The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chapter 4:名簿の確認
Chap.4-01 シャーレ クラフトチェンバー


不満げに唸りながら、暗いクラフトチェンバーで目を開け、ソファから身を起こす。一瞬、心地よさに戸惑うが、すぐに思い出す。ここは地面でも崩れかけた家でもない。

伸びをしながら、背骨と腕に小さな音が鳴るのを感じ低く唸った。腕をだらけさせ唇を鳴らしながら、ぼんやりとしたまま眠気を払いのける。その瞬間にスキャンテックが作動した。

 

A 以前にもお伝えしたと思いますが、イヤーピースとコンタクトレンズを付けたまま眠らないでください。

目が覚めたばかりなのに、早速ISACが小言を言ってくる。

A おはようございます。

 

“おはよう、アロナ、今日の予定は?”

そう呟く。

 

アロナは答えず、代わりにISACが答える。

A 彼女はまだ寝ていますので、しばらく私がアシスタントを務めます。

 

まるでISACの存在を示すように、俺が設置した罠の輪郭がHUDに表示される。アロナの場合、普段は何も映らず、時折彼女が表示される程度だ。だが、今回は違う。ISACは、奇妙な石を支える台座に寄りかかるような形で姿を現した。

 

うめきながら、無理やり体を起こす。

“くそっ……今度は男の声を延々と聞かされるのか。”

 

A あなたに全てを任せることもできますが。

ISACが脅すかのように言い放ち、俺はだらけた笑みを浮かべながら振り向く。

 

頭を下げ、俺は懇願する。

“やめてくださいお願いします…”

 

ISACはため息をつく。

A では、書類の確認と、そして昨日何も食べていなかったため、食事を行う必要があります。

 

食事の話が出た途端、俺の腹が自己主張を始める。うめきながら、ホワイトハウスで食べていた頃を思い出す。皮肉めいた笑みを浮かべ、軽く笑う。もし皆がそのことを聞くと、王様も驚くような豪華な食事を想像するかもしれない。だが実際は、オートミールとかの作りやすくて健康的な食事ばかりだった。

 

ホワイトハウスのことを思い出しながら、俺の思考は今の立場へと移る──シャーレの顧問であり、生徒たちの先生。

これって…規則違反じゃないか?アメリカにいないなら問題にならないのか?ISACはどうなる?

 

そもそも、俺はこの組織を率いるべきなのか?

 

思考が渦を巻き続ける。エージェントとしての義務と訓練が、大人として抱く若い世代への懸念と衝突する。俺はゴーバッグの中のM4へと手を伸ばし、手に取る。銃を回転させると、ハンドガードには刻まれた言葉が目に飛び込んでくる。

SHDのモットーであるExtremis Malis Extrema Remediaだ。

 

極端な悪には、極端な救済を。

 

困難な時には、思い切った手段が必要となる。

 

そのモットーが心を落ち着かせ、息を吐く。

 

厳密に言えば指揮を執っているわけじゃない、俺はただの顧問だ。今は与えられた仕事をこなして、どう転ぶかを見届けるだけだ。まず初めに必要となるものはスマホだ。

 

まずは着替えて、身を整える。それから、スマホを手に入れる。

 

ジーンズとシャツに着替え、無意識のうちに装備を整えながら、ISACの指示に従いコンビニエンスストアへ向かう。

 

おお神よ、これは紛れもなく「コンビニエンスストア」ではありませんか。ドルインフルがすべてを破壊し尽くす前に何度も目にしたが、ここは違う。”綺麗”だ。床のタイルは雪のように白く、レジと売り場の間には防弾ガラスすらない。すべてが良かった。

 

だが、スナックコーナーを見ているうちに、いくつか気になった。それは商品のパッケージに書かれた様々な言語のことだ。俺はずっと英語で話していたのは確かだ。だから変だった。

 

ISACが翻訳していたのか?いや、それはあり得ない。昨日、アロナと話した時も、耳を休めるためイヤーピースを外していても、内容は理解できていたからだ。

 

ともあれ、食料品のコーナーにたどり着く。見慣れたものよりも、ずっと洗練された品揃えと陳列だ。少し考えた後、いくつかの食品を選び、カゴに入れる。すると、ISACのため息が聞こえた。

 

A エージェント、それはあまり健康的なものではありません。

 

“そんなので俺を止められないくせに…”

小声で呟く。

S 先生、先生、私にも何か買ってください、ね?ね?

アロナが頼み込み、俺は眉を上げる。

 

“まあいいが…でもどうやって食べるんだ?”

好奇心から呟くが、アロナは答えない。ともかく、アロナのために余分に買って、レジへと向かう。

 

店内に心地よい音が鳴り響き、幼い声が聞こえる。「あぁ~~~~!遅刻遅刻!どうしてギリギリになってから言っ──」ガスマスクにボディアーマー、全身を覆う装備を身にまとい、堂々とそびえ立つ大人。そんなレジの前に立つ俺を見て、突然動きと声を出すのを止める。俺はグローブをはめた手を上げ、挨拶をする。

 

“よっ”

 

むしろ逆効果だったかもしれない。彼女の青い瞳は恐怖で見開かれ、すぐにすぼまる。その表情から、泣きそうになっているのが分かった。俺はすぐに視線を逸らし、レジのカウンターに身を乗り出す。

“早く出勤したほうがいいぞ。”

 

彼女はそのことに気づいたかのように瞬きをし、カウンターの周りを素早く動いて奥へと消えた。くぐもった音が聞こえに聞こえ、やがて、姿を現す。青いエプロンを身に着け、片方の紐はずり落ちている。金髪はかき上げられ、額が露わになっていた。

「なんとか間に合いました!ありがとうございます、せんせ──」

 

もう一度固まり、恐怖がよみがえったのか固まって俺を見ている。俺は手を伸ばし、ガスマスクを外して脇に置き、小さく微笑む。

“どうも、俺はマテオ・ヴェルネス。シャーレの顧問だ。よろしく…ソラ。”

 

「ど…」恐怖で言いよどむ、「どうして私の名前を?」

 

眉をひそめ、エプロンに付いている札を指差した、

“名札があるじゃないか。”

 

「そ…そうでした!」嵐に舞う木の葉のように震えながら、彼女は叫んだ。

 

ため息をつき、できるだけ笑顔でこう尋ねる。

” で、君みたいな若い娘が何のためにここで働いているんだ?”

 

「が…学費を払うためにお金が必要で…」未だ震えながらも説明する。「だ…だから私みたいな年齢でも雇ってくれる場所はここしかなくて…」

 

マジで?はぁ…

 

“それって合法なのか…?”

小さく呟いて自問したが、彼女は背筋を伸ばしたので聞こえたのだろう。

 

「はい、と…とても合法です…な、何も悪いことはしていませんからぁ!」声のピッチが高くなり、泣く。ため息をつかざるをえなかった。

 

“何でこんなに震えてるんだ?俺はただ…”

あごに手を当てながら、言葉を濁す。

“まあ…無害な存在だと言ったら嘘になるが…でも悪魔そのものを見つめているみたいな顔になっているぞ?”

 

「う、うぅ…」そわそわしながらぎこちなく、言葉を濁した。「ヘ、ヘイローがない先生が、あちこちで悪い子をお仕置きし回っているという噂が…」

 

本当かそれ?まあ、それが良いことかどうかは分からないが。

“まあ、俺はお仕置きするために来たわけじゃない。そんなのはただ単に残酷なだけだ。”

 

「ほ、本当なんですか?」少し怯えが落ち着いてきて尋ね、俺はうなずく。

 

“ああ、ただ食べ物を買いに来ただけだ。昨日は忙しくて何も買えなかったからな。”

俺は説明しながら、カゴをカウンターに置き、ソラは瞬きをする。

 

「な、なら…カフェで何か買えば良かったのでは……?」そう聞いてくる。恐らく居住区のカフェのことだ。

 

“そうだな。だが昨日は閉めておいてた。”

説明を続ける。

“昨日は散々な一日だったし、暴動の直後だったから従業員に迷惑をかけたくなかったんだ。”

 

居住区には様々な施設や活動があり、そのほとんどがシャーレと俺の収益源にもなっている。保管庫の格納され、メンテナンスされている車両などの管理するものは多い。

 

「では…今日は開いてるんですか?」そう聞くと、俺はうなずく。

 

“そうだ。何か欲しいのなら後で行けるぞ。”

そう付け加える。

 

ソラは礼を言いながら、購入額を伝えてくる。俺は思わず身震いした。SHDの訓練生だった時代でも、授業料を払わなければならず、その金額は高かった。それに加え、俺は金銭が価値を持つ世界にいる。俺の金銭感覚は完全にぶっ壊れていて、あらゆるものが異常に高く感じる。それだけではなく、この世界では円が使われているせいで、ドル換算するには100で割らなければいけない。

 

その事実に動揺するも、スマホを機械にかざし、食べ物の支払いが完了する。「お買い上げありがとうございます!」

 

俺はうなずき、衣料品売り場に目をやり、軽く唸る。まあ…悪くないな…

 

服を探そうか向かおうとしたその瞬間、ソラが声を掛ける。「あの…先生」指をもじもじと動かしながら、不安げに続ける。「れ…連邦生徒会長に雇われたっていうのは…本当なんですか?」

 

その問いに俺は少し考え込み、ソラへと向き直り答える。

“それは…まあ、ややこしいんだ。でも、生徒会長がなぜ消えたのか、どこにいるのかって聞きたいのなら、答えは「分からない」。”

 

ソラはため息をつきながら、がっかりした様子を見せるが、同時に、理解もしているようだった。「かなり…変わった人っていうのは聞いたことあります。」

 

“俺は今までで見たことがないような変わったものをここで何度も目にしてきた。”

俺は笑いながらそう認める。

 

“信じてくれ、俺の「変なもの」という基準なんてのは簡単に変わってしまうんだ。”

 

そう言い終えたあと、服を購入し、すぐに着替えるために店を出た。

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