The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.10-02 アビドス砂漠

砂漠、疾走する車両。アヤネは奥歯を噛みしめ、前方を鋭く見据えていた。「早く…!早く…!!」

 

確かに都市部へ向かっているものの、彼女はマテオではない。だから連邦生徒会に連絡しても相手にされないが、そうはならないことを彼女は願ってはいる──だが『ヘイローが浮いている機械仕掛けの巨大な蛇がいました』なんていう話を信じる人はいるのだろうか?

 

だから彼女はISACの指示に従い、その問題を解決する者へ向かっていた。

 

そこが最も近くにあった──対策委員会、先生が生き残る希望だった。

 

その使命のもと、アヤネはアクセルを踏み込んだ。床に届くまでのベタ踏みで。

 


 

“クソッ!”

ビナーの砲台から降りかかる砲撃の雨に悪態をつきながら、マテオは必死にやり過ごしている。

“身動きが取れない!”

 

「任せてー!」とメグがビナーの側部に炎の嵐を巻き起こし、照らし上げればノノミが続き、マテオは移動する。ブルースクリーン、もといストーナー軽機関銃を手にしながら──再び開き出した傷による痛みとアドレナリン、興奮剤、戦闘強化剤が混ざり合う。ビナーの表皮に撃ち続けていくと慣れ親しんだ感覚が全身を駆け巡っていく。市街戦においては短期戦が良しとされるものの、長期戦となれば、複数の交戦が連続して起こり、それは経験上かなり消耗する。

 

防御役を担うホシノはIron Horusを展開。ビナーのハッチが開かき、砲撃が放たれば、メグとノノミはその背後に隠れる。砂塵を巻き上げながら、三人は走り出してセリカは身を伏せながら射撃。リロードするセリカに入れ替わってシロコが射撃する。ホシノとノノミは、メグを支援しながら、三人同時に片側へ集中砲火を浴びせていた。

 

ビナーの表皮は堅牢かつタフで、しかも自己修復する。だがメグのナパームを燃料とした炎で表皮は軟くなり、ホシノの炸裂弾とありたっけの銃弾のおかげでへこみが発生した。マテオがショットガンのスラッグ弾だけでなく、炸裂弾を持ってきたのは幸運だった。ただし──まだ問題が残っている。

 

それは口を開き、攻撃を受け止めながら、口元にオレンジ色の球体を収束させている。

“動け!”

無線で命令するマテオ。全員が建物や砂を越えてすぐに散開する。

 

あのレーザーが問題だ。パターンを持たないが故に非常に危険なものだった。時には真っ直ぐ、時には斜めと、全く異なる軌道を描いていた。

 

ブルースクリーンをリロードしながら、ビナーの"ヘルス"を確認して舌打ちをするマテオ。ISACは各々のスキャンテックに全員分の"ステータス"を表示させており、その中でもビナーのヘルスだけが唯一抜きん出ていた。

 

「ああもう!」炎を背に叫ぶセリカ。「どうして倒れないのよ!?」と狙いを定めて射撃するセリカ。シロコは小さな建物の屋上を伝って更なる高所から顔面を狙っていた。

 

また一つ、爆発物が投げられ、ビナーの側部へ爆発。メグも同様に火炎を放ち、ホシノは通常の銃弾でその間にいるノノミと共に顔面へ集中砲火を浴びせる。

 

これに驚いたのか、ビナーは地面へと潜っていく。巨体を難無く動し感知不可能な状態になる。

“シロコ!向こうの建物へ行って奴の位置を特定しろ!早く!”

 

「ん。」とシロコが返事しながら、屋根を駆け抜けて次の道路へ向かう。ISACは彼女の視界に候補地点を表示していた。

 

突然、地面から光の柱が昇り、シロコの目が見開かれ、すぐに足を止めてその場に滑り込む。光の柱が下降していけばビナーの姿が映し出される。道路の向こうでは辺り一面に砂が舞い上がり、次々とレーザーで木端微塵になる家屋と共に、シロコの姿は砂塵の中に消えてしまった。

 

「シロコちゃん!」と叫ぶホシノ。

 

“クソッ!”

マテオが叫び、ネメシスを手に取ればチャージを開始。頭部を狙い定めて、100%に達した瞬間に甲高い音が響き、それ以上のダメージを与え…一瞬だけスタンしたように見えた。

“シロコは生きてる!”

無線で伝え、ブルースクリーンに持ち替えるマテオ。

“煙幕を展開しろ!”

 

その指示で、カスミと対策委員会たちが指定の位置へ発煙筒を投げ込んでいく。

“対策委員会!マンホールにいけ!”

微かなためらいを残し、指示を聞く少女たち。

“カスミ、メグ、待機しろ!”

 

了解、先生!

 

気をつけたまえよ。

 

そうして、マテオと対策委員会は緊張に満ちた静けさの中、下水道へと突入する。

“シロコ、状況は?”

 

A ん、先生、大丈夫。怪我はしていないけど今は煙幕の中。どうすればいい?

シロコが応答すれば、全員に安堵の色が見えた。

 

“俺たちが来るまで待機しろ。二方向から攻撃を仕掛ける。”

 

「攻撃するにしてもどうすればいいの?」と無線越しからでもはっきりと分かるようにセリカはそう伝える。「ダメージを与えられそうなのって、メグにノノミ先輩にホシノ先輩に先生のレールガン──」

 

“厳密に言うとコイルガンだ。だがそいつがどのくらい効くかは──”

 

「それで大丈夫。」とホシノが口を挟めば皆驚く。彼女の瞳はブルーに光り、ISACの助けを借りてスキャンテックに表示された報告書に目を通す。「ビナーの報告書を見た感じ、装甲が固くて先進技術が使われているわりには、先生のスナイパーのような貫通する攻撃を受けたらプログラムにエラーが起きちゃうみたい。」そして一同は次の通りへと向かい出す。「注釈には内部がぐちゃぐちゃになるみたいだからそうなるって書いてるけど、装甲は戦闘中だとすぐには外せないみたい。その後にはなんとかテクノロジーがーって書いてあったけど──」

 

“何度も当てれば怯むと、分かった。”

マテオはバッグの中から箱を取り出してホシノに手渡す。

“ほら、追加の炸裂弾だ。”

ホシノがそれを持てば、マテオは向かい始める。

“シロコ、準備しろ。カスミとメグもだ。”

 

皆が確認すれば、彼はマンホールの蓋を押して、対策委員会たちは真っ先に行こうとするマテオを止めようとする。だが彼は既にある保険を用意していた。

 

無数のマイクロミサイルの弾幕がビナーを襲う。マテオがP-017ミサイルランチャーを持ち上げる時間を稼るダメージが与えられ、ISACがロックオンする。

A GO!

 

ミサイルは1秒ごとに飛び交い、ターゲットに命中すれば、続くはセリカとノノミ。マテオがミサイルランチャーをリロードしている間にホシノも加わり、カスミは煙を突き抜けながら満面の笑みで炎を噴射する。ひときわ熱そうなものだがセリカの炎と同じものだろうか?

 

ブルースクリーンに持ち替え、ビナーのヘルスがゆっくり下がる様子を息を荒げながら見守るマテオ。

 

ブルースクリーンにはディスラプターラウンドを用いたちょっとしたトリックを持つ。まず、最初の攻撃で倒れなかった敵にPulseが放たれる。そして更に攻撃を受けると、妨害(ディスラプト/Disrupt)もしくは混乱(ディスオリエント/Disorient)と表せるような状態に陥る。ブルースクリーンはウォーハウンドといった機械の敵に特化した武器だが、機械というのは高価だ。もしくは"だった"が。そのためクラフトチェンバーはまさしく神のお恵みと言えよう。

 

皆、疲れが見え始めている。メグも、走り去っていくシロコも、散り散りになるにつれてじりじりと太陽が沈んでいく。先に進むホシノ。物陰に隠れるセリカとノノミ。建物の中に入り、指示を出しながら情報を入手するマテオ。

 

カスミの罠は準備出来た。これでケリがつくのか、それとも最悪の事態──砂嵐が巻き上がるか、そのどちらかになる。

 

砂嵐が巻き上がるとなれば、皆はアヤネの到着を願うことになる──少女たちの最後の"希望"にマテオはなりたくなかったからだ。

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