The Divide   作:粋刺@翻訳

16 / 132
Chap.3-03 シャーレ ワークショップ

たとえ、D.C.に行く前にSHDテックを作るのが普通だったとしても、今日ほどエンジニアであったことに感謝したことはない。

 

ワークショップ(別名2つのベンチが押しつけられた空っぽの部屋)の中にある補強したドアのネジを締めながら、画面にコードの行が並んでいるノートパソコンに目をやった。

“ここからが正念場だ。”

 

ドアノブの横には、隙間があり、その奥には配線と機械が組み込まれている。力を込めて持ち上げ、それを作業台に立てかける。そして、ゆっくりと手を伸ばし、取っ手に置く。押し込むと、スマートウォッチが機械にスキャンされ、HUDには「スキャン中」の表示が浮かぶ。

 

やがて、クリック音が鳴り、俺は安堵のため息をつく。

 

だがしかし、ドアを開ける仕組みは作動しなかった。

“ふざけるな~!”

 

愚痴を漏らして、ノートパソコンに向く。コードを隅々まで確認すると、そこに不備を見つけた。

“くそっ、開くタイミングを間違えたか。”

 

試しにもう一度やってみると、カウントダウンが増えるのがわかり、俺の考えは確信した。

“まあ、何もしないよりはマシか。”

 

あとはまあ、部屋を掃除が必要なだけだ。入る必要が出てしまうと、今までのは茶番になってしまう

 

だが、クラフトチェンバーとISACのノード用の補強したドアなら、これで十分機能する。

 

次の部品を取り出す。スクリーンとキーパッドだ。この二つはドアの開閉には直接関係しないが、あくまで演出のために設置する。

 

まず、ドアに組み込まれたスキャナーをスクリーンに接続する。試してみると、ライトがオレンジ色に変わり、Welcome SHD Agentという文字が表示される。

 

ここから、面白くなっていくぞ。

 

コードの一部をコピーしてペーストし、Welcome SHD Agentの文字を生成する部分を削除。その代わり、スクリーン全体が単色で点滅するように変更する。

 

“これは愉快なことになりそうだ。”

俺がそう呟くと、アロナが興味を引かれた様子で近づいてくる。

S 先生?何をしているのですか?

 

“なんだ?怒るのはもうやめたのか?”

俺がそう言うと、アロナは一瞬考え込む。そして、自分が怒っているはずだったことを思い出し、腕を組んでそっぽを向きながらふくれる。それでも、ちらりとコードを覗き込んでいる。

 

俺はぼんやりと、一番目立つコードを設定する。

 

1234

 

S 本気ですか先生!?

アロナが憤慨しながら言う。

 

“今のうちにそう言っておけ…”

俺は言葉を濁しながら、それを緑に設定する。

 

キーパッドをスクリーンに接続し、コードを入力すると、スクリーンが緑色に光る。その後、コードを何度もコピー&ペーストし、異なる数字に応じて色を変えていく。さらに、ISACの助けを借りて、いくつかの仕掛けも加える。

 

細かな問題をいくつか解決しながら、プログラムはついに完成した。あとはスクリーンとの無線接続を確立するだけで…

 

完了。

 

子供のように、アロナへ振り向く。

“さあ、セットアップといくぞ。”

 

一時間後、古いドアを新しいものに交換して、キーパッドを壁に設置し、スクリーンはその上部に固定した。

 

俺は興奮しながら、まずは取っ手を捻る。スマートウォッチがスキャンされ、配線とスキャナーは見えないように隠されている。そして3分経過するまでは何も起こらない。そしてゆっくりとドアが開き始め、画面にWelcome SHD Agentの文字がオレンジ色に点滅する。

 

“よぉし!”

 

待ったあと、ドアが閉まり、音を立てて施錠される。

 

S あの、キーパッドは何のためにつけたんですか?

アロナが問いかける。

 

俺は悪魔のような笑みを浮かべながら、”1234”を入力する。

 

アロナは退屈そうに上を見上げる。三分後、ライトが緑色に点灯するが、ドアは開かない。

 

“……は?”

 

次に別のコードを入力すると、ライトは青く点灯する。さらに違うコードを入力すると、ライトは赤に変わる。

 

そして次々と異なるコードを入力し続け、それぞれ違う色に変化していくのを楽しんだ。

 

これからのやることの違いは二つ。遊び心を加えることか、そして元の世界へ戻ることだ。

 

スクリーンあるところにDOOMあり*1*2

 

6666を入力すると、スクリーンには初代DOOMのメニューが表示され、0000を押すと真っ暗になった。

さらに、遊び心で9999を入力すると、音楽が流れ始める。Bad Apple!!だ

 

ゆっくりとアロナの目が見開かれ、その瞳が輝く。ヘイローは緑に染まり、顔には今にも弾けそうな笑みが浮かんでいる。

 

S このキーパッド、ドアに繋がってませんね!

 

アロナがくすくすと笑い始め、俺もつられて笑う。

 

“じゃ、じゃあ想像してみろ。「なんだこのドアはぁ!?」って色々試すけど、全部失敗してしまう的な。”

 

アロナは背筋を伸ばし、胸を張りながらくすくす笑う。

S お、おぉ~!こ、これは…厳重なファイアウォールですが、突破してみせますよ!えーと、こ…これでうまくいきます!

彼女は勢いよく前へ出て、キーパッドに向かって真剣な表情を作る。

S あれぇ!? 正しいコードなのに!?

 

“どいてくれ、俺がやる。”

俺もこの状況をもっと面白くするために加わる。

“ふむふむなるほど、こうだ!”

ランダムに入力すると、スクリーンは灰色に変わり、膝をついて叫ぶ。

“チキショ~!”

アロナの笑いが少しずつ収まり、そして言う。

S 誰かが試してくれるのが楽しみですね!

俺はうなずきながらワークショップへ戻る。まだもう一枚、プログラムする必要があるドアがあるからな。

*1
余談だが、原文はIf there's a screen, DOOM will be seen.で、これはIf there's a screen, AO3 will be seen.という2023年頃にTiktokで流行ったミームと、マキがやるように色んなものになんでもかんでも移植されているDOOMをもじったものである。ミームの内容はArchive of Our Own(ザ・ディバイドの原文もここにある)というサイトをDOOMや阿部寛のホームページ感覚で様々な機器に表示させるというものである。参考サイト: https://fanlore.org/wiki/If_there%27s_a_screen,_AO3_will_be_seen

*2
追記:作者の501ar氏曰く、If there's a screen, DOOM will be seen.は例のミーム以前からTiktok上にあるとのこと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。