8/4の18:00~18:09の間にChap.9-04を読んでくださっていた方へ。
私の不注意によりChap.9-05の内容をChap.9-04に掲載してしまいました。そのため今回の内容と同じものですが、本来のChap.9-04を読んでいない場合そちらを読むことをお勧めします。申し訳ございません。
各々のHUDに表示された時刻を見ながら、ノノミとセリカ、ホシノとシロコは待機していた。
「本当にワクワクしませんか~?」鼻歌混じりにそう呼びかけるノノミ。「委員会は委員会でも~何かの映画に出てくるような委員会みたいですよね~」
「ん」と同意するシロコ。だがノノミと同じ理由だから同意したわけではないようだ。「確かに。」
「この前の夜で一緒に見た映画みたいだよね!」と言えば、ぱあっと顔を輝かせるホシノ。「最近も見たっけ?」
「忙しすぎて出来てないわね。でもまたやりたいわね。」と答えるセリカ。
「先生ってどんな映画が好きなんでしょうね~?」ノノミがそう問いかければ、場は静まり返り全員先生の好みを考える。
「そうだね~」とショットガンに寄りかかりながら、顔をうへっとして考えるホシノ。「先生のことだから…アクション系でしょ。」
「そう?」と困惑した様子で問うセリカ。「よくわからないけど…でもどっちかっていうとコメディじゃない?」
「クライム系。」と横槍を入れるシロコ。「この前も楽しそうにヤマを話していたから。」
「ヤマじゃなくて作戦でしょ先輩…」呆れた様子でツッコミを入れるセリカ。
「そうじゃなくて…」首を横に振って呟くノノミ。「間違いなく恋愛ものだと思います。」
「むぅぅぅ~まあ…先生は大人なんだしそういうのは経験済みだよね。」シロコとセリカにそう言いよるホシノ。二人は妙に慌てていたようだった。「なになにどうしたの~?」
すぐにそっぽを向く二人。「かぁわいい~」と言うノノミ。だがその考えに少し違和感を覚えたが、気にしないことにした。
“テスト。チームワン、聞こえるか?”
シロコとホシノに声が入り、二人の背筋はぴんと伸ばされる。
「ん。」
「聞こえるよ先生。」
“よし。”
数秒後、ノノミとセリカの耳に声が響き、セリカは驚いて声を上げる。
“チームツーはどうだ?”
「いい声してますね~」
「ビックリさせないでちょうだい!」
そしてアヤネの無線が加わる。「これで無線は全て問題ないですね。ドローンも展開済みです。」アヤネとマテオのドローンが四人へ近づいていく。「温泉開発部も準備が出来ています。」
“爆発で砂が舞い散るからホシノのシールドに隠れた方がいい。”
シールドを展開して掲げるホシノ。ノノミが片膝をつき、後ろにはセリカ、ホシノの背後にシロコが並ぶ。マスク越しの呼吸音は聞こえるものの、互いの息遣いは感じられない。
“よし、合図と共に爆発する。周囲に空間が広がる。その後、一気に埋まっていく可能性がある。通信が不安定になるかもしれない。気を付けろ。”
「先生がここまでの心配性だったなんてね。」と少し面白がるホシノ。「シワ、出来ちゃうよ。」
“まあそうだ、普段はもっと重要なことを心配しているからな。まあ心配性なのはそうだ。皆、生徒だからな、生徒の安全が最優先だ。”
厳しくも優しく話す彼、対策委員会らは不満げになる。
“三十秒前だ。ISACの指示に従い、各ウェイポイントを通過か新しいものを発見したら逐一報告すること。ホシノとノノミが今回のポイントウーマンだ。だから爆発物には細心の注意を払うこと。”
「こちらでも監視していますが、気をつけてください。」
“爆発まで十秒切った。健闘を祈る。”
「準備オッケー?」そう問いかけるホシノ。
「はい!」
「オッケーよ!」
「ん。」
────午後五時を回った。
砂塵が噴き上がり、衝撃と共に舞い上がる。シールドからその感覚を実感し、かつて1年生の頃の母校の情景を思い出すホシノ。どうしてマテオが自分をヒューズを取り付けるチームに任命させたのか、その理由を理解した。
ホシノのHUDが変化し、セリカやノノミのものとは異なるフロアにウェイポイントが表示される。
“ゴー!”
「廃校対策委員会、突入!」と叫びながら先陣を切るのはホシノ。その後ろにシロコ、セリカ、ノノミが続く。窓を突き破り、周囲を掃討し、他が時間と空間を確保出来るようにしてシロコが後に続く。
“チームワン、階段を降りて右に曲がれ。そこにヒューズボックス用のクローゼットがあるはずだ!”
その命令が耳に入り、対策委員会たちは動き出す。
次にノノミとセリカが動き出した。HUDには下部のどこかへと表示されている。
“君たちは三階にいる。一階は砂に埋もれているが、下へ進めばブリーチングチャージを使って入れる教室があるはずだ。そこは実験室で廊下へ通じる出口がある。もしなければ、そのままドアを吹き飛ばしてもいい。エネルギーの発生源はそこからだ!”
全員返事をすれば移動する。
遥か上空、ドローンが浮遊しており、生徒たちの一挙一動を監視していた。一方、遠く離れた場所では、別の誰かがその様子を監視していた。
その者たちは全ての駒を研究し、外部のチームの動きを観察し、内部のチームの動きも垣間見れば、彼が関心を向けている対象に焦点を合わせた。
シャーレの先生────マテオ・ヴェルネス。
ホシノの神秘をも超えて、砂漠でのカイザーが起こしている行動をも超えて、更には無名の司祭たちの秘密をも超えて、その瞬間、彼の注意は総指揮を担っている男へと向けられた。
一人の兵士──それは彼らが信奉しているものへのアンチテーゼ…だがそれだけではない。
一人の人間──普通の人間であると同時に異質な人間でもある。
一人の男──銃火器の腕前においては指折りの生徒たちをも凌駕する。
手を組みながら身を乗り出し、一人の男がオフィスチェアへ座っていた。鋭い形状のスーツが身体を隠していたが、その声には明らかにそそられたものがあった。
いや…このオフィスに佇む人物を"男"として呼ぶのは…不適当だ。
それは"存在"だった。虚無のように黒い肌、亀裂が走った身体、顔を模しているよりもただ単にひび割れただけの仮面の如き──顔。
彼は問いかける。「先生は何者でしょうか?人間?戦士?本当にそれだけの存在でしょうか?このような男性が、このような場所で生き残ると?」
彼は観察する。ただ待ち構えるように、微笑む。「観察させてください。」
一方、セリカとノノミはISACによって輪郭が映し出された目的地に到着する。ホログラムが見えれば二人は驚き、そして距離が縮まる。「ここのようね。」
「ですね。」と反応してブリーチングチャージをセットするノノミ。「外へ。」と言えばセリカも後に続く。「アヤネちゃん、ブリーチングチャージをセットしました。」
「衝撃に備えてください!」無線越しから叫ぶアヤネの声に反応し、全員動きを止めて備える。
ブリーチングチャージが爆破され、セリカは安堵の息を漏らす。「いつもよりうるさくなかったわね。」と呟き、部屋へ入りホールを見る。
「報告します、実験室に着きました。そのまま突入します。」
「分かりました。」アヤネが応じたその時、照明が点灯する。「チームワンがヒューズボックスの一つを復旧しました!」
もう一方のホシノとシロコは、後ろからPulseを発するドローンと共に移動しており、マテオが割り込む。
”よし、エネルギー20%だ、サーバールームが一つ開放された。”
「よーし、セリカちゃんとノノミちゃんは?」とホシノが呟く。
“砂の状態はそれほど悪くなかったから爆破する必要はなくてそのまま入った。そして今まさにISACがデータを送信していて内容を確認しているところだ。”
口笛を吹き、「ISAC君ってとっても便利だね。」と呟くホシノ。
“それはもうとっても便利さ。”
声だけではあるが、それでもニヤリとしていたのは間違いなかった。
「連邦生徒会は知っているの?」と尋ねるシロコ。
“必要最低限といったところだ。”
曖昧に答えるマテオにホシノはニヤリと、シロコは頭を振る。
一方で作戦指揮を担っているマテオは息を吐き出す。
“タクティシャンドローンのスキャンでは学校の異常を検知していない。念のため再確認するぞ。”
「分かりました。こちらもスキャン結果は正常でした。」そしてアヤネの顔は急に明るくなる。「ダウンロード完了しました!」
“分かった。”
眉をひそめるマテオ。そして胸のあたりがきゅっと締め付けられる──いつも何か見落としている時に感じるあの感覚だ。
“ISAC?”
| A 太陽光発電である場合、バッテリーバンクがあります。エネルギー源を検知。 |
それの在りかを突き止め、目を輝かせるノノミとセリカ。それは大きな箱──バッテリーとみなしているものだ。「見つけたわ。でも重そうだから助けが欲しい。」
「切断する必要もあります。」アヤネの忠告に、セリカとノノミは互いに向き合う。「早めに──あっ!チームワンがヒューズボックスをもう一つ復旧しました!エネルギー60%、二つ開放済みです。」
注意を緩め、切断方法に悩み始めたその時、ISACが現れ、手順を説明し始める。
安堵の息をつき、セリカは連絡する。「バッテリーバンクを発見したわ。どうすればいい?」
「まだ他にもあるはずです。見取り図では…廊下をまっすぐ行って階段を下りて…」どこか諦観した表情で伝えるアヤネ。「砂の状態が最悪な場所は──」
“待った、温泉開発部の部員がパワーバンクを引き上げようと動いてる。しばらく待機して、必要ならば助けること。カスミならパワーバンクのストレージにたどり着けると言っているが、おそらく甚大なダメージが入るだろうから、最後の手段として取っておくべきだ。今は待機──チームワンはほぼ完了した。残り一つ。”
「じゃあ温泉開発部を急かしてちょうだい!」セリカは苛立つ。
“こいつは競争じゃないぞセリカ。生徒たちの命がかかった作戦だ。全員の安全が最優先だ。多少時間がかかったとしても仕方がないことだ。”
言い返すことも出来ず、拗ねてそっぽを向くだけのセリカ。「あらあら、可愛い~」と頬に手を当てるノノミ。
一方でシロコとセリカは目の前の砂山に向き合っていた。「先生、問題発生。」とあたりを見回すホシノ。
“なんだ?”
「砂が。それも沢山。ヒューズボックスはその向こうにあるから辿り着けない。」簡潔にまとめるシロコ。
“分かった。教室に入れ、そうしたら俺が温泉開発部の爆発物を送る。砂が舞い上がるかもしれないが、それでもきれいさっぱりに消し飛ぶはずだ。ひとまず少し休め。”
そして二人は楽になる。
「おっけ~」ホシノがドアを無理やり開けて中に入れば、シロコも続いてドアを閉めた。
二人はほとんど言葉を交わさず、ただ単に息を整えるだけで、シロコは教室のあちらこちらを見回す。二つ目の仕事として、ゆっくり見回して、ありとあらゆるものを徹底的に探していく。
「おじさんはいいや。」とホシノが言えば、シロコは驚く。「ここはもう…まあ先生が言ってたけど、固定されてないものは全部売っちゃったんだ。」
しゅんと垂れるシロコの耳。だが元に戻る。「もしかしたら何か見つかるかも。」と目を輝かせながら見回していき、ホシノは面白がる。
「楽しんでるよね?」とホシノが聞けばシロコはうなずく。「ならよかった。」と言えば、視線は黒板へ向けられるが、焦点は合っていなかった──まるでその先を見透かすかのように。「本当によかった。」
心地良い静寂に身を委ねる二人だが、マテオが割り込む。
“よし、そろそろ爆発する。衝撃に備えろ。”
そうして、シロコとホシノは身を屈め、待機する。
数秒後、二人が去った後に砂が一握りほど入り込み、その直後に不快な音が響き渡る。
“まずい戻れ!後退だ!屋上が崩れてるぞ!”
だが二人は意に介さないどころか、むしろ驚異的な速さでそのエリアを横断し、いつの間にか反対側へと出ていた。「チームワン、報告。出口が少し詰まっちゃってる。最後のヒューズボックスを直したら…」と言葉に詰まり周囲を見回すホシノ。「まあ…」シロコの困惑を気にしなかった。「何か変だね。」
“どうした?”
「セキュリティシステム。」と目を輝かせて答えるシロコ。そして何かが動いたような音が響く。
作戦指揮では、アヤネはチームツーへサーバールームの方向を指図しており、マテオは自身の地図や参照出来る地図、その他の情報源を必死に照合している。
“チームワン、待機。”
ホシノとシロコは同意して応答する。そして彼はISACへと向く。
“スキャンテックを解除しろ。”
| A 了解。 |
「えっ!?」
「システムが消えた。」とシロコが呟くとマテオはうなずく。
“戻せ。ホシノ、場所が分かるか?”
地図を見ながらマテオは伝える。
「そう…かも?この辺りは何にもないって…先輩が言ってたから…」
"先輩"という言葉に対してマテオはつい眉をひそめた。
“よし…周囲を確認しろ。俺のドローンは今オフラインだ。”
「二つ目のサーバールームをダウンロードしました。同じエリア内に三ヶ所あります。」アヤネは報告し、マテオに向く。「どうかしましたか?」
“何も、ただセキュリティシステムを見つけ出そうと…”
頭を掻きながらそう呟き、廊下を指差すマテオ。
“ここだ。”
アヤネは顎に手を当てて、二人共それを見やる。
“…アビドスは大きかったよな?裕福だったよな?”
“…はい。…なぜ…?”
言葉を濁すアヤネ。
“はたしてこいつは必要だったのか?”
検索して出た古い記事を読めば、マテオの目は見開かれる。
“これだ。どうやら次の授業への移動が長すぎたせいで苦情が殺到してロッカーを設置したらしい。だが盗難が相次いだせいで、セキュリティを固めた新型にアップグレードしたようだ。”
「ドローン特定。ちゃんと動いているみたい。」と報告するシロコ。マテオはシッテムの箱を見つめ、ホシノの顔が映し出されているのを確認する。
「ここが…」マテオが起動すれば、ホシノの表情が明るくなる。「んで、状況は?」
“恐らくどこかのヒューズを替えた際、このエリアのセキュリティシステムを再起動させたようだ。どうやら校舎間を移動する生徒用のロッカーだったようだ。試しに壁に触ってみてほしい。”
タクティシャンドローンが飛び上がる。ホシノは壁に手をかざせば、何かを感じ取ったのか手を引く。
「…溝がある。細かな隙間も。ロッカーが下がってく…そんなお金なかったはずなんだけどね。」
“噓だろ!?”
ファイルを見て叫ぶマテオ。その声にアヤネとホシノとシロコは驚く。
「先生?どうかしたの?」真っ先にシロコが口を開く。
一方、アヤネは胸の高鳴りを落ち着かせながら、先生が何を見てあのような反応をしたのかと不思議に思っていた。
しばらくして、彼は長い息を吐き出し、言葉を出す。
“価格なんて知りたくもないはずだ。”
────それが唯一の言葉だった。そしてその反応から察するに、アヤネも知りたくはなかった。
耳に手を当ててアヤネは報告する。「チームツーが三台目のサーバーを確保しました。残り二台です。」
“片方はチームワンの所に近いから任せる。チームツーには、作業が終わったらセキュリティルームを探すよう指示を。”
そしてタクティシャンドローンが完全に起動する。
“よし、スキャナーを起動する。ロッカーの配置が見えている…はずだ。”
チームワン側では、レーザー式警報装置と連動するように、ロッカーの輪郭がはっきりと浮かび上がってきた。特にロッカーの横側と斜めに配置された部分がはっきりと確認できる。
無線越しでシロコが話す。「レーザーが見える。解除しないと。ISAC、近くのセキュリティルームのルートを表示して。」
“目標に集中しろシロコ。チームツーは最後のサーバールームに入れない。だからシロコが起動してデータを入手しろ。そうしたらロッカーの中について考えるぞ。”
シロコはうなずき、二人は作業に取りかかる。
十分も経たないうちに、ヒューズは取り換えられ、ロッカーはチームツー側にあることが判明し、チームツーは最後のデータを取得した。
“全員、止まれ。しばらく休め。アヤネもだ。”
極度に集中しながらデータを精査するアヤネにも向けて、マテオはそう命令する。
あっという声を出し、恥じる様子のアヤネに四人はくすりと笑い声を漏らす。
“さて、全員が一丸となって取り組む目標がやってきたぞ。地下室に保管されているソーラーバッテリーを全て運び出せ。これが終われば家に帰れるが、ロッカーを調べたいか?”
何の躊躇いもなく「調べたい」という返事が。
マテオはため息をつきながら両手を上げ、肩をすくめた。
“どうやらロッカーを開ける必要があるようだな。”
その言葉に、周囲は歓声を上げる。
“さて、知っているのかもしれないが、数年前この辺りでは犯罪の目撃情報があって、更にその前には物を紛失したとの苦情が何件もあった。ISACがセキュリティルームへと案内して、セキュリティシステムを無効化する。その後は任せた。”
彼女たちの視界にウェイポイントが現れ、移動していく。シロコが真っ先に到着すればISACはセキュリティを無効化し、壁が開き始めた────衝撃を受けるホシノ。セリカも同様に口を大きく開けたままだった。
「…こんなに…お金あったの?」口を開けてただ呆然とするホシノ。
「今は関係ない。」と目を輝かせながら最初のロッカーを開けるシロコ。「ノートパソコン。」と言いながら最初に手に入れたお宝を皆に見せる。
「おおっ、おじさん嬉しい~」とホシノが言えば、シロコがダッフルバッグへ詰め込むのを手伝う。セリカとノノミも同様に加わる。
やがて終えれば、彼女らはアヤネとマテオに報告する。
“よし、アヤネは今ファイルを精査しているところだが、時々健康によろしくない表情になっている。俺はアヤネの重荷を減らして、脱出準備が整い次第、また連絡する。”
全員が待機していると、二度の爆発音が響き渡った。四人は素早く駆け出して再び砂漠へと戻れば温泉開発部が待機しており、作戦本部へと送っていった。
やがて、温泉開発部やマテオを中心にした対策委員会は皆、再びテントの中に戻ってきた。
“皆よくやった。だが残念なことに、完全に終わる前にあと一つだけ、やるべきことが残っている。”
「アビドスの最奥にあるバッテリーパックのことです。カスミさんが解決策を見つけてくださいました。ありがとうございます。」口角を上げながら、そう説明するアヤネ。
「真っ直ぐ掘るだけ、シンプルだ!」自信満々に宣言するカスミ。困惑する全員。
“つまり、カスミはデカイドリルを使えるということか。”
少し信じられないといった様子のマテオ。
“対策委員会はカスミと一緒にバッテリーを回収し、アビドスで集合するぞ。皆分かったか?”
だがすぐに温泉開発部の方を向いてこう付け加える。
“絶対に、何も、壊すな。分かったか?”
「うん!分かった!」とメグは温泉開発部に向き直る。「よーし!皆いっくよー!」
困惑する視線を向けていた対策委員会をよそに、マテオは喋る。
“俺たちよりも先に出発するみたいだ。そんなに大勢を連れて行く必要はないから全部降ろして、俺とアヤネが車で案内するぞ。”
ある種の疲労の色を滲ませながら、頭を掻いて説明する。
“俺は…”
と言いかければ首を振る。
“いや、それだけだ。締めに取り掛かるぞ。素早く、丁寧に、全員無傷で終わらせる。分かったか?では解散。”
まるで合図があったかのようにドンッ!という重厚な音が響き渡り、全員が外に出れば、そこには真っ赤な正真正銘のデカイドリル。「ハーッハッハッハッハッハッー!!!!全員乗り込めーっ!」
明らかに疲弊している様子の対策委員会が乗り込むと、車両が揺れ動く様を実感する。「皆!準備はいいか~!揺れるぞー!」
「ん。」
“健闘を祈る。”
砂中を深く掘削し始める。マテオとアヤネの前では砂が激しく噴き出されている。マテオがワイパーを作動して、フロントガラスを覆った砂が払われると、いつの間にかドリルの姿は消えていた。それから一分も経たずに、「着いた。」とシロコからの朗報が飛び込んできた。
ほどなくしてドアが開かれて、四人はISACの指示に従ってバッテリーを一つずつ降ろし始める。単調で時間がかかり、そして何よりも不安が搔き立てられる作業であった。全員がベテラン故に、全員があまりに事が上手く運びすぎていると実感していた。残りの温泉開発部はアビドスで待っており、作業は順調に進んでいる。ISACの情報が正しければ、ほとんどのバッテリーは完全に充電されており、それなりの値段で売れる見込みだ。
────次の波乱の幕開けはいつだ?
────それもどんな形で?
だが起きなかった。やがて、バッテリーを全て運び終えた時、カスミはひりついた空気を読み取ったが、何も言わないどころか、むしろ温泉が実現出来ることを楽しみ、いずれ止めに入るであろう風紀委員を笑い飛ばすつもりだった。
やがて、残りのメンバーがバッテリーを全てトラックへと積み込み、覆いをかけて出発した。残ったのはメグ、カスミ、対策委員会、そしてマテオだけで、残りを全て終わらせて家に帰ればいい。
マテオは強張っていた。
“全員乗れ!早く!”
そう叫ぶ。誰一人として、逆らう生徒はいなかった。
“全員乗ったな?ノノミ、ホシノ、シロコ?”
「もう乗ったよ!後ろに。」と荷台から車両の側部をパパっと払いながらぐでっとした様子で答えるホシノ。「あれだけ走り回ったからさー…おじさんは早くお家でぐっすりしたいんだよねー…だから行こ。」
「私も。」シートに背を預けるセリカ。
「ハーッハッハッー!!我が部員達の肩慣らしにピッタリだったぞ!ありがとな、先生!」とカスミが言えば、マテオも笑顔で応じる。
「うん!本当に楽勝だったよ!」とメグはにっこり笑って口を挟む。
車内には静寂が訪れる。アヤネがエンジンをかければ、そこにあった安堵は消え、ペダルが踏み込まれば、慣れた手付きで砂漠を切り裂いていく。ネメシスを準備するマテオ、立ち上がるノノミ、弾薬を確認するシロコ、シールドを展開するホシノ──誰も口を開かなかった。
なぜなら──カスミがドリルを使用した時、マテオとアヤネだけが"それ"を感じ取っていたわけではない。
なぜなら──"それ"もまた感じ取っていたからだった。
青年と少女たちの耳元では、審判の鐘が鳴り響いているようだった。
| A 地震活動を検知。 |
[訳者あとがき]
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