の中にあるまだ食べられる物、スーツケースからは工具や、時には貴重品が見つかることもあった。その前から、エージェントは使えるものなんでも拾うように訓練されてきた。例えば予備のワイヤーやノート、子供のおもちゃ、薬、部品等がある。機械工学と技術を専門とする俺としては、このスキルは大いに役立っている。
それでも、近くの公園でゴミ箱やリサイクルボックスを漁っていた時には驚いた。そこで見つけた未使用の弾薬やマガジンの多さで呆れ、分解してゴーバッグにしまった電子機器も多かった。そして昔からの癖でスキャナーPulseを使った。何かがあると本能が警告していたからだ。
ゴミ箱の中に。
M1911を持つ。アダムの鍵は正式な仕事の為のものなので置いておくことにした。そしてゆっくりとゴミ箱のフタに手を添え、力強く押す。銃を構えたまま中を確認する。
「ひゃうぅぅ~…」
ゴミが立てる音にしては変だ。ゴミじゃない
ゴミ箱の中には少女が身を縮こまらせながら悲しそうな声を上げていた。赤い目に偽物のうさ耳、長い黒髪が背中まで広がり、落ち葉が数枚絡まっていた。ヘイローはグレーの雲と雨粒の形をしていて、銃は白く、タープが巻き付けられていて、ISACによればフィンランドのモシン・ナガンM39、
フィンランド…モシン・ナガン…あまり実感が湧かない…
彼女は怖がったまま俺を見つめ続け、つい俺はどこか似ている所がないかと探してみるが…
今のところは全く見当たらない。
“あー…”
言葉を濁しながら、M1911をホルスターにゆっくりとしまい、ゴミ箱の縁に両手を置きながら尋ねる。
“ここで何をしているんだ?”
「えっ?」と俺の方に向けば、柔らかい声でこう聞かれる。「わ、私のことが…見えるんですか?」
“見えない方が良かったか?”
そう聞き返す。少し心配している。エージェントの時は幽霊の目撃情報は決して珍しいものではなかったが、これは…
もう少し細かいところまで見え、肩とアーマーにはSRTというパッチがあった。
“しかし、君が装備しているアーマーは本当に良い。”
つい呟く。
“こんなに良い装備は初めて見た。”
「あ…その…ありがとうございます…」と彼女は顔を赤くして、俺は身を乗り出して自分の頬に手を当てる。
“で…これはダンプスターダイビング*1みたいなものかそれとも…”
言葉を濁し、彼女は首を横に振る。
「い、いえ…その…」と途中で口が止まり、慌てているようで俺は肩をすくめる。
“まあ、別に構わないぞ。”
肩をすくめてそう答えると、彼女は安心する。
“それで、何か見つけたか?”
「み、見つけた…?」
そう聞かれてうなずく。
“そうだ。人はなんでも物を捨てる。ゴミ捨て場の場所を知っていれば、そこから良いものが入手できる。オフィス用品とかがそうだな。”
彼女は興味深そうに身体を前にする。
「そう…ですか?」と彼女はいえば俺はうなずく。「あの…オフィス用品というのは…?」
“古いモニターや電話とかだ。もちろん──”
彼女の胸から音が鳴れば彼女は飛び跳ね、音源を見てから恥ずかしながら俺を見る。「うぅ…ごめんなさい…無線が…」
“いいぞ。”
そう言って少し一歩下がれば、ISACが無線を盗聴していた。
| RABBIT4、こちらRABBIT1、聞こえますか? |
| ひゅぅぅ…RABBIT4、き、聞こえます。 |
| では、十分後に鳥かご作戦を開始します。準備をお願いします。 |
| りょ、了解。 |
無線は切れ、思わず眉をひそめる。喋る度にゴミ箱からノイズのような音が聞こえた。泣き顔になっているその子に振り返る。
“大丈夫か?無線機が壊れているようだが。”
「うぅ…まだ新品なのに…」と彼女は呟き俺は肩をすくめる。
“少し貸してほしい。”
そう尋ねるが、嫌がっているようだった。
“俺は物作りは得意ではないが、こういうのは直したことがある。だからなんとかできる。”
彼女は一瞬考え込んだ後、うなずく。「で、では…どうぞ…」と無線機を渡され、確認する。テストは出来ないが、出力に問題があった。信号は安定しているが頻繫に途切れてしまう。だから…
しゃがんでゴーバッグを置いて工具を取り出す。問題の特定には慣れている。サポートエージェントの時はいつも武器庫でカッコイイ銃を見る以外にも直したりして色々とやっていた。結局のところ、物はいつも限られていたから確実に使えることが前提だった。もちろん拾った物は手入れか修理をしなければいけなかった。
数分も経たずにして終え、うなずく。
“はい。”
彼女に渡す。
“これで大丈夫だ。”
その無線機を見て、彼女は驚く。「ありがとうございます。」
“気にしないでくれ。”
そう言って手を仰ぐ。
“ゴミ箱暮らしだとは思わないが、もしかしたらそう願いたいだけかもしれないが、身体には気を付けてくれ。”
「はい…」と言って去っていくのかと思えば、歩き出しながら何かを思い出したように顔を輝かせ、「あの、霞沢ミユです。」と丁寧にお辞儀をした。
“ミユか…”
“ヴェルネス マテオだ。元気で。”
軽やかに去っていくミユに手を振って見送る。
が、ミユが木の根につまずいた瞬間、俺は思わず身をすくめる。本当に不幸だった。それはもう残酷なほどに。
そうして、俺も眠っているホシノがいるシャーレへ向かう。