温泉開発部のグループが警備を兼ねた交通整理をしており、雑談を交わしている。「で、風紀委員はもう来たの?」
「いや。」一人がスマホを確認しながら答える。「グダグダになってるみたい。でもヴァルキューレが来てるって。」
ぶるぶるぶるっと身震いするもう一人。「風紀かヴァルキューレにぶち込まれるならどっちの方がマシなんだろ…」
初めに口を開いた者が興味深そうに、身震いした者に振り向く。「そりゃあヴァルキューレだよ。風紀と違って抜け出すのには苦労しないからね。」
「心配してるのはそれじゃないんだよ。問題は…」その部員は息を呑み、悪寒が走る。「────尋問だ。」
「風紀よりもアレってことはないでしょ。」別の部員が交通整理を続けながら場に加わる。「そうそう、ちょっと手伝って。もうわけわかんなくなってきたから…」
その仲間が合流し最後の一人が口を開く。
「嗚呼、ぼくはねえ、どっちともに捕まえられたことがあったけど、ヴァルキューレの方が良かったねぇ。」その言葉に別の部員がその者へと向き直る。
「狂犬に尋問されてないからそう言えるだけじゃん!」そして自らを抱きしめ、震え上がる。「マジで冷酷無比だったんだよアイツ!ホントに!」
“どうやら法を破っているようで。”
低く篭った声が発せられた。だがそれは生徒のものとは違った。部長でさえもよくボーイッシュだと言われるが、それとも違うトーンだった。
“そして尋問官にとってはよくあることと。”
「まあそうなんだけどね!でも──」そう言いかけるも、ここで話し相手が誰であるかを気が付く。
ボディアーマー、バックパック、帽子、顔だち…それは唯一無二の存在である、先生だった。
「あっ、こんにちは先生。」彼女は礼儀正しく挨拶し、他の者も一斉に頭を下げる。
“そんなことはしなくていい。”
マテオが手を振りながら応じる。
“君たちが温泉開発部か?”
「あたぼうよ!」一人が元気よく声を上げる。「そこに温泉があるから我々がいる!いや、たとえ温泉がなくても我々がいる!それが温泉開発部!」
“ほぼほぼ違法だけどな。”
マテオがそう指摘し、彼女らは肩をすくめる。
「まぁそう来るだろうねぇ。」一人が言葉を紡ぎかけるも、その時に爆発音が響く。
“うわっ何だいきなり!?”
爆風でバランスを崩しながらマテオが叫ぶ。
“一体何の爆弾を使ったらこうなるんだ!?”
ブラックタスクがCDCを掘削していた時の光景を彼は思い出す。
「ドカンと凄いのを。」一人が親指を立てながら答える。
“ちゃんと責任を持って使っているよな?”
少女たちを見ながらそう問いかける。
“ヘルメットを被っているだけじゃないよな?”
「もっちろん!」別の者が答える。「ケガしちゃうとせっかくの楽しみが台無しになっちゃうからね!」
“それは良かった。俺が君たち全員の責任を負うのは無理だが、誰かが怪我をしたっていうのは聞きたくないからな。”
マテオが安堵の色を見せる。だがその言葉に、部員らは頬を赤らめ、視線をそらしてしまう。
“それで君たちのその…リーダー?部長?…はいるか?まだキヴォトスの用語には慣れてなくてな。”
「うん。」一人がマテオの隣へと移動し、封鎖エリアを指さす。「あそこに行って赤いシャツか赤髪の人を探して。前者が部長で後者が副部長だから。そういえば、何探してるの?」
“爆発物とドリルを扱えられる人を探している。ただし、温泉のためではないが。”
マテオがそう付け加えると、部員らは露骨に落胆する。
“とはいえ、君たちがここで騒ぎを起こしていたおかげで、試しに訪ねてみる気になったんだ。”
「おお。ならこのまま進もうねぇ。」部員がそう答える。「そしてこれも着けようねぇ。」そして白いヘルメットを手渡す。「爆発、破片、その他もろもろ……結局のところ、貴方は先生だ。ぼくらのせいで脳の一部がなくなっちゃうとなれば大変だ。」
“ありがとう。”
マテオは帽子を外してしまい込み、ヘルメットを被る。いくつか調整をした後フィット感を確認して部員たちにうなずく。
“では気をつけて。”
『はい!』
彼女たちは元気に答え、マテオは封鎖エリアへと足を踏み入れる。そして少女たちは再び仕事へと戻る。