The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.18-05 カジノ

カジノは現金ではなくチップを使うのが普通だ。だが裕福層向けに特別なものを展示している所もある。車がその一例で、高級車が展示されていることもある。

 

シロコによれば簡単とのこと。出入りに多少の時間が掛かるが人手は要らない。

 

だが一つ問題がある。

 

“どうして散歩に行くが強盗に行くになるんだ?”

小声で呟く。

“ありえない。”

 

今の俺とシロコはカイザーPMCから提供された服で変装している。いきなり二人が欠勤になったのは残念だ。

 

とにかく、手口はシンプルで、展示車の一台を強奪して何食わぬ顔で去るだけだ。現在、俺は車のカギ目当てで警備室にいるが、そこには下っ端一人が昼寝をしているだけだ。一方でシロコはカードリーダーを壊して保管室で待機していた。

 

のこぎりで切断して開けたようだった。

 

カギを見つけ、素早くシロコがいる場所へ向かって彼女に続いて部屋に入る。

 

ドアを封鎖した後、静かに素早く、追跡装置や爆弾といった車内に仕掛けられた危険物を全部取り除いていく。いくつか他の車からも取り除き、そのパーツを流用してさらにあの車にあった爆弾の一部と無線機のパーツを使って、EMPのようなものを作った。まあ、実際は車のバッテリーに接続したジャンプケーブルで、別の部屋にある発電機へ接続する準備をシロコがやってくれた。

 

車がエンジン音を響かせながらゆっくりと始動する。

“やるぞ。”

そう言ってマスクを着ける。

 

「ん。」とシロコも同じくマスクを着ける。

 

やがて照明が消え、いよいよ本番が始まる。長いトンネルを素早く抜けてシロコの銃声が聞こえる中、先に外へ出る。シロコも後に続き、車に乗り込んだ。これまでに経験した中で最もスムーズにいった強盗になった。

 

どちらもマスクを外さず、シロコは周囲を見回す。「右に曲がって。」と指示通りに俺は運転していく。「アビドスの近くの車庫があるからそこに隠せられる。」

 

“ずっと気になっていたんだが、なんで車なんだ?”

 

「ん?」

 

“そういうのには興味がなかったようだし、狙うのはいつも銀行で、それに変装する案は俺が考えたものだ。”

そう言うと、シロコは一瞬言葉を止めて視線をそらす。

 

「みんなを助けてくれたお礼。」

 

俺は片眉を上げ、思わず口に出す。

“つまり、俺が怪我を負うか逮捕されて地位を失う可能性がある強盗に誘ったのは君なりのお礼の仕方だったと。”

 

「ん。」とシロコはうなずいて俺はため息をつくが、笑って手を伸ばして狼少女の頭を撫でる。

 

“なるほど。ありがとう、シロコ。”

そう言うと、シロコは俺の手に頭をすり寄せる。

“それに標的の選び方も見事だったぞ。”

 

カイザーの敗北は俺にとっては勝利そのものだ。

 


 

アビドスの端にある古く寂れた車庫に車を停めた後、そこで別れることになりシロコは家に帰って俺はシャーレに戻る。

 

ちなみ写真を撮ったが、シロコのは鮮明に写っている一方で、俺のはぼやけていた。なおシロコはこのことを知っていない。

 

アヤネはひどく、それはもうとてもひどく怒り狂うことになるだろう。

 

こんな狂った世界で、ましてや狂った奴らに囲まれたまともな人にとってはとても辛いものだ。

 

それはそれとして、シャーレに一旦戻り、最後に残ったやる事のためへ足を運ぶ。温泉開発部だ。

 

近くの山々にいるはずだ。徒歩だと長いがバスならかなり短い。バイクがあったら更に短くなる。何か見えてくる前から工具の音や爆発音、車の駆動音が聞こえてきた。そしてそこでは部活動が活発に行われていた。

 

入り口に着き、帽子を脱いで生徒たちからもらったヘルメットを被って彼女たちへうなずく。

“こんにちは。”

 

『こんにちは先生!』と一斉に挨拶をして一人が喋り始める。「現場の確認に来たんですか?」

 

“そうだ。イオリがかなり怒っていたぞ。”

そうつぶやくと部員たちは興奮した様子で互いに視線を交わしていた。

 

「あの紙見てた時の顔がほんとのほんとに凄かったんですよ!」「顔真っ赤っかでした!」

 

「そう…だね!こんな感じで…」と口を止めると、ふくれっ面になって誇張した歩き方で動いて途中で止まる。「ねっ!」

 

「おかげさまで!」と他が言う。「平和な温泉開発がやっとできるようになりました!ありがとう先生!」

 

『ありがとうございます!!』と部員たちは声が揃えてお礼を言って、同時に頭を下げる。少し気恥ずかしくなってきた。

 

“大丈夫だ。アビドスのことで手伝ってくれたから、俺が返せるお礼をしただけだ。”

 

「そうだ、カイザーPMCと戦ってる動画見ましたよ!」と一人が言えば周りはうなずく。「爆薬の置き方凄かったです!」と彼女が褒めると、周りもうなずいて同意を示す。

 

“まあ、そこは俺の先生から教わったからな。”

他の先生同様、ケルソは爆発物周りの知識について惜しげもなく教えてくれた。

 

しばらく話をした後、カスミとメグに会わせてもらうために内部へ入らせてくれた。

 

“冗談抜きで本当にどうなっているんだ!?”

入った時に周囲を見回せば、衝撃を受けて大きくこう叫んだ。

 

施設が完成間近だった。基礎部分は既に終わっていて、今は建物の骨組みが作られている段階だ。部員の中には楽しそうに歌いながらフラットベッドから建材を取り出して設置していた。これまで都市開発系に興味を持ったことはなかったが、父は建設業で働いていた。これほどまでに早く進んでいたのは予想外だった。

 

「あっ、先生!」というメグの声が聞こえ俺は振り向くと、目の前にはシャツに押さえつけられている二つの宝玉が見え、一歩下がると興奮しきった赤毛が俺の腕に抱きついた。「やっほー!」

 

どうして俺はアーマーを着てないといけない?俺なんてほとんど──

 

そんな邪な考えは脇に置いておいて、メグに微笑む。

“メグ、会えて嬉しいぞ。調子はどうだ?ひどくボロボロになっているが。”

 

「全然平気だよ!」とメグは腰に手を当てて胸を張る。「温泉を掘るチャンスなんて逃せないどころかもう掘っちゃった!あと部長が、先生が頼んだお部屋用の道具がいつ送られてくるのか気にしてたよ。」

 

“こんなに早く進んだなんて思わなかった。凄いな。”

そう褒めるとメグは顔を赤くして元気いっぱいの笑顔になった。

 

「ハーハッハッハッハーッ!」と声がして、見覚えのある顔──カスミを見かける。「こんにちは、先生。」

 

“カスミ。”

そう言ってうなずく。

“ここの立地はどうだ?”

 

「良いぞ。」と顔をしかめる。「ここからの景色は良いものだし、泉質には特に問題がない。それに足湯用のスペースも確保できた。だが更に良くすることも──」

 

“都市インフラを破壊してないといいが。”

話を止めさせる。

“俺や大勢の人に迷惑が掛かってしまう。でも──”

口を止めて、建物の骨組みを見やる。

“ほぼほぼ完成しているな。”

 

「うむ。」とカスミの笑顔はすぐにいたずら心に満ちたものに変わる。「そういえばあの書類を見せつけられた時のイオリの顔、先生にも見せてやりたかったよ。とってもキュートだったぞ~」

 

“それなら俺も見たぞ。ヒナとチナツを連れてオフィスに突っ込んできたぞ。”

そう言うと、カスミの目が大きく見開かれる。

 

「ヒナが!?」と驚いたカスミは周囲を見渡して俺は困惑する。

 

“もういないぞ。もうゲヘナに戻ったはずだ。”

そう答えると、一安心した様子になる。

 

「そ、そうだな…」「メグが言ったように、先生が増築したい部屋用の建材を送ってくれると助かるぞ。」

 

“分かった。なるべく早く送る。”

 

「素晴らしい。先生が希望するなら明日で準備が整えられるはずだ。」とカスミは笑顔で言う。「その後は検査をして、晴れて一般公開というわけだ!」そして一瞬だけ瞬きをする「ただし、シャーレ用の部屋と先生の隠し部屋は除く。」

 

“よし。”

そう言って二人の髪を撫でる。

“本当によくやってくれた。”

 

「えっへへへへ~」

 

「感謝するぞ。」

 

しばらく話をしていると、日が暮れる時間になった。そして彼女たちのために、俺は父が昔働いていた現場の主任のように飲み物を渡した。

 

喋って休憩すれば、コーラ缶をポケットへ入れたまま帰る。

 


 

ため息をつき、椅子に腰を下ろしてここ数日間の出来事を振り返る。混沌だらけだった。

 

だがそれと同時に…

 

微笑み、満足感を覚える。

“そうだな、きっとここを好きになれただろうな、ママ。”

 

俺は多くの人を失った──ドルインフルのせいで。そして自分には重すぎる責任を背負いながらも、それでも本来いるべきではない場所にある自分の意味を探し、そして成し遂げた。

 

俺は成し遂げた。

 

物語のヒーローは結末が見えない。それでもただ信じていくしかない。

 

考えの矛盾に気づき、普段の憂鬱な気持ちとは裏腹に思わず笑い声を上げる。それでいい。明日になれば元通りだ。いつものことだ。

 

そして俺はやっていく。

 

明日が来る。俺はそれを迎える。良いことや悪いことがあっても、楽なことや辛いことがあっても、いつものように、それは価値のある一日だ。

 

シーシュポスは幸せであると想像しなければならない。

 

 

まあいいか。俺は哲学者ではない。俺はエージェントであり先生だ。そしてこの町はその両方を必要としている。俺の経験は不十分だが、独りじゃない。

 

ふと、俺の上で横になっていびきをかいているホログラム姿のアロナを見る。その間にISACは報告書等を読んでいた。

 

とはいえアロナのように俺もそろそろ寝るべきだ。

 

そうして、オフィスの明かりを消して寝る準備に向かう。

 




[訳者あとがき]
さてこの章、私にとっては特別な章となっています。
なにせ
Hello!
I found out your novel from a Division-based BA fan game's discord server.
Since it is great, may I post a translation of your novel into Japanese on another site?
I am only halfway through chapter 2, but if you allow me to do so, I will start posting it once I have completed chapter 3.
と去年の4/7に翻訳したのを載せていいかというコメントを投稿したのですから。時が経つのは早いですね。
次回は2/6に投稿します
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