こんにちは!ちょっと嘘をついちゃったかも。でも誓うよ、この章を公開したら、今度こそ本当に少しだけ疑似的な休載に入るつもり。 それと、みんなに聞きたいんだけど、このファンフィクションのタイトル、変えてみるのってどう思う?(訳注:現時点ではチャプターが21章まで公開されていますので気にしなくていいです。タイトルについても同様でThe Divideのままです。)
追記:細かい文法ミスを修正しました。
[訳者まえがき]
シャーレ回、そして日常(キヴォトス基準)回。
追記:作者による指摘を受けて一部文章を変更しました。
Chap.7-01 シャーレ
自己嫌悪というものはただただ己を嫌うだけではない。ずっと続いていくものだ。深く自分を憎んだまま眠ると、目覚めてもそれが続く。
当然俺もまたその例外ではない。アラームが鳴り、目を開く。そして「自分を一番酷評する批評家は、いつだって自分自身」であると証明する。
自分を罵るかのようにうめきつつ、体を起こし伸びをする。ソファへと沈み込むように座る。だが、当然沈み込めるはずがなかった。頭を振り、バッグへと手を伸ばす。グラノーラバーを取り出して、そしてまだ眠っているアロナのためにシッテムの箱にどら焼きを何個か置く。バーにかじりつきながら、今日の準備に取り掛かる。
まずは服。パジャマから、ジーンズと白シャツ、黒の半袖ボタンアップシャツを羽織り、ボタンは開けたままにする。服を着替えたら、次は装備。武器庫へ向かい、武器を保管しているセクションを開いてじっくりと見渡す。
いつもの武器を使うのも一つの手だ。だが今日は特に面白いことは起きないはず。とはいえ、静かな日があるとは限らないことをキヴォトスでの時間が教えてくれた。
長射程の武器は必要ないはず。ならサブマシンガンか?シャーレ内で戦闘が発生する場合は即座に対応する必要がある。ならショットガンか?
セーフティディスタンスという名前のMPXとララバイ──スイートドリームという結構前に拾ったSPAS-12を改良したものを選ぶ。
オフィサーM9を太もものホルスターに収め、コンタクトレンズを付けてスキャンテックへ接続し、イヤーピースを装着する。
“おはようISAC。”
いつも忠実な戦闘支援AIに挨拶をする。
| A おはようございます。 |
ISACが挨拶を返し、オフィスへ向かう。
| A またグラノーラバーですか? |
“ああ。”
そう答える。グラノーラバーは好きだ。だが一方、レーションバーは俺が高校を卒業する可能性と同じくらい味が薄い。
| A いずれにせよ、しっかりとした食事を取るべきです。健康的とはいえません。 |
ISACが小言を言い、俺は目を回す。
“もういいさその心配は。”
そう言って、コンピューターへ向いて起動する。そして新しい一日を始める。
“書類仕事と面接だけだったな?”
| A そうです。 |
ISACが確認すると、俺は処理が必要な書類の山に向いてため息を吐く。
当然、やる気が全部消え失せてしまい背もたれに沈み込む。
“…くそがぁ。”
ゆっくりと書類作業を始める。サインを記入し修正を加えていく。するとアロナが目を覚まし、俺が残しておいたどら焼きを食べる。
| S おはようございます先生! |
アロナが視界に現れ、笑顔を向ける。
| S また早起きしたんですか? |
“ああ。”
俺はそう答えながら、自分に関係あるのかないのかがわからないものにサインするという単調な作業を続けていく。
| S どら焼き、ゴチになりました!でもまだ物足りなくて~… |
“後でカフェへ行こう。”
そういって書類へサインをする作業を続けていく。
”行くのは昼過ぎだな。こいつを先に片付けておきたい。”
| S やった~! |
そう言って鼻歌を歌うと、消えていった。オフィスには俺だけになり、サインを繰り返していく。
ここで限界がきた。
“ISAC、ア・トライブ・コールド・クエストのElectric Relaxation*1を流せ。”
瞬く間に音楽が流れ始める。心を落ち着けつつも気力を取り戻せるリズム。頭を軽く揺らしながら、それに身を委ねる。
ようやく書類作業の進捗が見えてきて、深く息をつく。
“…少し運動をしないとだな。”
腕に刻まれた傷跡を見つめながら呟く。
“…やるか。”
そう自身に言い聞かせ、バックパックを肩にかけてジムへ向かう。
「先生?」白髪の警察官が、許可を得てオフィスへ入る。「いらっしゃいますか?少し授業をさせていたただきたくて…」キリノはゆっくりと進みながら尋ねる。「ドーナツを持ってきました…が…」周囲を見渡すも、先生の姿は見当たらない。
その時、鎖の音が響く。眉をひそめ、ドーナツを横へ置き、慎重にジムへと向かう。手首を返し、警棒を展開して注意深く進む。ドアの前にたどり着き、ゆっくりと中を覗き込む。
…
顎が外れそうになる。目を大きく見開き、喉がひどく乾いてくる。口を閉じれば、唾を飲み込む音が聞こえてくる。キリノはただ、目の前の光景を見つめる────先生のトレーニングを。
マテオはサンドバッグの前に立ち、ボクシングのスタンスを取りながらわずかに半身をずらし、さらに動きを変える。彼の手は片時も静止せず、そしてようやく大きく動く。
ドンッドンッと、ジャブが叩き込まれる度に乾いた音が響き渡り、キリノはその衝撃にたびたび体をこわばらせる。続くフックがサンドバッグを揺らし、それを吊るす鎖が鈴のように鳴る。
ひときわ激しい音が鳴り響いた瞬間、それはアッパーカットであった。サンドバッグは天井近くまで舞い上がり、肘打ちをサンドバッグにめり込ませ、その音に彼女の身体はこわばる。
キックもまた同様で、ハイキックからローキックまで、そのひとつひとつが異なる音を、そのどれもが確かな威力を持ち合わせていた。だがしかし、それがキリノの注意を引いた物事ではなく、また先生を愚直に見つめていた理由でもなかった。
タンクトップとバスケットボール用のショーツを着ていたからであった。キヴォトスの市民はマテオと同じ体格ではなく、大半が女性であったが、それでも男性の筋肉の構造については無知ではなかった。彼が戦っている様を見たとき、マテオの身体は教科書や小説に書かれているような、腹筋が割れて細身の適度に"引き締まった"筋肉であるとキリノは考えていた。
もちろん、彼もその類の筋肉を持ってはいた。だが、汗でタンクトップが肌に張り付くと、思ったほど"細身"ではないことが明らかになった。どちらかといえば…分厚い体型だった。
脚の筋肉は、動くたびに収縮と弛緩を繰り返し、幅広の背中は彼女の予想とは裏腹に俊敏に動いていた。それに刻まれた傷でさえも、どこか似合うものがあった。
キリノの顔は赤く染まり、よだれを拭いながら、ただただ彼を見やる。
“キリノ?”
マテオが声をかけ、彼女は驚く。そして彼が振り向き、片眉を上げる。キリノは飛び上がるように反応し、ここでようやく自分が何をしていたのかを気づく。急いで姿勢を正し、不自然な声にならないように握りこぶしに咳をする。「はっはい先生!先程中に入れてもらいました。」
“知ってるさ。”
マテオは椅子に腰を下ろし、水を手に取り一口飲む。
“俺が許可を出したからな。書類仕事をしていたが限界が来た。だからここにいる。”
自分の体を見下ろし、キリノが近づくと皮肉な笑みを浮かべる。
“見ての通り、俺の身体は決して見栄えがいいものではない。”
キリノの頭の中では、相反する考えが入り乱れていた。元来、傷は美しいものではない。だが、それを差し引いても彼の身体は十分魅力的だった。その考えに自覚し、さらに顔が紅潮していく。「す、すみません!少し授業をさせていたただきたくて…」
“キリノがやりたいのならいいぞ。ただし、遅くなる前に書類仕事に戻らないといけない。”
そう発言し、マテオは大きなため息を吐く。
「おおっ!」と声を出し、そしてマテオの視線が彼女の警棒に留まり興味を持ったように身を乗り出す。
“それ、どのくらい使いこなせられるんだ?”
そう問いかけ、キリノは自分の手を見ると顔が青ざめる。
「はっ!?つい仕舞い忘れていました!」焦って警棒を仕舞おうとするキリノ。だがマテオがそれを止める。
“そのままでいい。まあそうだな…”
じっくりとキリノを見定めながら言う。
“CQCの練習はご無沙汰だったし、白兵戦ができる生徒は今のところキリノだけだ。やるか?”
「はい!」笑顔で返事をするも、足元を見てあることに気づく。「あっ、でも訓練用の装備が…」と指摘し、マテオは息を吐く。
“そうだな…別に本格的なやつじゃなくてもいい。軽く二、三回やるか。”
そう言うと、立ち上がる。
“いけるか?”
「えっと…そうですね…」言葉を濁すも、この機会を逃すわけにはいかなかった。「いけます!ですがあまり無茶をしすぎないようにお願いします。」
“分かってる。”
マテオはマットの方へ軽く頭を振る。
“ほら、マットへ。”
ごくりと息を飲み込み、肩の装備を外すキリノ。刃が潰された訓練用のナイフを握るマテオ。キリノは警棒を握るも、どこか気が進まない。「先生、本当に大丈夫でしょうか?」
じっと刃を見つめ点検をしていたマテオだったがそれを止め、歩きながら彼女へと視線を移す。
“動くな。”
あの時、キリノとフブキに教えていた時と同じ教師のような声でその言葉を発す。
キリノの周りを静かに何回か回り、ようやくマテオが問いかける。
“
「CQ…
“なるほど…”
そう呟き、彼はキリノの前に立つ。
“なら、合図で始めるぞ。マットに倒れるか、攻撃が入れば決着になる。準備はいいか?”
警棒を構え、マテオの放つ圧に喉を鳴らしながらキリノはうなずく。「はい。」
“では始め!”
静かなジムに声が轟く。
マテオはオーソドックスな構えを取り、ナイフを添えた片手を上げる。わずかに低い姿勢ではあるが、それでも彼はキリノを圧倒するほど背が高かった。しかし、キリノはそれに意を介さない。
ようやく、キリノが動き出す。警棒を振るわれ、マテオはステップで後退。すぐさま彼女の右肩を掴み、足払いでマットへ倒さんとする。だが意外にも、キリノは手を持ち上げて彼の腕へと絡みつかせ、前腕を使い彼の肘を押し込もうとする。
だがそう甘くはない。マテオはもう片方の肩を掴み、後方へと転がる。組み手を制されたキリノは驚嘆して声を上げ、マテオの巴投げが決められる。キリノの背中がマットへと激しく叩き付けられ、バタンと大きな音が響いた。やがて二人は息をつきながら立ち上がる。
小さく笑い、マテオは再び構えを取る。
“少し甘く見ていた。”
「これでも本官はヴァルキューレ警察学校の一員ですので!」と誇りをもって、声高らかにキリノは宣言する。
“よし、次で決着をつけよう。お互い仕事があるから、早めに終わらせておいた方がいい。”
両者共々、再び構える。
“始め!”
今回、先手を仕掛けたのはマテオだ。キリノは素早く後退して回避。すぐさま警棒を横腹へと振るわんとするが、彼の手首に阻まれ、側面へ掌打を打ち込もうとする。だが、マテオはキリノの腕を掴み、自身の腕をひねりながら、潰れた刃を彼女の腕に滑らせる。そしてそのままキリノを引き寄せ、刃先を喉元に軽く当てる。
打つ手がなくなり、キリノは警棒を手放す。「参りました…」
“よろしい。”
マテオは一歩引き、満足げに微笑む。
“よくやった。”
「ですが一度も攻撃が…」とキリノが不満げに呟くと、マテオは頭を横に振る。
“俺は21歳でキリノは…16か17か?体重もかなり差があるし、身長も1フィートぐらいの差がある。そして実戦経験も圧倒的に違う。”
マテオの実戦経験というのは生死を掛けた戦いであることは言うまでもないだろう。
“いきなり勝てると思わないこと。それと、どうして俺の頭を狙わなかった?”
「だって…」キリノはマテオから受け取ったボトルを手にしながら答える。「訓練でしたので、そこまでする必要はないかと…」
マテオは小さく微笑むと、うなずく。
“確かに、状況に応じた判断は大切だ。さて、すっかり汗臭くなっただろうからシャワーを浴びてくる。”
彼は軽く頭を振りながら呟き、続ける。
“パトロールに戻っていいぞ。”
「分かりました!」返事をする。幸いキリノは汗をかいていないため、そのまま戻ることができる。「それでは!」
“またな。”
「机にドーナツを置いておきました!」キリノは立ち去っていく。
“ありがとう!”
マテオは応じ、シャワーを浴びるべく歩き出した。