The Divide   作:粋刺@翻訳

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[作者まえがき]
翻訳者の忍耐強さだけでなく、この作品を楽しんでくださった方にも感謝を伝えます。The Divideは高校の最後の学年に執筆を始めて、大学時代も続けてきた作品です。(授業に集中する代わりにこの作品を書いていたため、何度か単位を落としそうになったこともあります)。更に海外留学中にも執筆を続けていました。もっと詳しく話したいところですが、簡潔にまとめると、The Divideは私にとっても非常に楽しく、そして楽しんでくださる読者の存在が何よりの喜びでした。エージェントの皆さん、先生の皆さん、どうかお元気で。

[訳者まえがき]
↑の原文をディスコードのDMで受け取りました。なんだかんだで一年近く経ちましたがこれからもお願いします。


Chapter 19:至難の試練
Chap.19-01 シャーレ


ドアの製作はそこまで難しくはない。特に今やろうとしているものはそうだ。この手のドアはセーフハウスではよく取り付けられていて、キヴォトスのセーフハウスにも使われている。だから簡単に終わったので、カスミに送るついでに温泉開発部のためにスナックも用意した。

 

一旦シャーレのビルに戻り、山海経から来る梅花園の子たちを迎えるための服を選ぶ。そこの先生たちも同伴するだろう。

 

そう、先生たちだ。"たち"だ。ロボットや非常勤講師ではなく、先生がいると事実がある。未だに信じられないような話だ。どうして誰も教えてくれなかった?

 

頬を膨らませる。女性には似合う仕草だが、男性の俺には到底似合わない。シャーレ用のドレスシャツを黒シャツの上に羽織り、首元のボタンは留めない。そして「ターディクレイド」アーマーシステムを着てスラックスを履く。アーマーを整えると、太ももにはピストル用のホルスター、そしてマスクを着けてグローブを着けた両手を叩く。

“よし、やるぞ。”

 

どのみち、俺よりも大人というものをよく知っているはずだ。身だしなみはきちんと整えなければ。

 

母もきっと喜んでくれる。

 

さて、子どもがここに来るということはやんちゃしたがることになる。午前はフルーツ、午後にはペストリーなどをカフェで用意できるようにしておくべきだろう。そう考えながらカフェに向かえば、目の前にいた人物が俺と共に立ち止まり、頭にある片方しかない翼のはためきから驚いていたのは明らかだった。「先生?」

 

“スズミか。”

笑顔でそう呟く。

“調子はどうだ?”

 

スズミは気持ちを落ち着かせて、うなずく。「元気です。最近時間が空いてきたので、シャーレへお伺いしにいくついでにカフェのスイーツも食べてみることにしました。」

 

ため息をついて、俺は思わず頭を掻く。

“そうだな、出来れば案内をしたいが、今日は忙しい日になりそうだから出来ない。シャーレの皆ももう仕事しているからな。”

 

「ん?」とスズミは興味深そうに首をかしげる。「何かイベント等があるのでしょうか?」

 

“そうだ。”

スズミの方へ向く。

“確かそれについての投稿をしていたはずだったぞ。見なかったのか?”

 

スズミは携帯電話を取り出し、慣れた手付きでタップしていけば頭の翼をはばたかせ、頬は僅かな赤みが差していた。「あっ、いえ、SNSはあまり頻繫には見ない方ですので…」と少し恥ずかしげに言った。

 

“誰でもそうだ。”

そう言って、壁にもたれかかってため息をつく。

“SNSは本当に面倒くさい。ニュースについて話すとキリがなくなる。”

 

幸い、アロナとISACが投稿を代わりにやってくれている。ほとんどはアロナだがISACは"オフィシャル"な内容を投稿していて、地域の報告内容のまとめや監視カメラの映像と照合したりして、戦闘支援AIとして活躍している。一方のアロナは敏腕秘書としてやってくれている。

 

「先生のような立場にいると時事問題について積極的に目を通していると思っていましたが…」とスズミは言って、俺は肩をすくめる。

 

クロノスや他のものよりも、ISACの報告書の方がずっと信用できる。

 

これについては何度でも言える。それ程ISACは信用できる。だからどんな理由があっても生徒のプライバシーを侵害することはあってはならない。多種多様なことが出来るが、だからといって濫用していいということにはならない。

 

たとえハンデを抱えていても、有能極まりない戦闘支援AIは誰にも止められない。

 

“情報は俺なりのやり方で集めている。”

少し胡散臭い感じになってしまった。

“さて、今日は山海経の梅花園の子どもたちが施設の見学をすることになっているが、施設はそのまま開いているぞ。”

 

もちろん一部の施設は見学できない。例えば武器庫にあるワークショップや"俺の"部屋にもなっているクラフトチェンバーが置いてある部屋や他にもある。

 

「そうなんですか?」とスズミが言えば俺もうなずく。「では頑張ってくださいね。本当は私もお手伝いしたいのですが…」と言葉を途切らせると、頭の翼で頬が僅かに赤くなった顔を隠す。

 

“子どもは得意じゃないと?”

そう言うとスズミはうなずき、顔は真っ赤になっていた。俺は苦笑いを浮かべて首を縦に振る。

“分かるぞ。”

 

「先生も苦手だった頃があったのですか?」と思ってもなかったかことかのように尋ねられる。

 

“まあそうだな。”

そう答えるが、変な答えだった。怖いと言われたことがある。それも変だが。とはいえスズミの気分は良くなかった。そしてある考えが頭に浮かび、俺は笑顔を浮かべる。

“そうだ…ちょっと手伝ってくれないか?”

そう尋ねると、スズミは興味深そうに身を寄せてきた。

 


 

「みんなー!準備は出来ましたー?」星と月の装飾が施された教室に、大人びた声が響き渡る。教室内の家具はすべて、幼稚園児の小さな体に合わせて一回り小さいもので、数点は先生──というよりは教官向けである。

 

子どもたちから見ても、春原シュンの興奮は見て取れた。キヴォトスの中でも、彼女はロボットではなく、かつ生徒を兼ねている先生という希少な存在であった。「施設の中ではお行儀良く動いてくださいね。」

 

「はーいシュンせんせー!」と子どもたちは返事をする。先生の熱が彼女たちにも移ったのか、普段はまっすぐ一列になるはずが、初めは多少ジグザグになり、そしてその後は三列になるが線というよりかは文字のような形だった。

 

春原シュンは豊満な若きレディ(?)である。頭部には黒い耳、黒髪の長髪はポニーテールにまとめられ、肌が露出している側部からは花が刺繡された黒のチーパオ、そして彼女が動く度に、頭上の四つに分かれた青いヘイローと肩に掛けられた88式狙撃歩槍(QBU-88)が動いていた。

 

「えっと先生のとこに行くんだよね。」と一人が喋り始める。

 

「2メートルよりもおっきくていろんな銃をもってるんだって!」と他の一人が言えば、周りは呆れた表情になる。

 

「銃なんてみんなもってんじゃんばーか。」と一人が自分のカバンに付けてある銃を指差す。

 

「ちがうよ!ぜんぶでっかいんだよ!シュン先生やせんぱいたちみたいに!」と彼女が言えば、子どもたちの目は驚きで大きく見開かれる。「それにそれがみっつもあるって!」

 

「かばんから何でも出せれるらしいよ!」と他の子どもが言えば、彼女たちの目は輝く。

 

「ドラえもんみたい!」

 

「ドラ先生だ!」

 

「あいさ!」

 

「その青い猫ちゃう!」と一人がツッコミを入れ、どっと笑い声が起きる元気いっぱいな様子の子どもたちを見てシュンは微笑む。どのみちきちんとまとめないといけないとは思っている。

 

ただし、妹については現時点では問題ない。

 

「皆さん、忘れ物がないかをしっかりと確認をして、朝ごはんもちゃんと食べておいてくださいね。」とシュンと同じ口調で白髪の少女が言う。四つではなく三つに分かれた青いヘイロー、白いアサルトライフルは背中に掛けられていて、チーパオは袖がなく、白いフリルスカートを履いていて、肩には黒いジャケットを羽織っている。オレンジ色の瞳を細め、頬を膨らませたその表情は彼女が考えるレディがとるポーズである。

 

「わかったココナちゃーん!」

 

「ココナ教官です!」彼女の子どもらしい表情が強くなっていけば、子どもたちは笑って走り出し、そして止まる。彼女は息を吐く。「いけない…つい怒っちゃうところだった…」

 

「まあまあ~」とシュンは妹の隣に歩み寄る。「みんなワクワクしているだけですし、そっとしてあげましょう。」

 

「で、でも遅刻したら困らせるの。あの人も私たちと同じ同僚なんだから。」

 

手で口を覆いながらシュンはふふっと笑い、手をココナの頭に乗せて優しく撫でる。「ワクワクしているのは子どもたちだけじゃないみたいですしね。」

 

腕を組んでそっぽを向き、ココナはふんっと鼻を鳴らす。「そもそも先生に会いたいって言い出したのはどこの誰かさんなのか…」

 

「まっ、私なんですけどね。」とシュンは認めて笑う。「やり取りをしてみたら興味が湧いてきちゃって…実際にお会いしたかったけど、中々忙しかったようで…」と頬を膨らませる。

 

そんな姉妹が話している間、子どもたちはあることを企てていた。

 

「先生って強いの?」

 

「うん。すごい数の兵隊さんに勝ったって。」

 

「ほんとぉ?でもあたしたちみたいにヘイローはないよね?」

 

「でもあーまーがあるじゃん!」

 

「それだけでいけると思う?」

 

「しらなーい。」

 

「じゃあびっくりさせちゃおう!」

 

「いたずらする?」

 

とあるものが姉妹たちの心に浮かぶものの、すぐに否定された。だがそれは──その種は既に多くの子どもたちの心に蒔かれていた。

 

その無邪気さで、子どもは脅威になり得る。

 

だからこそ、末恐ろしい。

 

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