The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.9-02 シャーレ

シートベルトを外し、シロコやセリカより先に降りた俺は手を差し伸べる。シロコがそれを掴んで軽やかに跳び降り、続いてセリカにも手を出し、少し躊躇いながらもその手を取った。俺は合図を出して、二人を後に続かせた。

 

すぐにオフィスに戻り、椅子に腰を下ろす。

“ああ…書類仕事が…”

そう唸ったところで、腹が鳴る。

“食べ物は…”

唸りながらバッグに手を突っ込んで、レーションバーを取り出して一口齧る。味気はないが、不思議と落ち着く。そのままかじりながら、セリカとシロコの様子を見る。ふたりは部屋を見回していた。

“とりあえず、自宅気分でくつろいでくれ。”

そう言って、書類仕事に取り掛かる。量はそれほど多くない。どうやら都市の方ではリンが生徒会長代理になったことに慣れ始めているらしい。

 

「確か用事を片付けるって言ってたよね?」とセリカが尋ね、シロコもうなずく。

 

“まあ、個人的な用事もあるけどそうだ。”

そう言いながら、一枚の紙を手に取り書き始める。電力はほとんどないかもしれないし、ファイルも破損しているかもしれないが、それでもやってみる価値はある。

“後で探索範囲を広げようと思ってる。だからこいつがいる。”

紙をふたりに渡すと、セリカが受け取り、シロコがのぞき込む。

 

「ヒューズに爆薬に起爆装置…結構シンプルね。これだけ?」

 

“ほとんどが個人的に使うものだ。トリニティの教会へ訪れる予定もあるし、アーマーの修理も必要だ。それにシャーレの職員が他に使う道具類を用意している。だから君たちがこれを探している間に、俺はここで書類を済ませる。それが終わったら、一緒に別の用事も済ませに行こう。どうだ?”

 

「なら…分かったわ。」

 

「ん。」シロコも答える。「終わったら戻るね。」

 

“幸運を祈る。”

二人が部屋を出て行くのを見届けたあと、息を吐いた。

 

“アロナ。”

そう呼ぶと、アロナの姿が現れる。

“クラフトチェンバーにアクセスしろ。”

 

S どうしますか?

そう聞かれるとため息を吐く。あまりよろしくない考えではあるが…でも…

 

“対策委員会全員分のイヤーピースとスキャンテックとスマートウォッチとマスクとブリックが必要だ。”

深く息を吸い込みながら続ける。これで、俺の秘密のひとつが明かされることになる。

“ISACと連携して、暫定仕様に調整してくれ。”

 

S ほんとですか!?色も変えていいですか!

断りかけたが…

 

彼女たちはエージェントじゃない。自分みたいな存在を育てるつもりもない。それなら、まぁ……

 

“いいぞ。”

仕方なく受け入れると、アロナは歓声を上げて消えて、再びため息をつきながらボディアーマーを脱ぎ、状態を確認する。ゆっくりとプレートと生地に手を走らせてみると、ケブラー部分にはいくつか破れた箇所と端がほつれていたが、全体的には問題ない。

“まあ、状態は良いな。”

少し傷がある程度、ゴーバッグに手を伸ばし、ケブラーパーツを取り出してボディアーマーの修理を始める。

 

しばらくして、ブリーチングチャージが入ったバッグをもったセリカとシロコが戻ってくる。「ただいま!」

 

「ヒューズを確保。」と目を輝かせるシロコ。

 

“よくやった。”

そう言って、アーマーを再び着る。

“ちょっと手伝ってくれ。”

そう声をかけ、立ち上がってエレベーターへと向かう。セリカとシロコが後ろから続き、俺は武器庫の階を選ぶ。

 

「何を運ぶの?」とセリカが尋ね、俺は肩をすくめる。

 

“俺が所有してる武器を。それほど大きくはないし、重くもない。ほとんど分解してあるから、組み立て直さないと。”

そう答えると二人はうなずく。

 

「どんな武器?」シロコの声には興味が滲み出ていて、セリカの耳がわずかにピクついたことで、彼女も同じ気持ちであることが分かった。

 

“ライフル、ショットガン、LMG、SMG、ピストル、その他もろもろ。”

そう答えると、二人は驚いているようだった。

 

「もしかしてヘルメット団が撃ってきたショットガンも?」と言いながら、セリカは腹をさすって顔をしかめる。「そういうのがまだあるの?」

 

“ララバイのことか?あるぞ。アサルトライフル、ショットガン、ピストルの3つが好みのロードアウトだ。それに加えてTAC-50Cもあれば、あらゆる距離に対応出来て色々な選択が取れる。”

 

「奪われたりとかはしないの?」少し不安そうにセリカが尋ね、俺はうなずく。

 

“可能な限りの対策はしてある。行くぞ。”

二人を連れてシャーレの武器庫へと向かった。日本製、中国製、アメリカ製等々、多種多様な武器に二人共に目を見張っていた。やがれ、保管庫がある場所へと到着する。そこは武器庫奥の小さな閉鎖空間で、作業台が置かれただけで、そして一見すれば何もないような壁の前に立つ。

 

「ここが?」とシロコが尋ねれば、俺はうなずく。

 

“ちょっと待ってくれ。”

そう言って、フォーム材の壁の隙間に手を入れてその中に隠されているハッチを引っ張る。小さな油圧音が響き、壁が畳まれて開けば、壁に掛けられている武器がいくつか姿を現す。

 

「うわっ──!」と驚いて跳ねるセリカ。

 

「凄い…」と表情はそこまで変わらないが、瞳は輝いていて興味津々なシロコ。

 

思わず微笑みながら、自分の保管庫を指差す。

“箱を開けて、武器を持って来てくれ。”

 

「ん。」

 

「わ、わかった。」とセリカが返事をして、保管庫から最初のケースを取り出す。

 

開ければ、中にはネメシス──手持ちでは二番目に強力なスナイパーライフルが入っていた。俺は笑みを浮かべて脇に置き、声に出して言う。

“これは違うな。作戦で使うかもしれない。”

 

今度はシロコが見覚えのある武器を持ってきた。瞳は輝いていて、それを見た俺はつい微笑む。ケースを開けると中にはメカニカルアニマル──シロコのものに似たSIG 556だった。そしておもむろに、拡張マガジン、ホロサイト、マズルブレーキ、アングルグリップを適した工具に切り替えながら装着していく。チャージングハンドルを引いてチャンバー内を確認してうなずき、離せば音を立てて戻り、弾を込めていないマガジンを挿入する。

“あそこに置いてきてくれ。”

シロコに伝えると瞳を輝かせて、耳をぴくっと動かしながら握っていた武器を見ていた。

 

そうさせておけばセリカがやって来て不機嫌そうに顔を赤くしながらケースを持ち、テーブルの上に置く。「はい。」

 

一目でそれを理解し、ケースを開ける。中から現れたのはレグルスだ。スキャンテックが表示した情報にはこんな文があった。

 

  

Cast your stones at kings on thrones, but in the end, rats gnaw our bones.
                    
自身の石を玉座の王に投げても終いにはネズミに骨をかまれるのだ。
 

 

カジカは何に対しても格言を持っていた。

 

レグルスを組み立てると軽く回してからグリップをセリカの方へと向けて手渡し、置き場所を指差す。

 

その後も、作業を進めていった。何度か中断されることがあったが、特に印象的だったのは…

 

「この銃金ぴかじゃない!?」セリカが叫び、シロコも様子を確かめるためにやってきたら、目を大きく見開いていた。そう、それがブレットキング。この手の反応はもはやお約束のものだ。

 

“金色に塗装されてるだけだ。”

そう答える

“たぶん。”

そう付け加えて、組み立てを済ませた後に弾帯を丁寧に巻きつけ、念のためマガジンホールディングを確認。やっぱりいつも通りだ。どうすれば千発もの弾が入るんだ?バケモノだ。

 

ともかく、セリカに手渡すと、少し戸惑いながらも素早く所定の位置へと置く。それに対して、シロコは明らかに手に取りたそうな気配を見せながらもなんとか自制していた。

 

次はカメレオンだった。

 

「先生。」シロコが呼びかけると、俺は銃から視線を外す。

 

“ん?”

振り向くと、シロコの瞳孔は大きくなり、テーブルを見て困惑しながらまばたきしていた。

 

「銃が消えた。」

 

「えっ!?」叫びながら辺りを見回すセリカ。「何言ってるの!? 銃に足が生えるわけないでしょ!」

 

テーブルにアサルトタレットを置く。すると足が飛び出し、自立し始めた。それを見て、シロコはほんの少し得意げな表情を浮かべてセリカを見る。「それは例外!」とセリカは頬を赤らめていた。「って探さないと──!」

 

チャージングハンドルを引く音が響けば、カメレオンの迷彩が解かれて通常の白い外装に戻る。

“見つかったみたいだな。”

そう言うと、セリカは困惑していて、シロコは逆にさらに興味を示していた。

 

最終的に、俺たちはボックスを整理して、スロットをきちんと埋めることに成功した。

“二人共よくやった。”

 

セリカはまだ少し疲れているようで、シロコはというと面白い武器がもう見れないことに残念がっていた。

 

残っているのはララバイとセーフティディスタンスとネメシスの三つ。ララバイとセーフティディスタンスを戻して、ネメシスを組み立てる。そして作業台の下からTAC-50Cのケースを取り出し、しばらく保管することにした。

 

プログラミングの腕はないが、それでも必要な場面では技術屋(テクニシャン)としてそれなりに使える俺。P-017ミサイルランチャーもすでにあるが、それは後回し。

 

ネメシスを収めながら、手持ちの武器を見渡して、今日の支援役として使うものを考える。特殊な弾薬が使えるか…?

 

それに保険となるものもいる…

 

そうして最終的に選んだのは、ブルースクリーン。特殊な「ディスラプターラウンド」を装備しているLMGだ。そしてサイドアームとしてバックアップブームスティックを選ぶ。

 

必要な弾薬をそれぞれバッグに仕分けして入れ、機動性への支障がないことを確認してうなずく。

“よし、これで完了だ。”

 

「この武器は何?」とシロコが尋ねる。

 

“ネメシスだ。”

そのスナイパーライフルを指差して答える。

“そいつは電磁加速装置を使って特殊な弾を撃ち出して──”

 

「レールガンってことね。」とセリカがどこか疑いを持った様子で遮る。

 

“──いや、コイルガンだ。”

優しく訂正する。昔研究開発部門で同じこと言った時、ずっと厳しい態度を取られたからな。

“これが違いだ。LMGの方はブルースクリーン、ディスラプターラウンドを使って電気機器を撹乱するから──”

 

「どうしてファーストレスポンダーがそんな武器を持ってるのよ!?」と信じられないといった様子のセリカ。

 

“──で、バックアップブームスティックはソードオフダブルバレルショットガンだ。”

そう言うと、シロコは納得したようにうなずく。

 

「それだけ!?ただの…ソードオフってこと?ちょっと普通すぎない!?」とセリカが衝撃を受ける。

 

“ああ。さて、そろそろ個人的な用事に移ろうか。”

そう答えると、LMGとスナイパーライフルの重さに体が慣れ始め、怪我の痛みも薄れ、歩くのが少し楽になってきた。

“恐らく俺一人で行けそうだから君たちは──”

 

「ダメ。」

 

「ムリ。」

 

俺はセリカとシロコを見つめる。セリカは軽く頬を赤らめながら拒否し、シロコは俺の言葉を遮るようにきっぱり否定した。ため息をついて、俺は運命を受け入れる。

“分かった…じゃあトリニティへ行くぞ。”




[訳者あとがき]
ネメシス(コイルガン)
光の剣(レーザー砲)

現実の方の防衛装備庁が試作したレールガンはそんなに電気がバリバリしてなくてちょっと落胆した覚えがありましたね。それでもまあ凄かったですが。
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