The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.18-02 シャーレ

もう起きているのか、それとも最初から眠っていなかったのか、困惑して首をかしげると携帯電話に通知音が鳴る。スキャンテックにはホシノのメッセージが表示され、それを読みながら薄手のセーターを羽織る。

 

ごめん。書類とかでアヤネちゃんを手伝わないといけないからもう帰っちゃった

 

つい軽く笑い、返信を返す。

 

気を付けてくれ。突然いなくなったら皆寂しがると思うぞ。

 

少し間が空いて、三点リーダーが現れる。

 

…もう帰ってもよかった?

 

返信はせずに武器庫とワークショップに向かい、武器を全て清掃して正しい位置にしまう。

 

そうして建物内に仕掛けた罠と、武器を隠した所に設置した監視装置を確認する。そして周囲にも防御ラインを完成させるため、周囲に隠しておいた罠や弾薬箱の配置も確認する。

 

確認が終われば、エンジェル24に寄る。

“やあソラ。”

そう言って入る。ブロンドの少女は顔を覚えていたようで嬉しそうに顔を上げる。

 

「い、いらっしゃいませ、先生。」と微笑む。「アビドスはどうでしたか?」

 

“まあそうだな…”

言葉を切らして食べ物の陳列棚を眺める。

“暑くて砂だらけだった。だが生徒は皆元気だったし、ラーメンも美味しかった。他は特にないな。”

そう言いながら、そう言いながら、アロナのためにいくつか品物を選び、弁当コーナーも見る。意外なことにかなりの種類があった。

 

何か買うか。

 

ゆっくりと、重火器のコーナーに目が移り、背ける。確かにエージェントになる前から恐ろしく楽に銃が手に入る所にいたが、キヴォトスは…

 

煙草すらも買えない子供でさえも銃が買える光景には一生慣れないだろう。だがワカモやカヨコは子供ではないだろう。多分。

 

ワカモといえば、動画には彼女の姿が一切映っていなかった。だからあれ以来どこへ行ったのかが気になっている。助けてくれた礼を言わないと。

 

ソラと話をしながらいくつか物を買い、やがて朝食を終え、レーションバーと弾薬を補充し、ゴーバッグにはスペースが空いて、拾ったものも十分に収まる。医薬品や包帯なども十分に備蓄し、あとは書類仕事と、シュンが計画している校外学習だけだ。

 

計画を練るだけなら簡単だ。相手は子供だから、長時間じっとさせることはできない。そこで専用のエリアを確保し、エンジニアが仕事について説明したり、何かカッコイイものを見せたりするようにした。その後午前中のおやつタイムを経て、昼食時にはカフェでゆっくりと食事を楽しめるようにスケジュールを組んだ。その間の時間は子供たちが何でもできるように設定している。

 

経験に基づいた計画だ。幸い、キヴォトスの子供たちは俺が面倒を見てきた子供たちに似ている。

 

そして書類仕事が終わり、クロノスのチャンネルに切り替えてみる。イヤーピースに声が入る。

 

──それでは、次のトピックへと参りましょう!シャーレと不思議な不思議な先生~!その実力と行動で、たったの二週間でキヴォトス中で大注目になった先生ですが──

ポッドキャスト?シャーレがどう見られているかを把握するには良い。俺個人については把握できないが。

 

仕事のお供にしながら書き続ける。昨日のことのせいで、今日は特に何も起こらないと思う。

 

書類を処理して、時間を確認すれば昼であることに気付き、机に突っ伏してため息をつく。

“もう最悪だ。”

バッグに手を伸ばし、レーションバーを取り出して開けようとする。

 

「ちょっと!」とセリナに俺の手を止められ、驚いて彼女の方へ振り向く。「同じものばかり食べては駄目ですよ!まだ回復中ですから、もっと健康に良いものを食べてください。」

 

“どういうふうにして入って来たんだ!?”

ISACを見れば同じように驚いていて、当然だがアロナもだった。

“ロックされているはずなんだが…”

 

「そうだったのでしょうか?」と困惑するセリナ。「とにかく、まだお怪我は完全には治っていませんから今の食生活のままでは駄目です!」

 

“大丈夫だ。”

ピンクのナースを宥めようとするが、頑固なままだった。

“本当だから。”

 

「道具を使って治癒を早めているのは分かっていますからね。」とセリナは俺に厳しい視線を向け、俺は困惑する。

 

一体全体どうやって知ったんだ?

 

「お薬で無理矢理治せば身体に負担がかかります。ただ治すのではなくて、きちんと時間をかけて自然に治してください。」と目を狭めながら腕を組むセリナ。

 

“そいつは違うな。”

そう言い返し、再び書類に視線を戻す。

“この方法で四年間も続けてきたが何ともないぞ。”

 

「せーんーせー!」と聞き覚えがある声が後ろから聞これば、目を狭めて腕を組んで足を鳴らしているフウカがいた。

 

“フウカ?フウカもどうやってここに?”

衝撃を受ける俺だが、フウカがこっちに歩いてくる。

 

「ハルナに入らせてもらいました。」俺はフウカの後ろに目を向けるがハルナの姿はなかった。「今はカフェにいますが。」

 

「どうも!」と違う声が聞こえ、誰かがフウカの背中の横から現れる。「こんにちはー!」

 

そこには、明らかにいたずらっ子としか言えないような子だった。赤い髪を束ね、青い目からはいたずら心が見え、中央に逆三角形の大きな円とそれに連なる3つの小さな円で構成された赤いヘイロー。改造された制服、そしてLMGに描かれたグラフィティ。それら全てがまさにいたずらっ子という姿だった。彼女は一歩歩けば俺に手を振る。「小塗マキ、ヴェリタス所属でチヒロ先輩の代理として来たよ。」

 

“待て、俺は代理を…なあ、ずっとスルーされていたんだがここにはどうやって入ってきた?”

セリナを指差して尋ねるも彼女は困惑で首をかしげる。

 

「あそこのドアからですが…?」と言うも、俺の中では疑問が深まる。

 

“どこのドアからだ?エントランスからここへ続くが、そこのカメラには映っていなかったぞ?”

コンピューターからカメラの記録を見るが特に何も見つからない。ISACに視線を送るが首を横に振る。つまりSHDカメラには映っていない。

 

「確かにあそこのドアから入りましたよ。」とセリナがうなずくが、ますます疑問は深まるばかりだった。

 

どうやってだ?何も分からない。ISACは簡単にセリナを特定できるのだから本当に何もわからない!ウォッチをタップすればオレンジ色の光が球状に広がり、一定範囲内にいる全員の輪郭が浮かび上がる。確かに、セリナはいた。どうやってだ?

 

スキャナーPulseはSHDテックの中でも信頼できるものだ。敵に悪用される心配はなく、検知範囲も広く、さらに敵を味方と誤認した場合でもその判定を確認できる。また、実際にはいるはずなのに反応がなかったとしても、俺の鋭い直感でそれが分かる。

 

なのにセリナは…全部避けた?本当に訳が分からない。

 

そんなナースに振り向けば、途端に怖く感じるようになった。

 

「多分ハッキングでもされたかも。」とマキが俺の混乱をよそに言いながら、背もたれに寄りかかりながら両手を頭の後ろに回し、視線を逸らしながら床を蹴る。「数日前の点検でチヒロ先輩が見落とした所があったかもしれないけど、そんな困った時のお助け役が…ここに!ってね!」

 

“俺か?”

思わずそう呟いて片眉を上げる。ヴェリタスはセキュリティコントラクターのチヒロを除き悪名高いハッカーグループとして知られているからだ。

 

「先生!」とフウカが割り込む。「レーションバー以外のものは食べましたか!」と聞かれ、俺は両手を挙げて落ち着かせる。

 

“ああ、ラーメンなら。”

すぐに答える。柴関ラーメンは本当に美味しかった。それはもうすぐに答えれられるぐらいに。

“あと朝に弁当を。”

 

「それだけ?」どうやらマキも心配していた。「ていうかレーションバーって美味しいの?」

 

“一口いるか?”

そう言えばマキは興味深々にレーションバーへ向いて、ゆっくりと開けて一口食べる。一瞬、リスのような顔をしたが、すぐに顔をしかめて、無理やり飲み込んでむせそうになっていた。

 

「なんで段ボールみたいな味がするんだろう…」とマキは一瞬それを見つめた後、俺の方を向く。「先生って本当にこんなのばかり食べてたの…噓だよね…?」

 

“そこまで不味くはないだろ。”

少しムキになって言い返す。

“確かに、美味しくはないが、でも最後まで食べられる。”

 

「そうじゃなくて。」

 

「健康に良くないです。」

 

「もっと栄養バランスが取れたものを食べてください。」

 

マキ、セリナ、フウカが次々に言う。

“分かった。ならコーラか何かを──”

 

「ん、先生。」シロコがサイクリング用の服で部屋に入る。その背後からちょっと鋭い視線が飛んできた。「手伝いに来たよ。」

 

「しなくても結構ですので私が──」とユウカも入ってきてこの惨状を目にすれば視線はマキへと向く。「マーキー!ここで何をしているの?」

 

「えーっとね…」とマキの視線は突然俺やユウカの方から背ける。「チヒロ先輩の代理で来たら…ちょっとカメラの調子が悪くなってて…」

 

「何を言っているの?チヒロ先輩からは全て異常なしと聞いたわ。そういえば…」とユウカはあることに気付いたのか、手を腰に当てながら俺に向く。「せ~ん~せ~い~、チヒロ先輩の様子がおかしかったのですがどうしてでしょうか?」

 

「ん、この人たち誰?」とシロコが見渡しながら尋ねる。

 

「コーラか何かってどういうことですか!コーラはご飯じゃありませんよ!それだけじゃお腹いっぱいにはなりません!」フウカが指摘すればセリナはうなずく。

 

「せんせぇ~!」とユウカが唸る。「もっとちゃんとした食生活を送ってください!」

 

「はい。」とマキがユウカへレーションバーを手渡す。「こればっかり食べてるんだって。」

 

ユウカは瞬きをすれば、それを見つめて恥ずかしさで顔が真っ赤に爆発した。シロコは苛立っているようで、俺からすれば困惑するものだ。「も、もしかして──」

 

「ん。」と俺の困惑をよそにシロコが一口齧る。

 

「ちょっと!」と顔を赤くするユウカがシロコを睨むと、シロコは得意げにため息をつき、ユウカを驚かせる。

 

そしてゆっくりとシロコは食べ始める。顔をわずかにしかめた後に、飲み込む。「段ボール…」

 

「先に私が──」とユウカが言いかけるも、マキが遮る。

 

「だよね。私も一口食べてみたけど──」とマキが言う中、ユウカはシロコに身構える。「段ボールみたいな味だった。」

 

自分がやったことに気が付いたシロコは目の輝きを失うが、ユウカは得意げな様子で胸を張ってシロコを苛立せる。そしてゆっくりとシロコへ向いて口元に手を当て、「かんぺき~」と呟く。

 

「今、キッチンには何かありますか?」とフウカが聞くが、俺は顔を向けられない。

 

「先生は昨日アビドスから戻ったばかりなので空っぽのままです。」とセリナが伝える、俺はその方へ向く。

 

マキは口笛を吹くと、目には尊敬が籠っていた。「帰ったばかりなのにもうお仕事してるの?私には到底無理だね…」

 

「そう言えばマキはここで何をしてるの?」といきなりユウカが言い放ち、一瞬で赤毛へ振り向いて鋭く睨みつけて、腕を組む。「まさか犯罪行為はしていないでしょうね?」

 

「えっ?」とマキは胸を押さえ、まるでもう既にやってしまったかのように滝汗を流す「私が?犯罪って…いや、してないよ。」

 

「ならチヒロ先輩に直接聞いても大丈夫よね?」とユウカが言えばマキは飛びつくように駆け寄り、腕を振り回しながら照れくさそうに笑って顔を背ける。

 

「ちょ、ちょっと先輩は今忙しいから横槍入れない方がいいんじゃない?」と

 

「むしろこっちから入れてくるよ。」とチヒロが二人の生徒を連れて入ってくる。皆、圧倒的な美貌を持っていると改めて思い知らされてしまい、俺は言葉を失った。

 

「バレないと思ったのに…」と一人が言う。白い髪をポニーテールにまとめ、白衣の下にパーカーを着込み、ケルテック RFBブルパップライフルがある。緑色の瞳を興味深そうに周囲に向けながら、内側には3つの小さな円が連なったネオングリーンのヘイローで、小鈎ハレに付き従うドローンのように、動きに追従している。

 

そしてその後ろには、紫色の目が辺りを見渡していた。首にはヘッドフォンがかかっていて、白のドレスに黒いパーカーを羽織っており、パーカーの内側はオレンジ色という特徴的な配色だった。グローブも同じ色合いで統一されている。長く透き通るようなブロンドの髪は途中で編み込まれており、残りは腰まで伸びていて一房の髪が立っている。ヘイローは淡い紫色の円形で、縁には線状の装飾が施され、外側に向かって二本の針のように斜めに伸びた部分がある。手にはグロック19と無線送信機を持ち──それが音瀬コタマだった。

 

二人から、外より中にいたいというオーラが漂う。今にも地面に崩れ落ちそうなほど疲れ切った様子だったが、チヒロはミレニアムまで歩かせてきたのか?

 

「なんで私が行かないと思ったわけ?ユウカからマキがシャーレで何してるのかと聞かれたらすぐ来るに決まってるでしょ。」とチヒロはユウカに目を合わせ、そして俺の方へ向いて口角を僅かに揚げる。「それに、うちの子たちが殴り込もうとしてるとアレから聞いてね。こうして後輩たちと一緒に頭を下げに来た。」

 

「アレっていうのは?」とユウカは苛立った様子で眉をひそめる。「前も同じことを言っていましたよね。」

 

「あっ。」とシロコは気付いたのか顔が明るくして俺の方へ向く。「この人も知ってるんだ。」

 

“一体何のことやら。”

そう言って、脱線した話を戻す。

“それで、ここにはどうやって入ってきた?”

もう一回、セリナに尋ねる。

 

「先生、何か材料とかは置いてありますか?」とフウカが割り込む。俺が視線を逸らすと、フウカは呆れたようにため息をつく。「せめて冷蔵庫の中にあるものだけでも教えてください。」

 

“あるぞ。”

 

「銃は食べ物じゃありません!」

 

“ならないな。”

 

「コタマ、バグは出さない。ハレ、アテナ3を呼び戻して。」と るチヒロに、不機嫌そうに頬を膨らませるコタマ、特徴的な形をした球状のドローンを呼び戻して不満げに鼻を鳴らすハレ。三人は膝をついて、おそらく"正座"という姿勢になる。

 

「かなしいなぁ…」と言うマキへチヒロが指差すと、その赤毛の身体は震え上がり縮こまる。

 

「確かに悲しいけど、三人にはもう一度倫理というものを叩き込まないとね。」という言葉に、三人はため息をつき、チヒロは本格的に叱り始める。

 

「二週間経ったにもかかわらずにどうして未だに冷蔵庫の中は空っぽのままなんですか?」とユウカから言われ、いきなり俺も叱られている一人になる。フウカはうなずく同意を示していた。

 

「こうなることはもう分かっていましたので──」とフウカが言えば、俺はつい少し不機嫌そうな様子で彼女に振り向く。「私のトラックから材料を運んできますね。」

 

「私もお手伝いしてもいいですか?」とセリナが言えば、フウカは感謝の笑みを浮かべてうなずく。

 

「ん、私も。」とシロコも加わり、三人はトラックから袋の取り出しに向かう。

 

「では改めて、鷲見セリナです。よろしくお願いします。」とセリナは笑顔で礼をする。フウカはそのことに気づき、顔を明るくする。

 

「あっ、初めまして、愛清フウカです。えっと…」とフウカも同じように挨拶しますが、途中で言葉が途切れる。

 

「砂狼シロコ。」と言って三人は歩き出す。

 

すぐさま俺はカメラを確認すれば確かにそこには姿が映っていた。何事もなかったかのように歩いていて、それがショックだった。

“なんで──?”

 

「せ~ん~せ~い~」とユウカの前髪で目元には影が出来ていた。「何をこそこそしているんですか?」

 

“まあ…色々あって…”

なんとかやり過ごそうとするが、ユウカに睨まれる。

 

そしてユウカは心が折れたように、少し傷ついた様子になる。「先生、私たちのことが信じられないのですか?」そして落ち着かない様子でこう呟く。「私のことが信じられないのですか?」その声に込められた痛みや不安が、俺の胸にも突き刺さる。

 

“いや、そういうわけじゃないんだ。皆は本当に頼りになる。でも…そうだな、確かに大切なことになっているが…まあ、それが同時に俺の大きな弱点にもなっている。”

息をひそめてそう伝える。

“君は俺に知らせずに監査に行かせた。君が更なる厄介事に巻き込まれてしまうと俺は考えたせいで、チヒロが気付くことになった。多分、君にぞんざいに扱われていると思ったのだろう。”

 

「そう…ですか…?」と驚きと同時に嬉しさや好奇心が見えていた。「私のために…?」と小声で呟く。せわしない様子で身体を動かし眉をひそめ、やがて笑顔になれば、手を頬に当てて無邪気な微笑む。その愛らしい仕草に俺も釣られて微笑んでしまう。

すると突然、ユウカが頬を手で叩目が大きく見開かれ、俺は驚いてしまう。その後激しく首を振りながら俺の方を向く。「それで、大切なって言いかけてたのは…」と恥ずかしそうに尋ねる。

 

“それは…”

言葉を切る。どう答えればいいのか分からない。

“俺に置かれた特殊な状況のことを考えると、あれは俺が生きていく上では大切なものだからだ。”

かなりぼんやりとしたISACの説明になったが、ユウカには十分理解できるものだった。

 

喜んではいなかったが、それでも受け入れたようでうなずいた。「分かりました。」

 

“ありがとう、ユウカ。”

俺が微笑むと、ユウカは腕を組みながら鼻を鳴らしてそっぽをむく。顔はほんのりと赤くなっていた。

 

「なら、これからは私をいっぱい呼んでくださいね。あと──」とユウカは俺のデスクの上に山積みになった書類を見つめる。「どうしてここまで溜め込んでしまったんですか?」

 

“逆に迷惑をかけてしまうんじゃないか?”

そう尋ねるが、睨まれたので両手を挙げる。

“分かった。必要になった時に呼ぼう。”

 

「こんにちは、先生。」とチヒロが生気のない後輩三人を連れてくる。「紹介し忘れていたけど、以前から悪い意味で先生のお世話になってもらったこの三人が私の後輩。」

 

「先生が送ったメッセージが気になって見ようとしただけです。」とコタマが呟き、ハレは視線を逸らす。

 

「そうそう、ちょっと気になっただけだよ。」とマキが言えば、チヒロはため息をつく。

 

「こんなふうに、分別がついてない子たちだけど──」チヒロは後輩たちに視線を向ける。「左から、音瀬コタマ、小鈎ハレ、そしてもう既に会っているけどマキ。」

 

「子供扱いされてる…」と不満を漏らすハレ。「名前ぐらいは自分で言えるから…」

 

「そうだけど?」と後輩たちを鋭く睨むチヒロ。「諦め時なんて子供でも分かる。」

 

“もういいだろう。”

そう言って眉を上げて俺に振り向くチヒロを落ち着かせる。

“もう懲りているようだしな。”

 

「変に甘やかさないでちょうだい。」チヒロの声には苛立ちが滲んでいた。「逆につけあがるようになるから。」

 

“もういいだろ、な?”

俺は肩をすくめる。

“特に何か盗られてはいないし。”

 

「確かにそうだけど…」とチヒロは顎に手を当て、後輩たちの方を向く。「仕方ない、先生がそう言うのなら、今回だけは大目に見てあげる。いい?」

 

「やったー!」とマキが飛びあがり、他も立ち上がるがマキはチヒロに肩を掴まれる。「先生サイコー!」

 

「でも…」とチヒロの握力が強くなり、マキの表情は青ざめていく。「あの言い訳はユウカが来るまでは巧かった。改めて、倫理規定、特に超法規的機関への潜入時での行動に焦点を当てて、確認をするために──」三人は再度跪いた姿勢に戻り、今度は両手を上げていた。チヒロは俺に顔を近づけてこう聞く。「先生、何かいいお仕置きのアイデアはない?」

 

“武器庫にある弾薬を手作業で一つずつ数えさせる。それほど長くは掛からないがつまらないぞ。”

そう言うと、チヒロはうなずく。

 

「ありがとう。」と言ってチヒロは後輩たちへ振り向く。

 

「ただいま。」と食材が入ったバッグを持ったシロコが戻り、フウカ、セリナも後ろに続く。

 

“おかえり。”

背もたれに背中を預ける。

“フウカが作り終えるのを待つしかないみたいだな。”

半分残ったレーションバーを目にやり、手に取ってゴミ箱に捨てる。

 

カクテルとBSAVを接種したおかげで、体調を崩すことはほとんどなくなったが、それでも癖はなかなか治らない。カップを回し飲みした知り合いが体調を崩した時は強く記憶に残っている。ここから俺の懐疑心が大きくなっていったのだろう。

 

そうしてシロコは俺の前で前のめりになり、両手を後ろで組む。「先生って今忙しい?」

 

“いや、忙しくないぞ。”

そう言って時計を見る。

“フウカがご飯を作り終えるまで待たないといけないから仕事に戻ろうとしてたところだ。どうして聞いたんだ?”

そう尋ねると、シロコの視線はユウカに向けられ、面白そうに見つめた後、再び俺の方へ戻る。

 

「少し訓練をさせてほしい。」と尋ねられ、俺はしばらく考えて肩をすくめる。

 

“ああ、俺も運動しないとな。”

そう答え、ジムへと歩く。シロコも俺の後についてきて、ユウカは他と一緒に書類整理を始める。

 

そして俺たち二人は動きやすい服装に着替え、マットの上で向かい合って俺は軽くストレッチをする。

“では、始めるぞ。”

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