The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.5-02 アビドス自治区 ???

完全に迷ってしまった。

この忌々しい場所は、入り組んだ通りと行き止まりばかりで、そしてまともにデータが入らない歪んだパラボラアンテナのせいで、状況はさらに悪化している。

 

それでも、砂に飲み込まれたアビドス自治区を見渡せば、その衰退が肌で感じられる。

 

A ECHOを検出。

 

ISACが10回目の報告をする。その指示に従いながら進んでいくと、俺は見覚えのある光景に辿り着いた。

 

かつて商店だったと思われる建物の前に、ECHOの壁が待ち受けていた。オレンジ色と青色の光が混じり合い、俺の側にアロナが現れる。

S これで…

そして喋り始める。

S 私たちの姿を写していたんですね。

 

A その通りです。

ISACが答える。

A 通常、ECHOは立体的な静止画のみに限られていますが、アロナのおかげで、

ISACがアロナを見て、アロナの表情は明るくなる。

A 動画を生成することが出来るようになりました。

 

S えーへっへっへっへ~

アロナは恥ずかしそうにくすくす笑い、俺は頭を振りながら微笑む。

 

アビドスでは、誰もがこの街の衰退を肌で「感じられる」。俺にもそれが「見れる」。

 

ECHOに入ると、データの断片が収束し、一つの映像が形成される。最初は驚いたが、すぐに慣れた。それでも、まだショックは残ってるが。

 

そこに見えるは犬と猫の家族…だが、俺が知っているような四足歩行の生物ではない。二本足で歩き、人のように話し、そして人間と同じように生活していた。帽子を外し、頭を掻いた後、再びかぶりながらため息をつく。

“実際に会った時に固まらないといいんだけどな。”

 

そう言いながら、ECHOの再生が始まる。音楽が流れ、子供たちは歓声を上げながら駆け回る。俺はその中心にいた。だが、いつものように異変が目に付く。

市民の姿を確認し、そのプロフィールを見ながら眉をひそめる。駅や大通り、廃墟となった遊園地らしき場所…そこかしこにいるほとんどの住人はもうアビドスにはいない。

 

ECHOの映像は続く。映し出された家を再現したものを見る。俺のような人間にとっては高級に見えるその家も、ここでは一般的なものだった。それに、このECHOが記録されたのは、そう昔のことではない。それがこれほど早く廃れていったのか…

 

おかしい。何の前触れもなく、何の警告もなく、ただ何もなく、それは突然訪れ、去っていった。

もちろん、偶然だと言うこともできる。以前から砂嵐が頻繁に発生していたのは事実だし、自然災害は制御できるものではない。時には完全に察知されることなくやってくることもある。

 

A 見覚え、ありますよね?

ISACの言葉に、俺はうなずく。

 

“ドルインフル”

あの時の報道やアウトブレイクの報告が脳裏をよぎる。

“ゴードン博士はサイコパスだった。”

アロナがECHOの中で遊び続けるのを横目に、俺は尋ねる。

“…ここでも同じことが起きたと思ってるのか?”

 

ISACは数秒沈黙する。

A 私はただあなたを支援するために存在しています、エージェント。

 

その答えはとてもISACらしいものだった。ニヤリと笑みを浮かべ、頭を振る。

“そうだ、お前の言う通りだ。”

 

俺たちは遊ぶアロナの姿を見つめながら、しばらくECHOの中で楽しそうに笑い合う。その後、俺はアロナに声をかける。

“アロナ!行くぞ!”

 

それを聞いたアロナは俺の方を向き、目の前に姿を現す。

S はーい!

 

俺はアロナの頭を撫で、歪んだパラボラアンテナの方向へと足を向ける。ECHOを後にし、思考に耽る。

 

ドルインフルは人の手で造られた災害だ。狂信的な進化論者(ダーウィニスト)によって解き放たれ、アウトキャストやキーナーのローグのような奴らによって拡散された。

これと比較するのは間違っているような気もするが、それでもおかしいぐらいに結びついてしまう。情報を多く集めるまで結論は出せない。だからこそ、俺もISACの姿勢を見習い、自分が訓練された通りに動くしかない。

 

 

少し歩いた後、歪んだパラボラアンテナの場所を見つけることができた。

 

まあ、成功だったと言えるかもしれないが、問題はギャングが待ち構えていたことだ。少女たちは赤と黒の服をまとい、悪趣味なヘルメットをかぶっていた。

兵士と不良という変な組み合わせ…いや、むしろ兵士になりきろうとする不良だ。かつて虐げられてきた勢力を装いながら、人に爆弾を巻き付けて死地へ送り込ませていたアウトキャストのようなものだ。

 

エミリーンの身に起きたことは最悪の悲劇だった。ルーズベルト島を巡る一件は、さらに大きな混乱を起こしてしまったが、それはまた別の話。

 

スマートウォッチをタップして、タクティシャンドローンが飛び始める。敵をスキャンして、俺は唸る。敵は14人。ミニガン2人、アサルトライフル6人、残りはショットガン。

 

そうだな、まずはミニガンから片付けるぞ。

 

俺はM9にサプレッサーを回して装着し、建物の周りを忍び歩く。飛び越えられそうな場所を探し、発見する。

 

壁を飛び越え、身をかがめ、銃を構えながらPulseを放つ。周囲には誰もいない。俺はミニガン持ちの方へと静かに歩を進める。

 

そのうちの一人が、クレートにもたれかかりながら辺りを見回している。俺も辺りを見渡して他には誰もいないことを確認し、動く。

 

敵の背後に回り込み、行動を起こす。俺はチョークホールドを仕掛け、首を力強く締め上げ、後ろへと引きずりこむ。が、敵は抵抗する。

その力は、この街のヘイローがある者と同様に異常だった。だが、彼女らとは違って俺には”経験”があった。

 

シーッと言いながら、首を力強く締め続けて敵はゆっくりと窒息していく。目が虚ろになって顔が青ざめる早さは慣れていたのよりも遅かった。

 

ようやく、敵は崩れ落ち、気絶して安堵のため息をつく。ほぼ無意識で身体を探り、指先が長方形の物体を掴み、そのスマホを引き抜く。

“ISAC”

俺が小さく呟くと、AIが通話履歴を調べ始める。どうやったのかは分からないが、そこには「パラボラアンテナを封鎖しろ」という指示に関する通話が残っていた。

 

ため息を吐いて肩を回す。大勢の女の子たちがいる部屋の中で、もう一人のミニガン持ちに向かって歩き出す。ドアのそばで待機し、閃光弾を両手で転がしながら作戦を練る。ため息をつきながら顔をしかめる。ドアを開け、ピンを抜いて、閃光弾を投げ入れる。

 

「なんや──」敵が反応し始めるも閃光弾は爆発し、閃光で敵の視界は一時的に奪われる。俺はドア開けてケミランチャーを持ち、キャニスターを発射してそこからガスが噴出し始める。

「ちょま──」

 

銃声が鳴り、ファイアスターターキャニスターのガスが引火して爆炎が噴きあがり、中にいた敵が倒れる。だがそれは他の敵へと気づかれることとなる。息を吐いて、目を回す。

“始めるとするか。”

 

M4を構え、ホロサイトで狙いを定めると、パニックになった敵が次々と部屋へと入っていくのを待つ。

 

最初の一人が現れた瞬間、俺はディセントを思い出した。激しい銃撃の中、ヘルメットをかぶった敵は気絶し、ヘイローが一瞬ちらついて消えた。残りが後退を試みる中、俺はその隙を逃さず連射し続け、何発かが命中して敵数人を倒した。

 

マガジンを交換して静かに前進する。タクティシャンドローンが扉を狙っている敵の輪郭を表示した。背中に手を伸ばして追尾マインを掴む。そしてその円形の爆発物が起動し、扉越しに投げ込んだ。

 

唸るような音を立てながら回転し、集団へと近づいていく。「えっなにこ──」

 

マインが爆発し、集団を倒すと俺は駆け出す。廊下の向こうで驚いている人影を発見し、サイトのクロスヘアに頭を合わせて銃撃を浴びせて敵を倒す。前進を続け、這って逃げようとする敵の背中を踏みつけ、銃弾を放ち、ヘイローは気を失うとともに消える。

 

バックショット弾が胸に命中し、俺はひるむ。アーマーの耐久力を示すバーがかなり下がったので遮蔽物へと身を隠す。二発目の弾をかわした後、隠れた隙間から顔を覗かせ、よろめきながら現れた敵の胸に向け射撃した。

続いて遮蔽物を飛び越え、敵を壁に叩きつけ、ストックで一撃を加えると、その衝撃で敵は転倒。さらにもう一発撃って、完全に気絶させた。

 

小さな建物を出たとき、HUDから更に近づいてくる敵が捉えた、敵は全員遮蔽物の後ろにいて、残りのショットガン持ちとアサルトライフル持ちを確認できた。

 

ISACブリックに手を伸ばし、滑らかで傾斜がついた基部とアンテナを軽く引っ張って取り外した。代わりに、アンテナのないざらついたものを取り付ける。それにはインディケーターリングに突き出た装置があり、底部には茶色のアタッチメントが付いていて、ブリックの黒い本体とは対照的だった。

 

タップすると、HUDが点灯しバンシーPulseの円錐が狭まっていく。それが敵を包み込むと、もう一度スマートウォッチをタップし、不思議なエネルギー波が放たれる。混乱してよろめく敵達を横目に、俺はM4を取り出して構えた。その後、次々と銃撃を放っていって残りの敵を次々と倒していった。

 

ひとりになった俺は、ため息をつきながらアサルトライフルのマガジンを交換したのち、背中に担ぐ。

“さて、アンテナを再調整する時間だ。”

少し手間取ったが、ようやく操作盤にたどり着き、入力を始めると、アンテナが音を立てながら動き出す。

“ISAC、俺が指示するまでアンテナはロックしておけ。”

 

A 了解、コントロールをロック。

ISACがそう言うのを聞きながら、俺は軽くうなずく。

A マップ、運用可能。

 

“よし。”

目を擦りながら呟く。

“疲れたし、他のことは後でやろう。”

 

それから、弾薬の入ったバッグを置いてある仮のキャンプへと足を進めた。何も起こらなければいいが、ISACが何も言わないので問題ないはずだ。

 

使っているセーフハウスに戻る途中、尾行を複雑なルートを選び、ようやくたどり着く。中へ入ると、眠るためのソファを見つける。そこへ倒れ込むように横たわり、目を閉じて眠りについた。

 

やっぱり眠れない。目を閉じるたびに悪夢が戻ってくる。ここ二日間は学校に関する心配事が何もなかったため、少し楽だった。しかし、今は気がかりなことがあるせいか、また悪夢が騒ぎ始めた。

震える息を吐きながら、自販機で買った牛乳を手にして小さな焚き火で温めた。

 

それにしても、スナック以外のものを売っている自販機とはな…

 

確かに、文房具を販売する自販機は大学で見たことがある。しかし、弾薬や焼夷手榴弾、それに温かい飲み物まであるんだって?そんなものはアメリカでは見たことがなかった。

日本では珍しくないとは聞いていたが、実際に目にすると驚きだ。

 

窓枠にもたれかかりながら温かいミルクをすする。これで少しでも安らかに眠れること祈る。そうでなければ、化粧道具を取り出して顔にできたクマを隠すしかない。旅が終わる月はいつもそうだった。

 

静まり返る衰退した街区の中で、俺は動きを止めた。

“ISAC”

そう低く呟きながら、いつもの靴を手に取る。履き古されてボロボロで替える必要があるが、まだ使える。

ジャケットを服の上に羽織り、M9のマガジンを数本手に取り、他の荷物はそのままにしておく。

“アビドスへの配送があるか確認してくれ。”

 

A …現時点では何もありません。

 

ISACの声を聞きながら、俺はゆっくりと街を進むバンを目で追い、それに続く車両を確認しながら、自分が焚いていた火を消した。

 

“じゃああれはどこから来たんだ?”

呟きながらスマートウォッチをタップすると、スキャナーPulseが広がり、輪郭を描き出したものを確認すると…

 

ちょっと待て、あれはロボットなのか?

 

目を細めて、鋭い輪郭と武器を見て、胃の奥に冷たい感覚が広がる。そしてただひとつ、軍用のロボットとは異なる角ばったフレームじゃない機体が目を引いた。

 

なぜだ…?

 

A ブラックマーケットのようです。

ISACの言葉が思考を遮る。

 

俺は身を低くし、危うく視認されそうになりながら、唸る。

“どうしてブラックマーケットがここに?”

そうひそめた声で言いつつ、キャラバンが去るのを待つ。ロボットの存在について考えるのは、後に回すことにした。

 

A わかりません。ですがほとんどのものがローカルサーバー上で動作しているため、アクセスは出来ません。

ISACがそう言うと、キャラバンは進み続ける。

 

…知らないことが多すぎる。あのバンに乗っていたのは誰だ?なぜロボットがいる?バンの奴らはカイザーの関係者なのか?

 

少女たちの要望に従うのは最善策ではないかもしれない。むしろそれが問題を悪化させる可能性すらある。

だが、俺には何ができる?

アメリカなら、直接入り込んで情報を求め、地元当局と協力して解決する。

しかし、ここでは手続きが多く、法律も厳格に遵守しなければならない。それに、俺は先生として手本にならなければならない。

 

カイザーは何かを企んでいるのか?連邦生徒会は何かやらかしたのか?疑問は尽きないが、答えにたどり着く証拠が十分ではない。

 

本来なら、眠って朝にアビドスへ向かう予定だった。だが、今すぐ動くべきなのか?少なくとも、少しでも近づいておくべきか…?

 

生徒たちに話すべきか…?

 

…俺は何を知っている?

 

息を吐き、ゴーバッグを肩にかけると、弾薬の入ったバッグも手に取り、部屋を出る。

“ISAC、アビドスへの道を表示してくれ。”

 

A 了解。

HUDにウェイポイントが表示され、線にそうように俺は走り始める。

 

いいかマテオ、こ・た・え・ろ。

 

これは活動としてカウントしていいのかは分からないが、今はそれでいい。SHDネットワークにはすでにアクセス済みだ。次は作戦基地の確保だ。アビドスが受け入れてくれればいいのだが…。

 

幸い、日が沈んで涼しくなっていた。

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