The Divide   作:粋刺@翻訳

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Chap.11-03 便利屋68オフィス

現在、アルとハルカは長いこと先送りにしていたこと──初日の先生の動画の視聴を行っている。

 

純粋に実用性の観点──カヨコからにとって、生徒に近づかれた時の彼の動きは、相手を素早く倒すのに実用的で、それでいて残忍だった。関節や喉といった痛みを感じやすい部位を狙っていたが、どこかためらいがあったと、彼女はそう気付くしかなかった。まるでいつもやっている動作のように見えるも、実際は寸前で思いとどまっていた。ただしそれでも敵は気絶していたので、手を弱めていたというわけではなかった。

 

実にスタイリッシュで、クールだった。

 

情緒の面からしても、雇い主からあんな連絡を受けた後では、動画視聴は必要なことだった。アルは何とか対応したものの、その目からは僅かに正気が失せていたのだ。

 

結局のところ、馬鹿馬鹿しさ満点の仕事に失敗しただけだった。何故ならビナーと戦う瞬間にアビドスを助けると決めたからだ──未だに皆の悪夢の中でそれはうねり続けているが。もちろん、アルの支離滅裂な言い分にカヨコは話半分で聞き、ハルカは一言一句をも真に受けて、ムツキは何一つ言わなかった。

 

全員何かしらの心配事をしていた。「それで…」とカヨコが切り出し、机の上に置かれた純金の弾丸が入ったマガジンに目を留める。「これ、どうするの?」

 

「そのままとっておいてって先生が言ってたしー…多分そろそろ電話してくるんじゃない?」ムツキが答えた。

 

ハルカは何も答えず、クレイモアの設置を終えていた。「こ、こんなに綺麗な物を…ましてや先生から頂いたものを私なんかが見ていいのでしょうか…」

 

先生────彼女たちの話題はいつもこれだった。疲労困憊のままでも、彼はハルカを助け、皆を指揮した。

 

そして、弾を返せなんてことも言わなかった。

 

まるで召喚されるかのように、黒電話が鳴り出す。握り拳に咳をすれば、アルは威勢よく喋り出す。「はい、一銭一惡、便利屋68よ。」

 

“随分と洒落た挨拶だな。”

受話器からは先生の声が聞こえ、アルは驚く。

 

「先生!」口角を少し上げて、アルは答える。「まさかこんなにも早くに連絡してくれるなんて!」

 

“どうしてだ?借金はすぐに返すのがベストだ。むしろそっちがすぐに連絡してこなかったことに驚いてる。元々の雇い主にでもどやされていたのか?”

面白がるような口調で彼が言えば、アルは凍りついた。

 

ど、どうしてそれを──?

 

そんなことを考えるアル。すぐさまにコホンと咳をする。「な、何のことかしら…」

 

“俺の雇い主もそんなもんだ、本当だぞ。”

そう彼が囁けば、アルは驚き、微かに面白がる。

“雇い主のことはいいとして、曖昧な約束のためだけに契約を放棄するフィクサーは君たちが初めてだ。”

くすりと彼が笑えば、びくりと反応するアル。

“さて、さっきも言ったように、借金はすぐに返すのがベストだ。約束は守る。対策委員会も自分のやり方で感謝を示したがっているから、いつか会ってみるといい。評判の良いラーメン屋で働いてる子がいるから、きっと割引してくれたり、もしかするとおまけも貰えるかもしれないぞ。”

 

ラーメンという言葉が出た瞬間、彼女たちの腹は大きく鳴りはずめる。恥ずかしさで顔を赤らめる彼女たちの耳に、先生の忍び笑いが聞こえれば、さらに恥ずかしさが増した。

“おっと、話が逸れてしまった。君たちの料金は分からないが、俺を助けてくれたし、対策委員会がカバーしきれなかったこともやってくれたから…”

彼が言葉を切り、アルは止めようとした瞬間、彼はとんでもない金額を口に出す。それはカヨコでさえ目を見開くほどの、そしてムツキにとっても馬鹿みたいな額だった。

 

しんと静まり返ったせいで彼は心配した。

“アル?もしもし?”

 

「あ、はっはい!ただその…」とアルは拳に咳をする。体面を保つしかなかった。「あんなに簡単だった仕事にしてはかなりの報酬ね。」

 

“値下げをしてくれと?”

そう彼が尋ねれば、頭を叩くカヨコ。クフフと笑うムツキ。

 

「あっ、いや、私は…その…」と言いよどむアルに対して、マテオはため息を吐く。

 

“アル、一つアドバイスをやろう。仕事について話している時に前払いのことは絶対に話すな。たとえそいつがブラフだったとしても、クライアントは本来の額よりも少なく払う口実を得るし、撤回するとなれば信用は地に落ちてしまう。”

そのアドバイスにカヨコは驚いた。そう、驚くほどに的確なアドバイスだったのだ。

 

「そ、そうね。先生って物知りなのね。」アルが言えば、先生は軽く笑う。

 

“まあ、とりあえず縛られないタイプとだけは言っておこう。”

どこか匂わせるようなことを彼が言えば、アルの背筋は伸ばされ、目が輝いていた。

 

────まるでアウトローそのものだった。

 

“報酬はもうすぐ支払われるはずだ。セリカはまだ戻っていないから後で柴関ラーメンに行くといい。この番号を預かっていいのなら預かっておく。にもそれなりの仕事が来ているし、全部一人でこなすわけにはいかないからな。それじゃ。”

アルはゆっくりと電話を切れば、目が輝く。

 

かっこよかった。滑らかな声と自信に満ちた口調。アルは思わず感嘆せずにはいられなかった。

 

しばらくして、報酬は支払われ、この時初めて便利屋は運が好転し始めたと実感した。




[訳者あとがき]
「一銭一惡」という本来は「はい、どんなことでも解決します。」にするべき意訳について
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=331085&uid=483000
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