こんにちは、今日は特別な日です。もしこのタイミングを見計らって無事に書き上げることができれば…
The Divideの日本語翻訳が進行中です!
これは20章にあたり、ワード数、章数ともに、そして人気度においても、現時点で私の書いたファンフィクション作品の中で最長の作品の一つとなっています。初めてファンフィクションに挑戦した時のこと、今では削除してしまったあの作品を今でも鮮明に覚えています。AO3に投稿するずっと前のことで、COVID-19が流行する前のことでした。
追記:忘れていましたが翻訳版はこちらです。ありがとうikishi。
ikishi、翻訳をしてくれてありがとう。他にも翻訳されている作品が気になる方は、彼のcarrdをご覧ください。
さて、今回の作品はかなり短めですみません。次はもう少し長めになる予定です
[訳者まえがき]
名刺と作品置き場を兼ねたcarrdからはハーメルン以外にも訳した作品もあるので良かったら見てください。Ko-Fiに寄付をしてくれたら喜びます。
Chap.20-01 シャーレ
“あっ!”
俺はそう叫び、上半身を起こしながら呼吸を落ち着かせる。首筋に彫られたSHDのエンブレムのタトゥーに手を当てる。リンに首を絞められる悪夢を見たからだ。大きく深呼吸して、再びもたれかかって安堵のため息をついて、手首を上げてスマートウォッチの時刻を見る。
“
そう吐き捨てて、勢いよく前に進んでゴーバッグを手に取る。同時にイヤーピースとスキャンテックレンズを着け、着替えを手に取り、バスルームで顔を洗ってからタオルで体を拭いて、決まった曲で口笛を吹くアロナを睨みつける。
“アロナ、アラームはどうした?”
そう聞くとそのAIは頬を膨らませて腕を組む。
| S もっと寝ていてください先生。まだ早いですよ。 |
そう不機嫌な様子でアロナは言う。
“アロナ。”
俺はため息をついて、頭を掻きながらホログラム姿の幼い青髪の少女へ向く。
“なんで俺が出ていきたがるのかは分かっているだろ。リンが来てしまったら小言を言われて罰せられて、そうしてここでじっとすることになってしまう。それが嫌だというのはアロナも分かっているだろ。”
アロナはしばらく黙り込み、ヘイローが僅かに動く。
| S 分かりました。──ですが! |
頬を膨らませて俺を指差す。
| S 帰ったらしっかりと休んでくださいね。いままでぶっ通しで働いていたのですから、ISAC先輩もちょっーとだけ心配していましたよ。 |
“もとからそのつもりだ。数日間、レッドウィンターでゆっくり過ごして、シャーレに戻ったら次の大仕事がくるまで更にゆっくりやっていくか、もしかすると百鬼夜行で開催される春祭りに行くかもしれない。もちろん、俺の頼れるAIアシスタントが予定の邪魔をしなければの話ではあるが。”
多少の皮肉を交えて伝えると、アロナは瞬きを繰り返した後、恥ずかしげな笑顔を浮かべる。
| S 分かりました、先生。 |
そう言ってアロナは楽しそうに口笛を吹きながら姿を消して、俺はため息をつく。
さて、身だしなみは整えた。レッドウィンターの厳しい寒さを凌げる服に着替えよう。
ISACが表示した温度が正しければ、馬鹿にはできない。予備のスペースブランケットも入れるべきか。
定番の組み合わせで行こう。クローゼットからパーカーを取り出し、シャツの上に羽織る。その上にボディアーマーを装着し、さらにプレゼントとしてもらったフィールドジャケットを羽織る。アレスがM-1965と呼んでいたが、肩には海兵隊の徽章ではなくディビジョンのものが付けられている予備品だった。
アレスのことを思い出したせいか背筋が震える。出会った時が寒い日以外にも、格闘戦やCQBを教えてくれた先生たちの一人だった。決してミスを許さない人物だった。同時に良い友人でもあり、恩師として俺が受けた痛みは貴重な経験で、消して消え去ることはない。
頭を振って、帽子を被ってしっかりと自分の服装、いわゆるセーターを重ね着したようなずぼらな格好をした自分を確認する。
グローブ、帽子、アーマーを確認して、何度か調整する。うなずいてバスルームから出るとゴーバッグ、クエレブレ、レキシントン、アダムの鍵を装着し、最後にマスクを顔に着ける。
ガレージに向かい、バイクにまたがってエンジンをふかす。道案内はISACがしてくれて、前方にはオレンジ色の線が表示され、視界の隅にあるマップにはウェイポイントが新しく追加される。
エンジン音を響かせるとガレージの扉が開き、レッドウィンターへと走る。
さて、まだ完全には目覚めていない俺の頭は、レッドウィンターは直接行けられると考えていた。
だが実際はそうではなかった。キヴォトス全体の面積はアメリカ全土とほぼ同じで、元いた世界の小国並の広さを持つ学園もあれば、都市と同じ広さの学園もあるからだ。アビドスは生徒数が5名と少人数ながらも、テキサス州ほどというのはは大げさだが、恐らくはアリゾナ州ほどの広さである。*1とはいえ、アメリカ合衆国が50の州から構成されている以上、何時間運転しても道路と他の車以外何もないという状況も起こり得る。
これは決して誇張ではない。ドルインフルが流行った時に足止めを食らった観光客もそう言っていた。
イエローストーン国立公園へ行った時のことを例に挙げよう。恐らくアメリカでは非常に有名な観光地の一つで、国外においても知られている。アメリカ国民なら誰もが何かしらの形でその名を耳にしたことがある。場所はワイオミング州で、綺麗で、そして歴史的にも重要だ。
D.C.からイエローストーン、もしくはワイオミング州へ行くとなれば普通は一日半掛かるが、特段問題ないと思うだろう。
ただし、これはドライバーが一回も休まずに運転するか、数時間ごとに交代する場合の話だ。だが一人だけの場合だと途中でモーテルに泊まることができる。そうだろう。
だが違う。何時間走ってもモーテルやホテルが全く見つからないことがある。たとえ見つけても、宿泊費という問題がある。その時は2~3日掛かる。
それでもそこまで深刻ではないと思うだろう。
一つ忘れてはならないこととして、その時はドルインフルの影響によって燃料不足と社会機能が崩壊していた。車はほとんどが錆び付いてそもそも動かない。他の交通手段も同様だ。コミュニティや都市間の通信状態も不安定で、ヘリコプターでも長距離移動だと途中で必ず燃料補給を行う必要があるから信頼性に欠ける。
そのせいで俺は一部を徒歩で、そして燃料を変える必要があって結局は一週間ほどかかってしまった。
とにかく、ブラックタスクがイエローストーンから石油を採掘していたと知った時は酷くムカついた。地元のネイティブアメリカンたちも同様だった。
とにかく、話が脱線してしまった。アメリカは50の州がある一方で何もない地域が長く続くが、キヴォトスはその真逆だ。何千もの学園が大小さまざまなサイズでひっきりなしにあるから、たとえ新幹線の車内からは景色が見えなくても、何もないということは稀だ。
数時間経てば雪が降り始め、目的地に近づいてくると、手に持っていた本を閉じてバッグにしまう。
ロシア──今まで気がつかなくて少し恥ずかしいが、アビドスがエジプトならば、レッドウィンターはロシアだ。電車がゆっくりと停車すれば、到着のアナウンスが流れる。どうやら俺を待っている人がいるようだ。
席から立ち上がり、ゴーバッグを持ってドアへ行く。
そしてドアが開かれると冷気が入ってくる。二枚重ねしているのにも関わらずに背筋が震え上がり、軽い靴音を立てて、一度立ち止まって辺りを見回す。
警備員が多い。周りの生徒たちは困惑しながらも警戒しながら見ている。警備員は雪の結晶の形をしたヘイローが浮かんでいて、白いコートに学園の校章である歯車と熊のマークが入った帽子を着けている。手にはAK-47を持っているというのはすぐに分かるが、バリエーションの多さのせいで正確なモデルは分からない。そして服装には一切黒色の部分が見当たらなかった。
俺を含む人々はブラックタスクに傷跡を残されたが、必然的な争いによって消え去っていき、団結し、強くなっていくきっかけにもなったが、その代償は…
それはさておき、駅の中を移動しながら、車内の暖かさから冷たい外気へ身体を慣らしていく。
他の駅のように、店やレストランが並んでいて、中では生徒たちが思い思いに時間を過ごしていた。俺のことを知って見つめる子もいれば、ただ好奇心から見ている子もいた。
パーカーのフードをかぶり、深呼吸をして、マスクから息が吐き出される。
“さて、どこに…”
「えっ!?」と喧騒と雑踏の中から声が響き、警備員たちが戸惑いながらも不安な表情で振り向く。俺もその方向へ向けば、そこにはアタッチメントのないPPSh-41を手にして、警備服の上には三角形の歯車を付けて、二層の赤いヘイローが浮かんでいて、目を見開いて驚いていた。ピクシーカットの金髪で、赤いアイシャドウと口紅が特徴だった。「先生はここの駅で降りないのだと!?」
“何?”
思わず呟くと、ISACが呆然とした様子で俺を見つめて、俺も見つめ返す。
| A …ここの駅で降りると言っていたはずでは? |
そうISACが指摘して、俺は眉間を抑える。本当に俺は一体何をしているんだ?
慌てている子は保安委員会委員長の池倉マリナとISACが表示する。俺は小さくため息をつく。まあもうここにいるから仕方ない。
マリナへと歩いていき、電話が終わるのを待ち、マリナはため息をつく。「さてどうしたものか…」
“俺もどうしたものか。”
そう呟くとマリナは驚いて飛び上がって振り向けば振り向いて武器に手を伸ばす。だがはっきりと俺の顔を見れば、そのことが分かって目を見開く。
「せ、先生!」と緊張した様子で言う。「どうしてこの駅に!?」
ターミナルに視線を戻して、淡々とした口調でこう答える。
“降りる駅を間違えた。”
マリナは驚いて瞬きを繰り返す。
そして俺は視線を彼女に向けて、こう尋ねる。
“君も電車で来たということか。かなり早めに来たみたいだから。えっと…?”
「マリナ。」彼女が答えると同時に、周りの兵士たちは整列して敬礼をする。「池倉マリナだ。」そして安堵の色を浮かべながら、嬉しそうに名前を言う。「レッドウィンター連邦学園保安委員会委員長をやっている。では先生、事務局へと案内しよう。チェリノ会長がそこでお待ちしているぞ。」
“では案内を頼む、マリナさん。”
「呼び捨てで充分だ、先生。」マリナが振り返ると、周囲には兵士たちが囲み、車を案内してくれた。俺は要人警護をする立場だったから、こういうのは新鮮だった。
これからはもっと礼儀正しくして、うろつかないようにしておこう。要人警護の時に勝手にうろつかれるのがずっと嫌だったからだ。
それはさておき、俺は外へと案内され、保安委員たちが俺を乗り込むのを待っていた。最年長の生徒が運転席に座り、車が動き始めると、レッドウィンター事務局へと向かい始めた。