The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.22-03 レッドウィンター連邦学園 セーフハウス

数分後、知識解放戦線の拠点である図書館に到着する。視界の端ではISACがちらついて消えたり現れたりして、アロナが楽しそうに俺の隣で歩く中、俺はミノリと工務部のメンバーに手を振ってからフロントドアを開ける。

 

受付には誰もいない。少し周囲を見回して誰かいないか探してみるが、何も見当たらない。

“はあ、何か変だな。”

 

まだ早かったのか?いや、もう昼が近い。誰も受付がいないのはどこか変だ。

 

首を傾げながら、建物内のセーフハウスへのウェイポイントに従って進む。

 

 

すぐに見つかった。古い区画の脇にあって、ドアを開けて中に入ると、階段が続いてその先にドアがある。

A セーフハウスを検知。

 

ISACの指示の従うと、キャビネットの前で立ち止まり、身体を押し当ててどかす。

 

楽に動かせた。そうしてドアが見えれば、ドアノブを掴んで回すと同時にドアがスライドして開く。

A セーフハウスを発見。

 

中は照明が点いていなくて、無骨なラップトップが開いている。キヴォトスの地図とレッドウィンター周りの情報が表示され、他の情報も表示されている。照明を点けるとはっきりと見えるようになる。

 

ファンが回り始め、武器ラックと生活スペースが見える。戦闘が終わりや次に備えるための整備に便利なエージェント御用達の設備だ。ゴーバッグを床に落として、周囲を見回す。

 

まずは、シャワーと着替えがあればとてもありがたい。

 

服を手に取り、シャワーを出して、俺は満足げなため息をつく。

 


 

綺麗で新品の服を着てからセーフハウスを出る。だが二枚重ねのセーターとアーマーは変えていない。キャビネットが元の位置に戻るのを待って、階段を上る。

 

ドアを閉めた後、もう一度体を伸ばす。これまでに溜まった身体の強張りがようやくほぐれるのを感じながら、周囲を見回す。

 

知識解放戦線の本部は図書館のような場所で、本棚には古い本から新しい本まで整然と並んでいる。俺はその背表紙をじっと見つめる。

 

確かに、俺は昔から本が好きで、特にファンタジーやヤングアダルト小説がお気に入りだった。数独やクロスワードにも手を出したことはあったが、数学的な才能よりも創造力に長けていた。特定のパターンに対する執着のせいで人から面倒くさがられたり、トラブルの原因になったりしていた。

 

それでも、俺は背表紙を指で優しくなぞりながら、自分で理解できる部分や、アロナとISACが翻訳を手伝ってくれた部分を順に読んでいく。

 

“二人共調子はどうだ?”

連れのAIに尋ねる。ISACがANNAと同程度、もしくはそれ以上に高度な存在であるという事実は未だに衝撃を覚えている。二体のAIが俺に付き添っているということもそうだ。

 

A 全システム正常に作動中です。SHDネットワークは稼働しており、武器、SHDテック共に異常は全てありません、エージェント。

ISACが俺の側で報告すると、アロナが現れて、ISACを不思議そうに見つめる。

 

S あのーISAC先輩、マテオ先生が知りたいのは多分システムのことじゃないと思いますよ。

アロナはそう指摘した後、頬を膨らませて俺の方に向く。

S それに先生、働きすぎていて心配しているんですよ。このままだと燃え尽きちゃいますよ。なので身体と心をしっかりと休ませてくださいね。ビナーやカイザーのこともあるから、ゆーっくりと休んでくださいね。

 

A …了解。

ISACが同意するのを聞きながら、俺はため息をつく。

A 厳しい環境に慣れているとはいえ、エージェントとして時には休息を取って羽を伸ばすべきです。個人的なお勧めはマッサージと…温泉です。

 

まるで禁忌の呪文でも唱えるかのように"温泉"と言ったISACで思わずむせ返る。

“気を付けろ、何を召喚してしまうのか分からないんだぞ。”

 

「何でしょうか?」と柔らかな声が尋ね、俺は思わず飛び上がりそうになる。慌ててアダムの鍵がしまってあるホルスターに手を伸ばして、周囲を見回すが誰もおらず、ふと下を見る。

 

そこにはミントグリーンの髪をした小柄な少女が、ホッキョクグマのジャケットドレスを着ている。緑色の瞳を無邪気に瞬かせ、背後には小さなクマのような形のRPGと、歯車を思わせる青いヘイローが浮かんでいた。

 

秋泉モミジは俺が落ち着くまで待って、俺はアダムの鍵をホルスターに戻す。

“すまない、ただの独り言だ。”

 

モミジは驚いた様子で俺を見上げる。その時に俺は、彼女の小柄な姿と比べると自分の姿は威圧感を与えかねないことに気がつく。そしてマスクとグローブを外して、手を差し出す。

“ヴェルネス マテオだ。誰も受付にいなかったから、勝手に入ってしまった。申し訳ない。”

 

「誰もいなかった!?」とモミジ驚いて大声を上げると、動きを止めてゆっくりと俺の手を握って、握手する。「あっ、秋泉モミジです。あなたがシャーレの先生、ですか?」

 

“ああ。”

そううなずき、再びマスクを着ける。

“モミジ、だな?”

 

「はい。誰もいないせいで先生のお迎えできなくてすみません。」と頭を下げるが、俺は手を振る。

 

“大丈夫だ。休みで昨日からここに来ていただけだし、それに、散策する時間がなかった。”

周囲を見回して、そう説明する。

“とはいえ、いい所だ。”

 

「ありがとうございます。」とモミジは微笑む。「そういえば、どうしてここに来たのですか?」

 

“観光で。”

そう説明して少し身を乗り出す。

“どういう所なのかを直接見たくて、ここから見ていった方がいいと思った。”

 

モミジの顔は目の見えて明るくなる。「ありがとうございます。知識解放戦線はこの図書館で誰でも自由に知識に触れられるよう力を──」

 

「あーーっ!バカヤローッ!」怒号が図書館中に響き渡る。モミジは身をひそめて、顔をしかめて目をぴくりと動かす。

 

「少し待ってくださいね先生。」そう言って彼女は素早く駆け出し、俺は心配で眉をひそめる。司書がRPGを構えるという奇妙な構図が生まれる程の騒ぎを起こしたの誰なのかと考えながら、俺はその後を追うことにした。

 

そうして俺は、図書館の片隅にある小さなスペースに到着する。そこには腕を組んだモミジが入り口に立っていた。小柄な体格がかえって可愛らしく見えるが、俺の視線は別のところに向けられていた。

 

眼鏡の奥に青い瞳、灰色がかったミント色の髪は前髪を束ねて視界を妨げないようにしており、レッドウィンターの制服の上にジャケットを羽織っている。手にはタブレットを持ち、顔を両手で覆っている。頭上に浮かぶヘイローは青からピンクへと変化し、大小2つの歯車でできていて、大きい方の歯車には円ではなくハート型になっている。

 

「なんで?なんで??あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」と彼女は顔を青くして青い瞳を針のように細める。「落ちたぁぁぁぁ…まだ保存していないのにぃ~…今までの努力がぁぁ…」

 

彼女はテーブルに額を打ち付けた後、顔を上げて目を瞬かせる。「あ…モミジ…おはよう…」

 

「もうお昼ですよ。ていうかまだ受付に行ってなかったんですか!今朝先生がいらしたのに誰もいなかったんですよ?」

 

「先生!?」と姫木メルは声を上げて振り返ると、モミジの背後にいる俺に目を向ける。モミジも俺の存在に気づくと、驚いて後ろを向く。

 

「あー…先生、その、これは…」とメルは言葉を濁す。眼鏡の反射で見えづらいものの、その瞳は俺をじっと見つめていた。

 

「…そうだ…」そう言って彼女は立ち上がり、タブレットとペンを手に取る。「…これだ。」

 

モミジの小言を無視して、メルは俺の方を向く。彼女の目に宿る強い意志に少し押されて、俺はつい一歩後ずさる。

“やあ、俺はヴェルネス マテオ。シャーレの先生だ。”

 

「…パーフェクト。」メルはそう呟くと、瞳には狂気じみた光が宿っていた。

 

“…何て?”

そう聞くと、彼女は強い力で俺を抱きしめる。

 

「先生、私の──」

 

一つ、絶対にしない方がいいことがあるとすれば、それはRPGを近接武器として使うことだ。いくら便利であっても、攻撃する者、される者に危険が及ぶ。武器のメンテナンスに関する基本的なルールや、武器の使い方に関するシンプルなルールにも違反する行為だ。例えば、銃口が自分に向いてないかを確認するといったものが当てはまる。

 

これらルールをモミジは無視して、図書館利用規則第7号で同じ部員であるメルの頭で叩きつける。メルは身体を強張らせた後、頭を抱えて丸まり、小さな悲鳴を上げる。「先生に失礼ですよメル先輩。利用者なんですよ。」

 

メルは悲しげな声を上げた後、涙を浮かべた目でモミジを睨みつける。「モミジ~!だからといって殴る必要あった~?」

 

「先生にご迷惑をかけていたからですよ。先輩のことですから、きっとモデルにするまでしつこく迫るつもりだったんでしょう?」とモミジが言い返す。「あと、またお仕事サボりましたね、朝は受付だって言いましたよね?」

 

「えーでも急にビビッと来たのを放っておくわけにはいかなかったんだよ~!」メルは立ち上がりながら言い返す。「先生もそうするよね?ね?」

 

“しない。ただ──”

そう言うと、メルはなぜか裏切られたような表情でこちらを見る、

“ここがどういう所なのかを実際に確認しにきただけで、君たち二人や他の人にも会ってみたかっただけだ。”

 

シャワーを浴びるために来たというのは別の話だが、ここは図書館──周囲にシャワーがない場所でそんなことを言うのは野暮だろう。

 

「え~っ?せめてスケッチの1回だけでも~おねがぁい~」とメルは必死になって可愛いらしくお願いをする。

 

とはいえ、俺は幼い子供から、年齢や態度のせいで絶対にそんな顔をしてはいけないような大人のお願いをする時の顔を何回も見てきている。

 

それでも…

 

“1回だけなら。”

俺が折れると、メルの表情が明るくなる。

“時間はまだ余裕がありそうだし、特に予定も詰まっているわけでもないからな。”

 

「やったぁー!」とメルは歓声を上げながら周囲を見回す。「さーてどんなポーズにしようかな~~?アクション系?いやでもそういうのはネットで出回ってるから…もっとこう…凄いやつを…」

 

メルが呟き続けている間に、俺はモミジの方を向く。彼女はため息をつく。「すみません、本当にいい人ではあるのですが、好きなことになると我を忘れるほど夢中になって…」

 

言葉を濁すモミジに、俺は思わず笑ってしまう。

“ああ、そういうタイプの子はよく分かるから大丈夫だ。”

そう答えて、ため息をつく。するとあるものが目に留まる。それは短編小説集で、主に人間関係のドラマが中心で、少なくともあらすじを見る限りでは、生死を取り扱うような内容ではない。俺はモミジの方へ向けば、その本を指差す。

“少し借りていいか?”

 

「はい、もちろんです。これこそが知識解放戦線の役目ですので。」とモミジは笑顔で応える。「ごゆっくり楽しんでくださいね、先生。私はそろそろ仕事に戻りますね。」

 

“一緒にどうだ?”

そう尋ねると、モミジは足を止めて、ゆっくりと振り返って周囲を見回して、一冊の本に留まる。

“誰かが側にいても、静かにやれることはある。メルもそんなに騒がないと思うぞ。”

 

「そうおっしゃるのなら…」モミジは口を止めると、ため息をついて、うなずく。「分かりました、先生。」

 

そうして、彼女は本を一冊手に取れば、俺達二人はソファに座って、メルも加わる。俺が読書する間、メルはまるで憑りつかれたかのようにタブレットに描き殴っていく。

 

そうして読み終われば、気分がずっと良くなり、二人に感謝してから外に出て、何かないかと探す。

 

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