The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.6-04 工事現場 封鎖エリア

「ハーッハッハッハッ!」これがエリアに入って最初に聞いたものだ。メンバーたちは熟練の動きで作業していて、情熱に溢れていた。

「そうそこだ!あともう一発で掘り出せるぞ!」若い茶髪の少女が声を出す。頭からは角が生えており、赤いヘイローには熱気を表すかのように曲線が描かれていた。ショートパンツに赤いボタン付きシャツで、長い白衣を肩に掛けたまま、大きく手を振っている。

 

「いっえ~い!さっすが部長!もう一個で最後だね!」赤髪の…そう、Redhead(赤毛)だ。見ないものだが、正真正銘の赤毛だった。彼女は興奮しながら声を上げていて、背中には馴染みがあるガスタンクと火炎放射器が目に入った。

腰には黒いジャケットを巻きつけ、ノースリーブのシャツとショートスカート、太もも丈のソックスとブーツで、赤いヘイローは二層構造で、形は炎そのものだった。

 

ISACは前者を鬼怒川カスミ、後者を下倉メグと名前を表示してくれた。

 

大事そうなものを倒さないように、俺はゆっくりとエセテロリストの二人組に近づいてく

“おい!そこの二人!”

そう叫ぶと、二人は困惑して俺の方に振り向く。その時に俺はカスミの金色の目とメグの青い目と服にあるパッチと尻尾が細かく見え…なんで尻尾が?待てカスミにもあるぞ!?

 

なんで尻尾があるんだ?

 

そう考え込む間もなく、二人が自分自身を指差すと俺はうなずく。

“そうだ、二人はこの作戦のリーダーだよな?”

 

「うむ!」ニッコリと得意げな笑顔を浮かべたカスミが最初に話しだす。「鬼怒川カスミ、温泉開発部の部長だ。」

 

「下倉メグ!」と次に赤毛が口を開く。「えっと…」と視線を下へ落とし再び上へ上げて、俺をじっくり観察する。そして俺のヘルメットを見た瞬間、彼女の目が輝く。「新入部員だね!」

 

“断じて違う。だがいつか温泉に入ってみたいと思ってはいる。”

そう断言し、温泉開発部が掘った深い穴を見つめる。

“だが、このやり方を見るとちょっとな……”

 

「馬鹿言え、こいつは序の口だ!」カスミがそう堂々と宣言する。「ここの源泉は長くは持たない。何をしようがどのみち枯れてしまうから、今のうちに仕上げた方がいい。して、私を止めに来たのかい?せ~んせい?」

 

「えーっ!?」とメグが不満げに呻く。絶望したかのように大きく見開かれた目が俺を見つめて、俺の心には一抹の不安が生まれた。なにせ俺は敵地のど真ん中にいるからだ。周囲の皆も俺へ恐怖混じりの視線を向けている。だが作業の手は止めず、ペースを落ちていただけだった。「もうすぐ終わるから…ちょっと待ってくれない?」

 

“いや止めない。少なくとも今日はな。”

そう正直に答える。

“迷惑行為についてはさておき、通行人は通しているのか?”

 

「当然だとも!」声高らかにカスミは答える。「風紀委員やヴァルキューレに追われるのは別にいい。だが民間人に迷惑をかけ続けてしまうとなると今までの温泉開発は全て水の泡になってしまう。達成感が大きくなるから失敗するのは別にいいんだ。だが、何一つ成功しないのはそれ自体が失敗していることになる。」

 

“それを理解するのにどれくらいかかった?”

ドライなトーンでそう尋ねる。

 

「部長になってから数ヶ月といったところだ!」得意げな笑みを浮かべて誇らしげにそう語り、俺は頭を振る。

 

“そっかぁ…”

わざとらしく引き延ばしながら応じ、再び頭を振る。

“それで、来週あたりには忙しくなると思ってだな。”

 

「ほほーう?」カスミの瞳が文字通り小さな灯りとなって輝く。「交渉をしにここに来たと。シャーレも自前の温泉が欲しくなってきたのか?」

 

“残念だが、要件はそれじゃない。砂まみれの場所で爆破したり掘削したり、万一の場合は避難誘導もしてもらいたい。”

そして一つ付け加える。

“もちろん、タダでとは言わない。”

 

「ふ~~~~む…」顎に手を乗せカスミは唸る。「む~~~~う…」目が細められる。「ん~~~~…」

 

ようやく、目が開きうなずく。「いいぞ!ならどこで話そうか?」

 

“シャーレでいいか?”

ISACがスキャンテックを通じて車が来たことを知らせる。

“迎えの車を用意しておいた。乗りたいのなら乗ってくれ。”

 

「ああ!」カスミはそう言うとメグに振り向く。「メグ、私の代わりに指揮を執っておいてくれ。」

 

「やったぁーーー!」メグが歓喜の声を上げ、吠える…よりかは歌うように指示を出し始める。そしてカスミが俺に振り向く。

 

「さあ行こうか先生!」俺は車へと向かい、カスミが後に続く。

 

“部員は大丈夫なのか?”

フロントドアを開けてそう聞く。ドライバーがカスミに警戒して視線を向けるも、車は走り出す。

 

「まあ逃げるか捕まるしかないな。捕まったら捕まったで、釈放か派手に脱獄するか静かに脱走するかだ。」何の心配もなさそうにそう言う。「だが、シャーレに収容施設があるとは知らなかったな。」

 

“そんなものはないぞ。だが終わりが見えない書類仕事を懲罰としてカウントして、連邦生徒会を看守、俺を囚人扱いするならば話は別だ。だから…”

俺は振り返って鋭い視線をカスミへと向け、カスミが凍りつく。

“座席の下に忍び込ませた爆弾は起爆しない方がいい。そうすればしばらく鉄格子は見なくて済むぞ。Entendido?”

 

驚いたようで瞬きをした後、得意げな微笑みを浮かべる。「どうやら先生は思っていたよりもずっと洞察力があるな。どうだ?我が部に入る気はあるか?」

 

“キヴォトスの現政権との正式な契約を結んだ捜査官である以上、俺にはそのオファーを法的に拒否する義務がある。”

かすかに微笑みながらそう断る。

“そして契約がなかったとしても、悪いが温泉開発には興味がない。”

 

「そうかぁ~。それなら~…」得意げな笑みが大きくなっていく。「宿題を手伝ってもらっても?」

 

あどけなく、俺は唸る。

“そうだな、それはまったく別の問題だ。だが今の俺はとても忙しいし、かなり疲れている。だからこれ以上睡眠不足が悪化する前に完全に終わらせておきたい。”

 

「なら先生、こっちは何をすればいいのかい?」カスミが興奮気味に聞いて、座席の下の爆弾を外す。

 

“アビドスは知っているな?”

カスミはうなずき、ため息をつく。

 

「ああ、砂に埋もれてしまったのが残念だ。数年前の別の部長だった頃の部は温泉開発を手伝ったこともあったんだ。」カスミが肩をすくめ、俺はうなずく。

 

“まあ、校舎に必要なものがある…というよりかは対策委員会が必要としている。”

”悲しいことに、この自治区にあるほとんどのものは全部砂に埋もれているが。”

そう説明するとカスミはうなずく。

 

「ふむふむなるほど…つまり中に入って取ってこいと?」

 

“違う。道を拓くだけでいい。出来れば脱出口も頼む。回収はこっちの方でやる。”

 

「簡単そうだが…」カスミはそう言うと俺の方に視線を向ける。「何か裏があるのだろう?」

 

“大方予想がついていると思うが、接敵する可能性があったり、計画が狂う可能性だったり、まあいつものやつだ。報酬は…”

言葉を濁すと、カスミの目は輝いていた。

 

「確かにお金というものは良いものである。だがしかし、我々は温泉開発部だ。」カスミが身を乗り出して口を挟む。「そんな我々が一体、何をやりがいにしていると思うかね?」体を揺らしながらそう述べる。「そう…世界はなんと残酷なものであることか…こんなにもみじめで可哀そうな我々は…温泉開発のような趣深いものに熱狂させてくれないのだよ…びえーん!」

ウソ泣きしながらそう言い、偽物の涙が頬に伝う。

 

口元がぴくりと動くのを何とか抑え、ここでカスミが本当に欲しているものを察した。

“そうだな、当ててやろうか。温泉開発の許可が欲しいのだろ?”

 

「ほう、気が利くねぇ~。」微笑みながら鼻歌混じりに答える。「だがその必要はない──」

 

“金だけで大丈夫と。”

俺が割り込むと、カスミはすぐに身を引いてゆっくりと横を向く。

 

「そ、そうだな…」

 

“ちょっと待ってくれ。”

シッテムの箱に目を向ける。

 

S しーっ!

アロナの声が耳に入ってくる。

S 先生、私やISAC先輩と話す時は脳内でも出来ますよ。

 

(一体全体どういう仕組みになってるんだ?)

そう脳内で問いかけると、アロナが嬉しそうに微笑む。

 

S そうそんな感じです!聞かれたくないことはこちらには聞こえないので、安心してくださいね!

 

(なら…)

再び脳内で問いかける。

(セーフハウスの資金は確保できたのか?)

 

今回はISACが答える。

A 各自治区のセーフハウスの数は少なく、特にD.U.郊外ではほぼ皆無といったところです。

しかしアロナが発見した連邦生徒会長に署名されている契約書には「エージェント及びその所属人員は、シャーレの資産を指定の保管場所に保管できるものとする。」と記されていました。しかも予算規模は通常のものより大きく、長い間貯蓄され続けていました。

 

S つまりはアビドスに温泉付きのセーフハウスが作れるっていうことです!

アロナが鼻歌交じりにそう言うと、俺はため息をつく。

 

(温泉に入りたいだけだろ…)

俺が脳内で非難するとアロナが弁解しようとして言葉を詰まらせる。

 

A エージェントが予算を越えて使うようなことがあっても、食糧予算を切り崩せばいいだけです。どうせ料理しないのですから。

 

S え~~でもこの前生徒さんたちのために何か作ってたじゃないですか。

アロナがそう指摘する。

 

A それについては奇跡でした。エージェントはケチで、特に自分自身のことになると顕著になります。靴があんなにも古い理由を考えたことはありますか?

ISACがそう指摘して、俺は言い返したい衝動に駆られる。

 

(おいおい、食べ物なんかはいらない。レーションバーとグラノーラバーだけで十分だ。)

そう不満げに言い返す。

 

A エージェント、そのような考え方は健康的ではありません。

ISACが冷静に忠告するも俺は目を転がす。

 

(そうか?俺はそれでシルバークリークやD.C.やニューヨークとかの…とにかくあらゆる場所で生き延びてきたぞ。)

俺が反論するとアロナの心配する気配が伝わる。

 

S だからといって健康な食習慣にはならないですよ先生。

 

ため息をつき、通信を"切って"カスミへと向く。

“まあ、ルールを守れるのなら、温泉開発をひとつだけ許可できる。”

 

「ひゃっほぅー!で、ルールとは?」カスミが身を乗り出しながら尋ねる。俺は指を一本ずつ立てて説明する。

 

“まず俺の承認が必要だ。当然だが、道路や建物の爆破は禁止。民間人へ危害を加えるのも駄目だ。”

説明を始めるとカスミの顔が徐々に歪んでいく。

“そしてシャーレ用の部屋を確保すること。それも、ちょっとしたおまけ付きのやつをだ。”

 

「ふむ…そのおまけというのは?」カスミが尋ね、交渉は続いていき俺はベストを尽くす。

子供にティーンエイジャーに大人に…色々な人に教えてきたし、逆に教わったりもした。そしてアメリカでの年月が過ぎるにつれ、人々はエージェントを目に映る物全てを撃つ邪悪な存在として見ることをやめ、そして暴力を振るわざるを得ないような場合、遠回りになるが対話による穏便にやり過ごすほうが好ましいと俺は知った。

だが常にうまくいくわけではない。それでも教えてきた時間が心理学的な洞察を磨き、交渉術と仲介スキルを向上していった。ドルインフル前でさえ、俺は政府機関を脅迫して所属を認めさせたことがある。

だが今は金が絡むんだろ?少し難しいが、それでもきっとやれる。

 

「ここでいいぞ。」カスミがドライバーに合図を送ると車が止め、カスミが動き出す。「風紀委員にでも見られてしまったら、私は先生に迷惑をかけてしまう。契約書を送ってくれればサインするか修正案を出すぞ。」

 

“分かった。”

俺はカスミの髪を軽く撫で、そしてカスミが驚く。

“厄介事に巻き込まれないように。アビドスの件を整理できたら連絡する。”

 

「あ、ああ!」わずかに赤くなりながらそう応じる。「では、またな先生!」車から飛び降りてそう言うと、俺はその茶髪の子に手を振って見送り、ドライバーはシャーレへの道を再び走らせていく。

 

しばし沈黙が訪れた跡、ドライバーが尋ねてくる。「あの…私、黙っていた方がいいですかね?」

 

“場合による。温泉に入りたいか?”

そう問いかけると、少し葛藤する様子を見せた。

“それに、違法な話をしていたわけじゃない。先生は重機を必要とするかもしれない仕事がある。だが使うのは無理だったが、たまたまそれを持っている部があっただけ。要はただの仕事の相談だ。”

 

ドライバーが身じろぎをする。「うぅぅ…じゃあなんであの時妙に違法っぽい空気だったんだろ…」

 

“まあ、法の外にいる組織の人間ってのはそういうものだ。”

少し諦めたようにそう答え、過去の自分の行動を思い返す。エージェントとしての活動がかなり経過した時期、争いが少なくなっていた頃、合法がどうか怪しい取引を重ね、それを成立させるための行動もしていた。

“…すまない。”

頭を振ってそう謝り、自分に失望したかのようなため息を吐く。

“車を降りてもらうよう頼むべきだった。”

 

「あ、いえ大丈夫です。」その少女は少し言いよどみながら言う。「ただうまくいって良かったです。先生が言うまで爆弾には気づかなかったので…」

 

“俺もそうだったぞ。”

そう答えると車が揺れ、ドライバーが驚いた顔を向けて俺は笑いをこらえる。

“収容施設の話を持ち出した時点で、最初から警戒していたのが明らかだった。”

そう言って新しい書類を作るためシッテムの箱を開き、ホログラムのキーボードが現れるとドライバーは興味深く「おおっ」と声を出す。

“彼女は温泉狂いかもしれないが、それでも同じ温泉狂い達をしっかりとまとめ上げている。指示を出せば部下は従う。それは部下のことを理解していて、責任を果たしているからだ。”

頭を振り、アヤネの返信を読む。

“覚えておいてほしい。狂気とは一種の薬物だ。単体では身体に害を与え、身を滅ぼす。百害あって一利なしだ。しかし、その狂気に熱狂する人が集まっていき、その人たちと付き合っていって、発展するとどうなる?嗜好用であれ医薬用であれ、単なる薬と価値ある薬の違いはどれだけの人間が関与しているかだ。”

語った内容を振り返り、ため息をつく。

“…すまない。”

 

「いえ、大丈夫です。」ドライバーはそう言う。「なんとなく分かる気はします。部長をやっていけるのはあの行動についていける狂気を持った人達がいるからですよね。」

 

“ああ、部隊の指揮も領地の管理も同じようなものだ。”

俺は上を見上げ、背もたれへと頭を預ける。

“そっちを例に挙げるべきだったな。”

 

「それだと…何か腑に落ちませんね。」ドライバーはそう認める。

 

“兵士も戦闘員も人間だ。そして人間は痛いのが嫌いだ。そんな連中を率いるには狂ってる必要がある。そしてそれについていく者もまた狂ってなきゃならない。リンちゃん(リニー) でさえ例外じゃない。”

俺は鼻で笑う。本当に…ほとんど会ったこともない、いきなり現れた男を元会長の推薦だけで頼るなんてどうかしている。

 

「そ、それは…」ドライバーが言葉に詰まり俺は頭を振る。

 

“正直言って、こんな場所を管理できる奴がいるのか?正気の沙汰じゃない。”

そう低く呟く。

 

これまでのことを処理してきたリンや以前の生徒会長には敬意を払っている。だがアビドスは別だ。

申し訳ないがリニー、君たちはもっと早く手を打つべきだった。そして今、俺がその尻拭いをすることになる。

 

アヤネの返信を再度読む。

 

ありがとうございます。こちらでも使える道具はありますが問題はないでしょうか?

 

返信を打ち込んでいく。

 

問題ない。こっちで助っ人を用意しておいた。承認さえ下りたら後は重機や爆発物とかに慣れているチームが動いてくれる。残っている問題としてはリニーに弾薬のことを頼むことだが、それについては時間がかかる。連邦生徒会はしばらく会議続きだそうで、俺やリニーといった面々は全員書類地獄に巻き込まれることになる。助っ人に設計図と詳細は送れば向こうは予備調査の準備ができる。

 

送信した後、契約書の文面をより正式な形へと調整する。ISACの助けを借りながら、アロナが温泉開発部向けの契約書を作成していく。後部座席にてISACが指摘してアロナがうなずく。

 

頭を振って、アヤネの返信を見る。

 

ありがとうございます!助っ人というのは誰ですか?

 

ゲヘナの温泉開発部

 

アヤネが入力中…が何度も表示されては消えていく。俺は契約書の方へと戻る。




[本文に出てきたEntendidoの解説とおまけ]
- Entendido(スペイン語)
en・ten・di・do, da, [en.ten.dí.đo, -.đa]
[形]
1 ⸨en... …に⸩ 精通している,詳しい,明るい.
Es muy entendido en matemáticas.|彼は数学に強い.
2 理解された,わかった.←今回のEntendidoの意味
palabras mal entendidas|誤解された言葉.
━[男] [女] 精通者,熟知している人,専門家.
según entendidos|専門家[その筋]によれば.
小学館 西和中辞典 第2版及びコトバンクから引用:https://kotobank.jp/esjaword/entendido

- Done and dusted(イギリス英語)
((英略式))完全に終えた;準備できた
goo辞書より引用:https://dictionary.goo.ne.jp/word/en/done+and+dusted/
(個人的に好きな熟語)
例文1:So I'd like to get this entire thing done and dusted before I can lose any more sleep.( )だからこれ以上睡眠不足が悪化する前に完全に終わらせておきたい。
例文2
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