The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.21-02 レッドウィンター連邦学園 旧校舎屋上

“しかし…”

俺はTAC-50のスコープを覗いて見回し、一方のノドカは望遠鏡を覗いていた。

“将来優秀なスポッターになれるぞ。”

 

「えっ?」とノドカは顔を赤くする。「な、なんでですか?」

 

“つまり──”

俺はスコープから目を離す。

“ノドカの望遠鏡は遠くを見るのに向いていて、俺のよりもずっと性能が良い。それに報告のやり方も本当に上手い。今すぐにでもマリナの頭のど真ん中を狙撃できるくらいだ。”

 

「そうですか?」とノドカは首を傾げる「ありがとうございます先生。いつも通りにしているだけですが…」

 

それがどういう意味なのかはすぐに分かったが、追求するのはやめることにした。TAC-50Cを手に取り、ストックを折りたたんでゴーバッグに掛ける。

“少し休もう。30分経ったからひとまず確認してきたものの整理をしよう。”

 

ノドカはうなずき、俺たち二人は屋上から建物の中へと移動する。ノドカは平然としているが、多少は暖かい場所に入った俺はというと、背筋に寒気が走るのを感じずにはいられなかった。

“ふぅ、やっとか。”

 

ノドカは瞬きを繰り返す。「先生、寒かったんですか?」

 

俺はグローブをはめた両手をこすって、マスクの下での笑いをこらえる。通気性が改良されたおかげで、もう息苦しさを感じなくなったのだが。

“ああ。慣れたつもりだったが、すぐに寒さを思い知らされた。”

 

「他と比べてレッドウィンターは本当に寒いですからね。」とシグレと同じことを言う。「寒いと感じるのは当然ですが、それを隠していて凄いです。」

 

俺は笑いながら、首を振る。

“長年の訓練と経験で身に着けたコツだ。何時間もじっと動かずにいられるし、トリガーを引くまでは何も気にならない。だが暑い日や砂漠とかの環境になると、それがどんなに嫌かというのを思い知らされる。”

 

ノドカは微笑みながらうなずき、俺は階段のそばに寄りかかる。

“あと俺が見れなかったものもあっただろうから、何が見れたか教えて欲しい。今の状況だと輸送隊や物資の情報はあまり役に立たないかもしれないが。”

 

「そういえば、工務部がデモをしていました。」と何気なく話す。「それだけならいつものことなんですが、警備は事務局周辺に集中していて、委員長は祭り用のプリンを試食して回っていました。」

 

そして一瞬言葉を詰まらせた後、目を閉じる。「あの時撃てばよかったですね。」

 

“つまり堂々と歩かせるよりもこそこそさせると?”

そう言うと、ノドカは鼻を鳴らして腕を組む。

“そういうことか?”

 

「まあ…」とノドカは言葉を濁して俺の方を向く。「レッドウィンターではよくあることなので、誰も気にかけずに祭りの準備をしていますね。」

 

“だがマリナがプリンを試食していたのは確かだ。”

それを声に出して、俺は壁に寄りかかる。

“なので、俺たちが着く頃には恐らくマリナはオフィスにいる。”

 

「あいつが出発に間に合うように起きればいいけど…」とノドカは小声で呟き、俺は笑いながら首を振る。

 

“なら、偉大なる会長が起きるまで少し休まないか?全身全霊でいかないと工務部との協力は無理だ。”

そう言って、ノドカの頭を撫でる。

“よくやった。”

 

「あ、ありがとうございます。」とノドカは照れくさそうに答え、俺は手を離す。「先生はどうするんですか?」

 

“俺か?”

手を振ってノドカの不安を消す。

“俺なら大丈夫だ。もう少ししたら来る。少しレッドウィンターの木々や…雪景色を楽しみたいからな。”

そして顔をさらに近づける。

“木々が頭から離れられないんだ。”

 

ノドカは笑いながらうなずく。「では先生、また後で。」と下に降りるノドカを見送る。

 

何気なく外に出ると、冷たい空気が露出している顔の部分をわずかに刺す。マスクを下ろし、冷たい空気がより多く顔に触れるようにして深く息を吸う。

 

タバコの箱を手に取り、開けて中の本数を確認する。ここに来てからこんなに吸っていたのかと顔をしかめるが、やがて諦観のため息をつく。一本取り出して、口に咥えて手すりにもたれかかり、ライターを取り出して火を点けようとする。だが凍てつく寒さで火がつかないので、何度も繰り返す。

 

舌打ちしそうになりながら、タバコをしまおうとしたその時、側に温りが現れる。「点ける?」

 

“ありが──”

振り向けば、それが誰かが気付いて動きを止める。シグレは無邪気な笑みを浮かべながら、フラスクを見せつける。開口部からは青い炎が揺らめき、彼女は手で炎を守りながら、風で消えないようにしている。

 

可燃性かつ、消耗品であるのはアルコールだ。フラスクからそれの匂いが感じられる。俺は無表情で、特にマスクをしていない今ではそれが明確に分かる。一方でシグレは無邪気な笑顔を浮かべている。次第に理性よりも衝動が勝り、俺は身体を前にしてタバコの先端を火元に近づけると、シグレの笑顔が輝く。

 

そしてシグレは炎を守っていた手でフラスクの口を塞ぎ、キャップをかぶせて閉じた後、軽く振ってから再び開ける。かすかな音と共にフラスクに空気が戻れば、完全にキャップを閉じる。手すりに肘をついて、両手で顎を支えながら、その後ろでは尻尾を揺らしている。

 

俺たちは互いに見つめ合い、俺の唇にはタバコが挟まれたまま、シグレはただ微笑み続けている。冷えたフラスコのコルクをゆっくりと抜き取り、静かに、少しずつ口に運ぶ。

 

しばしシグレを見つめた後、これまでやってきた中でも難しい決断の一つを下す。

 

フラスクを奪い、飲むのを阻止する。

“酒は身体に良くないぞ。”

 

「え?」とシグレは首を傾げ、怪しげな笑みを浮かべる。「じゃあタバコはどうなの?それも身体に良くないよね?」

 

カードが切られた──今の俺に出来るのは約束を果たすことだけだ。

“そうだ。だが俺は21歳だ。”

そう念を押し、タバコを口から外して床に落とす。

“脳が完全に成熟する前の酒やタバコの影響は成熟した後よりもずっと深刻だ。”

 

「先生だって──」と興味深そうに尋ねるが、俺がフラスクを傾けた瞬間、その表情は恐怖に代わる。「私のウォッカが!」

 

たった一滴でタバコの火は消される。ショットグラス一杯分にも満たない量だったので、それ以上こぼれることはなかったが、念のため足で踏み潰してから、フラスクの蓋を閉じて元の持ち主に返す。

“これで、どっちとも酒とタバコができなくなったな。”

 

シグレはただフラスクを見つめ、困惑を浮かべた後に唇がかすかに動く。「そう来たかぁ…」と面白おかしく呟く。その瞳には何かが宿っていた。

 

“何か言ったか?”

そう尋ねると、彼女は小さく笑う。

 

「ううん何も。そういえば先生、タバコってどんな感じ?」と尋ねられ、俺はため息をつく。

 

“酒みたいなものだ。味目的で吸うものじゃない。”

唇を舐めて、唾を吐き捨てる。口の中に残るのはタバコの味と、何ともいえない不快な味だ。

“少なくとも俺が食べてるレーションバーは味がしない。タバコもまずいし、身体にもよくない。”

 

「ならどうして吸うの?」とシグレは尋ねる。俺は鼻を鳴らしてシグレの方を見る。

 

“故郷よりも吸う頻度が多くなっているとだけ言っておこう。”

本当のことだ。

“あとは…ストレス発散だな。だからといって君みたいな生徒の前で吸うべきではないな。色々と邪推しているようだから。”

 

「大丈夫、ちゃんと秘密は守るよ。」とシグレはウィンクする。「その代わり──」と言って、手に持っているボトルが上向きに傾けられる。俺はそっと手に取ってゆっくりと元の位置に戻す。

 

“無理だ。”

出来るだけきっぱりと断る。

“俺は全知全能ではないし、全存在でもない。目の前の生徒が飲酒するのを見過ごすつもりはない。”

 

シグレは瞬きを繰り返すと、すぐに不機嫌そうな顔になる。「それなら、こっちはノドカのストーキングに加わって先生が吸えないようにしてあげる。」

 

それについては確認したくなかった。シグレにそれをバラされたらノドカは嬉しく思わないだろう。

 

代わりに俺は軽く笑いながら、首を振りつつ彼女の肩に手を置いてこう言う。

“ならそうしてくれ、シグレ。やるのは自由だ。だがオフィスに出たがらないのには理由がある。”

更に数回軽く叩いて、一歩下がる。

“さて、攻撃を開始する前に疲れたら元も子もないから、しっかり休もうか。”

 

シグレは軽く不機嫌そうな表情を見せた後、落ち着きを取り戻し、俺がドアを開けて後についていく。そして準備のためにキッチンへ向かう。運がいいことにノドカがいた。「あっ先生、やっとシグレが呼んできたんですね。」とノドカは片手で料理の乗った皿を持ち、笑顔で言う。「これ、先生のために作ったんです。一緒に食べましょう。」

 

俺はシグレに視線を送ると、シグレも見返す。そして二人で腰を下ろすと、香りが鼻をくすぐる。シグレが呼んできだ時のことは話題に上がらなかった。

 

そうして楽しく昼食を過ごして、俺は227号特別クラスの部員たちについて詳しく知れた。

 

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