The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.10-05 アビドス砂漠

かつて都市だった地区────砂嵐で沈み、ビナーによって壊滅したその場所で、アヤネは必死の形相でドローンを展開して、部員たちを探している。「一体…どこに…」

 

ISAC曰く、まだ生きているとのことだが…

 

その瞬間、反応を検知する。とある地点から周期的なPulseが発せられていた。安堵したアヤネはすぐさま駆け寄り出す。「皆さん!」

 

ひときわ大きな砂の山へと行ってしまったアヤネを眺める便利屋68。しげしげと砂を見つめ、そしてすぐに精一杯砂を搔き出せば、展開されたままの盾を背にしたホシノが現れる。彼女は咳き込み、口に入った砂を吐き出すが、痰か何かが喉に詰まり、立ち上がろうとする。その拍子で背中にあったIron Horusは滑り落ちる。「ホシノ先輩!」

 

すぐさまアヤネは水入りのペットボトルをそうとするが、先輩は無理矢理奪い、キャップは回さずに引きちぎり、ボトルをひっくり返して水を吐き出せば、顔に水をかけて付着した砂を落とす。そして一口飲めば再び吐き出し、そしてようやく普通に水を飲み始める。

 

他の対策委員もアヤネによって一人一人引っ張り上げられ、各々はうめき声を上げているか、意識を失っていた。顔についた砂は払われて、水入りのペットボトルは全員分用意されていた。

 

「医療キットを投下します。」タブレットを操作すれば、彼女に追従していたドローンが箱を投下され、開かれた結合部から緑色の霧が噴出する。それを大きく吸い込めば、少女たちの傷はみるみるうちに消えていく。

ぱちぱちとセリカの目は開かれ、咳き込み、えずき、吐き出し、ペットボトルを掴めばホシノと同様に口をゆすいで、うめく。

ノノミは身体を起き上がらせて座り込めば、先程と似たことをする。シロコは銃を支えにしながら辛うじて立ち上がる。そして周囲を見渡していたホシノ。「起きましたね!」

 

えづくセリカ。「砂が!」水を一口含んで、ゆすいで、再度吐き出す。咳き込めば、ようやく普通に飲み始める。砂嵐のせいで彼女の服装は酷い有様になっていた。

 

シロコはすぐには答えず、マスクをずらし、ペットボトルを握って口をゆすぐ。すこし身を後ろにしすぎたせいか、砂の上に倒れ込み、水を吐き出した後、起き上がろうとする。「ん…」

 

ノノミの服装は下着が見える程までに酷く、胸と服に入った砂を見て、不機嫌そうに口を尖らせる。「砂を全部落とすのは無理そうですね…」

 

「先生…」と慌てて起き上がらせろうとするが、立ち上がった拍子によろめく。「先生は!?ビナーは!?」

 

「わ、分かりません。」と諦観と不安が入り混じった様子で言うアヤネ。「見つかったのは皆さんだけで…」

 

「北」と自身の銃を杖代わりにしながら動き出すが、唸りながら滑るシロコ。「先生は北にいるよ。気絶する前に姿が見えた。」

 

「分かりました。」と後を追っていた便利屋にアヤネは振り向く。「計画を変更します。先生の位置が見つからず、最後の目撃地点は北方面でした。急なお願いになって申し訳ございませんが──」

 

「謝罪は結構よ。」アルは遮る。「私たちに任せなさい。」ただ言う。そして大げさにトラックの方へと回り、歩いていく。そして社員たちも後に続く。

 

クラスメイトに向いて、アヤネはこう伝える。「皆さんを迎えに行くようにと温泉開発部に連絡しておきました。」

 

「駄目よ。」とセリカが割り込めば、目は細められていた。「ケリをつけるわよ。」

 

「はい!」とうなずいて同意を示すノノミ。「弾が必要ですね。」

 

「どうしてここまで頑固になれるのでしょうか…」とアヤネは愚痴を漏らすしかなかった。

 

この中最も頑丈だったとはいえ、今のホシノの疲労の溜まり具合は普段以上だった。彼女たちに出来た無数の切り傷からは血がゆっくりと流れ落ち、上着はそこかしこに破れ、シャツも酷く破れており、非常に無防備な状態になっていたが、誰一人としてそのことは気にも留めなかった。一刻も早く、少女たちの先生には、彼には少女たちが必要だった。

 

一方で、他の四人は温泉開発部の車両が近づいてくることに不安を覚えていた。

 


 

目覚めた時に一番目に見えたものは砂、二番目にはボロボロのボディアーマー、三番目にはまだ腕に残っていたバリスティックシールドだった。

 

その中からひときわ驚き、そして不安を覚えたもの──それはボディアーマーだ。

D.C.で拾ったそれには、とあるシステムが内蔵されている。まず、防弾プレートを保持する層があり、その上にはケブラーの層、そして外部の層には自己修復機能を備え、かつとてつもない弾力性を持つ蒸散型超微細装甲(アブラティブナノプレート)がある。それには「クマムシ(ターディグレイド)」アーマーシステムと呼ばれるなるものが使われている。元々は宇宙船といった大気圏を繰り返し出入りする航空機用の自動回復ヒートシールドとして試作された技術だった。つまりはそれがビナーの砂嵐によってズタボロにされたという事実に何かしらの意味があった。俺はそいつが気に食わない。まあ、少なくとも、アロナは保護されていなかった生徒も守るのにエネルギーの大半を使ったが、それでもまだ余力があった。

 

気分が優れない。まずはそう言える。そこまでではないが、完全に夜じゃないことを考えれば、軽い仮眠を取っておいて正解だった。だがそのせいで身体の至る所から痛みという痛みが感じるのは少しアレだが。

“ISAC。”

かすれた声で喋り出す。

“状態は。”

 

A 異常無し。パルスが発生、数分以内に助けが来ます。

 

 

ゴーバッグを見つけ、まだそこにあったブルースクリーンとネメシスと共に肩に掛ければ、広大なアビドスの砂漠へと振り向き、脚に感覚が覚えて痛みが身体中を駆け巡る。

“遠くに行ってしまってないといいが。”

 

そうして立ち上がろうとすれば、ふと振動を感じる。ガラクタ置き場のような場所で良かった。ここなら遮蔽物になるものが沢山ある。クリアリングしながら本能が錯乱するのを感じる。まるで待っていたかのようにゆっくりと、忌々しい蛇のようにビナーが地面を這いずって現れる。ISACが奴のヘルスを表示すれば笑うしかなかった。二十三パーセントだと?こんなにダメージを与えていたのか?

 

じろりと、奴の目が俺を見下げ、俺はマスクの下で疲れがこもった笑みを浮かべる。マスクはまだ壊れていない。

“さあ、やろうぜ。”

バッグからブルースクリーンを外して、付いた砂を振り落とす。

“まだこっちは終わってないからな。”

 

ビナーの口が開き出し、球体が現れ、馴染み深い声が響き始める。

A 先生!増援が来ました!

 

俺の近くにアヤネのドローンが何かを落とせば、そこから緑色の霧が噴き出す。吸い込めば、目に見えて傷が癒えていく。

“アヤネ!”

 

銃声が響く。ビナーの側部に何かが引っ付けば、閃光を数秒間発した後に爆発する。ビナーのヘルスが減ってつい笑ってしまい、それを撃ち込んだ者へと向く。その者は綺麗な少女で、ジャケットを肩掛けしていて、手にはPSG-1ライフルを持ち自信に満ちたにやけ顔を浮かべていた。「便利屋68、先生を助けに来たわよ。」

 

「はろ~!」と小悪魔のような小さな少女が手を振って、更に二人が現れ、一人は白黒の服装で脅威を感じ、もう一人は紫色だった。前者から角と片翼が見えようが、このタイミングでは正真正銘の天使たちにしか見えなかった。

 

“って何ボサッとしている!?”

彼女たちに手を振る。

“こっちに来い。一緒に楽しもうぜ。”

 

そうして彼女たちは駆け下りて、特に小さな小悪魔は砂山を滑り降りていき、アヤネが事の要約を説明してくれた。

 

砂を滑りながらムツキは散発的に撃ってビナーを陽動し、ほか三人が近づいていく。全員俺よりもずっと調子が良かった。素晴らしい。

 

すぐに四人は声が届く位置に着いて、リーダーが喋り始める。「お会いできて光栄ね、せん──きゃあ!」とつまずいて、彼女を掴もうと動くが駄目だった。変な位置で固まる俺を見上げて、顔は赤くなり少し涙目になっていた。マスクの下で俺の口はピクリと動く。

 

“…何も見なかったよな?”

そう聞けばアルは静かに弱音を吐く。

 

「これは取引よ…」と言えば、俺は手を差し伸べて立たせる。

 

「すっごい第一印象。」と手でくすくすと笑うのを隠した小悪魔が現れて、こちらに笑みを向ける。「こんにちは先生~」

 

「どうも。」とカヨコが、サプレッサー付きのH&K P30Lを持っていた。「それで、これからどうする?」

 

最後の挨拶をしていないメンバーに視線を向けば、彼女は飛び跳ねる。「あ、ぁ、あの…こんばんは…」とショットガンを握りしめながら辺りを見渡す。俺は意図が分かれば、微笑み、彼女たちの方に向く。

 

“あいつをバラすぞ。”

そう答えてネメシスを握る。

“揺動役、ダメージを与える役が必要だ。ムツキ、バッグに爆発物はあるか?”

そう尋ねればムツキは特に面白く感じているようだった。

 

「クフフ~もっちろん!私って模範的な生徒なんだから、それくらいは持ってないとね!」と悪気がないように言い、俺は愉快と疑念が混じりながらも頭を振る。

 

グローブをはめた手を伸ばし、指を鼻に乗せて驚かせる。

“今はその言葉を信じるぞ、ちびガキ。”

そう言って手を離せば、よろめきながら後ずさって不機嫌な顔になる。

 

「揺動ならカヨコが、ダメージを与える役は──」とアルが言えば、紫の服装の少女を前に押す。彼女は怖がっているようだ。「平社員のハルカが適任よ。」

 

再び、ハルカがどもる。「あっ、あ、アル様の申し出なら、たとえこの命を代えてでも──」

 

分かった、止めよう。唇にそっと指を置いて、その言葉を止めさせて俺はこう伝える。

“アル様が、君の社長がそう言うのならその役は任せよう。ただ必ず無事に帰ってこい。怪我でも負ったら俺は悲しい。”

そうして手を引き、呆然とした表情に続いて浮かべた不気味な笑みは気にしないことにする。そして遮蔽物に隠れながらビナーの様子を窺う。

 

“よし、計画はこうだ。俺はこいつで撃つ。”

ネメシスを示しながらそう言う。

“そして何回か撃って攻撃が止めば、全力を尽くして撃つだけだ。出来れば額を狙ってくれるとありがたい。”

そう言って全員を見る。

“良い仕事をしてくれたっていうのに支払わないのはしたくない。だからこれが終われば俺に連絡を取れ、そうすれば報酬をきっちりと払う。”

そう微笑むと、皆どこか尻込みしているようで、居心地が悪かった。

“たとえ俺が首をいくつか締め上げるハメになってでも、支払うぞ。”

 

このことに関しては未だに腹が立っている。それでも、首を振ってため息をつく。結局のところやらなければならない仕事がある。

“皆やることは分かったか?”

 

カヨコがうなずき、他の便利屋の少女たちもうなずく。

“では、健闘を祈るぞ。”

深く深呼吸をする。

“アル、上に登って高所を陣取れ。”

そう指示する。

“さあ行け!”

声を張り上げて、膝をついてアルの方を向く。

“登るんだろ、手伝うぞ。”

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