The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.21-03 レッドウィンター連邦学園 旧校舎

俺はドアのフレームにもたれかかり、視線の前の生徒2人をしばらく見つめた後、声がマスク越しでも聞こえるよう気をつけながら口を開く。

“なあトモエ、チェリノの様子は?”

 

トモエは笑顔で顔を上げる「少しお疲れのようです。いきなりあれだけの距離を歩くことになったのですから、仕方のないことです。ですが早めにお眠りになったのが少し不安です。普段ここまで早くは眠りませんので。」

 

“そうなのか。”

それを声に出して、トモエの膝で眠る白髪の少女と、特に気にしていない様子のトモエを交互に見る。

“偵察結果はもう聞いたか?”

 

「はい。まさしくレッドウィンターの日常という内容でしたね。」と目を閉じる。「マリナ委員長の脇が甘かったようですね。特に工務部がデモを起こしていることについては。とはいえデモ自体はよくあることですが。」

 

“普通のことなのか?”

そう聞くと、まるでそれを何回も聞かれてきたかのように、意味深な笑顔を浮かべてうなずく。

“ああ主よ、それは…”

言葉を濁し、笑いを漏れながら首を振って、帽子を外して頭を掻く。そしてアメリカで同じような状況だったらどうなるかと考える。

 

上手くはいかない、そう思う。

 

「不安定さの中にはある種の安定性があります。レッドウィンターで暮らす上では、必ず寒さに適応し続けなければなりません。事務局の不安定さもまた、適応しなければならない要素の一つです。レッドウィンターで暮らしている方においては慣れ親しんでいることですが、こういった事や伝統として長く継がれている革命のおかげで、大多数の方が好きなものに対して非常に強烈な愛憎を抱いています。そのため戦うことを厭わない傾向が強く、これについてはレッドウィンターの外部では珍しいことです。」

 

“だからか。”

そう呟いて、もう一度チェリノに視線を降ろす。

“こうしていると、可愛いな。”

 

「お気づきになられましたか先生。」とまるで俺が気付くのは当然だというように、トモエは誇らしげに言う。

 

確かに、独裁者のような振る舞いをしていないチェリノの方がずっと可愛いと思っていたが、独裁者というよりも意地っ張りな子供のような、今のチェリノもとても可愛らしい。言葉にしない方が良い気がする。代わりに、チェリノの"偉業"について興奮気味に話すトモエに、俺はうなずきながら耳を傾けた。

 

トモエがチェリノを大げさに美化し、まるで伝説の人物のように語り立てる様子を聞くのは興味深い体験だった。その間、チェリノはトモエの膝の上で眠っていて、トモエは時折、その小さな少女の髪を撫でてやっていた。

 

とはいえ、話が終わり、手で口元を押さえて咳払いをしてから、俺に笑顔を向ける。「私からはこの辺りにしますとして、先生はどうですか?」

 

“俺のことか?”

そう首を傾げて、窓側の壁に寄りかかって外を眺める。目の前には冬の幻想的な風景と、地獄のようなレッドウィンターの光景が広がる。

“俺は第一応答者(ファーストレスポンダー)として、緊急時の対応を何度かしていた。ほとんどは自分が知っている僅かばかりの知識を子供たちに教えていた。”

 

トモエは面白そうに笑いながら、俺の体を意味深な目で眺める。その視線に思わず俺は身をよじりそうになったが、なんとかこらえる。「先生、プレゼンテーションとプロパガンダとの共通点をご存知ですか?」

 

“イメージか?”

そう答える。過去の失敗で周囲の目が変わった時や、"サンドマン"というあだ名で呼ばれたことを思い出しながら。トモエはただ意味深な笑みを浮かべていた。

 

「キヴォトスの古則はご存知ですか?」そう尋ねられる。俺としては初めて聞いた言葉で、アロナは興味深々な様子で俺の視界に現れる。「古則とは言っても、実際はなぞなぞのようなものです。」と説明する。俺の興味に気が付いたのだろう。「全部で…7、いえ、6つですね。私としては特に関心は寄せていませんが、熱中する方もいるようです。一応、私が創作した古則がありますが、聞いてみますか?」

 

俺は首を傾げるが、うなずく。一人の時やアイスブレイクの時になぞなぞを話題にするのはなかなか面白い。

 

そうして、トモエはこう言う。「存在しない真実は、果たして本物の真実と言えるのか?」

 

その問に俺は考え込む。真実とは一体何か?"存在しない"は一体どういう意味なのか?

 

「こういった古則というのはついつい考え込んでしまいますよね。私もよく無意識にあれやこれやと考えてしまいます。」とトモエは口を挟んで、俺を空想から引きずり出す。「何かのデザインをする時やプロパガンダを創作したりする際にはこうした思考が役に立ちます。結局のところ、プロパガンダとは統一された真実を納得させるものであり、本人が直接見ていない出来事を否定できるはずがないのですから」

 

思わずうなずく。確かに納得がいく。とはいえ少し心配してしまうが。

“それなら、それとファーストレスポンダーに何の関係があるんだ?”

 

「たとえ私が、あなたがここに来る前に起きた、あなたの真実を知らなくても──」とトモエは手を伸ばして俺の首の付け根──丁度SHDのタトゥーがある所に指さす。「誇りが持てないものを身体に刻み込むことがないのは確かです。」

 

成程…その不死鳥を隠すことはしない。むしろ傷跡の方を見せたくはないと感じるが、確かに人によっては変だと感じる。特に同じ不死鳥が俺の装備にも沢山入っていることを考えれば。

 

「とはいえ、古則は法律ではありません。」とトモエは言い、チェリノにスペースブランケットをかけてリラックスする。「ただ考えさせるだけの問であって、親しい間柄の方と意見を交わす程度のものです。可能性や哲学ばかりに囚われていては、一日中寝床で過ごすことになってしまいます。チェリノちゃんもそんなことはしませんし、今この瞬間も未来と同じように大切なものです。」

 

“それについては真実だな。”

そう小声で呟く。トモエは気付いたようだが、特に何も言わない。

 

その代わりに少しだけ軽く笑う。「ですね。私や他の生徒たちにとっては真実ですので、そこは大目に見てあげましょう。良き真実は必ず秘密を伴いますから。」

 

俺は首を振り、大きくため息をつきながら、再び風景に視線を向ける。

 

「むぅぅぅぅ…」とチェリノはうなり声を上げて、眠そうに目を開ける。「トモエ…?ここは?」

 

「227号特別クラスの旧校舎です。」とトモエが教えれば、チェリノは目をこすって疲れを飛ばす。

 

そして勢いよく立ち上がり、怒る。トモエは少し心配そうに見守っていた。「マリナ!おいらは必ず事務局に戻ってやるからな!トモエ、二人をここに呼んでこい!」

 

「はい。偉大なるチェリノ会長。」とトモエは頭を下げた後、その場後にする。チェリノは一人残され、ふと俺の方を見やる。

 

「おお、カムラッドか。」とチェリノは古いがまだ使える椅子に腰を下ろす。「いつからここにいたのだ?」

 

“ちょうどトモエと話をしていたところだ。”

そう言いながら、手を振って姿勢を変え、彼女の方を向く。

“別に心配するようなものじゃない。”

 

「しかし、トモエの忠誠心はマリナのとは大違いだな。」と鋭く息を吐く。「してカムラッド、お前はシャーレの顧問なんだから、当然おいらが復権できる作戦はあるのだろうな?」

 

“そうだな、まずは現地で偵察…要はマリナに対抗するために協力者を集める所からだ。”

そう言うと、チェリノはうなずく。

 

「ふむふむ、それで?」とチェリノは聞くが、俺はただ肩をすくめるだけだった。

 

“協力者を集めたら、マリナを包囲して、あとは制圧するだけだ。”

そう説明して手を振り、チェリノはうなずく。

 

「簡単だな。おいらの役割は何になるのだ?やはり、ここはおいららしく威厳を醸し出しながら最前線で立つのだな?」とチェリノは言う。役割についてはあまり気にならないが、チェリノが持つ存在感には肝が冷える。特に銃撃戦の場合はなおさらだ。

 

“そうだな…”

俺はうなずく。

“とはいえ、まずは現地へ足を運ばないといけない。ブランケットはどうだった?”

 

「むぅ、特に問題はなかったぞ。」チェリノはそう答え、ブランケットを手に取って確認する。「暖かったのだが、普通のと比べてあまり気持ちよくなかったな…」

 

“そうか。でも、十分に休めれるぐらい温もれた、だろ?執務室に戻ればゆっくり休めれる。”

 

「戻ったら、お前に勲章を授けないとな。何にするべきか…」とチェリノ独り言のように呟いて、顎に手を当てて足を揺らす。「尊き同志勲章か?特級献身勲章か?でもどっちとももう持っているから…」

 

その後も独り言が続くが、俺は聞き流しながら、もう一回周囲を見回して壁から身を離して立ち上がる。そして足音が響き渡る中、扉が開く。「ただいま戻りました、偉大なるチェリノ会長、先生。」

 

「トモエか、それで作戦はどうなるのだ?」とチェリノが尋ね、トモエは微笑む。

 

「まずはメインキャンパスに向かい、他の部に協力を求めます。」とトモエが説明を始めれば、その後ろからは「その間に、ノドカさんは攻撃の合図を待つとともに位置を監視します。」

 

“準備はまだ進めている途中だな?”

そう尋ねると、トモエは興味を寄せてうなずく。

“なら、一回現地の雰囲気を楽しんで、少し休むとしよう。もしかしたら食事も出来るかもしれない。”

 

「そんなに執務室に座るおいらの姿を早く見たいのかカムラッド!?」とチェリノはショックで口を開ける。だが俺は首を横に振る。

 

“まあ、イワン・クパーラどころか、まだ一度も俺はレッドウィンターの祭りに参加したことがない。だからこれは…気になっただけだ。”

そう答える。実際、レッドウィンターでイベントはどうやって運営されているのかということにはかなり興味がある

 

「それって…色々と食べれるってこと?」とノドカの口からはよだれが垂れ、目が輝く。俺は笑いながらこう言う。

 

“そうだ。お代はシャーレ持ちだ。それと…”

そして二人の目が輝くが、シグレはいたずらっぽくこちらを見ていた。

“酒は禁止。”

 

「え~っ」とシグレは頬を膨らませる。トモエはため息をついて、チェリノはしばらく唸りながら、顎に手を当てて考え込んでいる。

 

「むぅ…おいらが苦しんでいるというのに、皆は祭りを楽しむとは…全員粛清したくなるな…」とチェリノは不満を漏らすが、トモエが割って入って彼女の肩に手を置く。

 

「偉大なるチェリノ会長、以前、全ての生徒が祭りを楽しめるようにしたいと、仰いましたね?気分で自身のお言葉を撤回することになれば、会長の社会的信用が損なわれます。」

 

「でも…」とチェリノが口ごもると、トモエは優しく微笑む。

 

「では、今回は開催側ではなく参加側として、祭りを楽しめると思ってはどうでしょうか?もしかすると、今後の運営に役に立つようなことに気が付くのかもしれませんよ。」とトモエが提案すると、チェリノは目を閉じ、眉間にしわを寄せて深く考え込む。

 

やがて顔を背ける。「まあ、いいだろう。部下の内情を理解するのも、指導者としての責任だからな。ぜ、絶対にサボったりはしないからな。な!」

 

「はーい。」とノドカが目を細めるが、すぐにその表情は消える。「先生、本当に行っても…?」

 

俺はうなずいて伸びをする。

“どうした?何か気になるのか?指導者がそう言ったのだから、早速楽しむぞ!”

 

ノドカはシグレと共に歓声を上げて、チェリノは得意げな笑みを浮かべ、トモエは頷きながら、俺たちは旧校舎を出て最寄りのバス停へ向かい、レッドウィンターのメインキャンパスへと向かう。

 

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