The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.19-04 シャーレ ガレージ

最初は航空機と車両のほとんどが停められているガレージだ。シャーレのエンジニアはここで働いている。

“ここはシャーレの乗り物を整備する場所だ。普段からエンジニアとメカニックはこの辺りにいて、シャーレが使う乗り物や他の人が使う乗り物を整備している。”

 

一人が手を挙げて俺はその方に指差す。

“どうぞ。”

 

「えーっと、他の人が使う乗り物っていうのはどういうことですか?」とその子が質問し、俺はうなずく。

 

“他の学園の生徒もここで乗り物の燃料を入れたり、直したりする。シャーレは中立な所──つまりは生徒にとっては自分の学園のところに行くよりもここに行った方が、手に入りやすいパーツがあるということだ。あと、時間がある生徒は、誰かから頼まれた修理をしていることもある。”

大型機器のメンテナンスをしているエリアは極力近づかないようにしながら、俺は子どもたちを連れ歩きながら説明する。

 

確かにシャーレは様々な乗り物が使えるが、どちらかというと戦闘用よりも輸送用が多い。数台の戦車や他の戦闘用の車両は恐らくは生徒個人や学園が所有している。とはいえ他の学園へ貸し出していたり、メカニックやエンジニアの点検待ちの状態があるせいで、今使える車両は多くない。

 

「点検したり燃料を入れたりするのって誰でもできるの?」違う子が質問する。

 

“すぐにしてほしい場合は完璧にはやれないが、時間さえ貰えたら必要なものは全てシャーレから貰えるはずだ。”

そう答える。シャーレから貰えるのは中々に良い対応と言える。

 

「他にもはたらいている人っていますか?」また違う子が質問し、俺は首を横に振る。

 

“それは整備主任の判断次第だ。”

 

「でも先生って部長でしょ?」

 

“俺は顧問だ。要するに俺がやるのはシャーレがどんなことをやっていくのかを決めることで、全部のことをやるわけではないぞ。”

 

「そうですとも。」と後ろから声が聞こえ、振り返れば整備主任がいた。煤と油にまみれて、歯を見せて不敵な笑みを浮かべ、目元に隈が出来て、目には狂気じみた光が宿っていた。二本の角があり、尻尾が揺れていた。「こちらのボスがね──」と頭を俺の方へ振る。「街がぼちぼちやっていけるように色々としている間に、ウチらは乗り物を万全な状態へと整える。そうすればボスは"場所"とか"時間"とかを気にせずそのままバリバリやっていけれるってわけなのさ。」

 

シャーレ傘下の各部署は最小限の人数で構成されているが、それでも見事にやってくれている。だからこのまま続けていけるように、俺は彼女たちが必要としているものや、時にはただ単に欲しがっているようなものをきっちりと確保するようにしている。

 

「とっても頼りになれそうな生徒さんたちですね~」とシュンが軽く笑って俺はうなずいて同意する。

 

“そうだな。”

子どもたちへ説明する整備主任の様子を見守る。

“皆の助けがなければ、俺は今頃途方に暮れているところだ。”

 

ヘリの動かし方などは分からない。彼女たちはずっと街にいて、シャーレ内で起きる問題を対処してくれているおかげで俺は街と生徒たちのことを心配せずに済む。

 

メカニックの役目──主に車両をいつでもすぐに出せるような状態に整備し、要請があれば他の学園の車両も整備し、空き時間では民間からの依頼を個人で対応しているということを整備主任は子どもたちに説明した。

 

子どもたちがちょっとした授業を受けている間に、ホログラム姿のISACが現れる。想像していたよりも表情はずっと険しく、数秒後にアロナが現れるが、不安そうにはしていなかったが、どこかぎこちなかった。

A エージェント、「ターディクレイド」アーマーシステムの設計図へのアクセスが何者かによって試行されました。

 

目を見開いたまま、俺は自分のバイクが停めている場所へ移動し、少し人目を避ける。

“何者かによって試行されたというのはどういうことだ?アクセス元は?”

 

A アクセス元を特定する前に接続が切断されました。

そうISACは答え、俺を見る。

A 私の制限が緩ければ──

 

“特定できたかもしれない、と。だがどうあがいても特定自体は不可能だ。”

心配されているのはありがたいが、そう遮る。

“きっとミレニアムだろう。設計図はウタハにしか送ってないからな。”

 

S ですがアクセス元はウタハさん本人でもなければ、ウタハさんに紐づけられた端末でもありませんでした。

そう答えたアロナは、考え込むように頬に指を当てる。

S 実にミステリーですね!

 

“違うな。”

すぐに口を挟む。アロナは落ち込み、俺は主任の方を見れば説明が終わるところだった。

“でも、ターディクレイドにはしっかりと目を光らせてくれ。壊れないものではないが、それでも頑丈で勝手に直るから、戦闘では厄介な存在になる。だから悪用されないようにしっかりと管理してほしい。”

 

AS 了解/ラジャー!

二人がそう答え、俺はため息をつく。するとシュンとココナが園児たちを整列させているところだった。

 

シュンは朗らかな笑顔と共に俺に手を振り、ココナは困惑しながら辺りを見回している。そして子供はなぜか無邪気なふりをして俺の近くを見ようとしない。身体中に駆け巡る漠然とした違和感についてもそうだ。

 

一体何が──

 

────グレネードのピンが引き抜かれる音が響き渡り、周囲からは音が全て消え去る。裏切られた感覚が全身を冷たく駆け巡る。そんな中でも俺は手榴弾へと手を伸ばし、俺を止めようとしてくる奴を振りほどこうと──

 

一瞬、本能が身体を上回りかけるが、やった奴の手を掴むだけに留まった。初めてこれに似たことを経験した時のように、首に突き刺すことはしなかった。とはいえその時はグレネードを投げ捨て、死体を撃って確実に息の根を止めて盾として使ったが。

 

依然として"いたずら"を仕掛けようとした小さな腕を掴んだままだったが、身体を駆け巡る震えは止まらなかった。不安と恐怖、そして怒りが毒のように身体を回り、頭の中では俺を殺そうとしてきた奴を完膚なきまで殺し切る方法がいくつも浮かび上がる。

 

だが、しない。本能を抑え、相手が何もできないうちに手を緩める。そして微笑み、恐怖と不安から出る震えを抑えて冗談めかしてこう言う。

“やり方としてはあまり良くないな。危うく怪我をするところだった。”

 

その子の手を放せば、怯えや恥じらいは感じず、少し苛立っていたが恐怖や後悔は全く感じられなかった。その子は自分がやろうとしていることを完全に理解して、うまくいくと確信していた。まるでいたずらしているのを先生に見つかって叱られるような、誰かが傷つくかもしれないというのを全く考えていなかった様子だった。その子自身の認識も、そうだった。

 

とはいえ、俺が傷つくかもしれないと言われて、その子は恥を感じている。手に持っていたのが閃光弾だったことを考えるとなおさらだ。もちろんピンは抜かれていたが、安全レバーは握ったままだったので手を放すまでは信管は起動しない。

 

質の悪いことに、俺はこういった戦術に熟知している。何か渡す時に同じことを違う人から何回もされたことがあるし、戦闘中に子供からこれをされたこともあった。

 

故郷では"残虐行為"とされることがここの子供たちにとってはただの"いたずら"であるのは…

 

不安と困惑で背筋が凍る。

 

ダメなことであると伝えるためにその子供の頬を引っ張った後、集団へ行かせる。感嘆する声と苦しい叫び声が混ざり合い、罪悪感が積み重なるのを感じながら、それでもそれを押しとどめる。

 

まだツアーをしなければならない。

 

整備主任と別れ、気持ちを落ち着けるために少し間を置く。

 

まだ子供だから怒れない。悪気を持たずにやったからだ。俺の故郷の子供たちよりもずっと荒っぽい遊びを、ここの大人たちは許容して、その大人に何年も囲まれて育った。だからといってこの感覚は和らぐわけではない…

 

ここに来て初めて見た、彼女たちの頭上に浮かぶ光輪(ヘイロー)は──聖書で感じたように、まさに異星人(エイリアン)という存在たらしめるものだ。

 

次第にその感覚は薄れるが、完全には消えない。だがキヴォトスに来てからは、なんとか笑顔を作れるようになった。

 

子供たちの相手をする必要がなくなったら、きっとうまくやれる。

 

ドアを開けて外に出ると、目を閉じていても自分の笑顔が分かる。

“じゃ、次の場所に行きたい人?”

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