The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.18-03 シャーレ ジム

シャーレ武器庫にて、紙をゆっくりとめくる音が響き渡る。チヒロに監視されながら、後輩たちは中型の弾薬箱に入った様々な自治区からの武器やメーカーが入り混じる多種多様な口径を数えていた。

 

そう、三人は手作業で弾薬を一つずつ数えなければならなかった。

 

「うあー!」と唸り、背中を丸めるマキ。「つまんなーい!なんで先生はスキャンしたりして自動化しないの?」

 

「それだと"お仕置き"にならないでしょ。あと、私の分までやりたくないのなら、そのままチマチマ数えた方がいいよ。」チヒロの横にはコタマの無線送信機が置いてあり、ペールブロンドの髪の少女は声にかすかな不満を滲ませながら、それをじっと見つめていた。

 

「先生の声…」と彼女は言葉を途切れさせ、ハレの方をちらりと見る。

 

「遂に幻聴が…」と言うハレだが、コタマの目つきは鋭くなる。

 

「いえ、実際にマスクを外して自己紹介をしている先生の声が聞こえてきます。先生はシャーレで多くの人と関わっているので、上手くタイミングが合えば満足できるものが録れるはずです。」

 

「そうだね。」とハレは答えると、一瞬よろめいて瞬きをする。「うぅ…エナドリ切れが…」

 

「あと、音楽を聞くのも好きだとヒビキから聞きました。」とコタマは付け加え、ハレとマキは動きを止める。

 

「それってつまり…」とマキは目を輝かせながら、次第に笑みを浮かべていく。

 

「もしかしたらキヴォトスの外の歌を歌うのかも。」と言うハレ。

 

「そう、先生の歌声が生で聞けるのかもしれません。」と目を輝かせるコタマだが、ため息をつく。「…あのファイアウォールを突破出来れば、の話ですが。」

 

「あのファイアウォールなら私も見たけど、突破できるのはせいぜい部長ぐらいだね。」とチヒロが喋ったことに三人は驚く。「はい、作業に戻る。」

 

頬を膨らませた三人は作業に戻るが、見慣れたドローンが飛び上がり、ハレはそれに興味を引かれる。「アテナ3?」

 

そしてホログラムが表示される。ノイズが走るそれに、ハレはため息をつき、万が一よろしくないものが表示された場合の為に備えて、トラブルの種になり得るドローンの電源を切る準備をする。

 

が、表示されたものはむしろ有益なものだった。その拍子に彼女は弾が半分入った弾薬箱を倒しかけるも、なんとか支えながら必死に画面をチヒロから隠す。「どうしたの?」

 

「いえ何も。」と素早く答えるハレ、間一髪で止めた箱へマキは苛立った様子で向き、コタマは不思議そうに彼女を見つめる。チヒロは不審に思ったが、特に気に留めることはなかった。

 

そしてマキはハレへ睨む。「ちょっとちょっとちょっと!!最初からになるところだったじゃん!」

 

唇に手を当て、ハレは周囲を見回す。アテナ3が近づくと、そこに表示された情報を他の二人も興味深そうに覗き込む。

 

「おー…」と呟くマキ、コタマも思わず喉を鳴らす。

 

そこにはバスケットボール用の短パンと白シャツを着たマテオと、ショートパンツとタンクトップ姿のシロコがマットの上で立っており、傍らには救急箱を持ったセリナがいた。二人はぐるりと回って間合いを取っており、ヴェリタスの部員たちは鍛え上げられたマテオの肉体をじっくりと観察していた。

 

筋肉が伸び、幅広でありながらも細身の彼はマスクをつけたまま肩を回し、足の位置を調整する。動きに合わせて部位が強調され、三人のハッカー少女はその姿を興味深く眺めていた。

 

その時、シロコがハイキックを放つ。だが遅く、マテオは素早く間合いを詰めて彼女の軸足を刈り取り、マットへと倒す。そして馬乗りになれば、三人の妄想は過酷なものへと盛り上がる。

 

そしてマテオは彼女を起き上がらせる。

“ローキックの方が早くて楽だ。”

 

「どうやってするの?」と興味深そうにシロコは耳をぴんと上げ、マテオは一歩退く。

 

“構えてくれ。”

シロコは構え、同じく構えるマテオを見る。そして彼はローキックを放つ。

“こうだ。ふくらはぎか、ふとももに打ち込めばかなり効くぞ。”

 

「ん。」と理解してうなずくシロコ。「もう一回。」

 

“分かった。試しに防いでみてくれ。”

そして二人は近づき、互いに間合いを測りながら構える。

 

足を捻り、シロコはキックを放つがそのまま倒れ込み、肌同士が打ち付け合う音が響き渡る。マテオに蹴られたふくらはぎを手で押さえるシロコに周囲は衝撃を受け、マテオ自身も心配していた。

“くそっ──すまない、大丈夫かシロコ?”

彼がそう尋ねると、彼女はゆっくりと親指を立てる。

 

「…大丈夫。」と彼女は手を放し、セリナはすぐに駆けつけて状態を確認する。

 

「…軽い打ち身ですね。大丈夫です。でも、先生──」とセリナは大柄な男へ振り向き、指差す。「手加減はしてくださいね。」

 

マテオは頬の横を掻き、セリナは叱り続ける。彼の先生は皆厳しく、たとえ放つ機会があったとしてもそれは生死を分ける状況下であったため、"足をへし折る"か"痛い目に遭うぞ”という両極端なものになりやすかった。

 

“ごめん。”

彼は後頭部を掻く。

“次からは気を付ける。”

 

「気をつけてくださいね。」とセリナは伝え、シロコは起き上がって足を回すとうなずく。

 

「ん、もう一回。」と彼女が言えば、すでにシロコの頑固さに慣れきっているのかセリナはため息をつく。

 

「分かりました。」とセリナは言い、マットから立ち上がり、マテオはため息をつく。

 

“本当に大丈夫か?”

マテオは尋ね、シロコはうなずく。

 

「ん。」と彼女は再びうなずき、マテオはため息をつく。

 

そうして訓練は続いていき、シロコは驚くほどスムーズに内容を吸収していくと同時に、先生と一緒に過ごす時間を楽しんでいた。

 

一方、様子を見に来たユウカは、二人を羨望とわずかな嫉妬の入り混じった目で見つめながら、時折マテオの体つきにも目を向けていた。セリナもたまにやってしまうことで、医療的処置が必要でない時にはとりわけ無意識にやっていた。この中で一番、人体の構造を理解している彼女にとってはむしろ楽しいものとなっていた。

 

そしてヴェリタス、彼女たちはもしもあの時のシロコが自分だったらという妄想をしていた。ただし掴まれる場面はなかったが。

 

さて。

 

「ねえ。」と声がする。三人は凍り付き、ゆっくりと振り向く。赤くなっていた顔は一気に青ざめ、チヒロは失望していたが、頬はかすかに赤くなっていた。「三人とも何をしてるの?」

 


 

フウカの「ごはんですよ!」で訓練は一旦中止になった。自分の匂いを嗅ごうとしたのを慌てて隠そうとするシロコを見た後、俺は急いでシャワーを浴び、食堂へ向かう。すると、誰も俺の方を見ようとしなかった。

 

全員いる。そして俺たちを待っていた。疲れ果てていたヴェリタスさえも、誰も俺に目を合わせようとしなかった。

 

“どうかしたか?”

そう言って座るとフウカが料理を運んできた。ミートボールスパゲッティとコーラで、缶を開けると、炭酸が勢い良く抜ける音に満足感を覚える。

 

「いえ、何でもないです。」と真っ先にフウカが言い、他はうなずく。そして配膳を終わればフウカも加わる。

 

肩をすくめてマスクを外して横に置く。ハレ、マキ、コタマにじっと見つめられる中、俺はスパゲッティを食べる。やがて緊張を解けたのか、会話を交わし始める。

 

「そういえば昨日ユウカが作戦に参加したって聞いたけど、もしかしてアビドス関係のことだったりする?色んな噂とかを聞いたけど、特にカイザーについてのこととなれば。」とチヒロ

 

「ん。」とシロコがうなずく。「カイザーを追い出して自治区を取り戻した。」と目を輝かせて誇らしげに言う。

 

「やっぱり噂通りだね。」とチヒロは俺を見る。「先生は非常に厄介な敵を作ってしまったようだし、シャーレに対しても同じ扱いみたい。」

 

「あのPMCは特に何ともなかったよ。」とシロコはどこか意味ありげな表情で言う。「特に先生にとっては。」

 

「もしかしてあの動画のこと?」と顔を上げるマキ。「私も見たけどアクション映画みたいだったよね!」

 

「そうだね、脅しのつもりで投稿されたようだけど、逆効果になっているみたい。」と指摘するハレ。「あと、思わず目を疑うようなコメントがいくつか。」

 

“例えば?”

そう聞くと、ハレが携帯電話を見せてきてそのコメントを指差す。

 

「薬を必要としている人に渡してくれた。」とハレは読み上げ、俺は肩をすくめてうなずく。確かに渡した。エージェント時代も同じことをやったことがある。食べ物、弾薬、薬等々、どんなものであれ、俺は喜んであげた。道案内もだ。時には修理を手伝ったこともある。

 

「じゃあこれは?」とマキがテスト用に使う弾薬をあげてくれたというコメントを指差し、俺はうなずく。あのことはちゃんと覚えている。

 

「これはどうですか?」とコタマが、自転車のチェーンを修理してくれたというコメントを指差し、再びうなずく。

 

「この様子だとシャーレのイメージは超法規的機関じゃなくて何でも屋ね…」とユウカが呟き、俺は肩をすくめる。

 

“ずっと前からやってきたことをしているだけだけどな。”

つい声に出してしまう。

 

そして雑談は続き、そうして食べ終わる。

 

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