ふらつきながらエンジェル24に入り、俺は床に倒れこむ。ソラはショックを受ける。「先生ぇ!?」
“ソラ”
そう呟く。俺は肘をついてなんとか体を起こし、ため息をつく。
“つかれた。”
腹が減っていて、今すぐにでも何か食べたい。頭痛もひどい。
「あのう…温かいお茶いりますか?」
“ありがとう。”
なんとか体を起こし、ため息をつく。ソラは準備を始めていた。
“で、今日はどうだった?”
「平和でしたね。」彼女はそう答え、続ける。「今日は客足が少なかったので、やることは特に何もありませんでした。それよりも、先生宛てのお手紙がいくつか届いています。」
ソラはそう言いながら、電子レンジが低く唸っている部屋を出ていった。
数秒後、手紙を持って現れ、それを俺に渡した。それを掴むと、馴染みのある感覚が体を駆け巡る。
それはエージェントとしての活動を開始した時。
SHDテックがすべてオフラインになる前の時。
ブラックタスクが二度三度もの侵攻を仕掛け、俺たちが追い出した時。
さらには、アーロン・キーナーとそのローグどもを狩るために派遣された時。
そして、
アメリカ中を転々とした数々の異動の時。
それは覚悟と決意の感覚だった。
アロナとISACもまた、期待に胸を膨らませながら手紙を見つめている。アロナのホログラムは前のめりになり、そのヘイローは興奮を示すかのように緑色に輝いていた。
一方で、ISACのオレンジ色のホログラムの目は焦点を失い、情報を抽出する準備に入っている。
常備しているナイフを取り出し、封を切る。中から手紙を引き抜き、内容を読み始めた。
| S ふむふむ…アビドス高校ですか… |
アロナが呟く。
一方、ISACは画面を見ながら眉をひそめる。
| A 妙ですね。衛星が特定の地点で強い干渉を受けています。一部の場所ではジャミングがされています。 |
AI同士が会話する中、俺はソラの喉が鳴る音を聞く。俺がソラの方を向くと、彼女は体を震わせた。そして、俺は自分の姿を反射で目にする。
俺はひどく…ひどく憤慨していた。連邦生徒会のような政府がどうして管轄区域の一つをこんな状態にしたんだ?
シャーレはSHDと似たものだ。だから両方ともに、どんな状況でも最後の切り札となるべき存在だ。それなのに最初の対応がこれか…?
目を閉じ、息を吐く。
“ごめんソラ、ちょっと嫌な知らせが入ったんだ。”
それを聞いて、彼女は少し落ち着いたようだった。
「そ…そんなに嫌なものだったんですか?」紙コップを置きながら問いかけてくる。俺はマスクを外し、首元に垂らしたまま温かい液体をひと口飲む。しかし、怒りと苛立ちのせいで味なんてのはわからない。
こういう状況こそが俺の専門領域であり、訓練を受けてきた分野だ。だが、俺は行間を読むこともできる。
まず、校舎はどの地区においてもホワイトハウスのような存在だ。動かすことはできるが、本来動かすべきものではない。つまりは、ギャング程度の勢力が脅威になり得るというのは何か裏があるということだ。
D.C.でさえ、アウトキャスト、トゥルーサンズ、ハイエナ、ローグエージェント、そして裏で暗躍するブラックタスクの脅威に晒されてこそ、追い詰められた状況になったのだから。
俺はテーブルを指で軽く叩きながら、ため息をつきつつ会計を済ませる。
“すまない。ソラには関係ない話だった。”
「あ、いえ、大丈夫です。」彼女は言葉を詰まらせる。「何か他に必要なことは?」
俺は再びテーブルを軽く叩き、深く息を吐く。
“誰か来たら、オフィスは業務上閉鎖するがそれ以外は開いていると伝えてくれ。”
そう告げて、俺はエンジェル24を後にし、オフィスへ向かう。
“ISAC、地区のマップを生成しろ。アロナがファイルを見せてくれた。この件の真相を探る必要がある。”
その言葉とともに、俺の頼れるAIたちが動き始める。アロナが最初に作業を終え、俺は座り込みながら、少女たちの弾薬の必要量を記録し始める。
小鳥遊ホシノ、最年長の生徒で元生徒会副会長だ。彼女なら何か知っているはずだ。だが俺はアメリカにはいない。だからそこへ行って、ただ要求するわけにはいかない。
ため息をつきながら、他の子たちのファイルを確認する。必要な物資はすでにまとめられており、その時、ISACがシッテムの箱の画面に現れる。
| A エージェント、こちらです。追加情報も記載しましたので、確認してください。 |
その言葉に俺はうなずく。
“助かる。”
俺はAIに礼を言いながら、ファイルを開く。
状況は想定したものよりも最悪だった。少なくとも”二十年前”の衛星画像を確認すると、大きく活気に満ちていた地区が、今では荒れ果てた砂漠へと変わっていた。生徒の数は年々減少し、住民たちも姿を消していき、砂漠化はますます進行していた。
奇妙なことに、車両や建物が設置されているのが目に留まり、俺は目を細める
“ISAC、砂漠にいるのは誰だ?”
| A カイザーPMCです。 |
PMCという単語を聞いた瞬間、俺は舌打ちをした。
| A D.C.に置き換えた場合、このようになります。 |
圧倒的な赤の量と、唯一の緑であるアビドス分校の対比を目にして俺の心は沈む。「コントロールポイント」では、武器や弾薬、その他の物資が次々と運搬されている。俺はただ歯を食いしばった。
優しく、シッテムの箱を机の上に置きながら、怒りを抑えようと試みる。
だがそれが出来たのは壁を殴った瞬間だけだった。
怒りと憤りが俺を突き動かし、俺は武器庫へ向かう。
今この瞬間も、あの生徒たちはギャング相手に助けを必要としている。あそこは彼女たちの地区だ。俺のような余所者が、問題点をただただ指摘していく必要はない。
俺は息を吐きながら、エレベーターを降りる。ああ、大丈夫だ。問題はリーダーたちに任せて、お前はお前の仕事をやれ。
まず簡単に展開できるよう全てを準備し、整える。それから、必要になるかもしれないから、予備の弾薬や物資を補給用のクレートに入れておこう。
武器庫に着くと、弾薬をテーブルに並べる。ショットシェル、弾薬、その他の物資を箱に詰め、最初の補給用のものをきっちり並べてバッグに詰める準備をする。だがその前に、声をかける。
“なあアロナ、クラフトチェンバーにアクセスしてこの口径用の特殊な弾薬をいくつか作ってくれないか?”
| S 出来ました! |
アロナが声を上げると、俺はホログラムの画像に向けて微笑む。
“助かる。次は…バッグだ。”
バッグを見つけると、それを手に取り、ショットシェルが入った弾薬箱、アサルトライフルのマガジン、そしてピストルのマガジンを詰め込んでいく。
自分のゴーバッグの経験が活きる。それぞれの口径用の予備の弾薬箱も加え、軽くうなずく。
クラフトチェンバーに立ち寄り、特殊な弾薬をバッグに詰めた後、部屋を後にする。月が覗く中、小さく呟く。
“ISAC、アビドスの最初のパラボラアンテナにウェイポイントを設定しろ。向かう頃にはもう手遅れだろう。だから通信状況の改善に向けて手を打つぞ。”
駅へ向かい、唯一のアビドス行きの列車を待つ。そしてそれは急ブレーキをかけて、ゆっくりと俺の目の前に止まる。無意識のうちにカードリーダーを飛び越えた俺に向けられる視線を無視しつつ、列車に乗り込み、座る。ISACとアロナがまとめたエリアの情報をじっくりと確認する。
スマホを確認し新着のメッセージが入ったモモトークを見て、微笑んでポケットにしまう。
用心しろ、アビドスの無法者共──この町に新たな保安官が参上だ。
[作者あとがき]
楽しんでもらえたなら嬉しいよ。そしてコメントもありがとう、読んだり返信するのが楽しいんだ。これで言うことは全部かな?
あっメリークリスマス!素敵な年末を!
【編集】
約14000単語、どうやって書き上げたんだろう?
[訳者あとがき]
色々と調べる必要があったりして結構な長丁場になりました。日本の文化との違いをまじまじと感じるチャプターですね。
次回からアビドス編が始まります。